Folksangere (1967) [Bert & John]テレビ映像

Bert Jansh : Guitar
John Renbourn : Guitar, Vocal (1)

4. I Know My Rider
5. Bert & John Rehearsing Bells

収録: Danish TV Documentary 「Folksangre」 1967


ボブ・ディランを筆頭としたアメリカのフォーク・ブームはイギリスにも波及し、ケルト、トラッドなどの伝統音楽と融合して独自のブリティシュ・フォークが台頭した。その動きに着目したデンマークのテレビ局が1967年ロンドンに赴き制作したドキュメンタリー番組が「Folksangere」 (デンマーク語で「フォーク歌手」の意味)だ。同番組にバート・ヤンシュとジョン・レンボーンが出演、彼らにとって現存する最古の映像となった。

私が最初にこの映像を観たのは、1996年にステファン・グロスマン・ワークショップが制作し、日本ではTABギタースクールから発売されたビデオ「John Renbourn Rare Perfoamnce 1965-1995」1996 V7(番組からバートとジョンの演奏シーンのみを抽出したもの)だった。当時はYouTubeはおろかインターネットもなかった時代だったので、このような映像を観る際の感激はひとしおだった。その後インターネットで情報が簡単に検索・入手できる時代となり、この映像のソースである映像がYouTubeにアップされるようになり、2010年代より元の番組全体が観ることができるようになった。

2000年代に書いたV7の解説は以下のとおり。


何とデビュー当時の1965年の映像。デンマークのテレビ局による撮影で、よくぞ発掘してくれたとステファン・グロスマンに感謝。1. の曲名は「I Know My Rider」とあるが、R4収録の「I Know My Babe」と同じ曲。白黒の画面いっぱいにうつむきかげんで、ギブソンJ-50を弾きまくるジョンの姿は本当に若々しい。2015年に発売された「The Attic Tapes」R1に本映像と同じ演奏が収録され、その解説によると、本映像はペンタングルが根城としたライブハウス「Les Cousins」で収録されたものとある。当時のロンドンのフォーク・クラブの雰囲気とヒッピー・ムーブメントを感じることができるとても貴重な映像。2.「Bert & John Rehearsing」ではジョンとバート・ヤンシュによる「Bells」 (オリジナルはペンタングルのデビューアルバム T2に収録) のリハーサルだぞ! ギター2本によるテーマの演奏にはビックリ。彼らが住んでいたアパートの狭い部屋での演奏。彼らの間に座って顔も上げずに、退屈そうにクロスワード・パズルに没頭する長髪の女性の姿がとても面白い。そして部屋の奥にはシタールが見える。


ビデオの解説ではバートとジョンの映像は1965年のものであると解説されていたが、正しくは1967年であることがわかり、それはジョンの「I Know My Rider」が収録されたアルバム「Another Monday」R4の発売年、および 5に関しては、この後のバートのインタビューで「バンドを結成した」という発言と符合し、ファーストアルバム「Pentangle」 1968 P1のための曲作り、リハーサルだったことがわかる。そして「クロスワードをしている女性」は、バートのパートナー、ジュディ・二コラ・クロスか、ジョンの奥さんジュディ・ヒルのいずれかという話がファンの間で交わされている。部屋の片隅に置かれたシタールより撮影場所はジョンの部屋で、そこに居るのはジョンの奥さんである可能性が高いということになる。いずれにしても証拠がないので、ファンの間で推測し合う楽しみの範囲内での話だね。根拠もないのにアン・ブリッグスだという人もいるので要注意。


番組の内容について簡単に述べます。

1. I Haven't Told Her And She Hasn't Told Me  Martin Cathy And Dave Swarbrick
2. Reflexion  Marc Sullivan
3. Hard Travelin [Woody Guthrie]  Marc Sullivan
4. I Know My Rider  John Renbourn
5. Bert And John Rehearsing Bells  Bert Jansch And John Renbourn
6. The Frieze Britches / Cunla   Martin Cathy And Dave Swarbrick

マーチン・キャシー(ギター、歌)とデイブ・スワーブリック(マンドリン、歌)によるフォーク・チューン 1.「I Haven't Told Her And She Hasn't Told Me」から始まり(二人とも若い!)、レポーターによるデンマーク語のアナウンスに二人のコンサート映像(音楽なし)が被る。当時二人で活動していた彼らは、後にスティールアイ・スパン、フェアポート・コンヴェンションというイギリスを代表するバンドのメンバーとなる。ライブハウスのレス・カズンズ等、ブリティシュ・フォーク・ブームの舞台となった歓楽街ソーホの夜(ストリップ劇場など)のシーンの後、マーク・サリヴァンが登場し、ライブハウスでギターのインストルメンタルを弾く。ジョンのスタイルに近いが、デイヴィー・グレアムから同様の影響を受けたというほうが正確だろう。映像資料では曲名不明となっていたが、投稿者の指摘により「Reflexion」とした。3.「Hard Travelin」は達者なフラットピッキングによるディラン風の弾き語り。大変ギターが上手い人だが、残念なことに自己名義のアルバムを出すことはなく、他人の作品にギターで参加する程度で終わってしまった。おそらくギター演奏以外の音楽家としての個性不足、アイデンティティー欠如の問題だったのだろう。

ジョンのギターが圧倒的な 4.「I Know My Rider」の後、マークへのインタビューが入る。イギリスのフォークブームはボブ・ディランからという回答、「ドラッグはアートに影響を与えるか」という質問には答えず、「使う人は不幸だ」と言っている。 5.「Bert And John Rehearsing Bells」の後、バートへのインタビューになる。ドラッグについての同じ質問が出て、彼は、個人の問題であると答え、何でもドラッグに関連付けようとする制作者の意図らしきものに警戒している風。最後に1と同じ舞台に戻って、マーチンとデイブによるジグとリール(インストルメンタル)が演奏される。これらも曲名不明とされたが、投稿者の指摘による名を採用した。イギリスにおけるフォークブームの底辺にこれらの伝統音楽があることを暗示したものと思える。 この二人の演奏はとても上手く、音楽も良い感じだね!なお本映像にはテレビ局による字幕・クレジット表示はなく、撮影フィルムを編集した段階、放送用の準備前の状態であると推測される。 

当時はフィルム、ビデオを保存するという意識が希薄で、本作に限らず、本家大元のイギリスにこのような映像があまり残らず、他のヨーロッパ諸国で制作されたものが大切に保存され、貴重な記録・資料として残ったことは興味深い。

[2023年11月作成] 


  
First Peel Session - Top Gear, 18/2/68 [Pentangle]ラジオ音源 
 
Bert Jansch : Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion

1. Turn Your Money Green [Furry Lewis]
2. Let No Man Steal Your Thyme
3. Travelling Song [Pentangle]
4. Soho [Jansch]

BBCラジオ音源 1968年

  
 バート・ヤンシュのBBC放送音源については、2022年に8枚組CDセット「Bert Jansch BBC」Q35 が出たことで体系的にまとめられた。一方ペンタングルについては、YouTubeによるプライベートな投稿とCD・ネット配信などによる公式盤とが複雑に入り組んで大変わかりにくくなっている。しかも収録日と放送日の相違や、BBCが同じ録音を異なる番組に使い回したことが混乱に一層拍車をかけているのだ。今般公式盤が一通り出揃った感もあるので、ペンタングルのBBC放送音源について整理してみたい。

YouTube投稿者コリン・ハーパー氏のタイトル・解説(2019年3月3日)によると、1968年2月18日最初のピール・セッションとある。ジョン・ピール(1939-2004) は、イギリスで最も有名なDJ、ラジオ・パーソナリティで、BBCラジオ1の番組「Peel Sessions」で最先端の音楽をかけ続けた人。レコード会社と未契約の無名のミュージシャンをスタジオに招いて演奏させ、放送機会を与えることで、彼らの成功に寄与し、イギリスのポピュラー音楽の発展に大いに貢献した。特に70年代のパンクロックの流行は彼なくしては成しえなかったとまで言われている。

1.「Turn Your Money Green」、2.「Let No Man Steal Your Thyme」は、間奏部分のギター演奏の内容から公式盤 「The Lost Broadcasts」2004 T10における「Top Gear 68/1/29」と同じ録音と断定できる。この2者については、コリンが「より音質の良いものを使った」と言っている通り、公式盤よりもクリアーなサウンドだ。一方3. 「Travelling Song」、4.「Soho」については「The Lost Broadcasts」T10 から取ったと述べており、両者は全く同じ音質になっている。あと投稿音源には曲間にジョン・ピールによるコメントが入っているが、これは音質が劣る別の音源からとってきたものを編集で繋いだとのこと。どうりで曲とコメントとの音感が大きく異なるわけだ。また4.「Soho」は、「Bert & John」1966 T1における前奏が約15秒であるのに対し、ここでは約35秒と長くなっているのが面白い。

コリン氏は良質なオリジナルの再現のため、音質改善や編集などいろいろ細工をしたようだが、その種明かしもちゃんとしてくれる点から、彼の音源に対する愛情と誠意が伝わってきて、大変好感が持てる。

[2023年12月作成]

[2023年12月追記]
「The Lost Broadcasts」T10資料の「BBC Sessionography」によると、収録日が1月29日、放送日が2月18日、4月28日とのことです。BBCのサイト「BBC Program Index」で確認したところ、番組名は「Top Gear」、放送局はBBC Radio1、放送時間はいずれも日曜日の14:00。番組の内容が異なるので、再放送ではなく使い回しです。ファースト・アルバムおよび「Traveling Song」T8 の録音は2月(「The Albums」T13の年表より)なので、本音源はその以前の収録、またファースト・アルバムの発売日が5月17日なので、その前の放送ということになります。


Peel Session - Night Ride, 9/5/68 (1968) [Pentangle]ラジオ音源 
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion

