読 書 日 記(35) 海 馬 亭 通 信 1、2

  『海馬亭通信1』 村 山 早 紀     ポプラ文庫ピュアフル  610円
  『海馬亭通信2』 村 山 早 紀     ポプラ文庫ピュアフル  610円
 
 本書は1994年に理論社より刊行された『やまんば娘街へ行く〜由布の海馬亭通信』を改題のうえ、加筆・訂正したものに、書き下ろし中編『17年後〜眠れる街のオルゴール』を加えて文庫化したものだそうです。

 「やまんば」と言えば、山奥に住んでいる妖怪で迷い込んできた登山者を食べてしまう、とされる場合もありますが、この本ではむしろ「山の神様」という扱いになっており、しかも由布の母親はやまんばながら、父親は人間なのだ。
 その父親が行方知れずとなり、15歳になった由布は父親を探して人間の街におりてきた。自称ワルの小学生「千鶴」を助けたことがきっかけで、彼女の祖母が営む下宿「海馬亭」にやっかいになることになる。
 海からの風が吹きわたる「風早」の街。(村山早紀の小説の舞台は必ずこの「風早」の街)昔はホテルだった古い洋館「海馬亭」で繰り広げられる、由布と愉快な住人たちとの心温まる交流譚。となっている。
 
 村山早紀は童話作家だが、子ども向けに文章のレベルを落としたりせずに、大人の鑑賞に耐えうる文章を書く人である。
私は、同じポプラ文庫ピュアフルから出ている「コンビニたそがれ堂」シリーズ3巻を読んでファンになった。
他に「カフェかもめ亭」も、全てが楽しい心が温まる本ばかりである。

 最近、徳間文庫から新刊「花咲家の人々」も出版された。


                          (2012 12/13)

 
読 書 日 記(36) イ ン パ ラ の 朝

  『インパラの朝』 中 村 安 希      集英社文庫  588円
 
 30代前半の女性の一人旅による「旅行記」である。
だが、そんじょそこらの旅行記ではない。三重県出身ながらアメリカの大学を卒業した人だけあって、多くの日本人よりは外国人との交流が全く苦にならないのであろう。

 モンゴル→中国→ネパール→東南アジア→インド→パキスタン→中央アジア→中東→東アフリカ→南アフリカ→西アフリカ→ポルトガル、と47ヶ国を684日で横断する大旅行。しかも費用は200万円で済ませるという貧乏旅行。

 行き当たりばったりで家に泊めてもらい食事をご馳走になる。トラックの荷台にしがみついての移動(それでも日本みたいにタダでヒッチハイクなんかさせてもらえない、有料である)
 列車で移動する時は、車内であるいは駅で出入国手続きをするというくだりは、空港でしか入国審査を受けたことのない私には興味深いところであった。

 そういう旅だけに、普通の観光旅行では体験できない現地の人との本物の交流がある。
そういう場面の描写が秀逸である。この作家のデビュー作にして「第7回開高健ノンフィクション賞」を受賞した作品である。

 これから海外へ出ることも多くなるであろう若い人たちに読んでもらいたい。

 

                          (2013 4/5)




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