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V6 Stefan Grossman & John Renbourn Presents Franklin Guitars (199?) Total Video Production (非売品) |
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[Stefan Grossman & John Renbourn]
John Renbourn : Guitar
1. Cannonball Rag [M. Travis] T18 Q32
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当時グロスマンとレンボーンが愛用していたシアトルの製作家ニック・クークイックによるフランクリン・ギターの宣伝のために作成された全部で20分程の短編ビデオ。トータル・ビデオ・プロダクションは、グロスマン・ギター・ワークショップの一連の教則ビデオを制作していた会社で、希望者に無料で配付された。ギター製作の注文が殺到したことに加えて、本人が病気になったため、当ビデオの配付どころかギターの製作自体もストップした様だ。まずグロスマンによるジャンボタイプ・モデルの紹介。次にレンボーンによるOMタイプ、最後に再びグロスマンによるステラ・タイプの12弦の紹介という構成。グロスマン・ワークショップのビデオのものと同じ背景でのスタジオ収録だ。レンボーンはギターについて簡単に説明した後、マール・トラビスの急速曲
1.「Cannonball Rag」を弾く。マールやマルセル・ダディ、トム・ブレッシュ一派のリズミカルなスタイルとはかなり異なる、レンボーン・スタイルによる流れるようなタッチのキャノンボール・ラグになっているところが凄い。途中詰まりそうになって「ああジョン!」と自身を叱りつけるところは余裕たっぷりでカッコイイ。ちなみにプレイヤー誌1996年9月号では、来日時の取材として彼のフランクリン・ギターが紹介されていた。
フランクリン・ギターは一時期、ニック・クークイックが大量の注文を残したまま消息不明になってしまい、ブランドとして立ち消えになってしまったが、ギター市場では高値を呼んでいる。その後のグロスマンのインタビューでは、またギターを作り始めたという。
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V7 A Rare Performances 1965-1995 (1996) TAB TAMT-00012 |
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John Renbourn: Guitar
Bert Jansch: Guitar (2〜5), Vocal (3)
Jacqui McShee: Vocal (3,4)
Danny Thompson: Bass (3〜5)
Terry Cox: Drums (3〜5)
Stefan Grossman: Guitar (14)
[England 1967]
1. I Know My Rider R4 R13
2. Bert & John Rehearsing * [Jansch, Renbourn] T2 T3 T15
[England 1968 with Pentangle]
3. Travelling Song [Pentangle] T3 T8 T10 T15
4. Let No Man Steal Your Thyme T2 T3 T10 T15 T17 T18 T18
[England 1971 with Pentangle]
5. In Time * [Pentangle] T3 T3 T9 T17
[England 1974]
6. Blues In A * [Renbourn]
7. Rosslyn * [Renbourn]
[Italy 1977]
8. a Trotto * R6 V2 K5
b The English Dance * R13 R14 R17 R19 R20 R25 V1 V2 V5 V8 V9 K1 K3 K5
9. Whitehouse Blues R7 V2 K2
[Sweden 1988]
14. 'Round Midnight * [Theronious Monk] R22
[Northern Ireland 1992]
16. Sweet Potato * [Booker T.Jones] R5 R12 R20 R24 V3 V5 K1 K2
[Spain 1993]
17. Lord Franklin R24 T5 T10 V5 K2
18. Little Niles * [Randy Weston] R24 R25 R27 R28 Q25 V5 K4
[U.S.A. 1995]
