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賃貸借ハタケ物語

在、アパ−ト住まいながら部屋が1階、庭もあるのでハタケにしている。入居時に奥さんが開墾した。庭といっても、本当は舗装されていないだけの駐車場なので端っこを使っている。猫の額ほどの面積だけれど、ハタケに生ゴミを埋めてやると、それなりに土が肥えてくる。みんな残さず食べちゃうから、生ゴミは一般家庭より少ないが、週2〜3回埋める。ハタケ仕事は専ら奥さん任せだが、横着な私も、たまには埋めている。
 これまでの実績は、ミニトマト、アスパラ、ナス、その他諸々。土がくたびれるらしく、同じ場所は翌年の収穫が減る。それでも、シソ、山椒、ミョウガは植わっているし、前住者の置きみやげのニラとか、庭の隅にセリなんかも自生しているので、薬味には事欠かない。おかげさまで買ったことがない。
 前年植えて刈り取ったはずのニガウリも出てきた。いつの間にか種が飛んだらしい。なかなか美味かった。オクラはバカだからよく育つ。収穫を忘れ、旅行から帰ってきたらバナナみたいになっていたことがあった。種にしました。
 種を蒔いた覚えはないけれど、キャベツやら、サトイモやらが生えてくることもある。ムカゴが出れば、ヤマイモも埋まっている。サツマイモが随分掘れたので(ふだん駐車の邪魔もしていることだし)、アパートの皆さんにお裾分けしたこともあった。生ゴミから再生した野菜も食えるのだ。これぞ究極のリサイクル。
 ところが、いっとき、生ゴミを埋めた場所が、しばしば掘り返されていることがあった。まわりにゴミが散乱している。埋めるときは結構深く掘る。15〜20pくらいある。それを掘り返している。子供のイタズラにしては変だし、ニオイを嗅ぎつけた猫の仕業か、と話していた。
 小田原に里帰りすると、たいてい実家で干物をもらう。ふだんは小分けして冷凍するのだけれど、その時はつい冷蔵で済ませてしまった。数日後、干物の間からイカが発見された。これは腐ってる。もったいないけど腹こわしちゃう、と埋めた。が、これがまた掘り返されてしまった。その辺で猫が死んでるんじゃないか? という話になった。
 それからしばらくして。空き室だったお隣に引っ越しがあった。翌晩、帰宅すると、お隣のご主人に会った。ご主人いわく「まいっちゃいますよ、引っ越した早々。駐車場の出入口に狸の死骸があったんですよ。ゲートが閉まってるから、誰かが投げ込んだんじゃないですかね。何かの嫌がらせですかねぇ」。ん???これは…
 後で聞いた話だが、猫は15〜20pも穴は掘れないそうだ。そんなことできるのは犬科らしい。狸ちゃん、どうか成仏してちょうだい。南無阿弥陀仏。その後、ハタケは掘り返されていない。

(ペンネーム 移民の歌)

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