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心 その5・人生は心が決定する(上) ESPECIAL !

回の「心」その4では、子どもは両親の半分ずつの遺伝子を継いで誕生し、生誕から2歳〜3歳くらいまでは家庭での環境と指導がとても重要となり、4歳〜5歳くらいからは家庭よりはむしろ身近な集団生活の中でより多くの社会的経験を積み重ね、小学校の入学時までに運動神経系の80%は形成されてしまうというスキャモン発達発育曲線のことを書きました。そして、文末に(1)6歳を過ぎてからは運動神経系の変化を期待することは殆んどできないということ、そしてもう一つ、(2)この文章を読んでくれている卒業生はおそらく40歳以上の人たちで、「今頃読んでも、何の役にも立たない(もう子どもたちは、とうにその年齢を過ぎているから)」という意見が多くあるのではないかという趣旨のことを付け加えました。今回は(1)をもう少し掘り下げて、その続きから書き始めます。
 スキャモン発達発育曲線の説明は、運動神経系の発達はゴールデンエイジ(9歳〜12歳)において特にめざましく、一度その経路が出来上がってしまうと、なかなか消えないということだけしか書いてなく、他の神経系に関しては何ら言及していません。特に、幼児の「心」と「知」の発達においては何も触れていません。本来、幼児から小学生までは、心の正常な発育、知に関する関心や意欲を身に付けせることのが必要かつ大切なのではないのかと考えていますが、子ども減少の昨今、スポーツをはじめとする習い事、幼児教室、学習塾などが特に生徒集めの手段として意図的にキャモン発達発育曲線を引き合いに出し、「幼児期に○○をさせておくとよい」もどきの、誇張表現、誇大宣伝をする傾向にあることに、ある意味危惧していました。
 スキャモンの成長曲線を初めて目にした時から、個人的には疑問を感じていました。そもそも神経系は運動神経だけではありません。私が最も重要視している「心」の発達においては、性格・学習などの助言、経験・関心・興味などの環境作り、欲望・情操・集中などの気質管理などの、自律神経の健全な発育のための指導、支援が大切になりますが、その分野に関しては何も触れていません。ただ、運動神経系もその一つであるので、人格形成を含めた神経系全体の発達は幼児期こそが最重要であるということを理解してもらうため、「心」の健全な成長を考える上でも同じような曲線を描くのではないかと考えていましたので、参考にスキャモン発達発育曲線を紹介したまでのことです。勿論、人格形成は運動技能の向上に比較したら、その何倍も大変であることは十分承知しています。
 スキャモンの成長曲線は、発表後80年以上経っている運動に関しての論文とはいえ、スポーツの種類によって、成長個人差、男女差などをどう捉えているのかの明記もなく、筋トレや運動のしすぎは骨格の成長を妨げていないのかなどの検証もされてなく、アバウトすぎる感は否めません。神経系の発達時期に専門的な種目だけを対象にした巧緻性の向上を目指して良いものか。あるいは、曲線の根拠となったデータのばらつきはどの程度であったのかなど、この曲線をさらく深く検証しようとする新たな研究を見かけることもなく、裏付けるデータも乏しく、しかも緻密さを欠き、学術的論文にしては、それ程評価されていないのではないかと思っています。

 神経系の分類表

 神経には上の図のように、さまざまな神経回路(分類)があり、中枢神経系と抹消神経系に分かれます。抹消神経はさらに、体性神経と自律神経とに分かれます。「心」に主眼を置いて考えるには、特に自律神経の形成について考えなければいけません。半世紀以上に亘りMPSの教育理念として「鍛えられた個性」・「心・知・体のバランスのとれた人間」というキャッチフレーズを掲げ田舎塾を続けてきましたが、この考えは「間違ってはいなかった」と、古希を過ぎたこの歳になってしみじみ感じています。
 生命は両親の半分ずつの遺伝子を継承し、神経系の中枢である「脳」と「脊髄」は誕生するまでの母親の胎内10ヶ月間で形成され、この中枢神経は誕生時には両親の遺伝子を土台にした完全な脳細胞として頭脳を網羅しています。しかし、その脳細胞は生誕後の成長過程の性格、環境、興味などによって、使われない神経は消滅してしまうという話を聞きました。この話はとても興味を持ちました。神経系全体の成長過程はスキャモンの運動神経と似たような成長曲線になりますが、「心・知・体のバランスのとれた人間」への成長のゴールデンエイジが仮にあったとしても、それ以降も生きている限り客観的、かつ複合的な考察を続けなければいけません。
 この「心」というシリーズを書くにあたり、その分野の専門家でもない人間が、書物を読んだり、ネットサーフしたり、その分野に詳しい卒業生に尋ねたりして書き進めていったら、このような拙文随筆になってしまいました。悪文、難解についてはお許しください。また、(2)の「もう子どもたちは、とうにその年齢を過ぎているから、今頃読んでも何の役にも立たない」ということに関しては次回にさせていただきます。

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