19. Young Man Who Wouldn't Hoe Corn R17 R29
20. a The Lament For Owen Roe O'Niel * R9 R13 R20 R24 R27 V5 K3
b Mist Covered Mountain Of Home * R14 R17 R20 R24 V5 K1 K2 K3
21. a The Wedding *
b Cherry * [Dollar Brand] R22 V5 K3 K4
注) 以下の曲は、以前発売されたビデオ作品と重複するため、上記リストに含めなかった。
[U.S.A.1981] : V1と重複
10. The Fair Flower Of Nothumberland
11. Medley: Pavane / Tourdion *
[U.S.A.1982] : V2と重複
12. Candyman
13. Goodbye Porkpie Hat *
[Canada,1990] : V5 と重複
15. Medley: Abide With Me *
Great Dreams From Heaven
〔楽譜掲載〕8.a G2 G3 G8 K5, 8.b G4 G6 K1 K3 F4, 9. G1 K2, 16. K1 K2,17. G1 K2
18.K4 F7, 20.a G4 F3 F5, 20. b K1 K3 F4, 21b K4 F7
7.(アコースティック・ギター・ブック5 シンコー・ミュージック刊 1977)
本ビデオに添付された楽譜: 6.8.b 9.15.17.18.20 (6は打田十紀夫氏による採譜)
写真上: オリジナル・ビデオ
写真下: 再発DVD
注: 1. 7.は R1と同一の音源 なので、カバー番号の表示は行いません。
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ステファン・グロスマン・ギター・ワークショップからの素敵な贈り物。日本版はギターファンおなじみのTAB ギタースクールから発売された。今になってジョンの初期の映像が観れるなんて夢のようだ。そもそもは同じTAB
によって発売され好評を博したオムニバス・ビデオ「Fingerstyle Guitar New Dimentions & Explorations」
1994 から始まる。同ビデオには彼の映像が2曲あったが、うち1曲は既発表のV5 に収められていた「Little Niles」で、そんなに珍しいものではなかったけど、もう1曲「Rosslyn」の映像には本当にぶっとんだのだ。1970年代前半のジョン(契約問題のためレコードを制作していない時期)、そしてあのギブソン
J-50 を弾きまくる若々しいジョンの姿がバッチリ捉えられ、しかも未発表曲。もう本当に感激して観ましたよ。その感激をTAB の打田先生に伝えたところ「ジョンの珍しい映像がまだまだあるみたいだから、また出るかもしれないよ!」と言われ、ワクワクしながら待っていたのだ。そしてやっと1996年春に本作が発売。もう感謝感激雨あられで、生きててヨカッタナー、なんてオーバーかな? という事で、本作の発売は、「Lost
Sessions」R8 の発掘と合わせて、私にとって1996年の10大ニュースのひとつだったのです。
1.2. は何とデビュー当時の1965年の映像。デンマークのテレビ局による撮影で、よくぞ発掘してくれたとステファン・グロスマンに感謝。1. の曲名は「I
Know My Rider」とあるが、R4収録の「I Know My Babe」と同じ曲。白黒の画面いっぱいにうつむきかげんで、ギブソンJ-50を弾きまくるジョンの姿は本当に若々しい。2015年に発売された「The
Attic Tapes」R1に本映像と同じ演奏が収録され、その解説によると、本映像はペンタングルが根城としたライブハウス「Les Cousins」で収録されたものとなる。当時のロンドンのフォーク・クラブの雰囲気とヒッピー・ムーブメントを感じることができるとても貴重な映像。2.「Bert
& John Rehearsing」ではジョンとバート・ヤンシュによる「Bells」 (オリジナルはペンタングルのデビューアルバム T2に収録)
のリハーサルだぞ! ギター2本によるテーマの演奏にはビックリ。彼らが住んでいたアパートの狭い部屋での演奏。彼らの間に座って顔も上げずに、退屈そうにクロスワード・パズルに没頭する長髪の女性の姿がとても面白い。そして部屋の奥にはシタールが見える。
3.4. は正式発表としては本邦初公開のペンタングルの映像。イギリスBBC放送の番組「Degrees Of Folk」のための録画(白黒)で、狭いスタジオのなかに観客を入れ、少し窮屈そうに演奏している。3.「Travelling
