読 書 日 記(21) マ ー ク ス の 山

  『マークスの山』 上・下  高村 薫  講談社文庫 各648円
 
 「俺は今日からマークスだ!マークス!いい名前だろう」−−精神に暗い山を抱える殺人者マークス。

 南アルプスで播かれた犯罪の種子は16年後発芽し、東京で連続殺人として開花した。
被害者たちにつながりはあるのか?姿なき殺人犯を警視庁捜査第一課の合田雄一郎刑事が追う。

 登場する刑事たちにはすべてニックネームがつけられており、登場人物に大いに親しみが持てる。
マークスは凶暴な殺人者であるが、被害者たちも全くの善意の市民でもなく、マークスを応援したくもなってしまう。登場人物たちの心の襞までもち密に描かれており、さすがの『直木賞受賞作』である。

 警察小説をお好きな方は是非ともご一読を!

 ちなみに、乃南アサの「凍える牙」(新潮文庫705円)も直木賞受賞作の警察小説です。

 
                          (2003 5/27)
読 書 日 記(22) 天 使 の 牙 

  『 天 使 の 牙 』 上・下  大沢 在昌  角川文庫 上571円 下648円
 
 物語の主人公は女刑事の河野明日香と、「仁王」と呼ばれる鬼刑事の古芳。二人はコンビを組み、密かに思いを寄せていた。

 そんなある日、保安課の課長から明日香に秘密の指令がくだる。新型麻薬「アフター・バーナー」で日本全土を己のものにしようとする巨大な秘密組織「クライン」、その独裁者である君国辰郎の愛人神崎はつみが逃亡し、警察の保護を求めていたのだ。組織壊滅の切り札であるはつみの護衛のため、明日香は単独彼女のいるところに駆けつける。
 だが、警察内部にクラインと内通する者がいて、明日香とはつみは戦闘ヘリの銃弾をあびてしまう。重傷を受けた二人は脳移植の手術を受け、はつみの体に明日香の精神が宿るようになる。
 
 二人は君国からの暗殺者から逃げ切れるのか? 君国に勝てるのか?

 大沢氏自ら「最も映像化を願っていた作品だった。映像向きだと自負するシーンが、この『天使の牙』には多くある」と語るように、息をつかせぬアクションシーンの連続!
 体が変わってしまった明日香の困惑、心の揺れもしっかり描かれており、「読まずに寝られない」面白さ!
あっと言う間に読んでしまいました。(^^)

                          (2003 10/17)

読 書 日 記(23) プ ラ ハ の 春  

  『 プ ラ ハ の 春 』 上・下  春江 一也  集英社文庫 各686円 

 1967年3月、チェコスロバキアは共産主義の抑圧から脱し、経済改革と民主化、自由化への気運を高めつつあった。それは「プラハの春」と呼ばれる共産独裁体制からの脱皮のはずであった。

 そのさなか、堀江亮介はビーナスのようなカテリーナ・グレーベと出会った。だが亮介は日本大使館員、カテリーナは東ドイツの反体制活動家。東西対立の最前線の地では、禁断の愛だった。

 やがて、カテリーナがナビゲーターを務める国際放送番組『ミレナとワインを』のオン・エアが開始された。反響の大きさに周辺の社会主義国は警戒を強める。特に社会主義国の盟主を自認するソ連は、軍事介入を検討し始める。チェコスロバキア共産党第一書記ドゥプチェクは、それを避けるべく、ソ連共産党書記長ブレジネフと必死の交渉を続けるが、ついに。。。

 時代の奔流に呑み込まれようとする、亮介とカレリーナの愛の行く末は?

 元日本大使館員であった春江氏による、当時の東側諸国の描写も、たいへん勉強になる。
 
                          (2003 12/16)


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