SPIRIT 8  事件 前編


「あのう、係長、ちょっとご相談があるのですが・・・。」

赴任して1ヶ月、姫達の中で一番若いK技師が、俺のところにやって来た。

「はい、何でしょう?」

「あのう、実はですね、さっき市民から申請のあった書類をなくしてしまっちゃいました!」

「えっ!?」

「ですから!外へ行ったときに風が強く吹いててですね、飛ばされてしまったんです!どうもすみませんでした!」

「ちょ、ちょっと!すみませんでしたの問題じゃないですよ!」

「係長!なくしてしまったものはしょうがないじゃないですか!」

逆切れすんなよ!このくそ馬鹿やろう!

「しょうがないじゃない!まず、もう一度探してみるんだ!公文書だ!なくしたのが市民にでも見つけられたら大変なことにな

る!」
俺のあわてる様子にようやくK技師も事の重大さに気がついたのか、顔面が蒼白になった。

「まずは所長に報告だ。」

あの子は少し抜けているから、注意しないといけないよと忠告した前係長の言葉が脳裏をよぎった。

「所長、申し訳ありません。今日K技師が仕事中に公文書を紛失したんです。」

「んっ?!何い!おい、公文書をなくすということはどういうことか知っているか、山川ぁ!貴様の監督不行き届きだ!探

せ!絶対見つけるんだ!万が一のことを考えて文書課にも連絡しとけ!記者発表になるかも知れん。
見つから

なかったらなあ、山川ぁ!貴様の責任だからな!


「申し訳ありません。」


「よし、みんなでKさんの足取りをもう一度洗いざらい探すだ!3班体制を組むぞ!行け!」

課長の命の下、我々庶務課職員一同は、夕闇が迫る街中へ繰り出した。

あゝ、退庁じかんだというのによお、くそ馬鹿野郎おおおお!

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