1. The Time Has Come [Ann Briggs]
2. Mirage [Pentangle]
3. Hear Ny Call [Staple Singers]

BBCラジオ音源 1968年

 
2回目のピール・セッション。「The Lost Broadcasts」T10の「BBC Sessionography」では5月9日収録、5月29日放送ということで、収録日は「The Albums」T13の年表で確認できたが、「BBC Program Index」では番組放送の所在を確認できなかった。ファースト・アルバムの発売日が5月17日なので、その少し後の放送にあたる。そしてこの音源はいままでに発表されたアルバム、ネット配信にはなく、コリンの投稿で初めて聴くものだ。なお5月29日の放送時には、2月18日録音の「Traveling Song」と「Let No Man Steal You Thyme」も使い回しで流れたという。

1.「The Time Has Come」の公式盤は「Sweet Child」T3 のライブ録音で、そこでレンボーンはピックアップのついたアコギまたはエレキギターを使用しているため、本音源での純粋なアコギによるソロはとても新鮮に聞こえる。2.「Mirage」でのレンボーンの間奏ソロはスタジオ録音版に比べて大人しいが、ダニーのベースは録音の違いかもしれないけどアグレッシブ。スタジオ録音「Pentangle」T2の完奏に対し、ここではフェイドアウト。 3.「Hear Ny Cal」の演奏はとても丁寧なため、公式スタジオ録音のように聞こえてしまうが、レンボーンのソロの内容は全く異なっているので、聴いていて本当に楽しい。

音質面ではスタジオ録音の「Pentangle」T2にかなわないが、それでも十分良い音で楽しめる逸品。

[2023年12月作成]


Visefestival i Kroa, Dolphin Club, Oslo (1968) [Pentange]テレビ映像 
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion

1. The Time Has Come [Ann Briggs]
2. Mirage [Pentangle]
3. A Woman Like You [Bert Jansch]
4. Turn Your Money Green [Furry Lewis]
5. Hear My Call [Staple Singers]
6. Haitian Fight Song * [C. Mingus]  
7. Let No Man Steal Your Thyme
8. Bells * [Pentangle]  
9. Bruton Town
10. Travelling Song [Pentangle]
11. Pentangling [Pentangle] 


収録: 1968年5月30日 Visefestival i Kroa, Dolphin Club, Oslo
放送: 1968年6月7日  Visefestival i Kroa, NRK TV (1~9)
    1968年7月19日 Utdrag fra visefestivalen i Kroa, NRK TV (10,11)

注: 3はジョン非参加、*はインストルメンタル

 

本当に凄い映像が出てきました!!

収録日の1968年5月30日は、あの「Sweet Child」のロイヤル・フェスティバル・ホールでのライブの約1ヶ月前にあたり、ペンタングル絶頂期のプレイを捉えた映像なのだ。ノルウェーの国営テレビ局が、2010年代の後半に1960~1970年代の音楽番組のアーカイブをインターネット公開したもののひとつで、彼らの初期の演奏がこれだけまとまったかたちで残っている映像は、本国イギリスにもなく、大変貴重なもの。当時ノルウェーはフォーク音楽が盛んだったようで、同国の学生会が主催したコンサートを収録したもののようだ。白黒の画面が時代を感じさせるが、それなりに陰影に富んでいて、クローズアップのショットも多く変化に富んでいる。各メンバーの精気と野心に溢れた表情がとても印象的。モノラル録音で、テープの劣化と思われる音が悪い部分もあるが、小さな会場らしいクリアなサウンドが素晴らしい。バランス的には、バートとジョンのギターが少しオフ気味であるが、アタックの強いダニーのベース、繊細なテリーのドラムスが生々しく、このグループのリズムセクションの凄さを十二分に味わうことができる。

会場のドルフィン・クラブは収容人員300人の音楽ホールで、ステージ上の2階席も満員だ。ステージ向かって左にジョン、右にバートが、そして中央にジャッキーが背もたれのない椅子に座り、背後左にダニー、右にテリーというセッティング。1.「The Time Has Come」は、ダニーとテリーのリズムセクションがクリアでアコースティックな音なのに対し、二人のギターはサウンドホールに装着されたピックアップによりエレキギターっぽい音になっている。ステージ上も含め4~5台のカメラで撮影(当時のカメラの大きさが時代を物語っている)されており、様々なアングルに切り替わる。特に各プレイヤーのクローズアップが多く挿入され、彼らの表情がはっきり見れるのが面白い。3.「A Woman Like You」はバートのソロで、6弦のチューニングをDに落としてから弾き始める。途中テープの劣化の思われる音が悪い箇所があるのは残念。ここでもバートの顔以外にギターを弾く右手や調子を取るつま先のアップが入る。 4.「Turn Your Money Green」はジョンとジャッキーのデュオ。ジョンがクールな表情で易々と弾いているのが凄い。5.「Hear My Cal」では、ジャッキーの瞳の奥までが見えるクロースアップが素晴らしく、クールな美しさが際立っている。6.「Haitian Fight Song」の映像が見れるなんて夢のようだ。体をぶつけるように弾くダニーのプレイは迫力満点。7.「Let No Man Steal Your Thyme」は、二人のギタリストが煙草を吹かしながらの演奏。8.「Bells」では、ジョンのギターのボリュームが少し小さいかな?テリーの繊細なドラムソロの味わいは満点。グループの演奏に聴き入るジャッキーの仕草も様になっている。9.「Bruton Town」は、コンサートのハイライトらしい気合がこもった演奏・歌唱だ。

以上1~9までが6月7日の放送で、あとの2曲は後日7月19日に他のアーティストの演奏と一緒に放送された。10.「Travelling Song」は、「バートがコマーシャルなサウンドの曲です」と紹介している。11.「Pentangling」のモダンな感じの演奏、ダニーのベースソロもカッコイイ。

「Sweet Child」と同じ時期、最高の演奏をしていた頃のライブを捉えたもので、映像・サウンドともに素晴らしく、かつ貴重な宝もの。

[2017年2月作成] 
 
[2022年4月追記]
2017~2022年にCD販売、ストリーミング配信された「Live In Oslo 1968」 (複数の異なるタイトルあり) T15の音源は、本映像からのものです。


 
Peel Session - Top Gear, 3/11/68 (1968) [Pentangle]ラジオ音源  
 
Bert Jansch : Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion, Vocal (4)

1. Sovay
2. Sweet Child [Pentangle]
3. I Loved A Lass
4. In Your Mind [Pentangle]

BBCラジオ音源 1968年

 
ペンタングル1968年のピール・セッション4回のうちの最後で、9月23日録音(「The Albums」T13の年表、「The Lost Broadcasts」T10の 「BBC Sessionography」)、11月3日放送(「BBC Program Index」で、番組名「Top Gear」、放送局 BBC Radio1、放送時間 日曜日15:00)と確認できた。アルバム「Sweet Child」T3の発売日が11月1日なので、その直後の放送。

本音源は当日録音された5曲のうちの4曲。残る1曲は「I've Got A Feeling」で、12月15日(日)15:00の「Top Gear」で放送された。これらの5曲についてはCDによる公式盤 「The Lost Broadcasts」T10 に「Top Gear 68/9/23」として収録されている。ただしT10の音質は本音源に比べてずっと悪く、しかも「Sovay」については、コリンが使用したソースとは異なり、司会者の声がイントロに被った音源(BBCが作成した放送用レコード)から採取したため、ジャッキーの歌いだしから始まるようになっている。そういう点で、本音源のほうが優れているといえるが、T10はコリンがYouTubeに投稿していない「I've Got A Feeling」を含んでいる点で捨てがたいものがある。

なお1968年3回目のセッションについてはコリンの投稿がないが、「The Lost Broadcasts」T10に「Top Gear 68/7/2」として6曲が収録されている。録音日が7月2日(「The Albums」T13の年表)、放送日7月7日と8月4日(「BBC Program Index」で、番組名「Top Gear」、放送局 BBC Radio1、放送時間 日曜日15:00)と確認済。

[2023年12月作成]


 
Peel Sessions - Night Ride, 11/12/68 (1968) [With Jacqui McShee] ラジオ音源 
 
Jacqui McShee : Vocal 
John Renbourn : Vocal (1), Guitar

1. Watch The Stars
2. I Can't Keep From Crying Sometimes [Trad.]
3. Every Night When The Sun Goes In
4. My Johnny Was A Shoemaker [Trad.]

