始めチョロチョロ中パッパ赤子泣いても蓋取るな。
昔から言われている米の炊き方ですが、この格言の通りにして失敗した人も多いのではないでしょうか。
ここでは失敗の少ない炊き方について考えてみたいと思います。
なお、失敗の少ない炊き方であっておいしい炊き方ではありません。あしからず。
・いつもの炊き方
まず普段のキャンプでのご飯の炊き方をおさらいしてみましょう。
- 最初に米を洗います。
- 次に水加減です。これが一番重要だと言わんばかりに細かく調整します。
- そして火にかけます。
「始めチョロチョロ中パッパ赤子泣いてもフタ取るな」の通りに「始めは弱火で、途中は強火、噴いてきてもフタを取らずに」ご飯を炊きます。
たいていの人はこの3段階で炊いていることでしょう。
で、いつもおいしいご飯が炊ければいいのですが、おいしい時もあれば芯が残っている時もあれば焦げている時もあればベチャベチャの時もありますね。
なぜ成功したり失敗したりするのか考えてみましょう。
失敗する原因
どこで失敗しているのかを見てみましょう
- 「最初に米を洗います。」
これは洗ってあればどうでもいいです。力を入れすぎると米が壊れるとか最初の水はすぐに捨てろだとかいろいろあるようですがグルメではなくキャンプなので気にしなくて結構です。
- 「次に水加減です。」
これもどうでもいいです。と言ったら言いすぎですが、そんなに神経質になることはありません。そもそもキャンプでは計量カップなんか持って行かないのだから、指の第一関節とか手のひらを置いて手首までとかで調整するしかありません。でもそんな体の物差しは人によって違います。3合炊く場合と5合炊く場合とでは水の量は違って当然なのにいつでも同じ「第一関節」「手首まで」です。炊飯器ですら指定の水の量は米の1.1倍であったり1.3倍であったりバラバラです。あげくは本に書いてあることまでバラバラです。極端に多すぎたり少なすぎたりしない限りは「第一関節」「手首まで」で問題ありません。
- 「そして火にかけます。」
これが間違いです。もちろん火にはかけるのですが水加減してすぐの米をいきなり火にかけてはいけません。水加減したらゆっくりと米に水を吸わせてあげます。芯が残る原因は、芯まで火が通っていないか、芯まで水を吸っていないかのどちらかですが、水を吸っていないのは吸水時間を十分に取らないからです。最低でも20〜30分は吸水時間を取りましょう。炊飯器でも自動的に夏場10分冬場30分ぐらいの吸水時間を取るようになっています。人によっては2時間取るべきだと言う人もいます。もち米にいたっては一晩水に浸しておきます。それぐらい吸水は大切なんです。あせらずに時間をかけて漬け込みましょう。特に無洗米を使う場合、洗わない分だけ水を吸い込む時間が短くなりますから意識して漬け込み時間を長めに取る必要があります。それから火にかけます。
おいしく炊けることもあれば失敗することもある最大の原因は吸水時間がまちまちだからです。うまく出来たときも失敗したときも火加減はそんなに異なりません。米を洗う人によって洗う時間が違ったり、火起こしがうまくできたり手間取ったりすることで吸水時間が変わってくるのが原因です。経験上無洗米は失敗することが多いのですが、これも洗わなくていい分吸水時間が短くなるのが原因です。
- 「始めチョロチョロ中パッパ赤子泣いてもフタ取るな。」
これを忠実にやろうとすると失敗します。別にこの格言が間違っているというわけではないのですが、これは鍋厚の分厚いお釜で炊くときの格言であり、コッヘルでやろうとすると難しいんです。格言の意味は、
- 始め弱火でなべ全体を温めて米に水を吸い込ませる
- 次に強火で米を炊き上げる
- 噴いてもフタを取ってはいけないというのは圧力をかけてふんわりおいしく炊き上げるためです。
