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耐震強度偽装問題に思う

年も1年が終わろうとしています。人は歳とともに時の経つのを早く感じるようになると言われていますが、卒業生の皆さんもそのことを実感しているのではないでしょうか。いいオヤジ、いいおばさんになっているのでしょうね。私も50代後半になって「余生の時代」を迎え、過去を振り返ることが多くなって気付いたのですが、毎日を同じようなことをして忙しく過ごしていた時は、1年を早いと感じていたように思うのです。そしてそれは、充実していた時期とも符合している気がするのです。人によって多少の差はありますが、50代後半から60代前半までは、歳とともに時の経つのをより早く感じるようになっていくでしょう。そして「余生の時代」を迎え、ゆったり、穏やかな人生を送ろうとしたら、お迎えのお籠がどこかの物陰に隠れている歳になってしまっているのです。あぁー、なんて人生は・・・・無情なんでしょう。祇園精舎の鐘の声‥‥は無常です。
 今年最後の『グリーン放言』は何を書こうか考えていた矢先のことでした。そこに耐震強度偽装問題発覚のニュースが飛び込んできました。更に、二人の小1女子殺害、塾講師の小6女子刺殺という惨い事件が続きました。急遽、書く内容の変更です。耐震強度偽装事件は現代人の醜い心と現代社会の醜い構図を露呈したと強く思っています。この種の怪情報をある程度知っていたこともあり、発覚報道にはそれほど驚きませんでした。ついに明るみになったかという程度でした。私は今までに何人かの建設・不動産業者と仕事の依頼や私的な付き合いで接してきました。いい印象の人物はあまりいませんでした。騙されたこともありました。不動産業者の社員からこんな話を聞いたことがあります。契約の際に「こんなマンションを買ってはいけない。」と、教えたくなる物件はよくあると言うのです。一戸建ての分譲住宅でも、コスト削減の手抜き工事はよくあると言っていました。しかし、生活のために売買契約は結んでしまうそうです。毎日の生活や仕事の中には、不条理を感じることがよくあります。生活と身の安全のために、仕事によっては犯罪に近い行為をしなければいけないことや、道義的に明らかにおかしいと知りながら、知らぬフリをしたり、黙認してしまうこともあります。この意識が悪の行為をのさばらせる温床になっています。分かっているのですが、私を含め、それがなかなかできないでいるのです。
 マスメディアの報道しか情報がない私たちには、疑惑の実体を知ることはできません。責任所在の解明は検察庁に任せ、最終的には裁判所の判決を甘受するしかありません。面白くなくても、それが法治国家です。TVでは毎日、視聴率アップのために、世論の感情論、一般的倫理観、あるいはイーホームズのような民間の確認検査機関に認可を与えた行政の責任などを報道しています。ニュースキャスターやコメンテーターが被害者以上に怒って喋っています。お前の考えなんて聞きたかねーつーの!(どうしてここだけビートたけし調なの!?俺のが興奮しているのかな。)NHKのように取材した事実の報道だけで十分です。それをもとにして、私は疑惑に関与したと思われる人物の人間観察をするほうのが楽しいです。だから当然、衆議院国土交通委員会での参考人質疑と証人喚問をTVで見ました。貴重な生の情報です。彼らの話から、このおとっつぁんはこんなふうに生きてきたのかなーと勝手に想像します。これも社会勉強です。くだらない2時間サスペンスドラマの犯人探しよりよほど面白いです。親しい人間と一杯やる時には、彼らのことを肴にします。悪趣味ですが、話が弾みます。ヒューザーの社長はいかにも悪そうな面構えとの意見が大勢です。あそこまでいくと誰の目にも同じように写るのでしょうか。木村建設の社長と総合経営研究所々長はまさにタヌキです。あの歳まで善良なフリをして悪を認識しないで生きてきたことは、なんて罪深い人生なのでしょう。こういう人物が一番厄介です。木村建設東京支店長はサラリーマンとしての「出世と欲の権化」の最後の悪あがきという感じがしました。出世、金銭などに欲深いサラリーマンは彼のような生き方をしているのでしょうか。姉歯元1級建築士はもう開き直っていて、一番事実に近いことを話していると感じました。しかし、どんな事件であれ、いかなる教唆、脅迫があろうとも、何よりも悪いのは犯行(実行)当事者です。そうしなくてはあらゆる犯罪の論理が崩れてしまいます。