Song」はデビュー盤に先立って発売されたシングル。長い間アルバム未収録で、1992年のペンタングルのベスト盤 T8 でやっと入手可能となったもの。ストリングスがフューチャーされたシングル・バージョンと異なり、ストレートな演奏。若いバートの歌う表情が何ともクールでよいのだ。ジョンはうつむいて目を閉じてリードギターを弾く。4.「Let
No Man Steal Your Thyme」はペンタングルのデビュー盤の冒頭を飾った素晴らしい曲で、リード・ボーカルのジャッキー・マクシーのファッションと顔のメークアップがいかにも60年代という感じで面白い。演奏はダニー・トンプソンのアルコ(弓弾き)奏法によるベースがシンセサイザーのような重低音を出し、間奏部分のワンコードによるフリーなインプロヴィゼイションも良い好演。5.「In
Time」は1970年BBC 放送でのスタジオライブ。ここではジャッキーは画面に写っていない。ジョンとバートはいつも通り椅子にすわって演奏に没頭している。ジョンのギターは愛用のギブソン
ES-335 。バートはメーカー不明のオーディトリウム・タイプのアコギにサウンドホール・ピックアップを取り付けたものを演奏。淡々とした演奏で、ジョンのくわえ煙草からもうもうと煙が立っている。演奏的・視覚的の両方で、ダニーのウッド・ベースが突出している。(注:
5.の音源はT9のBBC放送音源と同じ。また2006年になって、同じセッションの映像がインターネットで観れるようになりました。詳細はT12をご参照ください。)
6.7.は1974年のBBC のスタジオ映像。9月1日に放送された「The Five Faces Of The Guitar」という番組での演奏。ジョン(フォーク)の他に、ジュリアン・ブルーム(クラシック)、バーニー・ケッセル(ジャズ)、ジェフ・ベック(ロック)、パコ・ペナ(フラメンコ)という、各ジャンルの達人が登場して、語り、演奏するという教則的な内容だったという。ここでの映像は演奏シーンのみで、長い髪と顎髭がキリストのような容貌。ギブソンJ-50の演奏が素晴らしい録音でとらえられている。6.「Blues
In A」は彼のアイドルビッグ・ビル・ブルーンジーのスタイルを発展させたブルース。7.「Rosslyn」はブルースと古典音楽の融合を目指した作風で、「Black
Balloon」 1979 R14 の「The Perican」のテーマを連想させるリュートのようなテーマと、途中のブルース的な展開との対比が大変鮮やかな名曲。どうしてこの曲がレコードに収録されずに未発表となったのか不思議。1977年
TABの打田先生により採譜(レンボーンのお墨付きとのこと)され、ビデオに付録として添付された。現在(2019年)では、ジョン・レンボーンのホームページでタブ譜が公開されている。なお
2015年に発売された「The Attic Tapes」R1に「Rosslyn」が収録されたが、本映像と同じ演奏だ。
8.9.は1977年イタリアのミラノにおけるライブ。当時の愛器ギルドD-55による演奏で、「The Hermit」R9の世界を彷彿させる。次の2曲
10.11.はジョン・レンボーン・グループによる演奏で、V1ですでに発表済のもの。さらにステファンとのデュエットである 12.13.も、V2で発売済。14.「'Round
Midnight」は1988年スウェーデンでのステファンとのデュエットで、ステファンのオムニバス・ビデオ V4での演奏2曲と同じステージでの演奏。二人ともでっぷり太り貫祿十分。15.はジョンのビデオV5
からの収録。
北アイルランドにおける1992年の映像 16「Sweet Potato」はすごい出来。スタジオライブで、カメラがジョンの周りをぐるぐる回って、なめるように撮影している。通常のビデオにないアングルやクローズアップが迫力十分で、ジョンの演奏もそれにあおられてか、いつになくエキサイティング。1993年スペインにけるスタジオ映像
17.18.は、一転してクールな雰囲気で、倉庫のようなセットと少し暗めのライティングのなかでギターを弾き、歌うジョンの姿は、髪も短くしたせいか大学教授のような風貌。特に18.「Little
Niles」の映像はおいしいぞ。
最後は1995年のアメリカ、カリフォルニア州バークリーのフレイト・アンド・サルベッジにおけるライブ映像。年をとってすっかりおじいさん風となったジョンの余裕たっぷりの近況を楽しめる。21a 「The Wedding」を聞けるのは本作のみと、珍しい曲があるので、ファンは要チェック。
ちなみに使用ギターは、1.〜4.6.7.がギブソンJ-50、5.がギブソンの ES-335、8.〜12.がギルド D-55、13.14.が日本のアリア製のエレアコ、以降の曲がフランクリンの
OMモデル。本作は以前からの熱心なファンにとっては、既発売の作品と重複する曲もあり、少し気になるところだが、一般のファンの事を考慮すると文句は言えないだろう。本作は90分に渡ってジョンの映像が一杯に詰め込まれ、マーク・ハンフリー氏による詳細な解説と、6.8a.
