読 書 日 記(24) と な り 町 戦 争

  『となり町戦争』 三 崎 亜 記    集英社文庫  525円
 
 少し前から本屋に並んでいたので表紙は見ていたが、全くのSFか、またはちょっと『おふざけ』が入った話かと思っていた。ところが読んでみてその凄さに驚かされた。

 となり町どうしが「公共事業の一貫」として本当の戦争を行うのだ。町議会で可決されて戦争をするとなったら、それは住民の総意だから反対なぞはできない。役所主催の住民への説明会が行われ、「いついつにどの地区で戦闘が行われます」と平然と説明があり、住民は「その日は早めに子供を保育園に迎えにいかなきゃならんのか」と道路工事でも行われるかのゆな反応ぶり。町の広報紙には「今月の戦死者23名」と何気なく数字が並んでいる。

 主人公の「僕」は平凡な20代独身のサラリーマンだが、町から「偵察員」に任命されてとなり町に引っ越し、偵察業務を行うことになった。実際に銃弾が飛び交う中を行動するわけではなく、静かに日々は流れていくのだが、自分を助けるために人が亡くなったことを知る、という経験もする。

 こんなふざけた?戦争のやり方があるのか? 戦争とは何のために行われるのか?
10代の若い人に是非ともお勧めしたい1冊。夏休みの読書感想文にもいいかも。

                          (2012 8/2)

読 書 日 記(25) M O M E N T 

  『MOMENT』 本 多 孝 好    集英社文庫  560円
 
 寂れた商店街の文房具屋の息子の「神田」は大学生。同い年で幼馴染みの葬儀屋の娘「森野」は18歳で両親を亡くして葬儀屋を継いでいる。この2人がこのMOMENTともう1冊のWILLの主人公である。

 大学4年生なのに就職活動をしていない神田は時間を持て余して、森野の紹介で病院の清掃のアルバイトをしている。ある末期患者の願いを叶えたことから、彼の元には、死を目前にした患者たちから「最後の願い」が寄せられるようになる。
 最後の瞬間に人は何を願うのか?重いテーマでもあるが、依頼者の希望に沿うために探偵のようなこともせざるをえない神田には、ハードボイルドの雰囲気も漂う。ミステリーのような楽しみもあり、どんどん読めてしまう。

                         (2012 8/3)

読 書 日 記(26) W I L L

  『WILL』  本 多 孝 好    集英社文庫  650円
 
 上記「MOMENT」の続編。7年後の今度は森野の方が主人公である。
神田はアメリカへ留学後、日本の企業は2年で退社してアメリカで仕事をしているが、森野の方は相変わらず小さな葬儀屋の社長のまま29歳になっている。

 葬儀の直後に死者から?メッセージが届いたり、自分を喪主に葬儀のやり直しを要求する女が現れたり、今度は葬儀屋に持ち込まれる難題を森野が解決していく。

 最後に、神田が日本に帰国して森野にプロポーズするのだが、その時に初めて神田が森野の下の名前を呼ぶ。
その計算し尽くした展開が憎い!
 あ、だから、この2冊を順に読んで最後の場面にたどり着かなきゃダメですよ!

                          (2012 8/3)

読 書 日 記(27) つ る か め 助 産 院 

  『つるかめ助産院』  小 川 糸    集英社文庫  650円
 
 集英社文庫の夏のキャンペーン「ナツイチ2012」のスタンプを集めようと思ったので、集英社文庫が続きます。同じものが3回続いたりして結局、全種類集めるのは断念しちゃいましたが。。。

 夫が突然失踪して傷心のまりあは、1人訪れた南の島で助産院の鶴田亀子と出会い、予想外の妊娠を告げられる。すぐに帰るつもりだったのに、天候が悪く島に数日間閉じ込められるうちに、助産院で働く人、そこに出入りする人たちのやさしさにふれるうち、島に住んで子供を生むことを決めたまりあだった。
 
 自分だけが不幸だと決めつけていたまりあだったが、それぞれの人がそれぞれの暗い過去を背負っていることに気付き、勇気をもらい成長していく。
 つるかめ先生の言葉が深い。
「親が生きていても苦労するし、親を知らなくても苦労するし、親を事故で亡くしても苦労するし、親を自殺で亡くしても苦労する。なんだろうね、こういうのって。家族って、絆にもなるけど、一歩間違うと呪縛よね。だけどその分、血のつながらない心の兄弟や姉妹に出会えるの。だから、神様って平等に与えてくれているんじゃないかなぁ。それにそのおかげで私達は今、ここにいて、赤ちゃんの誕生に関わる神聖な仕事ができているんだもの!」