全てにおいて正しいのですが、実際にやってみると失敗することのほうが多いです。たいていの場合「始めチョロチョロ」の時間が長くなってしまって水を吸いすぎて米の表面がベチャベチャになり、水が減ったところにさらに「中パッパ」で火を強くするので焦げてしまって、焦げありベチャベチャのダメご飯になります。しかも「フタ取るな」ですから失敗したことに気付くのはヤバ気な香りが漂ってからです。慣れた人であればこの通りにやって上手に炊けるのでしょうが、いきなり大成功は困難です。
失敗しないように
そこで失敗しにくい炊き方を考えて見ましょう。
- 米を研いで水加減をし、十分な吸水時間を取ります。
ここまでは同じです。吸水30分以上です。最低30分です。
- 次は一気に中〜強火で炊き上げてしまいましょう。
しっかり吸水時間を取っておけば弱火で吸水させなくても大丈夫です。
- 沸騰したら噴きこぼれてきます。
噴きこぼれているうちはまだコッヘルの中に水があると言うことなので焦げる心配はありません。どうしても不安なら火を少しだけ弱めましょう。ただし沸騰が止まるほど弱火にしてはいけません。米の量に比べてコッヘルが大きい場合は噴きこぼれない事があります。そろそろ噴いてくるはずなのに噴かないという場合は沸騰しているかどうか確認するようにしましょう。真面目に噴きこぼれるまで待っていると真っ黒焦げまで一直線です。
- 噴きこぼれが終わったら火を弱火にします。
噴きこぼれなくなった時点でコッヘルの中の水分はほとんどなくなっています。残ったわずかな水を飛ばすため、弱火にしてグツグツ言わなくなるまで待ちます。
- グツグツ言わなくなったら火から下ろします。
沸騰が止まればもう水分はありません。これ以上は焦げるだけなので火から下ろします。グツグツ言ってるかどうかですが、蓋を押さえて震動で判断する方法、火バサミをコッヘルに当てて音を聞いて判断する方法、などいろいろあります。自分のやりやすい方法で確認しましょう。慣れないうちは思い切って蓋をずらして中をのぞいてもいいでしょう(さすがに全開にするのはやめておきましょう)。中をのぞいてみて水がまだ残っていたり、泡がブクブク言っていたりしたらまだ早いです。米全体が膨らんで水も泡もなくなっていたらOKです。
- 火から下ろしたらしばらく蒸らします。
蒸らすことによって米の表面の水分が米の中に吸い込まれてふっくらしたご飯になります。多少ベチャ気味だったり多少芯が残っているご飯でも、蒸らすことによって幾分マシになります。実際には噴き終わってすぐに火から下ろしてもしっかり蒸らせば残った水は米が吸ってくれます。
炊飯器で炊くと50分ぐらいかかりますよね。でも加熱している時間は15分か20分ぐらいなもんです。あとは吸水の時間と蒸らし時間なんです。吸水時間と蒸らし時間を入れて50分というのはいかにも短いですが、これは炊飯器では圧力がかかっているためそれぐらいの時間でもうまく炊けるんですね。だからコッヘルで炊くときはそれ以上に吸水時間と蒸らし時間を取らなければいけません。蓋もなるべくなら取らない方がいいです。もっとも焦がすぐらいなら開けて確認した方がマシですが。
ガスの場合
普通は以上の炊き方で大丈夫ですが、ガスで炊く場合にはより注意しなければならない点があります。
- 「漬け込み時間をより十分にとること」
薪の場合、火を起こすのに時間がかかるので吸水時間は自動的に確保されることが多いのですが、ガスの場合は一瞬で火起こし完了ですので意識して吸水時間を取らないと芯まで水がしみこみません。ましてや無洗米に水を入れていきなりバーナーにかけるなど問題外です。また、ガスで炊くと焦げやすいので早めに火から下ろすことになりますが、吸水時間が不十分だと蒸らすだけでは芯がなくならなかったりします。
- 「きわどい火加減」
ガスは薪と違って極トロ火〜ガンガンの調節が簡単にできます。この結果、始めチョロチョロをやろうとすると薪の場合以上に弱火になってしまい、全体が暖まる前に火が当たるところにある米だけがベチャベチャになり、鍋底に張り付いて焦げになります。また、薪ならば強火でも弱火でもコッヘルにまんべんなく火が当たりますが、ガスは一点にしか火が当たりません。ですので沸騰したあとも強火で過熱すると火の当たるところは焦げやすく、他の部分は芯が残ったりベチャベチャになりやすいのです。