9.15.17.18.20.の楽譜およびタブ譜が添付(特に6.は打田十紀夫先生による完全採譜で、日本盤だけ入手可能)されており、大変良心的な作品集となった。熱心なファンも入門者も等しく楽しめる、お勧め作品である。
[2019年追記]
1965年の「I Know My Babe」の映像、1974年BBCの映像につき、追記しました。
[2023年11月 追記」
1「I Know My Rider」、2.「Bert & John Rehearsing」のソースであるデンマークのテレビ番組映像 「Folksangere」の記事を「その他音源・映像」の部にアップしました。上述の記事では 「何とデビュー当時の1965年の映像」と書きましたが、正しくは1967年で、「I
Know My Rider」が収録されたジョンのアルバム「Another Monday」1968 R4の発売年、「Bells」が収録されたペンタングルのファーストアルバムT2の発売年1968年に符合します。
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V8 In Concert Open Strings '98 (1998) Acoustic Music Best.-Nr.AMV4001 |
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〔Various Artists〕
John Renbourn: Guitar, Vocal 1b. 2.
1. a Abide With Me * R22 R24 Q32 V3 V5 V9 K2
b Great Dreams From Heaven R17 R18 R20 R22 R24 R27 R29 Q32 V3 V5 V9
K2
2. The Snows R25 R26 T7 T17
3. a The South Wind * R23 R24 R25 R26 R27 V5 V9 K3
b Blarney Pilgrim * R15 R24 R25 R27 V5 K3
4. a Bunyans’ Hymn * R25 R26 V5 V9 K3
b I Saw Three Ships * R25 R26 Q20 V5 V9 K3
c English Dance * R13 R14 R17 R19 R20 R25 V1 V2 V5 V7 V9 K1 K3 K5
[楽譜掲載]1. K2, 3a. K3 F7, 4ab. K3, 4c. K1 K3 G4 G6 G8 F4
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1998年ピーター・フィンガー主宰の雑誌オープン・ストリングスが、その本拠地であるドイツのオスナブルック(デュッセルドルフから北東へ約150キロ)で主催したフェスティバル・コンサートのライブ。このビデオには彼の他に中川イサト、ピーター・フィンガーの演奏が収録されている。同じコンサートにおける他のギタリストのビデオもあり、ラルフ・タウナー(ソロとしては初めての映像、必見!)で1本、ティム・スパークスとフランコ・モローネで1本、ウッディ・マンとジェイミー・フィンドレーで1本と、計4本が発売された。
アコースティック・ミュージック・レコードからソロアルバム「Dream Catcher」を発売した中川イサトが、初めて海外で行ったコンサートとして、この「Open
Strings International Festival」(5月22〜23日)はおおいに話題となり、イサト氏を名誉団長とするツアーが組まれたほどであった。同時に新人ギターコンテスト(入賞者は後に「New
Strings ’98」というオムニバスCDの録音に参加した)、レイクウッドその他のメーカーによる展示会、ギタリストのワークショップなどが催された。
コンサートは、5月22日3時から始まり、出演者はティム・スパークス、フランコ・モローネ、中川イサト、ウッディ・マン。休憩のあとジョン・レンボーン、ラルフ・タウナーと続いた。23日は、ジェイミー・フィンレイ、ピーター・フィンガー、ガンサー・ゴルテス、アレック・ド・グラッシ、ティム・スパークス、そしてトリのレオ・コッケという順番で行われた。
