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心 その9・70年生きてきました ESPECIAL !

の戸籍上の生年月日は1948年4月1日で、この4月で満70歳になりました。現代の常識ではおかしな話ですが、実際の誕生日は別にあります。終戦直後の団塊世代の人には、このような人がたまにいます。生誕から入院0、手術0の記録もまだ継続中で、両親から授けられた遺伝子にはこの上なく感謝しています。加えて、70年間、大きな災難、惨事などの悲運に遭わなかった境遇にも感謝しています。
 若い頃には人並み以上の体力、気力があり、疲れるまでエネルギッシュに行動していても、一晩眠れば次の日には元通りの活力が、自然に蘇ってくれていました。一方で、社会人になるまで道徳心などの人格形成は不完全で、欲望だけを満たすためだけの好き勝手な生活をしていたように記憶しています。したいことだけをしていて、勉強はしない、親(特に母親)には心配をかける、どうしようもない悪ガキでした。当時のまま大人になっていたら、今の人生とは全く異なった人生になっていただろうと思います。
 14歳の時、後年感謝することになる大きな転機がありました。父親から母屋の裏にあった10坪程の貸家の一軒を与えられ、独りで寝起きするように強いられました。このことがその後の人生に大きな好影響を与えてくれたと考えています。「火を使うこと」だけは強く禁じられましたので、食事と風呂だけは母屋に行きました。洗濯物に関しては、母親から父親へ「男に洗濯などさせてはいけません」みたいな進言があったのかもしれません。現代では、男性が女性の下着を干したり畳んだりする時代のようですが、そのようなことから、入浴時に着ていた衣服を脱衣籠に入れ、入浴後に洗濯済の衣服を抱えて持って帰るという、変則的な独り住まいが始まったのです。
 この約10年間の独り生活は、その後の自分に大きな内面の変化を与えてくれました。母屋で食事をする時以外は物理的に独りであり、テレビも電話もなく、外部との繋がりはラジオを聴くことだけでした。独りでいる時間の使い方、部屋の掃除と整理整頓、そして心の面においては、思考習慣を身に付けることができました。特に客観的思考が身に付いたことは、好き勝手に生活してきた人間にとっては大きな収穫でした。物理的孤独(すなわち孤立)は精神的孤独とは全く関係なく、むしろ独りでいる時間の使い方によって、「心」に大きな進歩を与えてくれることを知りました。
 もし私が「心」の面において、多少なりとも成長しているとするなら、高校2年生の頃からだと思います。大学受験を意識するようになってから、「生きるということ」、すなわち「自立すること」を考え始めました。また、大学生になってから自宅で、小・中学生を教え始めたことが、後にMPSを始める土台にもなっています。大学時代に知り合ったMPSのリジェンドS.H.君が当時小学生で、彼を個人指導していましたので、この辺りのことは私より詳しく覚えてくれているかもしれません。
 大学受験は文転でした。中学時代は数学が得意だったのですが、諸事情で高1の後半には、チンプンカンプンになり、文転せざるを得なくなりました。詳細に話すと長くなりますので省略しますが、最悪なことに、当時の私は国語が大の苦手でした。本は読まない、漫画すら嫌いで、特に現代国語ができませんでした。論説、随筆、小説の各分野の本を丸々1冊読む気力はなく、現国の問題集だけを何冊も徹底的に解き、解説と解答を読みながらという勉強というより作業を繰り返しました(笑)。このお陰で、興味を持った作家の小説、随筆などは、学生運動で大学側のロックアウトのお陰で(?)大学生になって読むことができました。
 人の一生を5000日ごと(約13年半ごと)に大別する持論を、このHPを開設した頃に掲載したことがあります。
   0歳〜13歳 生年 基礎の時代   14歳〜27歳 成年 選択の時代
  28歳〜40歳 盛年 充実の時代   41歳〜54歳 静年 苦悩の時代
  55歳〜68歳 省年 余生の時代   69歳〜   逝年 天佑の時代
 手前味噌ですが、この区分はそれぞれの時代の特徴を掴んでいると思っています。私の場合、選択の時代(14歳〜27歳)に、高校、大学に入学し、卒業後に就職、そして結婚と同時に学習塾経営に転職しました。充実の時代(28歳〜40歳)はMPSの成長に心血を注ぎ、生活の安定と、家族の幸福を念頭に、土日、祭日も休むことなく働きました。それでも、年間で少ない年には20日足らずしかなかった休暇を活用し、旅などの趣味も海外まで足を伸ばし、メリハリのある生活を送りました。私にとって文字通り公私において「充実している」時代でした。