ガスで炊く場合は吸水時間を十分に取ってチョロチョロはパスし、強火で一気に沸騰させましょう。噴きだしたら沸騰が続く程度に火をゆるめてやりましょう。噴き終わったら焦げの危険が高くなるので極トロ火にした上でフタを開けてこまめに確認するか、いっそ火から下ろしてしまいましょう。
- 「蒸らし時間もより十分に」
火加減の続きですがガスで炊くとどうしても焦げやすいんです。ですので水分が減ってきたら早めに火から下ろしてしまうのですが、当然芯が残っている可能性が高いです。ですので蒸らし時間は十分に取るようにしましょう。
私がガスで炊くときは、
- 漬け込み時間を30分以上取って十分に水を吸い込ませ、
- 最初から中〜強火で沸騰させ、
- 噴いてきたら沸騰が続く程度に火を緩めて、
- 噴く勢いが弱まってきたらこまめに蓋を取って確認、
- あらかた水分が飛んだところで火から下ろして芯がなくなるまで蒸らす、
としています。漬け込み時間さえ十分に取っておけはこれでも芯が残ることはありません。
格言にすると、「始めパッパ中チョロチョロ赤子泣いたら蓋を取る」ですね。まるっきり基本と逆。
でもこのほうが失敗は少ないんです。
米を炊くのに向いている調理器具とは
まずはストーブ。小型大出力を誇るストーブの場合は燃焼効率を向上させるために(炎の熱を全てコッヘルに伝えるために)火力は中央の一点に集中するように設計されている。4000kcal(家のキッチンのガスコンロでも3500kcal程度)もの火力がわずか3〜5cmほどの直径に集中するわけだから半端でなく焦げやすい。この点、2243のようにバーナーの径が大きいタイプは熱が集中しにくく米を炊くのに適しているといえる。炊飯だけでなく、カレーやシチューといった焦げ付きやすい料理をする場合もバーナーの径は大きい方が有利である。
次にコッヘルの素材。米を焦がすことなく炊くためには全体がムラなく熱くなった方がよい。この結果熱伝導率は…よい方がいいのか?悪い方がいいのか?鍋が空なら熱伝導率のいいほうが鍋全体が熱くなりやすいと思う。では中身が入っていても全体が熱くなりやすいのか?それとも鍋の中身に効率よく熱を伝える結果、鍋全体は熱くなりにくいのか?家庭向けの炊飯鍋が土鍋であったり南部鉄であったりすることを考えるとおそらく後者か。土鍋なんかむちゃくちゃ熱伝導率悪そうだし。
後はコッヘルの分厚さ。厚さは厚い方がよい。ライスクッカーと銘打ったコッヘルは普通のコッヘルより分厚いし、炊飯器の広告でも「分厚いお釜で〜」というのが売りになる。全体が熱くならないといけない鉄板やフライパンは分厚い方がよいとされている。さっきも出てきたが炊飯専用の鍋は土鍋とか南部鉄器とか分厚いものばかりだ。分厚い方が鍋全体が熱くなりやすいからだ。もちろん沸騰しないほど分厚いのは問題外だが、米を炊くためには分厚いほどよい。
それを前提に素材別にコッヘルを見てみる。まずチタン。チタンの熱伝導率はアルミより悪くステンレスと同等である。だがチタン製品は薄いんである。チタンという金属そのものはアルミよりかなり重い(1.5倍ぐらい)にもかかわらずチタン製品はアルミ製品より軽い。なぜかというと強度があるのでとことん薄く作ることができ、結果として軽くなっているのである。いくらなんでもそんなペラペラのものに4000kcal一点集中したらそりゃあ焦げますよ。というわけでチタンコッヘルは向いていない。
アルミは熱伝導率が非常によい。かわりに強度がえらく低い。その低い強度を補うために分厚く作られている。この点チタンコッヘルよりはるかに有利。
最後にステンレスである。熱伝導率はチタンと同等でアルミよりはるかに低い。だがチタンより分厚いのでチタンよりは炊飯に向いている。ただチタンより分厚いといっても極端に分厚いわけではない。
