01
久しぶりの休日に、家族そろってショッピングモールにお買い物だ。
エリシアが、じっと真剣にショーウィンドの中を見つめている。
父親としては、この後、エリシアが上目使いの、カワイイおねだりをするのを期待している。
もちろん!すぐには、買ってはあげない。
教育上の問題として、というのはグレイシアの手前の話で、ただ単に駄々を捏ねられて、仕方ないなあという風を装いたいだけなのだ。
日々忙しく、最愛の娘とも満足にスキンシップを図れない父親は、少ないチャンスを有効に使うのである。
さあ、エリシア!お願い攻撃で、見事、この父を撃破してみせてくれ!!さあ!さあっ!!
隣でグレイシアがクスリと笑った。
「もう、随分前からなのよ?ここでしばらく動かなくなるの。もう少し見てて、この後が面白いのよ?」
エリシア、パパは君が望むなら、そのショーウィンドの中身全部を買い占めてあげたいと思っているんだよ?
グレイシアに言われたように、しばらくエリシアを観察する。
エリシアはショーウィンドのある一点を見つめたまま動かない。その視線の先を追ってみれば―――――、
「ネコミミ?」
思わず漏らした呟きに、グレイシアが笑いを含んだ声で応ずる。
「そう。子供のおもちゃにはもったいないほど作りがいいのよね」
さすが、エリシア。目の付け所が違う。確かに、エリシアちゃんがアレをつけたら、さぞカワイらしかろうっ!イイ‥‥‥!!思わず、うっとりと、その様子を頭の中に思い描いていたら、ちょっと強めに、脇にグレイシアの肘が入った。もしかしたら、声が漏れてしまっていたのかもしれない。
エリシアは、その猫ミミをしばらく見つめた後、そのショーウィンドの中をキョロキョロと見回し、もう一度その猫ミミに視線を戻す。そしたら、パッと後ろを振り返りオレたちの下に駆けてきた。エリシアの表情には、不満げな色が浮かんでいる。そのまま、抱き上げた。
「エリシアちゃん、いいのかい?」
マイ・スイート・エンジェル・エリシア、君にはそんな顔は似合わない。
「‥‥‥‥‥いいの」
しかし、俺のえんじぇるは目に涙を浮かべて俯いてしまった。涙がこぼれるのを必死に耐える我が娘の愛らしさを、この往来の人々よ、見るがいい!
俺は、天に誓った。
明日、この猫ミミを買って帰ろう、と。
隣で、グレイシアが大きなため息をついた。
愛の力でムリヤリ定時に会議所を後にする。今日ばかりは部下に泣いて縋られても、すげなく足蹴りにした。
昨日の店で、俺はかっこよく店のオヤジに言ったね。ショーウィンドの猫ミミをくれって。オヤジは、これが一点モノだと言っていた。さすが俺とグレイシアの子だ。エリシアにはモノを見る目がある。
満面の笑みとは、まさにこのことだ――――、エリシアはこの包みを渡され、パパ大好きと言った。
幸せである。
しかし、渡されたその包みの中を見て、明らかにがっかりし、目に涙を浮かべて俺を見上げた。
そして、立ち上がり、ママーと言って、俺の前から走り去ってしまった。
泣きたいのは、パパでちゅよ、エリシアちゃん‥‥‥‥。
あまりのショックに呆然と立ちすくんでいると、ぐずっているエリシアを抱えて、グレイシアがリビングに入ってきた。
「エリシア、猫さんのミミ、欲しかったんじゃないの?」
「――――この色じゃないの」
「エリシアにはこの色でしょ?」
エリシアがふるふると首を振った
「パパならエリシアの欲しいの、買ってきてくれると思ったのにっ!」
そう言って、エリシアは、グレイシアにしがみ付いてわんわん泣き出してしまった。
俺のパパとしてのプライドは粉々に崩れ落ちた。
その様をあまりに憐れだと思ってくれたのか、グレイシアが助け舟を出してくれた。
エリシアの明るいブラウンの髪の毛を優しく撫でながら問う。
「猫さんのお耳は欲しかったんでしょう?」
エリシアは小さく頷いた。
「何色のが欲しかったの?」
「―――――黒で、ミミの中がピンクなの‥‥‥‥」
「黒?」
グレイシアが俺を怪訝そうに見た。
「エリシア、パパに猫の耳、着けたかったの?」
「ちがうっ!!!」
間髪いれず、ぴたりと泣き止み、力強く否定されてしまった。
エリシア、パパは何だか立ち直れそうもないんだけど‥‥‥‥。
黒、黒髪‥‥‥とグレイシアが思案しながら呟いているが、俺はちょっとそれどころではなかった。グレイシアは、少し考えて、もしかしてと続けた。
「ロイ?」
エリシアは、その言葉に、それはもう可愛い満面の笑みを浮かべ、大きく頷いた。
「そう!エリシアのネコさんなの!!」
「―――――エリシア、パパに任せなさい」
「パパ、大好き!!」
エリシアのためなら、親友ぐらい悪魔にだって売るし、猫のミミぐらい着けてやる。
覚えておけよ!ロイの奴めっ!!
