SPIRIT 24  スパイ


「係長、今日ちょっと用事があるから、午後でかけるからな。午後のセンター課長会議は代わりに出てくれな。」

「は、はい…。」

って、課長、昨日も出かけてそれっきりで、17時過ぎに直帰するからなと電話されたじゃないですか。もっと管理職とし

ての自覚を持ってくださいよ。第一課長が外に出かけるなんて用事はないはずですが!

午後のセンター課長会議が終わってから電話がかかってきた。

「もしもし、俺だ。うん、俺が誰がかわからない
のか?今すぐ来い!」

世界で一番最低最悪の所長からの電話だった。

「山川、君は係長としての職務真っ当していないね。」

「は、はい?」

「係長の仕事は課長業務を補助することだろうが。」

「は、はい。」

「おまえは課長がどこでどうしているか把握しているのか。」

「いえ、用事があるといって出かけられました。」

「それだ、それ!用事があるで済ましているのが、係長失格だといっているんだ!」

「ですが、私の立場では…。」

「立場もくそもあるか!山川、ちょっと聞け!」

所長は小声になった。

「おまえも薄々とわかっているようにな、課長はな、サイドビジネスを勤務中にやっているんだ。人事からもマークされて

いるんだ。そこでおまえに命じる。課長の行動を偵察しろ。そして逐一報告しろ。いいか、これは業務命令だ!以上だ。帰

れ。」

おいおい、あの課長は能力がないのは百も承知だ。しかし、課長にしたのはこの組織じゃないか。直接の上司の行動を何で

この俺がスパイしなきゃならないんだよ!この職場は、腐っても俺の人生の場だ。一日の半分近くをここで過ごしているん

だ。17時までは同士であり戦友なんだ。それをスパイしろっていうのか。課長がケーキを買ってきたら、「課長おいしい

です。」と言いながら「課長はいついつどこで何を買ってきて、お振る舞いしていました。」と世界で一番最低な男に報告

しろっていうのかあ!

俺はこうもり男かあああああ!

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