ある少女の詩(子供心の詩)
路地のむこうから、大きなお父さんの声がする
今夜も お酒を飲んで 帰ってきた
そんなとき きまったように 母さんは言う
「きょうは 服を着て寝るのよ 母さんが おこしたらすぐ目をさますのよ」
服を着て いつでも逃げられるように ふとんにもぐりこむ
ねむちゃだめ ねむちゃだめ いくら自分にいいきかせても
いつか ゆめをみている どれほどねたのかな ちゃわんのわれる音
父さんのだみ声に目がさめた 母さんの小さな小さな声も聞こえる
母さんがなぐられている 母さん なぜ泣いてあやまるの
悪いのは父さんよ お酒を飲む父さんなのよ どうやって家を出たのか
どうやって父さんから逃げることができたのか
いま 母さんと私は 暗い 寒い 夜道を歩いている
母さんは一言も話さない 母さんの顔は涙でぐしゃぐしゃ 私の顔だって――
夜の汽車道はこわい 暗い運河はもっとこわい 黒い手がでて
母さんと私をひきずりこむような そんな気がする
でも 母さんと私は 朝まで歩いた
朝になって そっと家に帰ると 父さんは大いびきで寝ていた
この父さんのかわりに 母さんは働いているのに――
父さんは きっと最後までわからないだろう。