翌日、俺は仕事を抜けだして昨日の店に走った。
エリシアの期待に応えるために。
「オイっ!オヤジ!!返品だ!!」
俺は足音も高らかに店のドアを開け放った。
昨日のオヤジは、一瞬たじろいだもののすぐさま、平静を取り戻した。
「――――先日、ライトブラウンの猫耳を購入された方ですね。お気に召しませんでしたか?」
「お気に召しませんでした。他のやつを見せてくれ!」
「今、店頭にでているでけなのですが」
なるほど。エリシアの言う通り黒はない。さすが俺の娘。リサーチ済みとはやるな。
「注文できるか?」
「もちろん!一点ものですから。事細やかな注文も受け付けています」
「そうか、じゃあ、一発頼むわ」
色は黒。耳の内側は薄いピンクだ。―――ロイの奴に着けるんだから、代金は奴持ちだ。よし。金の心配がなくなれば、これ以上ないほどの完璧なものを、父は作ってみせる。愛娘の期待に応えてみせるっ!!
材質、サイズと至るところにまで注文を付けたら、見積もりで8万センズを超えたが俺の知ったことではない。―――お客さんほど、細かい注文を出された方は初めてですよ、とオヤジは言った。当たり前だ。父はパーフェクトなのだ!
ヒューズは店のオヤジに自分が使うものと誤解されていることに、全く気が付いていなかった。
02
天は俺に味方した。
注文したアレの受け渡しの日にロイがのこのことイーストシティから出張でやって来た。
会議が終わる頃合を見計らって、部下を会議室に向かわせ、ロイを軍法会議所まで連れて来させる。
ヒューズ中佐は、泣いて行かないでくれと懇願する部下たちを振り払って、大佐の腕を掴んで定時に会議所を出て行こうとした。オレにとっては、大佐の、本日の仕事は終わっていたから、心に少しだけ余裕があり、さらに、この上官たちの奇行や他を顧みない行動はいつものことだったので、傍観者の立場を貫けた。ああ、ヒューズ中佐の部下も大変だなあ‥‥、と。騒ぎの渦中に放り込まれた大佐が、恨めしそうな顔をオレに向けたが、オレにはどうすることもできなかった。
会議所の出入口に、すでに横付けされていた車に大佐は押し込まれた。少し離れて付いていったオレは、ヒューズ中佐の手招き1つで、一緒に乗ることが決まってしまった。
「お前は何がしたいんだっ?!」
やっと、まともに口を開けた大佐にヒューズ中佐は厳かに言った。
「父の威厳を保たねばならん」
可愛らしい子供のおもちゃ屋の前で車が止まる。
父の威厳が、どうしてファンシーショップの前で車を停めることになるのか、肉体労働専門のオレには理解できなかった。
「ロイ、サイフをよこせ」
こんなに力強く、堂々としたカツアゲははじめてだ。
「お前、言動がおかしいぞ?」
「あのこと、少尉にバラすぞ」
「‥‥‥バラされて困るような事は何もない」
「へえ、そう」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「ロイ?」
「ヒューズ、何でも言えばいい」
「ふうん。じゃあ、あのこと中尉にバラす」
「ちゅ、中尉は何でも知ってるぞ。それこそ、何を言われても困るような事はない」
「本当に言うぞ。サイフを出せ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「ロイ、いいのか?」
2人はしばらく睨みあってから、ついに、大佐は、サイフをヒューズ中佐に渡した。
軽やかに、ヒューズ中佐は大佐の厚いサイフを手に、ファンシーショップに入って行った。
車には、運転手と、大佐とオレ。
オレの視線から逃れるように、ぎこちなく、大佐は体の向きを変え、顔を背けた。
沈黙に負けるかのように、大佐が口を開いた。
「‥‥‥何か、言いたげだな」
「あのことって何スか?」
「何でもない」
「サイフを渡した以上、それはないっスから」
――――何で、アイツは人のところの人間関係をかき乱すんだ。
「ハボック少尉、私が信用できないのかね?」
「アンタの、どの口がそんなこと言うんスか?中尉に言いますよ?ヒューズ中佐にあのことバラすって言われて、サイフ渡して口止めしてたって」
「しょ、少尉!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「やましい事がないなら、別にいいっスよね?」
「あー、なんだね?お前の望みを聞いてやろう」
「中佐がバラすって言ってたことって何スか?」
「そんなの知るか。ヒューズに聞け」
「アンタ、やましいことあんでしょ?」
「お前の知ってる範囲だぞ?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
刺々しい沈黙に、チラリと、大佐は振り返った。
「たくさんありすぎて、検討もつかん」
―――――――――ため息しかでない。
