SPIRIT 10  事後談


 「係長、昨日はご苦労だったな。いや、みんな係長の帰りを待ってるって言ったんだがな、俺が帰れって言ったんだ。みん

な、お母ちゃんだからな。俺も用事があってな。まあ、解決してよかったな。」

 やっぱり、課長、あんたのせいだったんですか。

 「係長、よかったですね!」

 「いや、怖い話だよ。公文書は外に持っていくことがあるから、それを落としたら個人情報漏洩だろう。よっぽど注意しない

とね。これを機会に再発防止に努めましょう!」

 「そうですね。」

 
「でも申請書が風で飛んでしまうことを気づかないことってあるか

しら?」


 K副主任が突然不吉なことを言い始めた。

 「普通手に抱えていた書類が飛んだら誰だって気づくはずよ。ねえ、Iさん、もう一度机の上を確認してみたら?」

 「まさかあ。…あっ!ありました!ここにはさまっていました!
わ〜い!係長見つかりました

ぁ!
良かったです!えへへ。」

 そのとき課内の空気は氷のように固まった。


 「Iさん、机の上は整理しようね。」

 俺に言える皮肉はこれだけだった。

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