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「子供たちへの手紙」シリーズ 〜 その2
 
人生を楽しむために

回の手紙では、「人生は楽しむためにある」ということについて書きました。今日はこのことについて、もう少し具体的に書いてみたいと思います。また長い文になると思いますが、国語の「長文読解」の練習と思って読んでみて下さい。今回も塾の中1の生徒に前もって読ませ、難しい言葉や表現には(注)を加えておきました。
 まず、あなたに言っておきたいことがあります。それは世界の中から見たら、日本に生まれたことは、かなり多くの人にとって幸せなことだということです。世界を見渡すと、戦争や飢饉(食べるものがないこと)で苦しんでいる人が何億人もいます。野原で遊んでいたら地雷に触れ、手足がなくなってしまったり、目が見えなくなってしまった子供たちもたくさんいます。そんな彼らに比べたら、あなたは比較的豊かで安全な国に生まれ、明日の食べるご飯に困っているわけではなく、最低限の生きる条件は満たされています。だから、何よりもまず「自分は幸せなんだ」と思わなくてはいけないということです。
 「人生を楽しむ」第一の条件は「健康」であるということです。「健康」を「体力」と置き変えてもいいでしよう。みなさんの中には、「いや、違う!やっぱりお金だよ。」「アイツの家お金持ちで、好きな物何でも買ってもらえて、幸せそうだよ。」と、言う人もいるかもしれません。確かに生きていくためには、お金は必要です。遊ぶにもお金が必要です。おじさんにもわかっています。しかし、人より多少のお金持ちという程度では、それほど人生を楽しむアドバンテージ(有利な点)にはなりません。むしろ人によっては、後になって苦労することもあります。このことは後で詳しく述べることにします。
 あなたの生きている現代は、技術の進歩のお陰で、メンドイことやタリーことはしなくてよい社会になっています。大人たちもだんだん楽をするようになってきています。だから体を動かしません。(おじさんはちゃんと動かしています。)便利な社会になったら、親や大人は子供たちに、嫌なこと、面倒なこと、耐えることを上手に教えなくてはいけないのですが、親自身が楽な生き方をしてしまっています。その上、今の親たちは過保護で辛いことを教えようとしません。昔は生きていく毎日の生活の中に、ある程度の肉体労働がありました。体を動かさなければ、生きていけなかったのです。現代は家事も楽になり、移動も楽になりました。ボタンひとつ押せば、何でもできる時代です。その上、暖衣飽食(不足のない)生活です。こんなことの毎日なら、誰だって病気になります。体だけでなく心も病気になってしまいます。
 今、大人たちはいろいろな「生活習慣病」にかかっています。最近、特に「メタボリックシンドローム」という病気がTVや新聞によく出てきます。その根本原因は「肥満」と言われています。大人たちも便利な世の中になったことにあぐらをかいて(すべきことを怠って)、体と心を動かさなくなってしまったのです。普段からバランスのとれた食事をし、こまめに体を動かしていれば、何でもないことです。気の向くままに生活し、病気になってやっとそのことに気付き、「ウォーキングだ」、「食事療法だ」とあわてます。普段から体を使った生活をしていれば、こんなことをする必要はないのです。このような人の多くは、体だけでなく心も衰弱してしまったことが原因であることに気付いていません。
 第ニの条件は「努力と忍耐」です。耐えることを知り、努力することを惜しまないことが大切です。「そんなことしていたら、人生なんて楽しくないよ。」と、あなたは言うかもしれませんが、まあ、おじさんの話を聞いてください。ゆっくりと説明します。半年前、卒業生たちとお酒を飲んだ時、学生時代あまり勉強しなかった卒業生のひとりが、「『人の2倍努力して、人の3倍楽しめ。』と、先生から授業中に言われた。」と言うのです。彼はこの言葉を座右の銘(生きていく上での大切な言葉)にして仕事に励み、人生を楽しんでいるとのことでした。おじさんはすっかり忘れていましたが、「俺もいいこと言っているな。」と、自分の昔の言葉に感心してしまいました。
 「世界がもし百人の村だったら」の話を知っていますか。あなたの周りに100人の人がいるとします。100人のうち、1人か2人はすごくお金持ちの子供で生まれたり、何かの才能に恵まれたりして一生を送ることができるかもしれません。逆に、生まれながらに難病を持って生まれたり、どうしようもない親に育てられたり、かわいそうな境遇で生きていかなけばいけない人も100人のうち、1人か2人いると思います。しかし、残りの95人以上の人は、一生の間に体験する「苦しいこと」と「楽しいこと」の量はそれほど変わらないと考えています。だから「苦しいことや嫌なことは若いうちにやってしまおう。」と、20年も30年も前、お母さん、お父さんが塾の生徒だった頃から、おじさんは授業中に話してきました。今もこの考えは変わっていません。