 いくつかの出産シーンが登場するが、オッサンの私が読んでも感動の涙を流すほどに、美しく神々しい。新しい命の誕生は素晴らしい。若い女性にはもちろんのこと、男性にも(特に若い)読んで欲しいと切に思った。

 2012年8月28日からNHKでドラマも始まる。私は、主人公のまりあ以上に、ベトナム人の看護助手パクチー嬢のファンになったので、ドラマの方は設定を変えて彼女が出ないんじゃないかと心配している。


                          (2012 8/23)



読 書 日 記(28) プロゴルファー リーの事件スコア1
           怪 し い ス ラ イ ス 


『プロゴルファー  リーの事件スコア1 怪しいスライス』  アーロン&シャーロット・エルキンズ    
                              集英社文庫  600円
 
 上記の理由で集英社文庫をあさっていたら、夏のキャンペーンには含まれていないのだが、ふと目にとまったので買ってみた。

 リー・オフステッドはプロ1年目の女子ゴルファー。安い宿に泊まり、先輩ゴルファーの車の運転手をするなど、あらゆる経費を切り詰める金欠なプロ生活を送っている。
 出場したある試合で、試合後の練習をしている時に、スター選手の撲殺死体に遭遇してしまう。捜査を担当するグレアム・シェルダン警部補がゴルフを全く知らないとあっては、リーも黙って見てはいられない。プロアマトーナメントで知り合って親しくなったアマチュアゴルファーのペグと真相究明に乗り出した。

 ゴルフは全くしたこともない(ゴルフクラブを振ったことすらない)という私だが、スポーツ観戦は好きなので、日曜日の夕方に家にいる時は、よくテレビでゴルフ観戦をしている。(斉藤愛璃選手のような美人女子プロが活躍してくれると尚嬉しいのだが…今年の女子プロゴルフは韓国の選手ばかり活躍しているが、もっと頑張れ!日本人選手!)
 ゴルフをするのが好きな方にも、私のような観戦ファンの方にも、ゴルフ界の裏事情もよくわかるのでそういう点でも楽しめるシリーズになりそうだ。「なりそうだ」と言うのは、現在3巻まで出版中で今後第4、第5巻が刊行予定だから。(私は今第2巻を読んでいる途中)
 また、第1巻で知り合ったシェルダン警部補と恋に落ちるのでその後の進展も大いに楽しみなところである。

                          (2012 9/1)

読 書 日 記(29) 珈琲店タレーランの事件簿

珈琲店タレーランの事件簿』  岡崎啄磨    宝島社文庫 680円

 京都の小路の一角に、ひっそりと店を構える珈琲店「タレーラン」。恋人と喧嘩した主人公は、偶然に導かれて入ったこの店で、運命の出合いを果たす。長年追い求めた理想の珈琲と、魅惑的な女性バリスタ・切間美星だ。美星の聡明な頭脳は、店に持ち込まれる日常の謎を、鮮やかに解き明かしていく。だが、美星には、秘められた過去があり−−−

 いわゆる「連作短編集」という形をとっており、主人公の名前にも秘密があり、最後まで読んでようやく「ああ、そういうことだったのか」と全体像がわかる仕掛けになっている。

 新人作家の発掘に力を入れている「宝島社文庫」だが、この新人は掘り出し物かもしれない。『プリンセス・トヨトミ』などで人気作家の仲間入りをいした万城目学と同じく、京大法学部出身の秀才である。文章はまだまだで、初めのうちは「なんかリズムが悪いのか?読みにくいなあ」と感じていたが、後半になると気にならなくなった。1冊書く間にもう上達したのか?これからどんどんうまくなっていくであろうことを期待したい。

 この手の「店長は名探偵」というパターンは、今に始まったものではなく、私が気に入っている小では、ビアバー「香菜里屋」のマスター・工藤が登場する「北森鴻」のシリーズ(講談社文庫)もお薦めだ。

                           (2012 9/26)

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