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藤岡藤巻

ポーニョ ポーニョ ポニョ さかなの子♪ これはご存知、今上映中の「崖の上のポニョ」の主題歌である。「風の谷のナウシカ」から20余年、ジブリの劇場用アニメ作品は根強い人気を維持し続けている。あいにく私は漫画とアニメは見ないので作品について語ることはできないが、ファン及びリピーターを満足させる作品を作り続けている才能には敬服する。
 宮崎アニメ作品はその主題歌の多くもヒットしてきた。「となりのトトロ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などの主題歌は、映画を観ていない私も何度か耳にしたことがある。今回の「崖の上のポニョ」の主題歌も上映前からヒットし、「だんご三兄弟」以来の子供向け歌謡の大ヒット曲になっている。
 その曲を歌っているのが、中年サラリーマンおじさん二人とかわいらしい10歳くらいの女の子。なんともミスマッチなトリオであるが、お父さんと娘が一緒に歌える主題歌にしようという宮崎監督の提案で、二人のおじさんが加わったらしい。つい口ずさみたくなるような久石譲の旋律も素晴しいが、彼のひらめきがズバリ的中した感がある。
 普通ならかわいい女の子に関心が向くのであろうが、なぜか私は両端のおじさんに関心を持った。そこで彼らの公式サイト「おやじエンタテイメント!」を覗いてみたら、二人の中年おじさんは「藤岡藤巻」であり、二人の名前は藤岡孝章氏(55)と藤巻直哉氏(55)であることを知った。知る人ぞ知るサラリーマンの悲哀を歌い続けている男性デュオとのことが書いてあった。普通のサイトなら最小限の情報を得たら読み納めるのであるが、文章が面白いので読み続けていくと、「二人は70年代に「まりちゃんズ」というバンドで活動し、…」という一節が目に入った。何だ!彼らはあの「まりちゃんズ」だったんだとわかった瞬間、MPS草創の時代にタイムスリップして行った。
 私が25、6歳の時のことである。会社を辞め、塾を専業にし始めた頃で、土曜、日曜もなく毎日働いていたように思う。当時から「よく学び、よく遊べ」という考えであったから、勉強を教えることとは別に、四六時中生徒のために何かできないか考え行動していたように思う。後にいろいろな行事の下地となる遊びを生徒たちと一緒になって楽しんでいた。その中のひとつにDJ番組つくりがあった。
 当時の中学生の楽しみは深夜ラジオを聴くことで、特に「オールナイトニッポン」は絶大な人気があった。そこでMPSでもDJ番組を作ろうということになり、たぶん日曜日の昼間に(当時はまだ土曜日は学校があったので)希望者を集めて、何回かDJ番組を作ったことがあった。もちろん、電波を飛ばすわけにはいかないので、カセットテープに録音し、それを生徒たちは持ち回りで聞いた。どれくらいの期間、また何巻くらい作ったのかはすっかり忘れてしまったが…。
 そのDJ番組には、聞きたい曲をリクエストするコーナーや、クイズに答えて正解した生徒の希望する曲を流すコーナーなどがあった。その中で「まりちゃんズ」の「ブスにはブスの生き方がある」という曲がよくかけられたのである。1960年代後半から70年代半ばにかけて、カレッジフォーク、コミックソング、アングラソングが流行っていて、放送禁止の唄が多くあった。現代風に言えば、セクハラ、差別、ブラックユーモアを題材にした類の唄である。他に「悲惨な戦い」「ケメ子の歌」「金太の大冒険」「赤とんぼの唄」「帰って来たヨッパライ」などの唄が頭に浮かぶ。
 当時「まりちゃんズ」はもう一人いて3人組だった。レコードを買ったと思うのだが、それもどこかへ消え失せてしまい、どんなジャケットかも忘れてしまった。彼らの若かりし頃の顔も思い出せないでいる。ただ、藤岡氏と藤巻氏は小学校時代からの友人で、私立の名門K大とW大の大学生だったように記憶している。彼らのサイトを読んでいるうちに、大学時代の知り合いの40年後を知ったような懐かしい気持ちになった。
 本来多くの人にとっては観ることによって、喜び、感動を与えてもらう「崖の上のポニョ」であるが、私は過去を思い出すという副次的な喜びを与えてもらった。長いこと生きていると、人にはつまらないことが自分にとってはサプライズでサンクフルなことがよくある。思いがけない出会い、見聞から私的な過去を思い出すことは、歳を取ってからの楽しみの一つであることを再認識した。

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