タ    イ


魚の大様 タ イ
 タイは目出度い魚として、ご祝儀には欠かせないものだが、名前の縁起の良さだけではなく、姿、形、色、味とも海の王者にふさわしく、その品格が尊重され、「腐ってもタイ」などと特別待遇である。
 日本ではタイと名のついた魚が非常に多く、数だけでも200種もある。しかし、魚類学上厳密にタイと言うと、マダイ、チダイ、キダイを指している。
 タイは古くから魚の王様として珍重され、日本の古典にその名があり、古代では色が赤いことからアカメ(赤女)とも言われた。
 日本中どこでも珍重されるマダイは、日本以外では信じられないような下魚で、中国では死者の肉を食う魚として忌み嫌う風習がある。アメリカでは食用魚でなく肥料にしている。
 キダイはレンコ、チダイはハナダイとも呼ばれる。大きさはマダイが一番で全長1m、キダイ、チダイはせいぜい30cm前後である。
 産卵期は異なり、マダイ、キダイは春で、チダイは秋であり、その頃接岸する。
 マダイは体色抜群で、したたるような赤紅色の地肌に、宝石のようなコバルト色の点が散りばめて、その気高さは王者の貫禄十分、祝事の縁起物としてマダイが尊重されるのは当然である。
 マダイは北海道南部中国に分布し、200mほどの深海に生息している。岩礁帯で潮流の早い起伏に飛んだ海底に多く、表層へ浮かぶことはまずない。適水温は18〜20度くらいで、10度以下では運動不活発で餌も取らなくなる。好物のエビを見つけると、脱兔のごとく追い、くわえるまで追っている。
 冬は深所へ、春の産卵期は郡をなして岸近くの湾内に入り込んでくる。成魚になるまで3〜4年ほど、その後は魚では長寿の方で20〜30年も生きる。マダイの肉身は癖がなく甘味で、淡白な味が賞味される。
 目の下一尺のマダイは格別と言われるのは、30cmの体長が一番食べごろと言うことで、活きづくり、洗い、塩焼きがよい。養殖物が出回っているが体色黒味で脂肪が強い。