レンボーンはラフな格好した大学教授という風貌で髪の毛も薄く真っ白。愛用のフランクリンOMを弾くが、ピックアップにより、かなり電気処理された音が少し気になる。そのせいか、彼のタッチは一層ソフトで、なでるように弾いている。ときどき強く弾く時にピックアップがひろうゴリッとした音は、あまり好きじゃないなあ。曲はコンサートでおなじみのものばかり。目をつぶって、口を半開きにして弾く様は余裕たっぷり。まさに円熟の演奏とはこれだ!と言わんばかりで、比較でイサトさんがずいぶん若く見えてしまうのだ。1.は曲名の表示はないが、長いスローな導入部は「The
Three Kingdom」1988 R22 では、メドレーと表示され、「Abide With Me」というタイトルの曲だった。やはりオープンGによる4.のメドレーがいいですね。ただ4c.のアップテンポのダンス曲になると、以前の演奏のような切れ味がなく、時々指がもつれるような箇所がある。でもニヤニヤしながら風格で弾き切ってしまうところは、さすがである。
このビデオで初めてレンボーンを聴いたという人もいると思うが、あまりにリラックスした演奏であり、入門者向けではないと思う。彼が若いころの作品のCDを是非聴いてほしい。
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V9 In Concert (2005) Pentangle Ltd. / Hard Road Recording |
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[John Renbourn And Jacqui McShee]
John Renbourn: Vocal (1.3.6.11.13.17.18.) Guitar
Jacqui McShee: Vocal (1.2.3.6.7.9.10.12.13.17)
Clive Carroll: Guitar (17.19)
1. Watch The Stars [Traditional] T3 T14 Q6 K2
2. My Johnny Was A Shoemaker [Traditional] R6 R10 R12 R27 V1
3. Can't Keep From Crying R1 R3 R4 R27 T14
4. Dark Island* R27 Q32
5. Abide With Me* [Traditional] R22 R24 Q32 V3 V5 V8 K2
6. Great Dreams From Heaven [Joseph Spence] R17 R18 R20 R20 R22 R24 R27
R29 Q32 V3 V5 V8 K2
7. One Morning In May [Traditional] R2
8. South Wind* [Traditional] R23 R24 R25 R26 R27 V5 V8 K3
9. The Plains Of Waterloo [Traditional] R16 R19
10. A Maid That's Deep In Love [Traditional] R12 T5 T10 T17
11. Sandwood Down To Kyle [Dave Goulder] R23 R24 V5 K3
12. The Bonny Greenwood Side [Traditional] R19 R27 V1
13. Lindsey [Archie Fisher] R17 R19 R20 R24 R25 V1 V5 K3
14. Bunyan's Hymn* [Traditional] R25 R26 V5 V8 K3
15. I Saw Three Ships* [Traditional] R25 R26 Q20 V5 V8 K3
16. English Dance* [Traditional] R13 R14 R17 R19 R20 R25 V1 V2 V5 V7 V8
K1 K3 K5
17. Kokomo Blues [Traditional] R7 R12 R13 R27 V5
[Bonus Tracks]
18. Audience Talk (以下すべて断片)
a. Blues In E
b. Blues In A
c. Snow
d. Scarborough Fair
e. Blackwaterside
f. She Moved Through The Fair
g. Candy Man (Vocal)
