夏らしくサンプル
久しぶりの休日だった。予定があるわけでもないから別に休日でなくとも良かったのに、連続勤務日数を更新しているという理由だけで、同じように連続勤務日数を更新している人によって、半強制的に休日にされてしまった。
夏は軽犯罪が多発する。暑い日が続けば、出動の機会はめまぐるしいほどに増える。その出動の一翼を担う隊の長なのに休むのは気が引けた。
「こうも暑い日が続けば、どうこうする元気も失せるさ。この私だって、こんなクソ暑い中、外をふらふらする気がないんだからな」
まだいくらか涼しい室内にいた方がマシだ。そう説得力のあることを言う。確かに、暑い日が続けば犯罪は増加するけど、暑い日が長く続くと犯罪件数が頭打ちになるのも事実だった。大佐は夏の忙しさがこの辺りで一段落すると判断したのだ。
「ウチは仕事に一段落することはないからな。この辺りで一旦休みに入ろう。ハボック、お前から順番に」
大佐の宣言に司令室内から大きな歓声が上がった。そして、オレは別に休みなんかいらないと言い損ね、そんなことが言える雰囲気は抹殺されたのだった。
「アンタもふらふら出歩くようなことはしないで下さいよ。脱水で倒れちまうことなんてないように」
オレがいないからって、ここぞとばかりにさぼったりしないで下さいよ。そう小言を漏らした。

向かうは大佐んち。狭い自分の部屋の掃除が終わってしまうと、やることがなくなって当たり前のように足が向いてしまう。夕飯の材料を市場で買いこんで、明日の朝飯用のパンも買って、合鍵を使って当たり前のように入る。
「休日に掃除をさせるために合鍵を預けているわけじゃないんだぞ」
大佐に良くそう言われた。最近は思い出したように時々言われるだけになった。根本的に無趣味で、降って湧いたような休みをどうしていいか分からないから、ここに来て、手持無沙汰の時間を適当に身体を動かして過ごす。それがたまたま掃除であり草取りであり料理であった。ということが理解されて、もう好きにしたらいいと思われている。
自分のテリトリーになっているキッチンとパトラリーに買ってきた食材を置いて、早速掃除に取り掛かった。今日も暑いから、水回りの掃除を中心に。バス回りのタイルの目地を念入りにたわしで擦ったり、薄地のカーテンを洗ったり。この天気の良さなら数時間で乾くはずだ。
乱雑にあちこちに散らばる本を適当に書斎に運び込んで、本棚に押し込む。エルリック兄弟なら、勝手に本を片付けたら怒るだろう。「何がどこにあったか、オレは覚えている! これはこれで片付いていたんだ!」とか言って。あの人も当初はそんなことを言っていたが、床に散らばった本の中から目的の本を探すより、本棚から探した方が早くて楽なことを知ったらしい。今は片付けて当然と言う顔でオレを見ることがある。
防犯の理由からも庭を草ぼうぼうにはしておけない。不定期だが業者を入れ、管理をしている。定期的に頻回だとこれも防犯上良くないから、目立つ雑草はこまめに抜いていた。田舎育ちだから土いじりは苦にならない。内庭にトマトの苗をこっそり植えたら、それを目聡く見つけた大佐に好評だった。もっとなんか植えとけ。そうまで言われると軍高官が庭で家庭菜園をしているのはどうだろうかと思いもするけど、大佐のリクエストに応えて、キュウリとなすとピーマンも植えてみた。そして、久々に見れば、もう十分に収穫できるものが実っている。明日の朝、一緒に採って食べさせてやろう。
埃っぽい室内に窓を開けて風を通すだけで、湿度が変わる。暑いけど、不快さは一気に軽減した。掃除機を念入りに掛ける。あの人が室内を裸足で歩きまわってもいいように。突然床の上ではじまってもいいように。今日はどこでしようか。そんなことを思い始めると、身体の内側に熱がこもって、くすぐったくなって、一人で声を出して笑った。
夕飯は白ワインをキンキンに冷やして、オリーブオイルとバルサミコ酢を食べることにした。野菜とエビは蒸して、白身魚は焼いて、ホルモンのトマト煮にオリーブオイルをたっぷり掛けるのだ。

+++

「――ハボック、近い」
「はい」
ハボックはもう自分の欲求に忠実だった。ベッドを前に背部から身体を摺り寄せ、熱い息で首筋を震わせた。
「嗅ぐな」
「はい」
そのまま、耳の後ろに鼻先を埋めて、呼吸が速くなっている。性急に抱きしめられた。腕が前に回って、ワイシャツの上から撫で回される。指先が熱い。
「ハボック、これじゃ着替えられない」
「はい」
ハボックの手がそのまま下に移動して、ズボンのボタンを外す。
「ハボック、そうじゃない」
背中からハボックの鼓動が響いていた。速い。どうしてこんなに言葉にしないで、もう待てないと伝えられるのか。私が身体の向きを直すことすら待てないのか。ハボックの手を押し留める。私だって、お前を脱がせたい。お前の日に焼けた素肌が見たい。変な日焼けの跡ができているんだろう?
「はい、分かってます…」
何が分かったって言うのか。ハボックは片腕で私を抱えたま、もう片腕で器用にズボンとパンツも一緒に下ろして、そのままベッドに倒れ込んだ。
望んでいた解放感が、望まぬ形で訪れる。ズボンとパンツと一緒に靴下も軍靴も一緒くたに脱がされて、ベッドから遠くに投げ捨てられる。何もそんなに力いっぱい投げる必要はあるまいに。その無意味な勢いがハボックのテンションを教えていた。ハボックの体重が容赦なくずしりと背後から掛かって、身動きが取れない。息苦しさと相まって、身じろぐと、尻がハボックの股間を擦った。もうそこは熱く滾っている。
「ハボック」
そのまま抑え込まれて、ワイシャツの隙間から手を差しいれられて良いように素肌を撫で回される。尻に小刻みに押し付けられる股間。全身を擦りつけるように押し付けられて、首から耳に舌を這わせて、耳の中に舌を入れられる。くり返し抜き差しされて、唾液が耳の奥で反響する。身体が大きく震えた。不本意にも。
「――、っ、ハ、ボック…」
「はい」
今度は意思疎通が辛うじて通じたようで、私のワイシャツを脱がすと、ハボックもそのTシャツとGパンを脱いでまた伸し掛かる。今度は素肌の感触が心地よかった。
さらっとした汗が肌と肌を密着させる。夏の不快指数をうなぎ上りにする行為の代表的な一つと言えるのに、ハボックの高めの熱がじんわりと伝わり、汗が滲むことすら心地よい。背筋が震えるほどに。
2014/08/24
丁度真ん中辺りから抜粋しています。
R18ですので、頑張って色々描写しましたから!