+  アルバの日記6  +

 不審な動きをしているという「紅き手袋」について調べるため、おいらたち『巡りの大樹自由騎士団』は帝国へ続く森の中を進んでいた。
「ルヴァイド様、先行して周囲を偵察してきます。アルバ、ついてこい」
「はい、イオス副隊長!」
 おいらとイオス副隊長は生い茂る木々の間を慎重に歩いた。四半時も進んだ頃、用心深くあたりを探っていた副隊長が「敵の姿はないようだな」と言う。
「では、戻って隊に合流しなくては。急ぐぞ!」
「えっ」
 イオス副隊長は走り出した。6歩移動のダブルムーブで。
 一瞬遅れておいらが3歩進んだときには、24歩走って緑の向こうに消えていた。

「部隊とはぐれるとはどういうことだ! 勝手な行動をするなと言っただろう!」
 保護されたミントさんの家で、副隊長がおいらを叱る。
 ごめんなさい副隊長。でも、おいらばっかりが悪いわけじゃないと思うんです。






+  アルバの日記7  +

 仲間たちとはぐれ、折れた足を引きずり、おいらは「紅き手袋」の軍勢の只中で孤立していた。
「くそ……この足さえ折れてなければ……」
 思わず弱音がもれ、おいらは強く頭を振った。
「いや、最後まであきらめないぞ!」
 そうだ、絶対あきらめるものか! 今こそトウヤにーちゃんからもらった謎のサモナイト石を使う時だ!
 おいらがフラットを出た日、トウヤにーちゃんがこっそり渡してくれたサモナイト石。
『これがあれば大抵のピンチは切り抜けられるからね』
 そう言ってくれてたっけ。
 ちょっと色がドス黒いのが気になるけど、誓約者であるにーちゃんの隠しアイテムなら間違いない!
 おいらはふところからサモナイト石を取り出し、ドクンドクンと脈打つように震えるそれを天に掲げ、
「それ以上好きにはさせないぞ!」
 あ、誰か助けに来てくれた。なんとかなりそうかな。
『どうしてもやばい時にだけ使うんだよ、そうそう周辺を壊滅させてもまずいからね、ふふふ……』
 トウヤにーちゃんもそう言ってたし、特製サモナイト石はもうちょっとしまっておこうっと。






+  アルバの日記8  +

「我々は、レイド殿にどう釈明すればいい?!」
 ライたちに助けられ保護された家で、イオス副隊長がおいらを叱る。返す言葉もなくうなだれつつ、おいらはついその場面を想像した。
 ルヴァイド隊長とイオス副隊長がフラットに行って、レイドに頭を下げている。
 レイドも騎士だから、多分2人を責めたりはしないだろう。
 でもガゼルは違うかもしれない。
「あんたらがついてながら、どうしてアルバが死ぬんだよ?!」
 そう言って2人に殴りかかるかも。それを止めてくれるのはきっとハヤトにーちゃんだ。
 ハヤトにーちゃんはちゃんと知ってる。これはおいらがおいらの意思で選んだ道だってことを。
 悲しみながらも、2人を責めても仕方ないとガゼルをなだめるにーちゃんの姿が目に浮かんだ。
 ……で、その後ろにオーラが見えた。麺棒を持った巨大なオーラが。
「うちのアルバになんてことしてくれたのよ!!!!!!!!!!」
 ……ボッコボコにされる隊長と副隊長の姿がはっきり見えた。
 ごめんなさい隊長と副隊長! 2人のためにも今後は重々気をつけます!!






+  アルバの日記9  +

 ○月○日
 足の怪我が治らなくて寝込んでいたおいらを心配して、ライが魚料理を作ってくれると言った。
「今市場にないらしくてさ。近くの湖まで行ってくるから、待っててくれよな」
 そういってみんなを連れて出て行って    

 今日で一週間。

 誰も帰ってこないよ……。
 どこの湖まで出かけたんだろう。もしかして敵と出会ってバトルにでもなってるんだろうか。
 そっちはそっちで心配だけど、それ以上に、おいら足の怪我だから歩き回れないし、具合悪くて寝てるわけだし、この宿のどこに食料が保存してあるのか知らないし……。
 あ、おなかがまた鳴った。今日何回目になるだろう。
 ライ、みんな、早く帰ってきてくれ……!
07.7.27






+  アルバの日記10  +

 ○月○日
 足の怪我が治らなくて寝込んでたおいらのところに、ライが魚料理を持ってきてくれた。
 嬉しいな。まるでフラットに帰ったみたいだ。
 気持ちのこもった料理はすごくおいしかった。ちょっと不思議な味だったけど、すごくすごくおいしかったんだ。
「え? ほんとにこれおいしいと思うのかよアルバ?」
「うん、すごくおいしいよ。これだけおなかすいてるしさ。
 ライたちが留守にしてる間、食べられるもの頑張って探しはしたんだけど、おいら上手く見つけられなくて」
「…………ごめん」
「気にするなよ! それより、まる一週間も、全員でどこに出かけてたんだ?」
「うん……ゲックが強くてさ……」
「うん?」
「戦っても戦っても、最後の最後で犠牲者が出てさ…………」
「……うん」
「大回りマップだから、ゲックまで行くのに一時間くらいかかるし…………それが何回も何回も」
「うん……」
「………………いっそブレイブクリアあきらめようかと思ったくらいで…………」
「う……うん。ライ、泣かないでくれよ」
 泣いてねえよ、と言いつつライが目元をぬぐった。
07.8.13





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