SPIRIT 12  ケーキ


「おお、係長!ちょっと出かけてくるからな!」

また、課長が俺の部下2人を連れて出て行った。

課の中には今日も俺1人。誰もいない。電話はかかるし、来客はひっきりなしだ。

課長が部下を伴って、戻ってきたのは14時過ぎだった。

「おお、係長悪かったな。まあ、これでも食えや。」

課長が持ってきたのは、ケーキだった。それもここから30kmはあ
る隣町のだった


「わあ!すごい!」

「あっ!これ、有名なやつじゃない!こないだテレビでやっていたわよ。」

課内はケーキの話でもちきりになって、市民そっちのけで騒然となった。あのう、俺昼飯も喰っていないんですけど。

「係長も食えや。」

「いえ、私はケーキダメなんです。」

馬鹿野郎!さぼって女どもをはべらして、飯喰いにドライブしたあげくのみやげなんか喰ってられるか!

「何い、俺のケーキが喰えないっていうのかあ!」

「いえ、ちょっとだめなんです。好きなんですが、体が・・・。」

「そうか、そういうことならわかった。」

「係長、体が悪いんですかあ。じゃあ、それ私にくださいね。」

T主事が舌なめずりしながら、目を爛々を輝かして聞いてきた。

「いいよ…。」

ばっかやろうううううう!

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