怒り大爆発的エッセイ 日本人だもの。疲れたときや何かの節目には温泉旅館に行って、「はぁ〜こりゃいいわ」などとお決まりの独り言を心の中でつぶやく。風呂上りの濡れた髪、浴衣で飲むビールときたらファールすれすれのラフプレーだが、こういうプレーにこそみんな惹きつけられる。そして温泉に行きたがるのだ。そんな想いの向くままに目指しましたのは福島県、磐梯熱海温泉郷。緑豊かな山間の里に川のせせらぎ。うん、日ごろの疲れを癒すにはモッテコイではないか。 この時宿泊した宿は某旅行雑誌の見開き1面を飾り、なかなか趣のある小奇麗な旅館であった。ホームページも開設しており、読んでみるとお客様の評判も上々。なんでも隠れ家的雰囲気をかもし出していて、団体客やカラオケすらないという。これはこれは。確かに外角高め、手が届くぎりぎりのストライクゾーンにゆるいタマ的料金設定ではあるが、これならオレにも打てると思った。 で、部屋なのだが予想どおりの湿度を感じることとなる。写真と全然違うではないか!どれどれ、トイレは…。これも期待を裏切らないすばらしい構造である。和式に重厚なパーツを乗せ、なんだか無理やり西洋化しているのだ。と言うより巨大な和式で踏み台つき。そのせいで立つスペースが足ひとつでぴったり。背中が壁についてる。こんな不安定なおしっこしたことないから。はたして糞が出るか心配だ。プーしかでないかも。でも待てよ。ホームページで「改装が間に合っておらずご迷惑を…」なんてくだりを見かけたような。しっかり先手打ってあったか。軽くブルーになったところで、気が利く妻はお茶を入れてくれるという。あれ、仲居さんは?持ってくれた荷物を入り口あたりにドスン!とおいたら何かをしゃべってスタコラと行ってしまった。ただ、「お客様の時間を大切にしてほしいのでもうここには来ません」みたいなことを言ったのは覚えている。普通もう来ないだろ。なにをとってつけたように。よって当然お茶のひとつも入れてはくれなかったのだ。さて茶器はどれかな。妻があたりを物色中、たまたまグラスを手に取った。そうか、せめてビールが美味けりゃそれでいいか。 そんなことを思った矢先である。うぇ!という妻の雄叫び。なんとグラスに小さな白い虫の大群が住んでいたのだ。確かうたい文句に「女性のお客様に最適」みたいなことが盛り込んであった。 よし!苦情の手紙書こう。 その辺にあった宿のお知らせ紙B5版。裏にびっしりの苦情とメールアドレス。これでもくらえコノヤロー。 そして朝。さっさとチェックアウト。来たときは外まで飛び出してきたくせに帰りはまるで興味なし。なっとらん。 あれから半年以上が過ぎた。結局メールなど来ないし、ようやくイマワシイ記憶も消えつつある。妻があの日何かの虫に刺された跡とともに。 |
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