録音: 1968年12月10日
放送: 1968年12月11日 BBC Radio2


ナイトライドは、1967年から始まったBBCラジオ の深夜番組で、夜間労働者や不眠症の人のための番組として企画されたが、1968年ジョン・ピールが最初55分のDJを担当するようになった水曜日につき、より先鋭的な内容になった。ジョン・ピール(1939-2004) は、イギリスで最も有名になったDJ、ラジオ・パーソナリティで、BBCラジオ1の番組「Peel Sessions」で最先端の音楽をかけ続けた人。レコード会社と未契約の無名のミュージシャンをスタジオに招いて演奏させ、放送の機会を与えることで、彼らの成功に寄与し、イギリスのポピュラー音楽の発展に大いに貢献した。特に70年代のパンクロックの流行は彼なくしては成しえなかったとまで言われている。

1968年12月11日(水)の放送は、ゲストにジョン・レノンとヨーコ・オノが登場したため、後年同番組のアーカイヴのなかで最も有名なものになった。同日はゲストへのインタビューと、複数アーティストのレコード、予め録音されたスタジオ・ライブが流された。スタジオ・ライブは「Peel Sessions」からのもので、その結果本音源のタイトルに括弧書きがついている。ちなみに同日放送された他のスタジオライブは、ジョン・マーチンだった。

エアーチェックらしく、音が割れる箇所もあり音質的にはイマイチであるが、ジョンとジャッキーの初期の演奏を聴ける意義は大きい。ただし1~3 は、2020年にLondon Calling というレーベルから発売された「Live On The Air 1967-1969」 T14 で発表済(そこでは日付が12月12日となっているが、12月11日が正しい放送日と思われる)なので、本音源からは 4.「My Johnny Was A Shoemaker」のみが未発表のトラックだ。「The Lady And Unicorn」1970 R6では、歌無しでギター、バイオリンとフルートとのアンサンブルだったが、ここではジャッキーとのデュオが楽しめる美味しいトラックだ。

[2022年10月作成] 


 
Samedi et Compagnie (1969) [Pentange] テレビ映像 
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums

1. Travelling Song [Pentangle]  


放送: 1969年3月15日 French TV "Samedi et Compagnie"

         

ペンタングルがフランスのテレビ番組に出演した映像を観ることができた。冒頭ミニスカートをはいた女性達のダンス、ファッションがいかにも60年代風で、ポップなヒットソングにはいいんだけど、ペンタングルの音楽に合わせて踊るなんて.....笑っちゃうね!!流れる音楽はストリングスが入ったスタジオ録音のもので、当時はざらにあった口パク映像だ。メンバーも居心地が悪そうで、バートやジャッキーは、最初は口を合わせているが、後半になるとニタニタ笑っている。リードギターを弾くジョンは全くやる気がなさそうで、画像と音が全然合っていない。間奏部分で、女性ダンス隊が再登場するのが圧巻!テリーは目立たずドラムスを叩いており、ダニーだけが、笑いながらも、きちんと指を動かしている。

口パク映像の可笑しさが味わえる珍品。


 
Peel Session - Top Gear, 18.5.69 (1969) [Pentangle]ラジオ音源 
   
Bert Jansch : Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion, Vocal

1. Bruton Town
2. Sally Go Round The Roses [Sanders, Stevens]

BBCラジオ音源 1969年

ペンタングル1969年のピール・セッションで、「The Lost Broadcasts」T10の 「BBC Sessionography」によると 5月12日録音、5月18日放送。ただし「The Albums」T13の年表と「BBC Program Index」には記録がない。録音された4曲のうち「Once I Had A Sweetheart」と「Hunting Song」は音源の存在が確認できないそうで、聴くことができるのは、1. 「Bruton Town」と 2. 「Sally Go Round The Roses」の2曲。

まず前者のみコリンが上記タイトルでYouTubeに投稿し、その後BBCの海外向け放送「BBC World Service」の番組「Top Of The Pops」で上記2曲を使い回しで使用した音源が見つかったようで、「World Service Interview + Top Gear 12/5/69 Session」のタイトルで投稿された。そこにはジャッキーのインタビューがついており、彼女が1969年2月のアメリカ・ツアーの成功と、7月の再訪予定を語っているので、当該放送は同年3月から6月の間に収録・放送されたものと推測できる。後者の音源のほうが音質面では優るが、1.「Bruton Town」は残念ながら司会者のアナウンスがイントロに被っている。

なお上記 2曲は「The Lost Broadcasts」T10に収録されたが、「Bruton Town」についてはアナウンスが被ったイントロをカットしているため、歌いだしから始まるようになっている。したがって「Bruton Town」の完全版はコリン投稿の前者音源(上記タイトル)でのみ聴くことができる。

コリンは本音源がピール・セッションの最後と述べている野に対し、「BBC Sessionography」には1969年8月17日録音、8月放送? 番組Top Gear? という詳細不明の3曲(「The Cuckoo」、「Hunting Song」、「Light Flight」)の音源が存在するとされ、それらは「Live At The BBC」T9 と「The Lost Broadcasts」T10に収められているが、よく注意して聴くと、「Basket Of Light」1969 T4のために録音されたトラックを使用しているようだ。同アルバムの録音が6月で、発売が10月なので、発売前に放送で流したものと推定される。

[2023年12月作成]


Take Three Girls Opening Theme (1969)  テレビ映像 
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums

1. Light Flight [Pentangle]  


放送: 1969年 BBC TV 'Take Three Girls' Opening Theme

         

ペンタングルのアルバム「Basket Of Light」T4 1969に収められた 「Light Flight」は、BBC放送のテレビドラマ・シリーズ「Take Three Girls」のテーマソングに採用され、シングルカットされ全英43位のヒットとなった。約40年後の2008年になって、当該テレビ番組のオープニングテーマの映像を観ることができた。

BBC放送が製作した「Take Three Girls」は、1969年から1971年までの間に、2シリーズ(計24回)放送された。題名のとおり3人の女性の物語で、オープニング・テーマは、チェロ弾きのビクトリア、シングルマザーのケイト、美術学生のアヴリルがロンドンの街を歩くシーンに、ペンタングルの演奏が流れる。最初はジャッキーの独唱から始まり、バンドがフィルインする構成。ジャッキーのボーカル、演奏ともにレコードに収録された演奏とは明らかに異なるもので、最後はジャッキーのスキャットが続いて終わる。

当時のロンドンの雰囲気が感じられる映像だ。

[2022年1月追記]
「Take Three Girls」のテーマソング「Light Flight」の演奏については、上記では「レコードとは異なるもの」と書きましたが、公式録音のベイシック・トラックを編集して短くしたものであると考えられます。


 
Take Three Girls "Stop Acting" (Season1 Episode 1) (1969) テレビ映像  
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal, Hamming
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Hamming, Drums, Percussion, Vibraphone

Susan Jameson : Kate
Liza Goddard : Victoria
Angela Down : Avril

Hugo Charteirs : Writer
Tristan de Vere Cole : Director

放送 : 17 November 1969, BBC1
  
 

「Take Three Girls」は、BBC放送が初めてカラー撮影で製作したドラマで、「Swinging London」と呼ばれる1960年代に大きく変わったカルチャーを、3人の若い女性(シングル・マザーのケイト、チェロ弾きのヴィクトリア、絵描きのアヴリル)を通じて描いた作品。1969年11月~1970年2月の期間、月曜日の21時10分よりBBC1で12回放送され、好評を受けて、1971年3月~6月にシーズン2として、出演者を一部入れ替えて12回放送された。さらにシーズン1の12年後の1982年9月~10月に、当時の出演者のリユニオンにより、4回の「Take Three Woman」が放送された。当時のBBCは映像を保存するという体制がなかったため、シーズン1の6回分、シーズン2の8回分は廃棄され失われてしまったが、ヴィクトリアを演じたリザ・ゴッダード等が、生き残ったエピソードの一部をYouTubeに投稿したため、合わせて8回分を観ることができる。

我らがペンタングルが音楽を担当していて、自分達のレパートリーをベースとした演奏は、当時の若者と社会を描いた現代ドラマにしっくり合っている。以下、私が観ることができたエピソードにつき、粗筋とペンタングルの演奏が聴ける場面について述べます。内容の濃い早口の台詞が大変多い舞台劇のようなドラマで、かつ慣れないイギリス英語のため、聞き取りが大変難しいのですが、わかる範囲内で書きます。なお台詞の一部のみの聴き取りなので、ドラマの良否についてはコメントしません。

初回「Stop Acting」(50分)は、ケイト・オニール(スーザン・ジェイムソン)が主人公。
☆59:38-00:20 「Light Flight (Opening Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums (時間表示は映像下部にあるタイムコードの時間です)ロンドンの街角風景と3人の主演女性のポートレイト。
☆00:40-00:47 Guitar, Bass 断片
赤ん坊を抱いたケイトがコマーシャルの撮影に臨むが、15テイクを重ねてもうまくいかず、首になる。
☆02:37-02:43 Vib, Bass 断片
ロンドン南西部SW3(郵便番号よる地域)にある彼女のアパートの前で牛乳配達員と会話。彼女が俳優を志していることがわかる。家に入り1階に住む盲目の初老男性と親しく歓談。
☆03:51-03:57 「In Time」 Guitar, Bass 断片
自宅を訪れた父親の愛人との会話。ケイトは彼女のことを認めていて、親しそうだ。教会で息子の洗礼式。
☆07:02-07:10 「Light Flight」 Humming, Guiar, Vib, Bass
☆07:38-08:12 「Light Flight」 Humming, Guiar, Vib, Bass

両親の家での洗礼式語後のパーティー。ケイトの父親は牧師で、母親との結婚は破綻しているが、牧師は離婚できないため、公認の愛人がいる(本ドラマの登場人物は、当時の価値観ではかなり進歩的な人々のようだ)。ケイトが各親に友人のヴィクトリアとアヴリルを紹介。ケイトは俳優のオーディションを受けるとのこと。ケイトのことを心配する父親が友人に彼女の世話を依頼。
☆15:12-15:14 Guitar 断片
ケイトがヴィクトリアにアパートの部屋を案内。家賃を払ってシェアすることに同意。会話のなかで、ケイトが離婚してシングルマザーになったことが明かされる。タバコを吸うケイト(当時のテレビでは、登場人物が平気で吸っていましたね)。
☆22:07-22:32 「Sally Go Round The Roses」Guitar, Bass, Drums
☆22:59-23:13 「Sally Go Round The Roses」Guitar, Bass, Drums

BBCでウェイトレス役のオーディションを受ける。個室で面接者と台詞読みをするが、相手のセクハラに耐えきれず、あえなく落選(面接者の傲慢さと、「そんなの慣れているから」と言う別の候補者の態度は、今ではとんでもない話だが、当時そのようなことは日常茶飯事であったことがわかる)。
☆31:12-31:17 「No Exit」 Guitar 断片
アパート1階で盲目の初老男性と酒を飲む。俳優になりたいが、うまくいかず悩む心情を吐露。男の優しい応対に彼女は感謝。
☆39:26-39:29 「No Exit」 Guitar 断片
父親の家で、父の友人がケイトに援助の申し出。ケイトは家に戻り、赤ん坊のおしめ替え。
☆40:59-42:22 「A Maid That's Deep In Love」 Hamming, Guitar, Bass, Drums
☆42:44-42:51 Guitar 断片

