SPIRIT 15  歓迎会


「ねえねえ、N美さんが入ったことだし、課で歓迎会しない!」

「いいね、いいね!やろうよ!」

業務中だというのに係員が盛り上がっている。なんであんな腐れバイトのお祝いなんてしなくちゃならないんだ?

「係長ももちろんですよね?」

I副主任が舐めるような目つきで俺の顔を伺う。こいつ

は 課の実質上の女ボスだ。こいつににらまれたら、たちまち他区の保険センター同僚にメールを送信らしい。2年前センタ

ー内のある係長を、セクハラだと訴え、結局彼は止めてしまった。今のセクハラ制度は何を証明しなくとも騒いだものの勝ち

なのだ。こんな魔女狩りのような制度のために何人もの職員が人生を狂わされていったのか?第一おまえのようなトドに誰

がセクハラするんだよ!妖怪ベラとトドをくっつけたようなおまえがあああ!

「もちろん!」

ああ、俺は偽善者だここで、反対したら俺のいる場所はなくなるのだ。これは明らかな

恫喝なのだ。あああ…

「じゃあ、この日に決定ね!」

あのう、課の親睦会幹事は俺なんですけど…

そして、当日となった。

「ごめん、今日子供が高熱でね、今日はとても無理なんだ!」

あの腐れバイトを祝うくらいなら、子供はいつだって病気にしてやる。

「そうですか、わかりました。じゃあ、ご祝儀ははずんんでくださいね!」

で、でなくても金とるの?きさまらの胃袋のために?

「もちろん、準備しておいたよ。」

俺はこの日家族には飲むと言ってうそをつき、職場では子供が熱が出たと言ってうそをつき、行き場を失って、パチスロを打

った。そして、一度も大当たりを引かずにまたたく間に5万円を失ったが、負けたことよりも誰に対してもうそをついてししまっ

た罪悪感が心に痛かった。



こうして人は壊れていくのかもしれないなと思った。

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