 今度の疑惑事件で二つのことを考えました。一つは行政の対応の問題です。以前から行政の姿勢にはとても不快感を覚えていました。日本中にはこれまでにも騙されて不動産を手にした人は数え切れないほどいたはずです。手抜き工事や地盤の沈下で傾いてしまった家を買わされてしまった人を日本中から集めれば、耐震強度偽装マンションの被害者の何倍、何十倍もいるはずです。それなのに行政は何の対策も講じてこなかったのです。被害者の数が多くならなければ、大きな事件や事故が起きなければ、行政は腰をあげてくれません。小さな事件や事故を「氷山の一角」かもしれないという意識を全く持ってくれません。世論の声、世情の動向を汲み取っていれば、今回の偽装も事前に防げたかもしれません。バブル経済も、薬害エイズも、アスベストの問題も知っていながら、大きくなるまで何の手も打ちませんでした。手をこまねいて、しかとを決め込むだけです。『千丈の堤も蟻の一穴から』です。先手を打つのが行政の仕事です。役人よ!北朝鮮のテポドンだけじゃなく、そんな庶民のささやな生活を防衛してこその行政じゃねーの。そんな役人ばかりいるから、少子化が進むんだよ。日本を信じられなくてよ。(また、ビート・たけし調になっちゃった。おじさんは怒ってんだよ。)
 二つ目は人間の欲とエゴのことを考えました。いつも言っていることですが、人間は誰でも多かれ少なかれ欲とエゴを持っています。悪徳業者は人間のそんな欲や助平根性に付け込んできます。被害者の多くはヒューザーの物件は駅に近い、景観もいい、内装も綺麗だ、占有床面積も広い、なのに他の物件よりこんなに安い‥と購入したのではないでしょうか。「ただより怖いものはない。」「安かろう、悪かろう。」「うまい話には乗るな。」昔から言われてきた言葉です。そんな物件を購入することは賭けでもあるのです。こんな悪たちのために、自分の人生を狂わされた被害者の心情はよく分かります。自分は何も悪いことをしていない、なのに、なぜこんな目に遭わなくてはいけないのかと、人間不信と絶望感を抱きます。私も被害に遭っているから分かります。しかしそこには「自己責任」も少しはあるのではないかと思うのです。欲が生んだ不運と取れなくもないのです。勇気あるマスメディアが、公的支援のあり方を取り上げながら、そのことに少し触れています。
 人間には自分の人生にプラスの影響を与えてくれる人との出会いがあります。これは人生の喜びの一つです。私の人生にも両親を除いて、いろいろと勉強させていただいた3名の年上の方がいました。感謝です。そして3名の学生時代からの友人がいます。こんな私の人間性を分かってくれています。ありがたいことです。しかし、それは計算してなれる関係ではありません。歳月、会話、感性の中から自然発生的にできあがってきたものです。逆にあなたの人生にマイナスの影響を与える、あなたを騙したり傷つけたりする悪い人間もいます。彼らは計算して近付いてきます。もっとひどい人間になると、悪さをしているという認識もなく他人を不幸にさせる人間もいます。自分にとって都合のいい人間だけがあなたの周りに生きているのではありません。あなたを幸せにしてくれる人間と同じ数だけ、あなたを不幸にさせようとしている悪い人間もいるということを、今の社会ではいつも気にしておく必要があります。ただ、このように考えてばかりいると、自分自身も不幸になります。人間不信が強くなり、純粋な親切や善意を素直な気持ちで受け取れなくなってしまうからです。世の中には優しい心の持ち主もたくさんいます。猜疑心の持ち過ぎは、あなたの人生にプラスになる人間を遠ざけてしまうことにもなります。この信じる心と疑う心のバランスが難しいのです。
 詐欺師の多くは人間の欲や助平根性をくすぐりながら騙してきます。人の夢や善意や無知を利用する畜生の人種もいます。今回の事件はこれに近いと考えています。振り込め詐欺、リフォーム詐欺、インターネット関連の詐欺など、日本中に詐欺が蔓延しています。人間観察をして、騙す人間、腹黒い人間を見抜きましょう。物の相場も知りましょう。昔の人は「人に騙されても、騙す人間にはなるな!」と教えてくれました。しかし、今そんなことを実践していたら、骨の髄までしゃぶりつかれ、ケツの毛まで抜き取られ、気付いてみればペンペン草すら生えなくなってしまう人生になってしまいます(ペンネーム「生涯一不動産屋」の投稿より)。嫌な世の中になったものです。
 来年こそ、いい年になりますように!! 『グリーン放言』に心温まる話や楽しくなる話を書きたいものです。よいお年をお迎えください。

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