自然災害・人的事故・病的犯罪　その１
　〜 ＪＲ西日本脱線転覆事故に思う 〜

月２５日に起きたＪＲ西日本の福知山線脱線転覆事故は、死者が百人を超えるという大惨事になってしまいました。犠牲者のご冥福を心よりお祈りします。負傷者も数百人にのぼり、一日も早い回復と社会復帰をお祈りします。しかし、この数字はニュースで知り得た表面的なもので、私たちはこの数十倍の遺族、恋人、友人が、愛する人を一瞬に亡くし、どれほど悲しみ、憤り、無念の思いで毎日を生活しているのかという現実を考えなければいけません。誰にとっても愛する人の死は、この上なく悲しいものです。残念なことに、このことだけが古今東西、不変の真理なのかもしれません。
　この事故の力学的、工学的な原因、会社の体質、運転手の適性などは、私にはわかりません。このことは視聴率至上主義と販売部数実績主義のもとで、国民が食いついてくれる情報だけを報道しているマスコミと、そこで俺の出番だとばかりに喋っている評論家やコメンテーターに任せることにします。私は日本人全般に蔓延している心の問題を取り上げたいと思います。’８５年の御巣鷹山日航ジャンボ機墜落事故あたりから、人類の驕りによる大事故、自然災害、理解しがたい病的犯罪等が多発するのではないかと危惧していました。悲しいかな、それ以降、想像をはるかに越える事故、災害、事件が続発しています。だから、私はこの事故の映像を見たとき、その悲惨さには驚きましたが、『今の日本人の精神構造では、こんな大惨事は時々起こるだろう。』と、日頃から考えていましたので、これは人類のエゴに対する警鐘であると捉えました。『天災は忘れた頃にやってくる。』と、いう言葉がありますが、これからは『人災も忘れていたら降りかかる。』と、いう意識も必要だと思っています。’８０年代から日本人の精神構造は大きく変わってきました。’８０年代はバブルの時代です。あの頃から日本人の多くは（私も one of them ですが）、利便性と営利を求め、自制と忍耐を忘れ、自己の地位と精神的、物質的欲望を満たすために保身に努め、楽をすることだけを考えて生きるようになってきました。今日の若者たち、子供たちの社会的問題もそこに起因していると考えています。
　この事故で、約２５年前にケニアをサファリ旅行した時の、本当に些細なことを思い出しました。アンボセリ国立公園から次の目的地に向かう途中、広大なサバナの平原でマサイ族の若い男女のグループに会いました。彼らの中の一人が英語を話すことができ、通訳と私の３人で1時間ほど話をすることができました。その時の会話の一部です。
　マサイの若者が聞きます。
　｢お前たちは、アンボセリから来たのか。それなら２日かかったな。｣
　ここまでは８０Km足らずの距離、私は
　｢車だから、１時間もかからずに来られたよ。｣と、答えます。すると、
　｢なぜそんなに急ぐんだ。そこは２日かかるところなんだ。２日という道のりなんだ。ゾウでも１日かかる距離なんだから。｣
　そう決まっているんだと、言うのです。
　｢急いで何かいいことがあるのか？何もないだろう？｣
　彼らの歩の進め方は本当にゆっくりで、時の流れを感じながら歩いているようでした。アフリカの大地にぴったり合ったたおやかさを感じました。大手町地下道での、あの時間に追われて慌しく歩いているのとは対照的です。文明からほど遠い生活をしている彼らには、ちゃんと人間として幸せな時間の使い方を知っていました。そもそも時間とは、人間が生活しやすいように考え出された尺度にすぎません。現代日本人はその時間に毎日追われ、忙しく生き急いでいます。まさに『忙しさ』に心を亡くして生活しています。陽が昇り、陽が沈む時しか気にしていない彼らに、1/100秒まで刻む腕時計を見せたら、何と思うでしょう。
　交通機関の時間短縮だけでなく、マスコミの原稿締め切り、先端技術の特許取得など、日本の社会は分刻みの競争をしています。この事故の遠因の糸を手繰っていくと、日本人全般に蔓延しているこんな精神構造に辿り着くような気がしてなりません。

時事余談：ＴＢＳの部長のように、コラムの原稿が書けないからといって、他人の文章をガメてはいけません。人の著作権侵害にはガミガミ言っているくせに。なっちー、あなたも他人の詩を自分が書いたことにしてはいけません。でも、大学の先生の中には、教え子の研究論文を自分のものにしてしまうというふとどき者もいるようです。まあそれに比べたら、彼女のしたことは愚か者の軽はずみと笑えるけれど。ＴＶでもキャスターやコメンテーターが、神妙な顔をして政治から風俗まで｢俺はオールマイティーだ。何でも任せておけ。｣と、いわんばかりに偉そうに話しています。ＴＶ局も｢このコメントは○○の話をガメているようです。｣と、テロップでも流したらいいのにと思うことがよくあります。視聴率命のＴＶ局さん、これのが視聴率アップ、間違いなしです！
　アー、イヤだイヤだ。みんな好きにやってくれ。