 苦悩の時代(41歳〜54歳)、余生の時代(55歳〜68歳)は、多くの人にとって、子育て、家計支出の増大、仕事面での苦悩、更年期障害、突然の大病、身内との不和、介護、相続、親との死別、…などなど、30代までは脳裏に浮かぶことすらなかった諸問題、諸事情が、心と体を煩わしたり、苦しめたりすることが突として多くなります。私は40代後半に両親を立て続けに亡くした時が、一番哀しい出来事でした。それ以外に、大きな出来事がなかった訳でもないですが、苦悩と言えるようなことは、思い出さないのですから、なかったと思っています。
 最近は日本人の寿命が延び、平均寿命が女性87歳、男性81歳になり、しかも人口減少の煽りから、政府が「一億総活躍社会」とか、「働き方改革」という訳のわからない政策を掲げ、労働年齢は65歳〜70歳くらいまでに延びつつあります。そこで、余生の時代を1000日(約3年)期間を先伸ばし、55歳〜71歳にし、天佑の時代は72歳〜亡くなるまでと変更した方がよさそうです。
 陰陽五行説の「青竜、朱雀、白虎、玄武」という色に基づいた季節の表現を、人生に準(なぞら)えた「青春」「朱夏」「白秋」「玄冬」という言葉がありますが、60歳の還暦を迎えた時、「玄冬」が頭を過ぎり、いよいよ私の人生も終わりが始まったのかなと思ったこともありましたが、深刻に考えることはありませんでした。
 還暦から10年経ち70歳になった今、この10年の「心・知・体」の退化は加速度的に進み、「いつまで自力で生活していけるのか」ということを、60歳の時よりも何倍も考えるようになりました。まだ、同年代の人よりは健康で、活動的であると自負してはいるのですが、その先の「死」という意識も強くなっています。命が閉じることは、ブラックホールに吸い込まれて、真っ暗な意識のない世界に引き込まれることで、すなわち無になることだと認識していますが、死ぬ直前がどのような意識であるのか、そればかりは皆目分かりません。
 死は無念なことですが、生まれてこなかったら、このような世界があることすら知り得なかった訳で、100年足らずと雖も、この宇宙という存在を知ることができただけでも幸せと考えています。この歳まで生きてきて、人生は明るく楽しく生きることが基本であると、つくづく感じています。そして「充実の時代」までは、心と体を成長させることが重要です。
 「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」という、リンカーンの言葉がありますが、人間40歳を過ぎれば、その人の品性や知性、考え方が顔に表れるということです。どのような人生を歩んできたのか、数え切れないいろいろな状況の中で、何を考え、どう行動してきたのか、それらの経験によって育まれてきたものが、「顔」に滲み出てきます。いわゆる「人相」「品格」です。
 人としていい時代に生まれてきました。運にも恵まれて生きてきました。私にとっては1世紀前でもなく、1世紀後でもなく、20世紀の中期から21世紀の前期に生を受けたことに満足しています。私が誕生する3年前は、日本国は世界の国々を相手に愚かな戦争をしていました。敗戦前後にはM7〜M8クラスの大地震が毎年のように、数年に亘り日本各地を襲っていました。まさに「泣きっ面に蜂」の日本国でした。
 この文章を書いている現在まで、この世に生を受け、しかもヒトと生まれてきて、良いことばかりあったわけではなく、もちろん嫌なこともありました。しかし、自分の人生は他人の人生とあれこれ比べるものではなく、個人的な人生観、価値観によって決定されるもので、両親、家族をはじめ、塾生、友人、メンターに恵まれたこと、趣味、娯楽などのしたいこともそれなりにできたことを省察すると、私の人生は幸せだったと思っています。
 あと何年の余生かわかりませんが、人生をまだ楽しみたい気持ちでいます。そのために「心・知・体」は、次の3点を心掛けています。心は億劫にならない。知(脳)は認知症にならない(加齢による物忘れは仕方ありません)。体は病気(骨折などの怪我を含む)をしない。それらのことを遠ざけないと、老後の日々を愉しむどころか、日常の生活すら自分の力だけでは暮らせなくなってしまいます。特に、億劫、面倒は、老後の敵です。そうならないためには、その対極にある「気力」「行動力」を、40歳までに身に付けておくことです。老後にその力を付けることは、経験上とても難しいと思っています。なぜなら、それらは性格の範疇に入るようなもので、中年以降に変えることはなかなかできないからです。
 足早に、私の人生を振り返えりながら、頭に浮かんだことを、取り留めもなく書いてきましたが、一生のいかなる時代でも「心」があなたの人生を支配しているのです。青春時代と同様、否、それ以上の楽しみ、喜びを「余生の時代」にも送ることができるように、これからの日々を大切に暮らしてください。

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