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都立中高一貫校人気

年春、都立初の中高一貫校として卒業生を出した白鴎高等学校附属中学が初年度に東大合格者5人を輩出し、教育業界はいわゆる“白鴎ショック”に沸いた。白鴎は今年も3人が東大に合格したが、白鴎に続いて今年初めて卒業生を出した小石川中等教育から4人、同じく桜修館中等教育と両国高等学校附属中学からそれぞれ3人の東大合格者が出た(東大合格者数はすべて「大学通信」調べ)。
 これで都立の中高一貫校の人気に拍車がかかるのは確実で、そもそも中高一貫には、中学校と高等学校の課程を統合した一体型の「中等教育」と、同じ設置者が中学校・高校を併設して接続する併設型の「附属中」、そして設置者が異なる中学校・高校が連携する「連携中」に分けられる。
 現在、都内には公立の中高一貫校が11校(都立10校、区立1校)ある。そのすべてが中等教育と附属中である。今年の志願者倍率は最低の中学でも5.3倍、最高は8.0倍という高倍率である。私学の雄である早慶の付属中学の一般一次(男子)の志願倍率が3.3〜6.3倍であることを考えれば、圧倒的な人気を誇っている。
 それは当然のことで、都立の中高一貫は、授業料は公立で、カリキュラムは私立。教育のいいとこ取りを実現したものであるからだ。公立ながら、学区の縛りはなく、脱偏差値教育の理念から、入学試験は学力テストではなく、「適正試験」と呼ばれる独特の試験を行うため、学習塾に通って入試対策の必要性も薄いというのも追い風であるようだ。このように、リーマンショック以降の不況で学費の高い私立中学の志願者数が減っているのに対し、格安な都立の中高一貫教育が人気を集めるようになった。ちなみに神奈川県には、相模原市と平塚市に各1校ある。
 一方で、人気の都立中高一貫に合格しながら、入学を辞退する志願者も少なくない。2010年に98人、11年に88人、12年に92人と、都立10校で約1400人いる合格者の7%前後が、入学手続きを行っていない。この入学辞退者の傾向は増え続けている。これは「国立中学や難関私立中との併願者が多数いて、彼らが合格辞退しているためらしい。今や、都立の中高一貫校は、四谷大塚の偏差値60〜65クラスの難関校志願者の併願校になっている。公立がこれだけの合格実績を上げた今、併願層のレベルはさらに上がる」という声もある。
 東大合格者がまだ5名前後とはいえ、これが公立校で達成されたことは大きな意味を持つ。神奈川県西部(相模川西)では地区のトップ高でもあり得ない数字である。私立の中高一貫校の中には、特別進学コースや特待生制度を設けて、一部の学生だけが東大合格を目指すところも少なくないが、“平等”をモットーとする公立の中高一貫校は生徒の学力が均衡するため、東大合格者が5人いるなら、他の国公立にも多数の合格者がいるであろうし、全生徒の2〜3割は早慶クラスに合格することも考えられる。
 「適正試験」で玉石混淆になりがちな生徒層を擁する公立校が難関校合格者を輩出する状況は私学経営者には脅威に映っているらしい。年間50万円を優に超える私立の学費を考えれば、ほとんど無償に近い公立の学費は、この不況下において保護者には極めて魅力的である。
 それゆえ、今後も都立の中高一貫と私立難関校の併願は増えるだろうし、首都圏にある県も中高一貫校の増設を増やしていくことも考えられる。これからは私立難関校を辞退するという逆現象が起こる可能性もある。実際、都立の中高一貫校の中には、「早慶クラスを蹴って、うちに来る生徒もすでにいる。いずれ最難関クラスからも来ることになるだろう」と広言する校長もいるという。
 公立の中高一貫校設置が可能になった1998年の学校教育法改正時、その設立の理念は「ゆとりのある学校生活の中で生徒の個性や創造性を大いに伸ばす」というものだった。だが現実は、東京都を筆頭に、中高の6年を難関大学受験一辺倒という、私立の中高一貫と大差ないというのが状況である。理念よりも“御利益”優先を保護者は求めているということを、公教育も知ったということなのか。
 ちなみに、今年の東大合格者を見れば、都立校からは日比谷が26人、西が22人の合格者を輩出、都立高校の復権も進んでいる。また、埼玉県立浦和高校が39人、千葉県立千葉高校が30人など、首都圏の公立校も健闘している。神奈川県は相変わらず私学が強く、栄光が69人、聖光が63人。この2校は全国のTop10に入っているが、湘南19人、横浜翠嵐10人、柏陽7人と公立校も盛り返してきている。しかし残念なのは、我らが地元・神奈川県西部では、厚木の1人のほかに合格者は出していない。
 バブル崩壊以降続いている不景気からの、就職難、格差拡大、社会情勢不安の時代の中で、公立の中高一貫校人気と公立校の復権で、受験の勢力地図は大きく塗り替えられようとしている。(「週刊ダイヤモンド」の記事参考)

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