 便利な社会になって何も考えないで、欲望のままに生きていると、体はなまり(活発でなくなり)、心もなまってきます。そのなれの果ての一つが、フリーターやニートです。彼らは子供の頃に生きていくということがどういうことか教えてもらえなかったのか、あるいはあまりにも欲望のままに生きてきてしまったことの結果であると考えています。学生とは、いつか自活(自分のかせいだお金で生活していくこと)ができるように準備する期間で、それまでは親が養ってくれます。その間にあなたは、学校の勉強だけでなく、自分にとって楽しく生きることはどういうことなのかも考えなくてはいけません。楽しく生きるということは、人によって当然違ってきます。自分の価値観(生き方)、能力(学力、体力など)や性格によって決定されます。
 「人生は楽しむためにある。」ということは、好きなことだけをして生きていけばよいという意味ではありません。むしろその逆です。人生を楽しむためには、まず自分に課せられた仕事や勉強をしっかりやることです。スポーツを楽しむためには、まず基礎的な体力や技術の習得が必要になります。スポーツや芸術と同様に、人生も深く、幅広く楽しむようになるためには、日常生活の中で必要な基礎的ないろいろなことをちゃんとできなくてはいけません。使ったものは元の場所に戻す。汚れたものはきれいにする。約束は守る。自分を守る嘘をつかない。そんな当たり前のことができなくてはいけません。体と心をいつもこまめに(必要に応じてちゃんと)動かすことです。人生には面倒なことがたくさんあります。しかし、それが決して大人になって無駄にはならないということを知って欲しいのです。子供の頃に身に付けた強い体と心が、大人になってからの本当の喜びや楽しみを味わうことができると、おじさんは信じています。
 学校の勉強を好きな人はあまりいません。おじさんも学生時代、勉強が嫌いでした。勉強嫌いの子が普通です。しかし、好きでない人こそ勉強して欲しいのです。「また面白いことを言い出すおじさんだな。」と思うかもしれません。おじさんのようにこれといった特別の才能もなく、勉強が嫌いであるなら、よけいに勉強することがあなたの我慢と努力を養う道具にもなります。そして将来、やっておいてよかったと思うひとつになるはずです。好きで勉強ばかりしてきたヤツが、将来人間的に優秀になるとは限りません。勉強ができても、人間的にひどい生徒もたくさん見てきました。そのような生徒は勉強ができなくなったり、嫌いになった瞬間、勉強しなくなることがあります。体と心に強さがないからです。そんなヤツらは社会に出て、壁にぶち当たった時も耐えられません。中途半端な金持ちの家に生まれた子供にも同じことが言えます。金を持っているのは親であって、その子供には関係ないことです。親の気ままで育てられた子供は、大人になってそれだけ苦労することがよくあるからです。
 このように、物事には表と裏があります。落とし穴もあります。他人を羨望(うらやましく思うこと)の目で見ることをしないで、自分に与えられた環境と能力の中で、嫌なことでも必要なことなら努力することをなるべく早く身に付けてください。それは大変なことです。おじさんも我がままなガキだったので、よくわかっています。自分のできることから少しずつ、周りの友人よりほんの少し我慢してみてください。ほんの少し努力してみてください。面倒がらずに体と心を動かしてください。その「ほんの少し」が大人になった時、人より健康な体になって、大きな喜びや楽しみを素直に感じ取れる人間にさせてくれるはずです。「友だちは携帯電話を持っている。」「○○君はこんなものを親から買ってもらった。」「○○さんはこんな可愛い服を着ている。」このような欲望を親にぶつけて、それが叶わないからといって、親のせいにしてはいけません。世の中を恨んでもいけません。そんな思いで生きていても、そこからは何も生まれません。あなたの成長のエネルギーにはなりません。
 今、大いに遊んでもいいのです。毎日を模範生のようにしていることはありません。考えない、動かない、だらしない生活がよくないと言いたいのです。できるなら、勉強だけでなく、あなたにできる家事があるなら、手伝いなさい。自分でできることは自分でするようにしなさい。親に言われるからではなくて、あなたの心で考えて、行動してほしいのです。おじさんがまだ30歳、40歳の頃は、学習塾であるのに、自分なりに頑張ってくれている生徒にはよく遊ばせることもしました。遊ぶ時も本気で遊べと教えました。ちゃんと自分の中にケジメ(行動の区分)ができていればいいのです。おじさんが何より言いたいことは、「今、楽しんでばかりいると、後で苦しむことになる。」ということです。
 毎日元気に子供らしく生活してください。「めりはり」をつけた生活をしてください。時々、体と心がなまっていないかチェックすることも忘れないでください。きっと楽しい人生が待っています。人生には運があることをおじさんもよくわかっています。出会いも人生に大きな影響を与えます。しかし、人生の多くの喜怒哀楽は「自業自得」「自縄自縛」(この意味は辞書で調べてください)であると、おじさんは考えて生きてきました。おじさんのような怠け者は、このように考えないと努力しなくなってしまうからです。
 この手紙を読んでの感想、あるいはおじさんに尋ねたいことがあったら、メールしてください。いたずらメールでなければ、匿名(名前をかくすこと)でもかまいません。下段の『三宅先生宛』のアドレスをクリックすれば、メッセージの作成マットが表れます。おじさんの文、また読んでみようかなと思ったあなた、See you soon.

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