SPIRIT 13  バイト


「係長。今年は欠員となってしまい悪いなあ。」

珍しく課長が俺に謝った。そうだ、こいつの実力がないがために我が係は、今年1年1名の欠員となってしまったのである。

このくそ課長めがあ!

「いや、しょうがありませんよ。課長のせいじゃないですよ。」

おまえのせいだ!おまえの!!おまえの力がないからじゃないか!俺は心の中で叫んでいた。

「そうか…それでだ。人事課に掛け合ってな、欠員分をバイトで補充することにした。選定は俺がしといた。いいな、今日10

時に来るからな。」

「はい!」

ところがバイトは来なかった。10時半になっても来ないので、さすがに課長もあせったか、携帯に催促して、ようやく11時に

きやがったのだ。

「遅くなってしまいましたあ。N美でえす。」

1時間も遅れてきた社会人の端くれにもかからない奴は、今風のユニセックスファッションに身を包んだ茶髪の女だった。

「N美さん、ずいぶんと遅れてきたねえ。」

「えへっ!ごめんなさい。寝坊しちゃったんでえす。」

おいおい、課長、ひょっとしてあんた顔とスタイルだけで選んだのか!まさかこいつもくいものにするんじゃないだろうな!

「ちゃんと勤められるのか?8時半には来てお茶だしするんだぞ!」

「たぶん大丈夫です!」

たぶんなんていう奴、信じられるか!

「よし、わかった!採用だ!N美さんは庶務係に配属だ。係長、よろしくな!」

「はい。」

しかし、俺は採用だと課長が言ったその瞬間に、N美の目が光ったのに気づき、嫌な予感がした。

そして、それは後に予感どおりであったことを知るのである。

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