アヴリルが来て部屋を見学。父の友人から電話で、出版社の秘書の仕事紹介があり、ケイトはそのオファーを受ける。アヴリルにいつからここに住むか尋ねるが、彼女は回答を保留(次回のエピソードで親との問題があることがわかる)。アヴリルが帰った後、赤ん坊を抱えたケイトは、カレンダーの宗教画(マリアの母子像)を見て、自分達と重ね合わせて母性を示す。
☆46:41-47:02 「A Maid That's Deep In Love」 Hamming, Guitar, Bass, Drums
☆47:03-48:10 「Light Flight (Ending Theme)」
Humming, Guitar, Bass, Drums
エンディング・クレジット


テーマを除き、背景音楽としてさらっと演奏しているが、原曲があるものが多いため、それなりに楽しめる。本エピソードではテーマを除き、歌詞を含むボーカルはなく、ジャッキーのハミングのみ。

注) 本エピソードは、粗筋の資料が見つかったので、少し詳しめに書くことができましたが、今後投稿するその他のエピソードは資料がないため、聞き取りでわかった範囲内での記述になります。

[2022年12月作成] 


  
Take Three Girls "Devon Violets" (Season1 Episode 2) (1969) テレビ映像   
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal, Hamming
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion, Vibraphone

Susan Jameson : Kate
Angela Down : Avril
Liza Goddard : Victoria

Julia Jones : Writer
John Matthews : Director

放送 : 24 November 1969, BBC1

   

粗筋とペンタングルの演奏が聴ける場面について述べます。内容の濃い早口の台詞がとても多い舞台劇のようなドラマで、かつ慣れないイギリス英語(コックニー訛り)のため、聞き取りが大変難しいのですが、わかる範囲内で書きます。なお台詞の一部しか聞き取れないので、ドラマの良否については、コメントしません。

第2回目 「Devon Violets」(50分)は、アヴリル(アンジェラ・ドーン)が主人公。
☆00:00-00:43 「Light Flight (Opening Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
(時間表示は映像左上部にあるタイムコードの時間です)ロンドンの街角風景と3人の主演女性のポートレイト。
☆00:44-02:01 「Light Flight」 Vib
アヴリルが美術館の展示室の椅子に腰掛けて絵を見ている。隣りに座った夫人に時間を聞き、慌てて立ち上がり、外に飛び出す。
☆02:18-03:26 「Light Flight」 Vib
走ってオフィスに戻る。タイプ室で上司から呼び出され、昼休みの戻りの遅刻を注意される。タイピストの職を得てから6ヵ月。
☆05:52-06:02 「Light Flight」 Humming, Guitar
自宅におけるアヴリルの両親の会話。共働きの労働者階級の家庭(夫は失業中?)で、早口のコックニー訛りがキツイ(そのため、聴き取りが大変難しい)。生活は厳しく、妻は愚痴をこぼしている。以前クリスマスに夫からもらった高級石鹸の詰め合わせを箪笥に入れ、大切にしている。
タイプ室で、アヴリルが紙に書いた素描を同僚が見て感心する。同僚男性からデートに誘われるが断り、スクーターでケイトのアパートまで送ってもらう(スクーターに乗るシーン 12:37-13:29は、残念ながら映像の不調により音声が消えています。その間におそらくペンタングルの音楽が流れているものと思われます)。アパートでケイトとヴィクトリアに会い、ケイトから「いつ引っ越してくるの?」と聞かれるが、「もうちょっと後で」と答える。「すでに家賃をもらっているので、申し訳ない」、「親と話がつき次第、引っ越す」。
☆15:37-15:45 「Light Flight」 Humming, Guitar
アヴリル、自分の部屋を感慨深げにみつめる。
☆15:56-17:36 「Im Time」 Guitar, Bass, Drums
母が仕事を終え、帰りがけに買い物。自宅に戻ると、子供たちが帰っている。(ばらばらに写るので、おそらく)娘3人・息子3人の大家族で、アヴリルは最年長。すぐ下の妹が自分の服を勝手に着ているので怒る。狭い家に大家族が住み、いつも騒がしい。うんざりしたアヴリルは、家を出てゆくと父に訴える。フラット・シェアによる住処を見つけたと言うが、娘を心配し、家族が離れることを嫌う母は許さず、激しい言い争いとなる。「ここに永遠にいることはできない!」 夫が妻をなだめ、アヴリルが書いた絵を見て、彼女は画家になりたがっていると言う。夫は妻に「お前は変わった。以前は俺の言う事を聞いてくれた」。アヴリルは紙袋で荷作りを始める。「今晩引っ越す」 お金の話になり、2週間前から家賃を払っていること、そのことを予め言わなかったことに激怒し、母はアヴリルを平手打ちする。母は彼女が家を出ると破滅すると主張するが、父は自分のスーツケースを渡し、「これを使え」と言う。アヴリルは家を出て、仕事をしながら絵の勉強をすると言う。母は一緒住む人はどんな人か尋ね、付いて行って確かめると言い出す。逆上したアヴリルは、「もしそうしたら二度と戻らない」と言い放つ。母は放心状態になり、荷物を持ったアヴリルは家を出てゆく (20分以上にわたる、音楽なしの台詞の掛け合いのシーンは壮絶で、意味がよく判らなくても、心が抉られます。母親役のステラ・タナーとアンジェラ・ドーンの演技が凄い)。
☆41:22-44:46 「Light Flight」 Vib, Guitar, Bass
荷物を持って夜の街を歩くアヴリル。バスを待っていると、母が駆け寄り、「風呂に入るだろ?」と言って包みを渡す。バスに乗り、ケイトのフラットに着いたアヴリルは、自分の部屋に自作の絵と両親の写真を飾る。包みを開けると、それは母が大切にしていたスミレの香り(Deveon Violets)高級石鹸で、それを見つめるアヴリル (このシーンで不覚にも涙がでました)。
☆45:36-46:52 「Light Flight (Ending Theme)」 Humming, Guitar, Bass, Drums 
エンディング・クレジット

「Light Flight」のメロディーを場面に応じて様々なテンポ・楽器構成で演奏しており、そのヴァリエーションを聴くのが楽しい。

[2022年12月作成]


Take Three Girls "Keeping Hope" (Season1 Episode 10) (1970) テレビ映像   

 

Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal, Hamming
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion, Vibraphone

Angela Down : Avril
Susan Jameson : Kate
Liza Goddard : Victoria

Hugo Charteirs : Writer
Tristan de Vere Cole : Director

放送 : 19 January 1970, BBC1

注: 本ドラマの核心のひとつ、ミニアチュール(Miniature) のサンプル

   

第1, 2話とはかなり毛色が異なり、舞台がロンドンでなく、スコットランドになっている。スコットランド訛りという難物に加えて、謎めいた筋書きのため、聞き取りが困難で物語の核心をつかむことができませんでした。従って判った部分のみ描きます。今回観たYouTube投稿は、映像・音声ともに質が劣るもので、音声の聞こえにくさと「ブーン」というヒスノイズのため、音楽を聴く目的としても残念な状態。そういう問題がありながら、ペンタングルが本エピソードの雰囲気に合わせて特異な音楽を付けているというメリットがある。

第10回目 「Keeping Hope」(50分)は、ケイト(スーザン・ジェイムソン)が主人公。
[Reel 1 :20分]
☆00:00-00:43 「Light Flight (Opening Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums

(時間表示は映像左下部にあるタイムコードの時間です。本映像は3巻のフィルムからなっており、タイムコードは各巻毎の時間表示となっています) ロンドンの街角風景と3人の主演女性のポートレイト。
ロンドンのフラットでのケイト、ヴィクトリア、アヴリルの会話。ケイトが蔵書目録を作成する仕事を命じられ、スコットランドへ行く話しをしている。

