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大学入試偏差値掲載にあたり

本国では10月の小学校入試に始まり、中学入試、高校入試、そして3月中旬の国公立大学後期試験まで、約半年間にわたり入学試験が続く。一般入試とは別に、推薦入試、付属校の選抜試験、センター試験などもあり、この期間はどこかの場所で、どこかの学校で入学試験が行なわれている。
 昨年9月「神奈川県高校入試偏差値一覧」をオリジナルで作成したが、好評につき大学の入試偏差値一覧も嫌々(?)作ろうと考えた。しかし、企画段階でその多岐にわたる分類に頓挫した。グリーン放言にも書いたが、少子化の中どの大学も生き残りに大変である。あの手この手で人集めに必死である。底辺校では志願者数が定員に満たないところが年々増えている。そのような大学が志願者増加対策のひとつとして、他校と受験方式や科目を変えるという姑息な手段を用いた結果、このように複雑な入試選抜になってしまった。
 私立校では、首都圏、関西圏を中心とする有名校とマンモス校上位21校の大学の志願者数が、その他の私立大学(他の550校)の志願者数を上回るという信じられない偏りを見せている。一方国公立大学でも、後期をなくし前期の一本化やAO入試を取りやめる上位校と、逆に一般入試の競争率が2倍に満たない大学では推薦やAO入試を広げていくという二極化が進んでいる。国公立、私立の違いは仕方ないにしても、受験科目数、科目ごとの配点、センター試験の比率等々、千差万別の選抜形態が編み出され、しかもそれが年毎に変わり、進学校や予備校では専任の担当者を置かなくては対応できないほどになっている。
 受験形態がこのように違う土俵で、大学、学部ごとに相対評価をすることは難しい。現在、大学入学者の半数近くが従来の学力検査とは異なる方式で大学へ進学している。無試験の大学もある。日本には現在4年制の大学が、国公立が約170校、私立が約580校、計750校ほどあるが、受験科目や配点が同じ大学は昔からの上位校を除くとほとんどないと言ってよい。そのような現状下、大雑把に大学、学部ごとの難易度を比べるには、昔からの定番である文科系では英・国・社、理科系では英・数・理をベースに、試験科目の多いところほど難しいという捉え方が手っ取り早い方法である。各大学にとって大きな収入源である受験料確保と大麻を吸わないような質のいい学生の獲得のために、これからますます大学入試の形態は複雑怪奇(?)なものに変容していく気がする。
 良し悪しは別として、大学入試は親世代とは一変した。親は自分たちの大学受験を思い起こして今の受験をイメージしがちだが、多くの点で様変わりしている。受験形態だけでなく、たとえば、公立と私立の授業料比も大きく変化している。文科系の場合、私立大学の初年度納入金は平均115万円、授業料平均72万円、一方国立大学の場合は文科系から医学系まで省令の定める標準額で、初年度納入金82万円、授業料54万円である。親の時代には私立は国立の3倍も5倍も学費がかかると言われていたが、国立大学が独立法人化されてから文科系に限ってであるが、このように1.3〜1.4倍とその差が縮小している。それゆえ、文科系の場合、大都会近郊の高校生は地方の国立大学に行って下宿するほうのが出費が多くなってしまい、駅弁大学といわれた県庁所在地にある地方の国立大学の文科系は年々人気薄になっている。
 いずれにせよ、入試事情は変わっても皮肉なことに学校ごとの難易度は昔とそれほど変わっていない。20年前、30年前の難関校は今でも難関校である。役人のキャリアに東大生の占める割合が突出しなくなったり、一流企業に慶大生が少なくなったりしない限り、大学全入時代といってもやはり就職に強い大学に人気は集まり続ける。少子化によって大学進学希望者の減少が続いても、大学入試競争が完全になくなることはない。一様に競争力が低下することもなく、底辺校の淘汰だけが加速していくように思う。
 遼君や松坂選手のようにずば抜けた才能があるとか、どうしてもこの仕事をしたいという強い信念があるというのでなければ、とりあえず大学に行っておくべきだという考えは、昔から塾生に言ってきたことだが、今でもその考えは変わっていない。人はまず人様に迷惑を掛けず自活することが独り立ちの必須条件である。何かをして衣食住を確保することが第一義である。そこに、楽をしたい、楽しみたいという欲が絡み、多くの人間は安定、高給の職業に就こうとする。現代人のその欲望は本能に近いものになっている。
 大学時代を社会人になるためのmoratorium と位置づけ、その4年間で何かを掴んで欲しいと思い進学させる親は多い。そしてできれば上位校に進学してくれたなら、多少なりとも就職にも有利になるだろうと考える。人生には運はつきものだし、社会人になると学生時代とは違う能力も要求され、必ずしもレベルの高い大学を卒業したからといって、幸せな人生を送れるということにはならない。しかし、今のご時世では私のように取り柄のない人間は、とりあえず勉強をしておくことは正解のような気がする。
 予備校ごとに作成されている数ある難易度表の中で、週刊朝日「Mook」に掲載されていた進研模試による2009年度入試難易度ランキングが一番簡潔であったので、それをPDFで転載することにしたが、それでも10ページに及ぶ。(注:この表は受験科目数に関係なく一括して偏差値順に並んでいる。それ故、同じ偏差値60でも科目数の多いほうが、当然受験勉強が大変になり入学するのが難しくなる。最近はかなり1科目、2科目型の大学が多くなっているので、気になる大学は個々に詳しく調べる必要がある。)

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