h. Can't Keep From Crying (Vocal)
i. Blues Run The Game (Vocal)
19. At The Break Of The Day [Traditional] R26 Q32
7.12.はジョン不参加
写真上: オリジナルDVD
写真下: 再発DVD
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ジョン・レンボーンとジャッキー・マクシーのコンサートを収録したDVD。ジョンの新作としては1998年の「Traveller's Prayer」
R26 以来なので、本当に久しぶりだ。ジャッキーとジョンの組み合わせはペンタングル以外に、ジョン・レンボーン・グループの R10 R12 R16
R18 R19 R27 V1、ジョンのソロアルバムR4 へのゲスト参加など数多くある。近年ジョンはソロの他に、ジャッキーとのデュエット・コンサートを多くやっているようだ。一方ジャッキーはバート・ヤンシュが抜けた後のペンタングルを引き継ぎ、しばらくアルバムを発表していた。本作の収録場所は、イギリスの中東部(ロンドンとエディンバラの中間)の海辺にあるNew
Castle Upon TyneのWallsendという町にあるThe Buddle というアートセンターで、地元の公共団体が文化行事として主催したコンサートだった。DVDには収録日が記載されていないが、コンサート主催者による「News
from North Tyneside Arts」(Issued No.84, 29 September 2004)によると、ジョンとジャッキーのコンサートが2004年10月2日(土)に行われ、前座としてクライブ・キャロルが出演するとある。同じ場所での前回の公演は2003年11月という記録も別に確認できたので、秋・冬向けの二人の服装からも推測して、本作の収録日時は上述の2004年10月2日で間違いないものと思われる。曲の合間に数ヶ所のカットがあるので、コンサートの進行は不明。ボーナストラックの
18.19.がどの部分で演奏されたかはよく分からない。観客の反応は非常に冷静で、小さい会場のせいか拍手の数も少なめ。二人も淡々と演奏していて、観る者はその分音楽に集中することができる。
でっぷりと太って白髭を生やしたジョン(1944年生まれだから60歳ですね)は、毛糸の帽子を被って椅子に座り、右足を組む独特のポーズ(椅子に座っていてもあぐらをかいているのと同じ姿勢でギターを構えることができるもの)で愛用のラルフ・バウン(イギリスのヨークで活動するルシアー)のOMスタイルギターを弾く。カッタウェイスタイルのギターのサウンドホールにはマグネット・ピックアップが装着されている。ピックアップから拾われた音は完全な生音とは異なるが、以前のコンサートV5、V9のようなエレアコ的な癖はないので、それほど気にならない。ジャッキーは綺麗な青いドレスを着て椅子に座り、時々からだを揺さぶりながら歌う。ペンタングルでお馴染みのレパートリー1.で彼女の横顔がクローズアップされるが、顔に刻まれた皺を見て長い時が経った事を思い知らされてしまう。本作全体に言える事で、ジョンのギターは自由奔放。長い間かけて弾き込んだレパートリーなので、細かな部分はその時の気分で自由自在に演奏しているようだ。そのため所々でリズムが乱れたり、音が詰まったりする場面があるが、一向に気にせず弾きまくる。それがかえって自由でリラックスした雰囲気を醸し出していて、この手のコンサートにありがちな息が詰まるような緊張感はない。おなじみの2.では、ジャッキーの声がかすれ気味なのが目立つ。若いころのヴェルベットのような滑らかさがないのは残念だが、その代わりに、年輪というか気高さが感じられるので、決して悪くはない。間奏におけるジョンの演奏にはぐっと心に迫る魅力がある。ジョンがブラインド・ウィリー・ジョンソンの曲と紹介して、昔二人でライブハウスで歌っていた曲 3.に移る。速いピッキングによるブルースで、「Another
Monday」1966 R4 の頃と違って滑らかなタッチだ。4.はDVDケースの曲目には載っていないが、画面では曲名表示される即興演奏風のイントロで、ドロップド