☆02:41-03:34 「So Early In The Spring」 Humming, Bass
車から見えるスコットランドの景色。赤ん坊を連れたケイトが滞在先の貴族の館に到着。
☆02:38-03:32 Guitar, Bass
召使の男に迎えられ館に入るが、重々しい雰囲気が漂う。居間で館の女主人(80才代?)に面会。彼女にはカナダに甥がいて、「私が死ぬのを待っているのよ」。ケイトの赤ん坊を見て微笑むが、「私には4人の息子がいたが皆戦死した」と呟く。召使の女が来て食事の確認をする。彼女の態度が不気味。女主人が召使夫婦と彼らの子供についての話をする(夫婦と子供の素性がドラマの核心のひとつのようですが、よくわかりませんでした)。女主人に「離婚したの?」と聞かれる。召使の息子が薪を運んでくる。彼は障害者で話すことができない。薬を飲んでいれば大人しいとのこと。女主人が日常の暮らしぶりを説明。4月の土曜日に屋敷を一般公開し、価値のあるエリザベス王朝時代のミニアチュール・コレクション(小さな肖像画)を見せるとのこと。書斎に案内され、室内のピアノを指して「アースキン氏が明日ピアノを弾きに来る」。
☆10:57-11:30 Humming, Bass, Drums
女召使に泊まる部屋を案内される。他の空室は鍵がかかっており入れないと言われる。
☆12:19-12:42 「So Early In The Spring」 Humming
☆12:43-12:42 「So Early In The Spring」 Guitar, Bass, Drums
しばらくしてドアを開けて廊下に出ようとすると女召使と目が合う。彼女はケイトを見張っている様子で不気味。
女主人とディナー。女主人「アースキン氏の妻はこの地が嫌い」。ケイト「私は好きですわ」。女主人はアースキン氏と会うのを楽しみにしている。
☆13:51-13:56 Humming,
ケイトが書斎で作業。別室に入り、垂れ幕を上げて壁に飾られたミニアチュールのコレクションに見とれる。
☆14:18-14:46 Guitar (バロック調)
ジョン・アースキンがやって来てピアノを弾く。彼の妻と子供はアメリカにいるが、結婚は破綻していて帰ってくる予定はなさそう(彼が弾くピアノは、主にクラシック音楽)。彼は経営コンサルタントで、小さい頃からここでピアノを弾かせてもらっているとのこと。
女主人と女召使の会話。女召使の話しぶりは主従関係に見えない。女召使は客人を嫌っている風。女主人は召使の子供が薬を飲んでいない時にコリーを殺したことを指摘(? この核心部分よくわからない)。
[Reel 2 :15分]
☆00:00-00:11 Humming,
ジョンと戦死した女主人の息子の写真を見ながら会話(女召使の話が出て、核心と思われるがよくわからない)。ケイトは女召使が好きでない、怖いと言う。コーヒータイムの間、心配そうに赤ん坊を彼女に預ける。ジョン、ケイト、女主人のコーヒータイム。ジョン「本の分類作業は熟練作業だ。僕には出来ない」とケイトの仕事を褒める。ジョンがケイトに「何かあったら電話して」と言って去る。
☆07:05-07:14 Guitar (バロック調)
女主人がケイトにミニチアチュール・コレクションを見せるが、さっきケイトが見た時と比較して、なくなっているものがある。
☆07:21-07:57 Guitar, Bass
☆08:10-09:08 Bass
☆09:09-11:10 Hamming, Vib, Guitar, Bass, Drums
ケイトが螺旋階段を上って。上の部屋に行き、ミニアチュールの複製を作っている作業台を見つける。扉に鍵が掛けられ閉じ込められたケイトは、建物の外部の通路を伝って脱出し、自分の部屋に戻るが、その間階下にいる女召使に目撃される。
女主人とケイトのディナー。ケイト「彼(男召使)は絵が描けるの?」、女主人「いや、そうは思わない」。
☆12:10-12:35 Vib, Guitar, Bass
ケイトは電話しようとするが通じない。
☆13:08-13:32 Bass
地下室に行くが、息子を見かけて身を隠す。男召使が現れ「電話は壊れていて、修理依頼中です」、ケイト「車を借りたいのですが」、「庭師が休暇で使っていてありません」。
[Reel 3 :15分]
電話が鳴ったので出たが繋がらない。女主人が「昔、義理の娘ができるところだったが殺された」。息子が来て薪をくべる。女主人が過去の殺人の経緯について話す(正確には聞きとれないが、召使達が娘を嫌い、息子に薬を渡さないことによりコリーを殺させた。代わりに別の人が罪に問われたと言っているようだ)。
雨が止んだので、女主人に赤ん坊を託して、ケイトは近くの売店まで歩き、電話を借りる。
召使部屋での夫婦の会話。男召使は「私はここでの静かな生活が好きだ、主人にプレセントを贈る」。
男召使が、女主人に誕生日プレゼントとしてミニアチュールの模写を贈る。「ミニアチュールの模写をしました。それらを売ることもあります」。女主人「模写を売るのであれば構わない」(ここでの男召使はとても礼儀正しい)。
ジョンの車の中。ケイト「彼らは模写を作ってオリジナルを売っている」。ジョン「彼らは模写を売っているのでは」。「ひとりで屋敷にいるのは怖いので一緒に居て」。「ベッドの中でいいかい?」。ケイトはジョンの手を握って微笑む。
女主人は女召使いに、ケイトは散歩に行ったと言う。ケイトがジョンと帰ってくる。女主人が男召使からもらった模写を見せてもらい、ケイトは納得する。
ベッドの中でのジョンとケイトの会話 「男召使は昔は危険な男だった」(ジョンの、殺人の真相・顛末に関する核心的な話しは、残念ながら理解できず)。「彼は才能があり、恐らく模写をアメリカのアンティック・ディーラーに売っていると思う」。ジョンは今の結婚を清算してケイトと結婚することを望み、ケイトはジョンに抱きつく。
ロンドンのフラットで、ヴィクトリアとアヴリルの会話(ケイトの帰還の事について話しているよう)。
ジョンの車で二人は屋敷を去る。
☆14:12-15:19 「Light Flight (Closing Theme)」 Humming, Guitar, Bass, Drums
エンディング・クレジット

ということで、殺人の経緯・結果という物語の核心が聞き取れないという体たらくですが、他のエピソ-ドにない不気味さとサスペンスに満ちていて、何とも言えない雰囲気のドラマに仕上がっている。それに合わせたペンタングルの演奏がとても面白い。

前述の通り、もっと音質が良ければいいのに(残っているだけありがたいと思うべきでしょうね~)。そして核心部分についての聞き取りができたら、または粗筋に関する資料があればもっといいんだけど........... 誰かわかる人がいたら教えて(ブログコメントでお願いします)!

[2022年12月作成]


 
Swing In Mit The Pentangle (1970)  テレビ映像  
 
Bert Jansch : Vocal (3, 4), Guitar (1, 3, 4, 6, 7), Banjo (5)
John Renbourn : Back Vocal (6), Guitar (1, 2, 3, 4, 6), Sitar (5)
Jacqui McShee : Vocal (1, 4, 5, 6, 7). Scat Vocal (3)
Danny Thompson : Bass (1, 3, 4. 5, 6.)
Terry Cox : Drums, Percussion, Glockenspiel (6), Harmony Vocal (5) 

Wim van der Linden : Director

1. Light Flight (Imcomplete) [Pentangle] 
2. Guitar Instrumental [Renbourn]
3. Train Song [Pentangle]
4. Bruton Town [Traditional]
5. Rain And Snow [Traditional]
6. Hunting Song [Pentangle]
7. Jack Orion (Incomplete) [Traditional]

収録: Scotland, Probably The Beginning Of April, 1970
放送: WDR German TV, "Swing In Mit The Pentangle" 1970

注: 2 はバート不参加
 
WRDは Westdeutscher Rundfunk Koln (西ドイツ放送)の略称で、ケルンに本部がある公共放送局。そこで制作された番組にペンタングルが出演した映像。「Swing In Mit」は「....とスィング」という意味で、オランダ人のウィム・ヴァンダー・リンデン(1941-2001) が監督したドキュメンタリーシリーズ。本作のペンタングル以外に、ニール・ヤング、アレサ・フランクリン、シカゴ、チェンバース・ブラザース、B.B. キングなどの映像が残っている。

番組はコンサート終了と楽屋のシーンから始まる。コンサート後のリラックスしたメンバーの様子、サインなどのファンサービス、インタビュー、写真撮影等のシーン。ジャッキーとテリーを除き煙草を吸っているのは、当時当たり前の風景だね。各メンバーのクローズアップ毎に名前の字幕が出る。皆若々しいけど、1970年とあって初期の彼らとは異なる少し疲れた雰囲気が漂っている。ここでライブ演奏の 1.「Light Flight」が始まる。少し暗めの画面で、ジャッキーの超アップショットが印象的な撮影。本映像は歌い手の顔が画面いっぱいに広がるシーンがとても多い。残念ながら曲は途中でフェイドアウトし、ツアー移動中の電車内のシーンになる。テリーは寝ていて、他の4人は読書やトランプに興じている。ここではマネージャーのJoe Lustig が喋るシーンが貴重。ジョンが電車内で愛用のギブソンJ-50でバンジョー・チューン、ブルースを爪弾くシーンで、グループの星型シンボルマークと番組名の字幕が出る。電車が走る音に被って 3.「Train Song」が流れる。ジョンはドット・ポジションマークのギブソンES-335、バートはピックアップを装着したアコギを弾いている。この曲はダニーの弓弾きのエンディングと拍手までしっかり収録。間髪を入れずに始まる 4.「Bruton Town」は、ジャッキーの他に俯きながら歌うバート、目を閉じながらソロを弾くジョンの顔が超アップ過ぎて少し異様な位だ。この曲も完奏。

5.「Rain And Snow」では、ジョンがシタール、バートはバンジョーを弾いているが、楽器を演奏する姿があまり写らないのは残念。歌い終わるところで、テリーが前に出てジャッキーと同じマイクで歌っていた事がわかる。曲の短さから映像は演奏の途中から始まったようだ。6.「Hunting Song」ではテリーがグロッケンを叩くシーンが見える。何度も言及するが、ジャッキーの瞳の奥まで見えるような超アップが生々しい。それにしても表情を変えずに歌う様はクールだよね。最後の「ラララ」の合唱ではジョンが目を閉じながら歌うシーンが入る。拍手なしでカモメが鳴く海岸シーンに切り替わり、「Dunooter Castle Scotland」という字幕が表示される。この断崖に建つ廃墟の古城の正しい綴りは「Dunnottar Castle」で、スコットランド東海岸のストーンヘイヴン(Stonehaven) の近くにある。そこで散策するメンバーの姿と遺跡に腰掛けてバートの伴奏で、咳をしながら 7. 「Jack Orion」の断片を歌うジャッキーのシーンにエンドクレジットが表示され番組が終わる。

映像資料では、コンサート会場と時期は不明とあったが、番組のなかで訪れたスコットランドの古城の位置とボックスセット「The Albums」 T13のブックレットに掲載された年表における、ツアースケジュールを突き合わせることで、本映像のコンサートは 1970年4月4日のアバディーンと4月5日のダンディーのうちのいずれかである可能性が高い。というのは上述の「Dunnottar Castle」は両都市の間に位置するため。

暗めの映像で、歌い手の顔の超アップが中心という、音楽番組にしては特異な撮影だけど、貴重な楽屋・移動風景や演奏シーンを十分楽しむ事ができるお宝映像だ。

[2023年11月作成]

