2020-04-15 更新


 
 
  住宅の温熱・省エネ・パッシブデザインについて学び、伝える野池政宏のホームページ



HOME > Personal opinion for simulation tool

2020.02

温熱・省エネ・パッシブデザインの
計算・シミュレーションツールについての私見


外皮計算は絶対にやるべき!

 いま外皮計算をしている人や会社のほとんどは「外皮計算はいろいろな申請のために仕方なくやっている」という姿勢のように感じます。こういう姿を見ていると本当にもったいないと思います。
 外皮計算で算出されるUA、ηAC、ηAH は「建物全体で熱がどれだけ逃げたり、入ったりするか?」という数値であり、冬の暖かさや夏の涼しさ、暖房費や冷房費を左右するもっとも基本的な数値です(UA だけではなく、この3 つの数値をきちんと把握することが重要です)。なので、家づくりのプロとして、これらの数値を把握せずにお客さんに住宅を提供するというのは無責任と言っても良いと思います。
 そういう意味で、温熱・省エネ・パッシブデザインに関連する計算ツールで、絶対に持っておくべきもの、最初に使いこなすべきものは外皮計算ツールだと断言します。


設計のために使える外皮計算ツールを使おう!

 外皮計算は「設計のためにやる」というのが正しい認識です。仕様やプラン(とくに窓の配置など)を変えればUA、ηAC、ηAH が変わります。UA、ηAC、ηAH の意味を正確に知れば、「どんな設計にすれば、お客さんが喜ぶか?」ということがわかってきます。
 ただ、申請用につくられた外皮計算ツールは選択できる部材が限られているので、実際の設計内容を反映したUA、ηAC、ηAH が出せないという問題があります。たとえばレースカーテンは窓から入る日射量に影響があり、レースカーテンを引く場合と引かない場合でηAC やηAH は変わるのですが、申請用につくられた外皮計算ツールではレースカーテンが選択できないのです。またハニカムスクリーンという窓の内側につける部材は窓の断熱性能を向上させる効果があり、これをつけるとUA が良くなるのですが、やはり申請用につくられた外皮計算ツールはハニカムスクリーンを選択できません。
 つまり、実際の設計内容を反映させた「本当のUA、ηAC、ηAH」が出せるような外皮計算ツールを使うべきということです。いま私が知る限り、そうした外皮計算ツールはEnergyZoo の中にある外皮計算プログラム(Thermal-C)しかありません。これは私がつくったツールなのですが、「外皮計算は設計のためにやる」という意識で外皮計算ツールをつくろうと考える人間が私以外にいないということなのでしょう。

室温がわかるシミュレーションで、見える景色が変わる

 建築実務者の多くは「どんな仕様や設計にすれば、冬にどれだけ暖かい家になるのだろう?」というようなことが知りたいはずです。UA を見ていてもそのことが明確にわかるわけではありません。もしUA と室温との関係がわかれば、「だったら当社はUA をこれくらいにしよう」という判断ができるはずです。

 さらには、お客さんに「当社のUA は0.6 以下です」と言っても、お客さんはその意味がわかりません。お客さんが欲しいのは「UA が0.6 の家」ではなく、暖かい家、つまり「一定以上の室温が確保できる家」です。「当社のUA は0.6 以下です」と言うよりも「当社の家は冬に15℃以下にはなりません」と言うほうが圧倒的にわかりやすく、お客さんの信頼感も高まります。つまり、仕様や設計内容によって室温がシミュレーションできるツールを使いこなせるようになれば、見える景色がそれまでとまったく変わるということです。

 そういう意味で、いま実質的に実務者が使えるツールの中で室温がシミュレーションできるものはEnergyZoo の室温シミュレーターかホームズ君でしょう。この2 つでは、まずEnergyZoo の室温シミュレーターで基本的なところを学び、さらに詳しく知りたくなればホームズ君を使うという流れが妥当です(このあたりのことは後でも触れています)。

光熱費を出すシミュレーションをするには?

 実務者もお客さんも、室温と並んで関心があるのは光熱費でしょう。ただし、光熱費は建物だけではなく設備の選択も加味しないと算出できないので、簡単ではありません。
 光熱費をシミュレーションするツールもいくつかありますが、代表的なものとしては建築研究所のエネルギー消費性能計算プログラムの結果を使うツールであり、EnergyZoo の光熱費計算プログラムやLIXIL がつくっている水道光熱費シミュレーションがあります。
 こうしたツールでは、エネルギー消費性能計算プログラムで出てくる一次エネルギー消費量(J 単位)を光熱費(円単位)に換算します。
 ホームズ君はエアコンに限ったものになりますが、エアコンの実働COP や部屋ごとの暖冷房費が出るなど、かなり詳しい結果が出るようになっています。

「Energy ZOO」→「ホームズ君」という流れが妥当

 室温のシミュレーションのところでも述べましたが、これからシミュレーションツールを使っていこうとするなら、「Energy ZOO」→「ホームズ君」という順番で使っていくのが妥当だと思います。
 まずEnergy ZOO は以下のような、温熱環境・省エネルギー・パッシブデザインを理解する上で重要と思われる計算ツールが入っている統合シミュレーションツールです。

・外皮性能計算プログラム(Thermal-C)
・室温シミュレーター
・光熱費計算プログラム
・暖冷房能力設定プログラム
・結露判定プログラム
・熱容量計算プログラム

 Energy ZOO の特⾧は、以上のプログラムが連携しながら(ひとつのプログラムで入力した内容が保存され、別のプログラムでも使えるなど)、基本的には独立しているというところです。つまり「結果を出したいプログラムだけを選んで入力することで、結果が得られる」というわけです。また、お客さんへのプレゼンを強く意識した出力表現やデザインになっているところも大きな特⾧です。
 実際、Energy ZOO のユーザーを見ていると、温熱環境・省エネルギー・パッシブデザインに対する基本理解やお客さんへのプレゼン力が大きく向上しています。
 一方、ホームズ君は「詳細な情報を入力し、詳細な結果が得られる」というところが特⾧です。私もホームズ君のユーザーで仕事に活用しているのですが、温熱環境・省エネルギー・パッシブデザインに対する理解が深ければ、非常に有用なツールだと思います。しかし、理解が不十分であれば設計用としてもプレゼン用としても使いこなすのは難しいと感じます。
 なので、まずはEnergy ZOOで基本理解を深め、さらに詳しい内容を求めたくなった段階でホームズ君を使うという流れが適切だと思うわけです。

最後に

温熱環境・省エネルギー・パッシブデザインについて理解を深め、自信を持ったわかりや
すい提案ができるようになるには、何らかの計算ツール、シミュレーションツールを使いこ
なすことが必須だと思います。
この私見を読んで「もう少し詳しいことが聞きたい」というふうに感じたら、遠慮なくメ
ールを送ってください。客観的なスタンスでお答えします。