三宅学習塾OB会 > トップ > GREEN放言 > 続 総選挙

続 総選挙

選挙はやはり民主党の史上最多の308議席という圧勝に終わった。自民党の政治と霞ヶ関の行政への国民の怒りのマグマがついに噴き出したという感じだ。戦後政治のepoch である。スポーツ紙の一面には、例のあの10cm角のデカ字で「自民が死んだ日」と書かれてあった。前回と今回の総選挙結果から、小選挙区制の恐ろしさを再認識した。日本の有権者は約1億人。そのうち約3,000万人が無党派層と言われている。前回の郵政選挙と今回の民主党圧勝の選挙の分析によると、無党派層の約700万票が自民から民主に流れたそうだ。これからは無党派層の動向が政権担い手のcasting vote を握る時代かもしれない。
 海外でも1993年にカナダで行われた下院選挙において、それまで単独過半数151議席(当時の下院定数は295議席)を占めていた与党の進歩保守党が149もの議席を失い、たった2議席まで減らしたことがある。次回の総選挙でも、民主が国民の期待を裏切り、自民が敗因を分析し真摯かつ謙虚な気持ちで党を再生すれば、今回と逆の結果になることも十分にあり得る。また社民党の前身、社会党のようにミニ政党に凋落していくこともあり得る。
 今回大勝した民主党は、おそらく衆議院を任期満了近くまで解散せず、政権与党に固執すると思っている。社民、国民新党と連立を組めば衆参両議院で過半数の議席を得、基本的には思い通りの国会運営ができる。来年の夏には参議院議員の半数の選挙が控えているが、その勝敗に関係なく衆議院の優越で政権与党にとどまる気がする。長年の夢が現実のものとなり、しかもマニフェストの重要公約の一つである自民党の長期政権下による天下り、無駄遣い、予算・利権の洗い出しなどは、官僚の強い抵抗が考えられ、1年、2年の短期ではウミを出し切れないような気がする。個人的にはじっくり根気よく霞ヶ関改革に取り組んでもらいたいと思っている。
 国民の中には、国民の喜ぶ成果を早い時期に上げろという声もあるが、1993年の非自民8会派連立の細川、羽田政権のように、1年も満たずに政権を投げ出すようなことだけはやめてもらいたい。民主党もダメということになると日本の政治はますます暗くなる。国民の多くは、偽善者の巣窟、霞ヶ関の大掃除を期待している。国直轄の非効率的な行政サービスをなくすために地方分権も推進してもらいたい。早急な目先の成果ばかりでなく、4年のスパンでのお手並みを拝見したい。
 私は官僚組織を全面否定するほどの愚か者ではない。高級官僚は人間性を不問すれば、smart な頭脳の持ち主が多い。彼らは国民の選挙によって選ばれてはいないので、政策や予算の助言・提言はできても最終決定はできないはずだが、積年の自民党との馴れ合いの中で官僚主体の政治と生活の安定手段を獲得してしまった。国民の公僕たることを忘れてしまったことに怒りを覚えている。民主党はまず、霞ヶ関の優秀な頭脳を国民のために最大限に発揮する本来の姿に戻してもらいたい。
 一方、私は選挙前から民主党の「ばら撒き」公約には危惧していた。このことが各マスコミの調査で明らかになった。今回の総選挙で民主党に投票した人の中で「子供手当て」に賛成の人は30%、「高速道路無料化」には20%の人しか賛成していない(朝日新聞より)。今回民主党に投票した人の多くは、自民党の官僚任せの政治、税の無駄使いなどの不信、不満から一票を投じたのであり、民主党の「ばら撒き」公約を期待して投票した人は少なかったのである。みんなの党が行政改革だけを掲げ、小選挙区では15/300区しか公認候補者を立てていないのに、比例区では社民党と同数の300万票(4.3%)を獲得したことが、それを物語っている。
 しかしマニフェストに載せてしまった以上、民主党はこれらのことを実行しなくてはいけない。借金地獄の日本なのに、選挙に勝ちたいとはいえ大風呂敷を広げすぎた気がする。「子供手当て」「高速道路無料化」「ガソリン税などの暫定税率廃止」だけでも、年間10兆円超の予算を計上しなくてはいけない。
 必要のない独立法人の撤廃、地方への行政サービスの移譲、各省庁の利権維持のための予算の洗い出しなどをして、「これだけの予算の無駄遣いが見つかりました。この予算を少子化のために使います。」のが、カッコよかったのではないか。国民の声を聞きながら、マスコミの世論調査を見ながら、大盤振舞ではなくもう少し小出しでもよかった気がする。人間の心は勝手なもので、同じ2万円でも3万円から2万円になるのと、1万円から2万円になるのでは心理状態がかなり違う。「手当て」は一度もらい癖が付くと、減額されたり、廃止されたりすると損をした気分になる。
 子供のできない夫婦、自分の手取りより4人の子供への手当てのが多いと言う若者や派遣社員、年金でやっと生活している老夫婦、「子供を産むだけ産んで満足な躾もしない夫婦にも手当てをあげるのか!」と言うstrictな市民など、子供手当てへの国民の不公平感はかなり強い。
 「年金制度改革」の7万円の最低保証にしても、国民年金を苦しい家計の中から工面して今まで支払い続けてきた人々を裏切ることになる。「母子家庭手当て」も、偽装離婚をして受け取っている人も少なくない。ヴィトンのバッグを手に、高給な衣服を身にまとい申請に来る婦人もいるという。「国民健康保険」も、支払う能力はあるのに高額であるため支払わない人が多くいる。「死にそうになったら、人道的見地から何とかしてくれる。」と、高を括っている。霞ヶ関の洗い出しだけでなく、自治体も悪質な国民に強い態度で臨む気概が欲しい。納税者の大部分は納得する政治、地方自治を行なってもらいたいと願っている。
 「明日の100より、今日の50」という言葉があるが、今日はひもじい思いをしても、明日100円をもらおう。その100円のうち50円使って、残りの50円は子供たちが将来幸せになるために使おう。そのためには、多少の不満、我慢をしなくてはいけないこともある。これは決して甘受の言葉ではない。自らは拝金や私欲を押さえ、周りにいる一人でも多くの人が生きていることを享受している環境の中にこそ、自分も楽しい人生が送れるという自戒の言葉である。このことを日本社会の中核を担う30代〜50代の人々に特に理解して欲しいと思っている。
 民主党への政権交代が凶と出るか吉と出るかは別として、国民の本当に軽い一票でも、日本中から集まれば山を動かすことができる。日本を、地域をよくしようとする国民の意識が高まり、広がっていけば住みやすい社会になることの証明でもある。国民のこの意識が、犯罪の減少、社会規範の向上、少子化の解消のbottom にあると考えている。

住 所
〒250-0034 小田原市板橋647番地 三宅学習塾OB会事務局
事務局への投稿などはこちらへ
三宅先生への連絡などはこちらへ