 
From The Two Brewers (1970)  テレビ映像  
   
Bert Jansch : Vocal (2,3), Guitar (1,3,6), Banjo (2)
John Renbourn : Vocal (1),Guitar (1,3,4,6), Sitar (2)
Jacqui McShee : Vocal (1,2,3,6)
Danny Thompson : Vocal (5), Bass
Terry Cox : Drums, Percussion, Glockenspiel (3,4), Back Vocal (6) 

1. Sally Go Round The Roses [Phil Spector] *
2. House Carpenter [Traditional]
3. Sally Free And Easy [Tanney] *
4. Salabande [J. S. Bach] *
5. Blue Monk [Unkown, Thelonious Monk]
6. Light Flight [Pentangle]

収録: The Two Brewers, Manchester, April, 1970
放送: ITV Granada TV 'From The Two Brewers', May 8, 1970

注: 「*」は、「The Time Has Come」に音源として収められたトラック
   4,5 はバート不参加
 

ITVグラナダは、イングランド北西部とマン島をカバーするテレビ局。本映像は、マンチェスターにあったThe Two Brewers というパブに出演したペンタングルのステージを収録したもので、「The Albums」 T13 1970年4月と「The Times Has Come」 T12 同5月とする資料から、前者収録日、後者放送日と推定した(後者の5月はペンタングルは米国ツアー実施中のため)。私が観た映像は、画面左上に編集用のタイムが表示され、さらにサンプルとして画面上下に大きな字幕が始終表示されているものだ。音質・画質は良いので、集中して観ると意外と気にならない。そしてそのうち3曲は、ボックスセット「The Time Has Come」T12で未発表として公式発表された音源の源なのだ!

映像は「Folk Show, The Pentangle, OB434/2」というアナウンスと、それを書いた黒板の表示から始まり、グラナダTVのロゴを経て会場シーンに切り替わり、観客席後方のカウンターに座ったジェレミー・テイラーという司会者が、導入アナウンスとメンバー紹介をする。1.「Sally Go Round The Roses」のイントロの一部はアナウンスと被っている。どうりで「The Time Has Come」T12 では途中から始まっているわけだ。ジャッキーと一緒に歌うジョンは、ギブソンES-335のサンバースト、ドット・ポジションのモデルを弾いている。 コンサートの会場は狭くて、オーディエンスで満杯の状態。メンバーの背後にも椅子が並べられ、360度のステージになっている。曲が終わるとすぐに 2.「House Carpenter」が始まるが、バートはバンジョー、ジョンはシタールを弾いているので、楽器の持ち替え等の曲間が編集によりカットされているが、拍手を被せることでうまく繋いでいる。ボディを立て気味にバンジョーを弾くバートとシタールを弾くジョンがはっきり写っているので、これは美味しい映像だ。ジャッキーの歌は厳かで、テリーはスネアを手で叩いて古風な感じの音を出している。

司会者の曲紹介の後に演奏される 3.「Sally Free And Easy」は公式録音が1972年の「Solomon's Seal」T7であるが、この頃既にレパートリーだったことがわかる。バートはマーチンのオーディトリウム・タイプを弾いていて、バインディングの模様から000-21ように見えるが、正確には分からない。テリーは鉄琴を叩いている。ジョンの間奏ソロが聴きもの。バッハ作の 4.「Salabande」はジョンのアルバム「Lady And The Unicorn」 1970 R6に入っていたインストルメンタル曲で、アルバム同様トレモロを効かせたエレキギターとテリーのグロッケンスピエル(鉄琴)だけの演奏。その後、ダニーが「バッハからバップへ」等のナレーションを入れて、セロニアス・モンクの「Blue Monk」を、何と歌いながら独奏する。同曲の歌入りバージョンは、アビー・リンカーンの歌詞・歌唱が有名であるが、ここでは異なる歌詞で、ダニーは奔放な感じで時に笑いを取りながら歌っている。彼が歌うのを観た・聞いたのは、これが初めてという珍品。間奏のベースプレイは流石に本気モードで、テリーがここだけ微かなシンバルワークを付けている。6.「Light Flight」は、テリーのドラムワークが押している。特にスネアの繊細な響きは凄い。表情を変えずに歌うジャッキーの姿が印象的。ここでクレジットが出て番組は終了するが、最後で「次は Hunting Song を演ります」というバートのアナウンスが聞こえる。

他の映像では観られない珍しい曲が観れる。

[2022年2月作成]

[2024年1月追記]
収録日について。ボックスセット「The Albums」 T13のブックレットに掲載された年表によると、「April Wed 8 ? Manchester Granada TV Live?」、翌9日に渡米とあるので、4月8日あるいは4月初旬で間違いないだろう。

ペンタングルのYouTubeチャンネルで良質の映像が公開。それは10月から3ヵ月間かけて1曲づつアップされた。当初私が観た通しの映像との相違点は、① 1.の前の司会者のアナウンスにつき、彼の顔が写った最初の部分がカットされ、メンバーの映像と紹介から始まる。② 3.の前の司会者の顔が写った曲紹介がカットされている。③通しの映像では3.の後にノーカットで4.に移る。④4.の後にノーカットで入るダニーのアナウンスがカットされている。⑤ 6.の後のクレジット表示とバートのアナウンスがカットされている。

アナウンスが大方カットされているが、音楽的には全く問題ないし、何よりもサンプル表示の字幕とタイムカンター無しで観れるので、文句なしの素晴らしい映像だ!


Berkeley Community Theatre (1970)  音源



Bert Jansch : Vocal, Guitar, Banjo (11)
John Renbourn : Vocal ,Guitar, Sitar (11)
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion, Back Vocal

1. Bruton Town
2. Sally Free And Easy [Tawney]
3. Sarabande [Bach, Arranged by John Renbourn]
4. Hunting Song [Pentangle]  
5. In Time [Pentangle]  
6. Lyke-Wake Dirge
7. Light Flight [Pentangle]  
8. Goodbye Pork-Pie Hat [C. Mingus]  
9. Speak Of The Devil [Unknown]
10. Train Song [Pentangle]  
11. House Carpenter  
12. Pentangling [Pentangle] 


録音: 1970年5月29日 Berkeley Community Theatre, CA

写真: コンサートのポスター

注) 9.はジョン非参加


ペンタングル3回目のアメリカツアーの音源。東海岸のカーネギー・ホールから始まり、アメリカを縦断して西海岸で終わるハードなスケジュールだったようで、本コンサートはその終盤のものだ。長旅に加えて、大きな会場での他のアーティストとの共演や、観客の反応などが英国と異なるため、彼らはかなり疲れていたという。録音のせいでもあり、サウンド的に少し荒っぽい感じがするが、それでもハイレベルのパフォーマンスであることは間違いない。

2008年春、この音源を聴くことができた。資料によると、このコンサート会場であるバークリー・コミュニティー・シアターは、高校のキャンパス内にある劇場で、席数は3500。グレイトフル・デッドやジョニ・ミッチェル等のロック・コンサートが多く開催されたという。当日のコンサートのポスターによると、共演者はジェイムス・テイラーだったとのこと。彼は当時は1人で弾き語りをしていた時代で、彼の音源も残っている(ジェイムス・テイラーの部 「その他音源」参照)。またポスターには、翌日5月30日の出演者として、ジミ・ヘンドリックスの名前が載っており、1970年代初めのロック台頭の時代の熱気にあふれていて、彼らはこういう雰囲気のなかで演奏したことになる。ブリティシュ・フォークやトラディショナルをアメリカで演奏することは、どんな感じだったろう。当時のアメリカ西海岸は、ヒッピー・ムーブメントの中心地であり、先入観に囚われない自由な考えがあったと思われ、彼らの音楽もそれなりに受け止められたのではないかと思う。

まず初めに断っておく点がある。本音源は録音が不安定で、箇所により大変生々しく捉えられている部分もあれば、痩せた音で音楽の良さを味わうには問題がある部分もあるということだ。1.「Bruton Townは、途中の間奏部分からフィルインする。いきなり聴かされるジョン・レンボーンのエレキギターによるソロは、大変アグレッシブだ。「Sweet Child」P3 のライブのように録音されることを意識せず、心のままに弾いているようだ。録音的には低音部分が足りず、高温音が強調されたサウンドであるが、バートのリフ、ダニーとテリーのリズムの切れ味がしっかり捉えられていて、兄達に恋人を殺された娘の怒りが迸るように表現されている。曲はバートとジャッキーの合唱によるテーマに戻って終わる。2.「Sally Free And Easy」は1972年の「Salomon's Seal」T7で公式録音されるが、1970年当時すでに彼らのレパートリーであったことがわかる。この曲の録音は大変生々しく、ダニーのベース、テリーのグロッケンスピエル(鉄琴の一種)、バートのボーカル、ジャッキーのハミング、ジョンのリードギター、どれも素晴らしい。3.「Sarabande」は、バートは非参加。ジョン・レンボーンのソロアルバム「The Lady And Unicorn」に入っていたバッハの曲のアレンジで、オリジナル録音はジョンの独奏であったのに対し、ここではテリーのグロッケンとの二重奏だ。T12に収録された同曲のライブ音源とともに、ジョンのファンのお宝音源だ。バートによって「15世紀のロックンロールです」と紹介される 4.「Hunting Song」は、少し荒っぽいが自由奔放な演奏ともいえる。それにしてもダニーとテリーのリズムセクションの凄さは脱帽ものだ。 5.「In Time」は、少し痩せた録音が気になるが、各楽器の音はしっかり聴こえるので大丈夫。テーマではバートのプレイが押し、間奏ではジョンのインプロヴィゼイションが頑張る。曲の途中で突音圧が豊かになる。ジョンに続き、バートにもソロのパートがあり、相変わらず弦をバチバチ言わせながらプレイする。エンディングでのダニーのソロの内容がいつも全く異なるのはさすがだ。バートのシンプルなギターとダニーのアルコ(弓弾き)のみの伴奏で歌われる合唱曲 6.「Lyke-Wake Dirge」は、アメリカ人には理解できるのかな?ジョンのリードでジャッキー、テリーの3人で歌っているものと思われる。

