読 書 日 記(1) ゴールドラッシュ

 
 柳美里(ユ・ミリ)の「ゴールドラッシュ」が文庫になりました。

 この本は、1998年11月に新潮社から発行されましたが、作者は、例の須磨区の中2の少年が犯した殺人事件に衝撃を受け、14歳の少年を主人公にした小説を書いたというわけです。

 文庫の帯には、「なぜ人を殺してはいけないのか?」
        「どうしたら人を信じられるのか?」とあります。

 舞台も殺人の対象も、須磨区の事件とは変えてありますが、14歳の少年の心の動きをうまくとらえています。

 サスペンスやミステリーではないので、少年が逮捕されるまでの経過を書いているわけではないのですが、「いつつかまるんだろう」「誰が説得して自首させるんだろう」とハラハラドキドキでした。

 在日韓国人の作家、Yu,Miriは、「純文学の芥川賞」受賞作家の中では、唯一、私の好きな作家です。

 日本社会のゆがみを痛烈に批判する「仮面の国」(新潮文庫)も面白い。
                            (2001 5/23)

読書日記(2) ひきこもりからの旅立ち 

「ひきこもりからの旅立ち」(ももこ14歳 魂の詩) 
       北風ももこ+井上敏明  朱鷺書房  1300円

 ももこさんは、小学校6年から不登校になり、中学校もあまり行っていません。現在16歳で、カナダのインターナショナルハイスクールに在籍しています。人に言えなかった中学校時代の思いを詩にしました。

 ももこさんは走っている自動車から突然降りようとするような、こうと思ったらまっしぐら、という性格です。

 もちろんまだまだ表現や言葉遣いは稚拙ですが、大人をもうならせる鋭い洞察力、感受性を感じさせられました。中学生も教えている私には、驚かされたり、感心させられた詩もたくさんありました。

 中高生の皆さんはもちろん、親御さんたちにも読んで欲しいと思います。

 神戸海星女子学院大学教授で、六甲カウンセリング研究所所長、六甲スクールレススクール主宰の井上敏明氏のもとへカウンセリングに通った縁で、井上先生が詩の解説と本のまとめをなさっています。
                              (2001 5/30)

読書日記(3) メトロポリス

「メトロポリス」  手塚治虫   角川文庫  660円

 大友克洋・脚本、りんたろう・監督によりアニメ映画化された「メトロポリス」が角川文庫からでました。

 初版はなんと1949年(昭和24年!)の出版です。戦後わずか4年のこの時に、手塚治虫は未来を的確に予言している!人間はいつか、その発達しすぎた科学のために自分を滅ぼしてしまうということを。

 科学の進歩と人造人間の悲哀を、少年マンガにして子どもたちに教えようとしたのか? やはり手塚治虫はとてつもない天才でした。

大人が読んでも面白い!この作品を、ぜひお父さん、お母さんにも読ませてあげて下さい。
                                (2001 5/31)

読書日記(4)    秘  密

 「秘 密」 東野圭吾 文春文庫 590円

 妻と娘を乗せたバスが事故に遭い、妻は死亡、娘は奇跡的に助かるが、目覚めた娘の身体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から、杉田家の切なく奇妙な『秘密』の生活が始まった。

 広末涼子主演で映画化されたのは、皆さんご存知の通り。ただし原作では、事故に遭った時、娘は小6で、それから結婚式の日までの成長が描かれています。

 妻は「もう一度人生をやりなおせる」と張切るのですが、夫は冷静に娘を見守る父親を演じ切ることは、とてもできません。おじさんから見ると、その夫の葛藤がよくわかる気がします。お父さんたちにも、薦めてあげて下さい。

 私は映画は見ていませんが、原作を読んだら、映画が見たくなりました。ミステリー作家らしく、最後には大きなオチが用意されています。最終選考まで残りながら、惜しくも「直木賞」を取り損ねた本作は、名作です。
 イチオシ!の一冊です。  
                                  (2001 6/5)
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