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『随筆』
新聞の見方・読み方−真相はどこにあるのか−

今は、テレビ・新聞などの既存メディアに加え、「2cH」に代表されるような公式・非公式のWebサイトの劇的な発展により、情報が氾濫しているというより、魑魅魍魎(チミモウリョウ)の世界が情報によって作り出されている、といっても過言ではないと思います。インターネットの劇的進展により、新聞始め自称リーディングメディアといわれている日本の大手新聞・テレビ局の今後がどうなるのか、という大問題が一方で出てきていますが、それはおいといて、今回はマスメディアから発信される「情報」をどのように受け止め、物事の真相に近づいていくかについて、私自身、新聞の世界に15年以上勤務している中で感じたことをベースに、「新聞」を題材にして少しお話ししたいと思います。もしかしたら、このホームページをご覧になっている方の多くがすでに新聞など読んでいないので、以下にお話しすることは、ほとんど意味が無いことかもしれませんが、このホームページに原稿を執筆する機会をいただいたので、少しお付き合いください。
 大手新聞社、全国ネットのテレビなどいわゆる「マス・メディア(一応リーディングメディアと呼ばれているもの)」で報道される情報に接したとき、「何故この情報が載ったのか」「すごくわかりにくい記事の内容だな」「何故、同じ事件なのに、週刊誌と新聞では掲載のされ方が違うのか」「何故新聞A紙とB紙とテレビC社で報じられた内容がほとんど同じなのか」、といった素朴な疑問を感じた方はいらっしゃいますでしょうか。新聞を見比べたり、テレビを2台置いて同時に見るような人はほとんどいないので、そんな疑問感じたこと無いという方が大半とは思いますが、そのように報道できるように(そのように報道するためにといったほうが適切かもしれませんが)、様々な「仕組み」を、メディア側と行政(国・地自体など)は作ってきたのです。
 その仕組みの代表的なものが「記者クラブ」というものです。どこかでこの言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、おもに、官公庁・地方自治体およびそれらに関連する様々な機関(裁判所など)には「記者の溜まり場」である「記者クラブ(警視庁記者クラブとか、日本銀行記者クラブ)」があるのです。ここでは、いろいろな事件や出来事を、担当者が定期的にリリースします。実は、新聞紙面を飾っている記事の多くが(感覚的には半分近くが)、「記者クラブ」で発表されるニュースの焼き直しで作成されていると言われています。もちろん「クラブ」でリリースされる情報を糸口にして、独自で取材活動を展開するのですが、毎日何らかの情報を発信しなければならない現状においては、そのリリースをちょっとアレンジして報じるだけのニュースも相当数(おそらく、半分以上)あるのも事実です。なお、この「クラブ」に入るには一定のルールが必要で(ここでは具体的に申し上げられないのですが)、すべてのメディアが入ることができません。例えば、大手といえども出版社は入れない(講談社・集英社など)などで、これもいくつかの問題を生じさせていますが、今回はそのことには触れません。
 情報を皆さんに一斉に、かつ均等に、迅速に行き渡らせるには、この「仕組み」は、十分に有効であり、機能しています。例えば、地震やそれによる津波の警戒情報など災害に関する分野では、速報性・均質性などが人命を救うことと直結するので、すばらしいシステムであると思います。しかし、一方で、だれかが(主に行政サイド)・何らかの意図を持って公表された情報を、ほぼそのまま報道する、という弊害も生んでしまったのです。「何らかの意図をもって公表された情報を報じている」とは、言論・報道の自由、中立・公正な報道を謳い文句にしている「自称、日本のリーディングメディア」にあるまじき行為だ、という建前論的批判はあると思います。しかし、「新聞」は何を伝えるべきか、という本質的な問いに対して、明快な答えを出せる「新聞」は今、見当たらないと思うのです。恐らく新聞が日本の社会に登場した当時には、明快な答えがあったと思います。しかし現在、メディアが多種・多様になった今、「新聞」の使命、伝えるべきことは何かが、ずいぶんと曖昧になってしまったと感じます。
 こうした時代の背景を考えますと、「何らかの意図をもって公表された情報を報じている」ことを声高に批判するというより、少なくとも公表されていることが「事実」であるかどうかの検証をきちんと「新聞」は行うことが最も重要なことと思います。(公表されないことをどうするのか、それを探るのジャーナリズムではないか、というご批判ももちろんあるかと思いますが‥‥。)そうなると、私たち読者は、この事実から「真実・真相」を探っていく力を養っていくことが、大変重要になってくるのです。別の言い方をすれば、日本におけるリーディングメディアで報じられる情報は、どこかの・だれかが、何らかの意図で切り取ったものであることが多いが、それらが「事実」であるならば、私たち読者は、できるだけ沢山の「事実」の断片をかき集め、何らかの「編集作業」というか、松本清張の「点と線」のように、事実の断片を、自分なりに解釈し・つなげていき「真実・真相」を探っていけばよいと思うのです。こうした情報の受け止め方、考え方はマスメディアの報道だけでなく、すべての情報の受け止め方にも共通うることではないでしょうか。送られてくる情報をそのまま鵜呑みにしていると、この「魑魅魍魎」とした情報社会に飲み込まれてしまう、と思います。物事の真実・真相はどこかの誰かが与えてくれるものではなく、私たち自身が探し出すものではないかと考えます。
(ペンネーム K)

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