7.「Light Flight」は一転して奔流のようなリズムで、バートのリフがスゴイ。セカンド・ヴァースでジャッキ-のボーカルに絡む、テリーのスキャットボーカルが生々しい。ここでのテリーのドラミングは自ら息づく生き物のようだ。エンディングでハイリングが起きる。8. 「Goodbye Pork-Pie Hat」は、何といってもジョンのプレイが聴きもの。録音が痩せているのが残念。それでもバートのリズムとジョンのリードのインタープレイははっきり聴こえる。ジョンの積極的なプレイが大変印象的。 9.「Speak Of The Devil」は、「警告の歌です」と紹介され、バートの歌とギター、ダニーのアルコのみで演奏される。この曲は、私が知る限りペンタングル、バート・ヤンシュの公式・非公式いずれも他の音源がなく、ここだけで聴けるもの。残念ながら録音が痩せているため、曲の本当の醍醐味がわからず、曲の良し悪しについて公平な判定ができない。でもファンにとって貴重な音源であることに変わりはない。10.「Train Song」は近年出た同曲の他の音源と比較するとかなり粗っぽい感じがするが迫力は満点。 11.「House Carpenter」はバートがバンジョー、ジョンがシタールを弾き、ボーカルも好調だが、残念ながら途中でフェイドアウトしてしまう。 本音源のハイライトは約19分におよぶ 12.「Pentangling」だろう。T12における同曲の演奏は1970年3月の収録なので、ここでの演奏はその2ヵ月後となる。曲の構成は大体同じであるが、T12ではバートのギターがオフになってあまり聴こえなかったのに対し、ここでは4人の演奏が良好なバランスではっきり聴こえるため、インタープレイの妙をじっくり味わうことができる。この音源ではジョンがハーモニカを吹いていないこと、後半の「Sally Free And Easy」のモーチーフが合唱でなく、ジャッキーのみで歌われていることなど、細かな相違点はたくさんある。ダニーのベースソロはマイルス・デイビスの「So What」のテーマを除いては、全く異なる演奏となっていて、この人のインプヴィゼイション能力の素晴らしさを物語っている。最後のヘビーなブルース演奏の部分では、テリーのバスドラのグルーブが最高で、ジョンが目一杯頑張ったブルースギターもカッコイイ。

ということで、録音品質にバラツキがあるが、歴史的に貴重な音源であることには変わりはない。


Pentangle In Concert (Sings The Pentangle) (1970) (TV映像)   
Bert Jansch: Guitar, Banjo (5), Vocal (1,2,5)
John Renbourn : Electric Guitar, Sitar (5), Back Vocal (2)
Jacqui McShee : Vocal (2,3,5,6), Back Vocal (1)
Danny Thompson: Bass
Terry Cox :  Drums, Glockenspiel (2), Back Vocal (2,3)

1. Train Song  [Pentangle]
2. Hunting Song  [Pentangle]
3. Light Flight  [Pentangle]
4. In Time  [Pentangle]
5. House Carpenter  [Traditional]
6. I've Got A Feeling  [Pentangle]

BBC放送によるスタジオライブ
収録日 1970年6月20日


30年以上を経て蘇ったペンタングル全盛期の映像だ!! 音源としては1995年にT9 「Live At The BBC」というタイトルでCD化されていたが、本来の姿である映像は、V7のビデオ「John Renbourn Rare Performance 1965-1995」 1996 で4.のみ収録されてていたもの。存在は知りながら、長い間観る事ができなかったお宝映像なのです。

ジョンレンボーンの試し弾きのようなイントロの後、映像が始まる。スキャットボーカルを見せるジャッキー・マクシーの表情が固めで、緊張しているのが判る。バートはギターを弾きながら、俯き加減で歌う。ジョンは顔を伏せて一心不乱にギターを弾く。テリーも地味なプレイで、唯一ダニーが全身をぶつけるように激しいアクションでベースを弾きまくる。1.「Train Song」は、3.「Light Flight」とともに本作の目玉で、彼等が演奏する姿を長い間夢見てきたものだ。バートとジョンのギターはもちろんのことであるが、ダニーの強靭なベース、テリーの繊細なドラムスによるリズムセクションの物凄さをたっぷりと味わうことができる。エンディングでのダニーの弓弾きによるベースは、シンセサイザーのような異様な効果をあげている。組曲風の2.「Hunting Song」の導入部ではテリーが鉄琴の一種、グロッケンスピエルを演奏する。バートとジャッキーの掛け合いボーカルで進行し、パート毎にメロディーとリズムが変わってゆく。レンボーンは本作では全ての曲でエレクトリック・ギターを弾いている。使用ギターはギブソンのセミホロウ・ボディーのES-335で、ドット・ポジション・インレイのモデルだ。これは現在はレア・アイテムとして大変な値打ちものになっているが、レンボーンによると、このギターは残念ながら、かなり昔に盗まれてしまったとのこと。曲の後半部分ではダニーを除く4人によるコーラスを聞くことができる。

3.「Light Flight」ではジャッキーのボーカルのバックで、テリーが洒落たスキャットをつけている。ここでもダニーのベースが大活躍。この手のアップテンポの曲を演奏していても、みんなクールなんだよな~。特に椅子に座り、目線・表情を変えずに歌うジャッキーが印象的だ。他の男達も淡々とした顔つきでプレイに没頭している。4.「In Time」はインストルメンタルで、ジャッキーは席をはずす。リフを伴奏に、バートのギターがメロディーを奏でる場面もあり、面白い演奏だ。5.「House Carpenter」ではバートのバンジョーとジョンのシタール演奏が楽しめる。特に後者が見れるのはここだけで、とても貴重な映像だ。最後の曲 6.「I've Got A Feeling」になるとバンドの演奏はかなりリラックスしている。ジャズワルツを低めの声で歌うジャッキーの顔は、かすかに微笑んでいて、ほっとした気持ちを読み取ることができる。そして最後の部分では自信に満ちた表情に変わってゆくのがとてもいい雰囲気だ。

とてもいい出来だと思う。
 

[2023年11月追記]
ペンタングルのYouTubeチャンネルに良質の画像がアップされていて、タイトルに「4th January 1971」とあるが、これは収録日が間違っているか、放送日の記載かのいずれかで、本映像の収録日は 1970年6月20日が正しい。というのは、①過去音源で公式発売された「Live At BBC」1995 T9の日付が「Jun 20」になっていること ②ボックスセット「The Albums」2017 T13のブックレットに記載された年表には「1970 Sat 20 BBC TV In Concert tele-recording」の記載があること。③決定的な証拠として、映像におけるメンバーおよびオーディエンスの服装が夏服で、冬服を着ている人が一人もいないこと、だ。おそらく1月4日は未確認であるが放送日じゃないかな?

 
Take Three Girls "The Private Sector" (Season2, Episode2) (1971) テレビ映像    
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal, Hamming
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion, Vibraphone

Barra Grant : Lulie
Liza Goddard : Victoria
Carolyn Seymour : Jenny

Carey Harrison : Writer
Bary Davis : Director

放送 : 31 March 1971, BBC1

 

1969年11月~1970年2月に放送されたBBCのテレビドラマ 「Take Three Girls」は、好評のためシーズン2が制作され、1970年3月~6月に12本が放送された。シーズン1の 3人の主演女性のうち、ヴィクトリア(リザ・ゴッダード)のみが残り、アメリカ人で心理学卒業生のルーリー(バーラ・グラント)とジャーナリストのジェニー(キャロリン・シーモア)が加わった。シーズン1と同様、多くのエピソードが廃棄され、残っているのは、第2, 6, 11, 12の4本のみ。そして現在公開されているのは、本編エピソード2のみだ。

本ドラマは、実際の行動を伴わない理論や口論が多いため、私の聴き取り能力ではわからない部分がかなりありました。以下わかる部分のみ述べます。

第2回目 「Private Sector」(50分)は、ルーリー(バーラ・グラント)が主人公。
☆00:00-00:46 「Light Flight (Opening Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
(時間表示は映像左上部にあるタイムコードの時間です) ロンドンの街角風景と3人の主演女性のポートレイト(出演者が違うので、シーズン1とは別のものになっています)。