ヒューズ中佐が、ピンクの袋を手に戻ってきた。サイフを大佐に投げてよこす。大佐は中身を確認することもなく、しまった。
これだから、金持ちは‥‥‥。
「何に使ったんだ?」
「それは着いてからのお楽しみだ。まあ、結論から言えば、お前のものだ。だから、お前が金を払うのは当然だ」
「―――何だ、それは」
「うるさい。ケチケチすんな。9万センズぐらい」
「9万センズも、あんなファンシーショップで使ったのか?よく使える」
「特注だったんだ。2週間もかかった」
03
ヒューズ邸に到着した。
エリシアが勢いよく玄関から飛び出てくる。
確かに、愛らしい子ではある。時々、突拍子もないことをするが。
お前はグレイシアの手伝いをして来いと、大佐を追い払って、ヒューズ中佐はエリシアにファンシーショップで購入してきた、9万センズもの何かを袋ごと渡した。それをエリシアは少し緊張した面持ちで受け取り、中身を覗き込んだ。とたんに満面の笑みが浮かぶ。
「エリシア、どうかな?」
「パパ、きゃー!!スゴイ!!パパ、大好き!!ありがと!!」
ぎゅう、っとエリシアに抱きつかれ、ヒューズ中佐はその鼻の下を大きく伸ばした。どうやら、父の面目とやらは守れたらしい。
「ロイ、座って!!」
大佐をソファに座らせるとエリシアがその膝の上に跨ぐように座って、にっこり笑って、大佐に、目を閉じてと言った。大佐は大人しくそれに従う。
エリシアはグレイシアさんに手伝ってもらって、大佐の頭に猫の耳をつけた。キャーっ!とエリシアが歓声を上げる。
「エリシア、目を開けてもいいかな?」
「うん!」
ヒューズ中佐が特注で作らせたその猫の耳は、大佐の髪質と合っていて、まるでほんとうに頭から這えているかのようだった。
「わたしのにゃんこちゃん!!」
エリシアがうれしそうに大佐に抱きついた。
大佐が自分の頭がどうなっているのか確認しようと頭に手を伸ばしたのを、後ろに立っていたグレイシアさんが、パシッっと叩きおとした。
スゴイものを見てしまった。オレは思わず固まった。そういえば、以前聞いたことがある。大佐とグレイシアさんは、大佐の仕官学校時代から少なからず面識があるらしい。その上での行動なのだと思うが、どうして大佐の周囲の女性はこんなにも強いのだろうか。
「まだ、ちゃんと接着剤が乾いていないから、触ってはだめよ」
「接着剤?ちゃんと取れるのか?」
「取れなくたって大丈夫だっ!全く違和感ないからなっ!」
その言葉に、グレイシアさんがクスリと笑いをこぼした。
大佐は、家の中をエリシアに引っ張られてばたばた動き回る。それを見て中佐は尻尾も注文しておくべきだったと呟いた。
「中佐、いいんスか?エリシア、大佐に付きっ切りスよ?」
「オイ、若造。父のこのジレンマがわかんねえのか?今、エリシアからあのでっかいネコを取り上げて見ろ。パパ、大嫌いとか言われっちゃたらどうしたらいいんだよっ!?ああ?」
「中佐がにゃんこちゃんになってあげればいいじゃないスか」
「‥‥‥‥‥‥」
「おほほほほっ!それはもう提案済みなの。エリシア、それはいやだってはっきり言っちゃたのよ」
「パパは、2週間前から複雑な気持ちが消えないんだよ‥‥‥」
04
いつものように、テーブルに夕飯が並べられた。が、その量は明らかにいつもより多い。疑問を口に出すよりも、それはすぐに解決した。来客を告げるドアベルが鳴ったからだ。すぐ、グレイシアさんとヒューズ中佐が席を立つ。
「フォッカー大尉たちよ。この人、仕事、中途半端なままで帰ってきちゃったから」
少し困った顔で笑うグレイシアさんに、ヒューズ中佐がばつが悪そうに頭を掻いた。
「あー、独身ばっかだからな、こういう機会を作ってやらねえと、あいつら、美味いものにありつけないだろうから、さ」
さり気なくグレイシアさんの肩を抱き寄せ、耳元に軽いキス。くすぐったそうに、グレイシアさんは肩をすくめた。
オレは、この場に1人、目のやり場に困って立ち尽くしてしまった、が、何故、自分がこの場に、1人になっているかを考え、はっとした。
―――いちゃつく、目の前の人に、大佐、このままでいいんスか?と尋ねれば、何、言ってんだとばかりに大きなため息をつかれる。
「奴は、そんなこと気にするような肝っ玉のちっさい人間じゃあねえ。それに、別にどこに出してもおかしくないほど似合ってんだからいいだろ?」
あまりの言い草に、グレイシアさんに助けを求めて視線を投げれば、にっこりと笑い返された。この方は、ヒューズ中佐の部下がやってくることを知っていて、大佐の頭に接着剤でネコの耳を付けたのだった。
2人は、全く意に介さず、部下が待つ玄関に向かう。
――――ネコ耳の似合う上司を持ってしまった部下の尊厳はどうなるんだ‥‥‥‥
この家では、そんなもの、誰も取り成してなどくれない。
おー、よく来たなあ!
