あれからの遼君

遼君の記事を書いたのは２年前の夏でした。あれから益々実力を身につけ、今では押しも押されもせぬトッププロの仲間入りです。日本の賞金ランキングも現時点でトップです。国際ゴルフツアーランキングでも49位で、史上最年少の50位以内の選手になり、テレビ、新聞でその活躍が毎週末に報じられています。スポーツ紙の１面を飾るのも一番多いのではないでしょうか。
　先週、遼君は「韓国オープン」出場のために韓国に行きました。「実力、ヴィジュアル、マナーの良さの三拍子揃った選手」と絶賛されました。「韓国民の妹」と言われているフィギュアスケートのキムヨナ級の取り上げられ方をされたそうです。
　彼の素晴らしさはマナーにあります。愚妻にせがまれて遼君の試合を見に行ったことがあります。私は彼が近くで見られそうなところを予測して、先回りをするナビゲーターでした。愚妻は1m足らずの目と鼻の先で彼を見たときには、歳を忘れて興奮していました。連れとして少し気恥ずかしくなりましたが、あんな息子がいたらと思ったのかもしれません。
　彼はテレビ画面に映し出されていないときでもマナーがとてもよく、ギャラリーに嫌な顔ひとつ見せません。むしろギャラリーのほうがマナーの悪いことがあります。ゴルフを知らないおばちゃんが、これから神経を集中し、チャージモードにある遼君に韓流スターと同じノリノリ気分で近付いていく光景を目にすることがありました。
　私は近くで行なわれるツアートーナメント（プロの試合）を見に行くことがよくあります。タイガー・ウッズが太平洋御殿場コースに来たときも、井上君と追っかけをしましたが、やはり一流選手は技術面だけでなく、観客を不快にしないマナーをもっていました。このようにみんなから好かれるキャラクターは、家庭の躾が基礎にあるからでしょう。タイガー・ウッズの父親アール・ウッズは米陸軍特殊部隊の軍人で、ゴルフの指導と平行して、倫理をしっかり身に付けさせたそうです。
　遼君も彼の雑誌「月刊・石川遼」の両親のインタビューの中で、しっかりとした家庭教育がなされてきたことを読み取ることができます。「人に迷惑のかかることには厳しく叱りました。」（母親の言葉）「先輩や後輩から好かれるようになりなさい。」（父親）「彼がホッとできる居場所を作ることが私の役目。」（母親）「親が子供に財産を残すとは、『生き方を教える』こと。」（父親）が心に残っています。
　彼の夢はゴルフの頂点マスターズに20歳で優勝することだそうです。相撲、柔道のような日本古来のスポーツに道がなくなり、遼君が西洋のスポーツであるゴルフに道を究めようとする姿に清々しさを感じます。遼君ならきっとゴルフ界のトッププロになれるでしょう。そのような選手になっても、みんなから好かれる国民的スターでいて欲しいと願っています。