Dチューニングによるちょっとトロピカルな雰囲気がでたプレイだ。すぐに賛美歌風の5.に入り、お馴染みの 6.の歌が始まる。ここではジャッキーがハーモニーをつける。長めの間奏は以前の演奏よりずっとくだけていて、思いのままに弾いているように見える。7.はジャッキーの無伴奏ソロ。R2でドリス・ヘンダーソンがひとりで歌っていた。低めで抑制の効いた歌声は、その場の空間を支配する存在感・緊張感に満ちていて、聴くものをゾクゾクさせるものがある。
8.もお馴染みのインストルメンタル。以前と演奏が微妙に異なっていて、演奏の懐の深さに思わず引き込まれる。弾き込み抜いたプレイから生まれる、ヴィンテージ・ワインの円熟した香りのようなものだ。曲の最後で5弦のハーモニクスを鳴らしたまま、ペグに手をやってAからGに一音下げてお終いにするところがカッコイイ。9.ではジャッキーにより歌のストーリーが語られる。戦争のために女と離ればなれになった男が、女の貞節を確かめるために変装して再会する話で、トラッドでは珍しいハッピーエンドという。ベースでメロディーを奏で、高音弦でアルペジオの装飾音を散りばめるジョンの伴奏スタイルの独断場。演奏中にギターのヘッドストックが大写しになり、バウンの名前がはっきり読み取れる。ジャッキーが好きな曲といって歌いだす
10.も前の曲と同じ感じだ。バート・ヤンシュの「Moonshine」1973に入っていた「January Man」と同じ作者であると紹介され始まる
11.は、長いイントロがついていて、以前のバージョンと異なる。12.は以前は「Cruel Mother」というタイトルで、ジョン・レンボーン・グループのライブで披露されていたジャッキーの無伴奏曲。13.も新鮮な感じがするイントロ、間奏などジョンのやりたい放題だ。ジャッキーのハーモニーが懐かしい。14.15.16.はこれまたお馴染みのメドレーで、15.などベース弦を意図的にミュートしたりしていて、以前から聴いているファンにとっては面白い工夫に満ちている。急速調の16.は少し指がもつれ気味だが、「ハッハッハー」と笑いながら貫禄で弾ききってしまう。アンコールと思われる
17.では、前座で出演したクライブ・キャロルが加わって3人の演奏となる。クライブ・キャロルは1975年生まれの若いギタリストで、若い頃からギターのほかにバンジョーなども演奏し、様々な音楽に取り組み、学生時代に多くの賞を獲った天才肌の人。1998年にレンボーンと会い、その後は2年間にわたり彼のコンサートツアーに同行したという。1999年に初ソロアルバムを出し、現在も活躍中。この人のリードギターは凄い! 細かいところは気にせず、縦横無尽に弾きまくる。レンボーンが乗ってきて掛け声を出し、後半はソロの応酬合戦になり白熱したプレイが展開される。
ボーナストラックとして収録された18.は、ジョンがギターを爪弾きながら自身のキャリアを振り返るトーク。まずスキッフルが流行っていた頃にギターを弾き始め、アメリカのブルースマンに夢中になったという。ジョッシュ・ホワイト、レッドベリー、ジェシー・フラー、ブラウニー・マッギー、ゲイリー・デイビスなどのブルースマンの名前が出てきて、モノトニック・ベースによる「Blues
In E」、当時彼のアイドルだったビッグ・ビル・ブルーンジーのベーススタイルを真似た「Blues In A」を即興でさらっと弾く。次にフォークリバイバルとトラッドへの傾倒の話となり、「Snow」が当初の単音アレンジからアルペジオを駆使したフィンガースタイルに発展してゆく様が示される。マーチン・キャシーの名前が出され、トラッドとアメリカンをミックスしたものとして「Scarborough
Fair」の伴奏部分がプレイされる。そしてバート・ヤンシュの「Blackwaterside」、デイヴィー・グレアムの「She Moved Through
The Fair」の一部が弾かれる。ジョンがこれらの曲を弾くのは初めてで、これは聴き物だ。そういう動きの中で、当時彼自身が演奏したスタイルとして「Candy
Man」、「Can't Keep From Crying」、「Blues Run The Game」がボーカル付きで披露される。最後にペンタングルの話になって、ロックバンドとして苦労した経験が語られこのトラックは終了する。最後
19.はクライブ・キャロルとのデュエットによるインストルメンタルで、「Traveller's Prayer」のヴァージョンとほぼ同じアレンジで神妙に演奏される。
レンボーンの気取らない演奏がたっぷりと聴ける。
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