遅くに申し訳ありません。奥様。
中佐、目を通していただきたい案件を持ってきました。
どでかい紙袋にこぼれんばかりに入った紙の山。思わず、懐かしさがこみ上げてきてしまった自分があまりに憐れに思えて、熱くなった目頭を押さえてたら、フォッカー大尉の後ろでその紙袋を抱えた部下の1人に、会釈され、あわてて、会釈を返した。
オレたちは、瞬時に、お互いの状況を理解し、同情し合えた。
その時、玄関に続く廊下の奥から、にぎやかな2人分の足音が聞こえてきた。
オレは振り返らなかった。
目の前の3人の目が大きく見開かれ、何が、やって来たのか、考えるまでもない。
「こんばんわ〜!」
エリシアのうれしそうな声が玄関に響いた。
「‥‥‥‥‥こ、こんばんわ。エリシア」
この時点で、何も聞かずに挨拶を返せるところが、さすがヒューズ中佐の部下だと深く尊敬する。だが、固まる人たちのことなどお構いなく、エリシアは絶好調だ。
「にゃんこちゃんも、ごあいさつして!」
「‥‥‥‥‥にゃー」
ヒューズ中佐の部下の腕から大量の書類が玄関に散らばった。
05
今だ、エリシアは大佐の手を握ったまま。
玄関にこぼれた大量の書類を拾い終わって、まずは夕飯を、と言う話になった。深い疲労感は空腹感をより強くする。誰も、遠慮するものはいなかった。
リビングに用意されたテーブルにはすでに、大佐とエリシアが席に付いていた。大佐の膝の上にはエリシアが座りこみ、細長く切られたにんじんを大佐の口元に差し出す。それを大佐はぽりぽり食べていた。
今度は誰も書類を落としはしなかった。
「エリシア、パパのお膝の上に来ないのかい?」
「今日は、にゃんこちゃんと一緒なの!」
大佐が人の悪い笑みをヒューズ中佐に向けた。にんじんを咀嚼したまま。
ヒューズ中佐の額に青筋が浮かぶのが見えた気がした。
「エリシア、そこにいたら、にゃんこちゃん見えないよ〜?パパのお膝の上に来たら、よおっく、見えるけどなあ?」
エリシアはその言葉に、振り返って、大佐の顔をじっと見てから、おりるっ!と言って、ヒューズ中佐のところに行った。
しかし、エリシアはすぐに食べ終えてしまい、中佐の膝を降りて、大佐の手を引いて部屋を出て行ってしまった。
やっと、一息つけると、中佐の部下たちは、額に浮かぶ汗を拭いながら、用意された香り高いコーヒーに手をつけた。
「―――その、驚きました。えーっと、その、マスタング大佐、よくお似合いでした」
「まあな、あのミミは9万センズもかかってる。いい出来だろ?」
「‥‥‥ええ」
「写真、いっぱい撮ったからな、焼き増しして、東方司令部にもばら撒いてやろう」
辺りには、乾いた笑いが響いた。
しかし、彼らは慣れているのだろう、コーヒーが飲み終わる前には体勢を整え、ヒューズ中佐がやり残した本日の仕事の残りの概要を説明し始めた。
しばらくして、エリシアが1人でリビングに戻ってきた。ぷうっと、頬をふくらませて。
「あら、エリシア、にゃんこちゃんはどうしたの?」
いち早く気が付いたグレイシアさんが声をかけると、エリシアの目には見る見るうちに涙がこみ上げてきた。
「だってっ!みんな!じろじろ、エリシアのにゃんこちゃん、見るんだもん!あんなに見ちゃ、ダメなのっ!」
顔を真っ赤にして言い募るエリシアに、ヒューズ中佐が手元の書類を放り投げた。
「隠してきたのか?エリシア?」
「――――だって、パパ!」
エリシアは勢いよくヒューズ中佐にダイブした。
ヒューズ中佐は至極満足そうな笑みを浮かべ、はっしと受け止めた。
それを前にして、グレイシアさんが苦笑を浮かべていた。