赴任2日目、俺は少しでも遅れまいと8時20分に出勤した。妻を駅まで送り、子供2人を保育所に送ってから来るのだ。
大変だが、それを見せないのが上に立つものの務めだ。
しかし、事務室は暗く誰も来ていなかった。8時25分・・・誰も来ない・・・。8時28分
に退職間際の職員が来た。そして、8時30分にベルが鳴った・・・。始業時間が鳴っても課には俺を入れて2人しか職員は
いなかった。
「あっ、係長!おはようございます。」A主査が来た。
「おはようございます。早いですね。」T主事が来た。
「おはようございます。」Z副主任とK技師が来て、ようやく35分までに係員はそろった。そうですか、庁内に30分までに入
れば確かに遅刻ではないですね。
「ですが!エントランスから事務室まで5分かかるんですか!」と俺は心の中でつぶやいた。
「がはは!悪い、悪い!おはよう!おおっ、係長早いね。いやな、ちょっと道路が混んでてな。係長もいいんだぞ。少し
くらい遅れたっていいんだ。俺がいいって言っているんだからな。」
課長は8時50分に来たのだった。課長、あんたが元凶だったのか。
本庁から異動してきた俺には『左遷』という言葉が頭をよぎった。
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