そこで実験である。実験と言うか経験上だが、私が上手に炊けるコッヘルは、もはや店頭では見ることの無いぐらい分厚いアルミコッヘルだ。使い慣れているということもあるだろうが。それと同等なのがステンレスのコッヘル(ファミリー向けの重い奴)。これは数回しか炊いたことがないが問題なく炊けた。チタンのソロクッカーが一番難しかった。見事に焦がしたので2度と炊飯には使っていない。しかも未だに焦げが取れない。ストーブはいずれもコールマンピークワン。
結論。素材がどうのこうの言うよりも重要なのは分厚さだ。
そのようなわけで、一番分厚いアルミコッヘルか分厚めのステンレスのコッヘルが炊飯に向いていると思う。売ってるかどうかは別にして、分厚いチタンもよいだろう。
ただし注意して欲しいのだが、これはあくまで炊飯に限った話である。炊飯以外の、雪を溶かす、単にお湯を沸かす、ラーメンを作る、みそ汁を作る、といった用途には熱を効率よく伝えることのできる激薄のチタンとか、同じアルミでも薄い方がよい。ストーブも熱効率のよい火力一点集中のほうが有利である。ついでに言うとコッヘルとかストーブはザックに入れて持って行くのである。米を炊くためだけに分厚く重いコッヘルや径の大きなストーブを苦労して持って行くことはない。そもそもアルミとかチタンとかの素材が利用されるようになったのは軽量化のためだし。
最後にコッヘルのサイズである。これは小さい方がよい。小さければ火力一点集中の影響が少なくて済む。ただし小さければいいかと言うとそうでもなく、例えば食器セットで0.5合だけ米を炊くのはこれはこれで難しい。
おまけ
リカバリーの方法
といっても余りありません。おかゆ並みにベチャベチャになった米をふっくら状態に戻すことはできませんし、こげた米を焦げてない状態にすることはできません。
- 少しベチャベチャになった・少し芯が残っている
蒸らしておきましょう。ベチャベチャを何とかしようと火にかけると焦げるだけでいいことがありません。
- 水分はもうないがまだ芯が残っている
少し水を加えて弱火にかけます。炊飯というより米を蒸している感じですが、芯はかなり少なくなります。ただし焦げる危険もあるので気をつけて。少し芯がある程度なら蒸らしておくだけで何とかなります。
- リカバリーとは違いますが、芯が残ると分かった時点でスープなりみそ汁なりを投入して雑炊にしてしまう手もあります。ただし焦げてしまってからこれをやると米もスープも全てが焦げ臭くなってしまいます。ゲップをしたらおこげの香りがして、それはそれは不幸な気分になりますので気をつけましょう。
裏技
- 蓋なしで混ぜる
フタを開けたまま箸でもしゃもじでもいいから米をかき混ぜながら炊きます。水分が足りなくなってきたら水を足します。パエリアなんかと似たような調理方法です。
- タイ米式に炊く
洗った米を沸騰したお湯に入れてぐつぐつ煮込みます。米が膨らんで芯がなくなったところでお湯を捨てて蒸らします。コッヘルでやるのは難しいですが食器で0.5合だけ炊くようなときは有効な手段です。タイ米はそもそもこうやって炊くものだそうですね。
- 袋に入れてゆでる
「不思議なめし袋」なるものが市販されているのでそれを使います。袋に入れて茹でる感じですね。他にもお茶パックを使ったりキッチンペーパーで包んだりといろいろ実験している人もいます。コッヘルも汚れにくいので単独キャンプのときなんかは重宝します。逆に大人数のときは不利です。
- 蒸す
中華ちまきなどと同じ調理法です。ここまで来るともはや炊飯とは呼べませんね。いっそ中華ちまきを作ってしまいましょう。
以上はいずれも邪道です。スカウト活動として炊飯するなら正当なやり方で炊けるようになりましょう。
まとめ
失敗しにくい炊き方
- 米を洗う
- 水加減をする
- 最低30分は水につけておく
- 強火で一気に炊き上げる
- 噴かなくなったら弱火にする
- 沸騰が止まったと思ったら早めに火から下ろす
- しっかり蒸らす