アメリカからの飛行機に乗っているルーリー。迎えに行く車の中の男女(ジミーとアイダ)の会話。空港でどちらが駐車する役になるかの話し合い。ロンドンの空港に到着し、入国ゲートから出てきたルーリーを迎えて抱きしめるアイダ。アイダは車を取りに行き、遅れて来たジミーとルーリーは抱き合って再会を喜ぶ。恋人関係にあるのは明らか。
車中での3人の会話。ルーリーは、当地でクリニックのアシスタントをするらしい。今夜パーティーをすると聞き、いろんな人に会えると大喜び。滞在するフラットに到着。
部屋で恋人のジミーと愛を語らい、キスする。ふたりはアメリカで出会い、その後ジミーが先にロンドンに来て、遠距離恋愛になっていたようだ。
☆13:23-14:13 「A Maid That's Deep In Love」 Guitar, Bass
☆13:31-15:42 「A Maid That's Deep In Love」 Vocal, Guitar, Bass, Drums
翌朝、ルーリーが起きると、出勤するジェニーとすれ違う。ルールーは公園を散歩。すれ違った若者(ヘンリー)に話し掛けられ、互いに自己紹介をして話し込む。ルーリーが「約束があるから行かないと」と言っても、ヘンリーはついて来る。ルーリーの持っているリンゴを食べるなど、態度は悪くないけど、かなり慣れ慣れしい感じ(今でいう「ナンパ」ですね)。フラットの入口でアイダに会った後も、ヘンリーは家に入り、一緒にお茶を飲んで話をする。3人で心理学の話など。
当日夜、ジミーに家でパーティー。ヘンリーも参加。
☆22:42-23:30 「Sweet Child」 Hamming, Guitar, Bass, Drums
各参加者が盛んに持論(社会や政治に関する批判のようだ)を展開。ルーリーは意見を言おうとするが、「君はまだ来たばかりだからね」と言われてしまう。機嫌が悪くなるが、ジミーからイギリスのジョークだからと言われる。
☆30:48-33:10 「Sweet Child」 Hamming, Guitar, Bass, Drums
遅れて黒人の女性クレアが到着し、ジミー(彼も黒人)が動揺気味に迎える。機嫌が悪いの加えて、二人の微妙な雰囲気に嫉妬を覚えたルーリーはクレアを口論になる。
落ち着いたルーリーは、クレアに謝る。クレア 「ジミーから聞いていたので、貴女にあいたかったの」。しかしルーリーは、話しているうちに怒りを露わにする(クレアが言った階級社会における中産階級云々という発言が火を着けたらしい)。抑制が効かなくなった彼女は、参加者一人ひとりに攻撃的に当たる(社会や政治を批判しながら、行動しようとしないことに対する怒りのようだ.。アメリカ人とイギリス人の価値観の相違が根底にあるものと思われる。人種問題で「黒人」という禁句も飛び出す)。一方的にまくしたてるルーリーにより、場は白けてパーティーはお開きになる。
☆38:46-39:27 「A Maid That's Deep In Love」 Guitar
アイダとヘンリーが先に退出し、部屋にはジミーとルーリーだけが残る。「3000マイルもかけて彼らに会いに来たのにやらかしてしまった」とルーリーは落ち込んでいる。ジミーは腹を立て、一方ルーリーは譲らず、嫉妬していると言い、もううんざり、お終いと別れの言葉をかわす。
アイダの車で家に送ってもらう。ヘンリーも同乗。アイダと車の中で口論となり、友情関係に深刻な亀裂が入る。
車から降りるとヘンリーが着いてくる。入口の階段で、ルーリー「あなたの事は好きだけど、付き合えない」。ヘンリーが食い下がるので、「あなたに魅力を感じないの」。さらにキツイ事を言って、やっと彼は諦め、去ってゆく。
☆45:45-46:05 「A Maid That's Deep In Love」 Guitar
ヴィクトリアが帰ってきたルーリーを見つけて自己紹介し、昨日会えなかったからとワインを飲んで歓迎しようとするが、ルーリーは落ち込み、疲れ果てている。ヴィクトリア 「だいじょうぶ?何か問題あるの?」、ルーリー「いま二人と別れてきた。恋人と友人よ」、ヴィクトリア 「異国に来たから違和感を覚えるのよ」となぐさめる。
☆48:08-49:07 「Light Flight (Closing Theme)」 Humming, Guitar, Bass, Drums
エンディング・クレジット

シーズン1と2を観て、「Light Flight (Opening Theme)」の歌詞・演奏はすべて同じであることが確認できた。パーティー・シーンにおける「Sweet Child」は、バックグラウンド・ミュージックとして使われており、人々の話声にかき消されて、音楽を聞き取ることは難しい。

国毎のメンタリティーの相違を、コミュニケーションを欠いた口論という形で描いた本編は、詳細な内容が聞き取れない面があるものの、観た後で後味の悪さが残ってしまう。しかし、ルーリー主演のエピソード4本のうち、本編以外は失われているため、彼女がその後どう変わってゆくのかを見ることはできない。したがって本編を観ただけで、ネガティブなコメントするのはアンフェアーと思うが........

[2023年1月作成]


 
Journey Into Love (1971) 映像
 
Bert Jansch: Acoustic Guitar, Vocal (2)
John Renbourn : Acoustic Guitar, Back Vocal (3,4)
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Back Vocal (3,4)
 

The Early Music Consort (4) 以下画面左から
Christopher Hogwood: Keyboards
David Munrow: Corna Muse
James Tyler: Krummhorn
Oliver Brookes: Krummhorn
James Bowman: Vocal

1. Hear Me Calling 
2. Sweet Child
3. Lyke-Wake Dirge
4. Wonderous Love

[収録] 1971年4月22日、LWT, London

 

LWT (London Weekend Television)は、ロンドンおよび周辺部の金曜日夕方から日曜日にかけて放送していたテレビ局で、2000年代初めに ITV(Independent Television)に統合された。宗教をテーマとした同局の番組「Journey Into Love」にペンタングルが出演した映像が残っている。うち 2と4 については、2007年に発売されたボックスセット「The Time Has Come」T12 の「CD4: Live, TV & Film 1970-1973」に音源として収録されていたが、その後インターネットで 4曲すべての映像を観ることができた。少人数のオーディエンスを入れたスタジオライブであるが、司会者のアナウンスと曲間の会話の部分はカットされている。

画面下に編集用のタイムが表示され、画質は余りよくないが、まあ聴ける音質なので十分楽しめる。ここではジョンは、エレキギターでなく、愛用のギブソンJ-50を弾いている。番組内容に合った厳かな曲が選ばれたようで、他のライブやテレビ・ラジオ放送にはない珍しい曲を演っているので貴重。1.「Hear Me Calling」は、歌うジャッキーのクールな表情が印象的。2.「Sweet Child」では、間奏部分のジョンのギターソロのフィンガリングが、アップでしっかり捉えられているのが有難い。3.「Lyke-Wake Dirge」は番組の趣旨にあった宗教歌で、ジョンとテリーが高音のバックボーカルを付けている。この曲だけ何故か映像に特殊処理が施されていて、ふたつの画面を重ねたり、色調を変えたりしている。「The Time Has Come」T12 で初めて聴くことができた 未発表曲 4.「Wonderous Love」も宗教歌で、T12ではデビット・マンロウ・アンサンブルとの共演とあったが、別の資料によると「The Early Music Consort」がグループの正式名称らしい。古典音楽の再興を目指した男性5人編成で、画面の容貌から各人の名前を割り出した。メンバーは古楽器を使用。クリストファー・ホグウッドはオルガンのような鍵盤楽器、デビッド・マンロウはコルナ・ミューゼという楽器を使用していると思われる、真ん中のジェイムス・タイラーとオリヴァー・ブルックスは、ルネサンス期に栄えたクルムホルンという楽器を吹いていて、その先端が曲がった姿と、鼻にかかったような音が特徴的。彼らがヴァース毎にペンタングルと入れ替わり歌う様が誠に面白い。それにしてもジェイムス・ボウマンのハイトーンの声色は個性あるなあ。

珍しい曲の演奏風景が観れる珍品。

[2022年3月作成]
本稿は2022年3月バートのディスコグラフィーに投稿したものです。ジョンのディスコグラフィーへの反映を失念したことに気が付き、2023年12月に貼り付けました。


Set Of Six (1971) 映像・音源 
 
Bert Jansch: Guitar, Banjo (3. 6 ), Dulcimer (5) Vocal (1,4,7)
John Renbourn : Electric Guitar, Acoustic Guitar (3,5,6)
Jacqui McShee : Vocal, Back Vocal (4)
Danny Thompson: Bass
Terry Cox :  Drums, Back Vocal (6)
 

1. People On The Highway  (Fade In) 
2. Lady Of Carlisle
3. Sally Free And Easy [Tawney]
4. Willy O'Winsbury
5. Rain And Snow
6. No Love Is Sorrow  
7. Jump Baby Jump  (Fade Out)


[収録] 1971年6月、Gradana TV Studio, Manchester, U.K.


 

ペンタングルが解散する半年前の1971年5月、イングランド北西部のグラナダ・テレビの番組「Set Of Six」に出演した際の映像。上記7曲のうち、7~9の3曲は、2007年に発売されたボックスセット「The Time Has Come」T12に音源のみ収録されたが、その後2017年にインターネットで映像として公開された。同時期に収録されたベルギーのテレビ番組「The Caputured Live」T11の演奏がよれよれだったの対し、ここでは別人のような切れ味鋭いプレイを見せてくれる。

1.「People On The Highway」はイントロ部分からフェイドインし、番組名の字幕が出る。音質・画質はとても良く、ギター演奏とリズムセクションの音のバランスが絶妙で、バンドの魅力を余すことなく伝えてくれる。また各メンバーの超アップ画面がたっぷり入ることで、音楽映像としてとても生々しいタッチになっている。それに加えて演奏も最高で、言うことなしの出来だ。バートはマーチン000-28 タイプ、ジョンはフェンダーのテレキャスターを弾いている。2.「Lady Of Carlisle」でバートはバンジョーに持ち替え、アメリカのオールドタイミー音楽にみられるフレイリング(クローハンマー)奏法を披露する。3.「Sally Free And Easy」は、ダニーの強靭なベースのイントロが聴かせる。「The Time Has Come」T12に収録された1970年の同曲ライブ音源と比べて音使いが微妙に異なることろが凄い。4.「Willy O'Winsbury」では、レンボーンはいつものギブソンJ50、バートはダルシマ-を弾くが、ここではジャッキーのボーカルがメイン。灰色の瞳を持つ彼女のクールな美しさが際立っており、あの声に加えて、歌いながら表情が微妙に変わる様が画面いっぱいに広がり、大変説得力があるパフォーマンスとなっている。5.「Rain And Snow」では、テリーが右手にタンバリンを持ち、左手でドラムスを叩く。ジャッキーはリズムに乗せて体を揺らしながら歌い、ジョンはワウワウを聴かせたエレキギターで伴奏をつけている。6.「No Love Is Sorrow」はストイックな雰囲気の曲で、髭をたくわえたバートとジャッキーがしっとりと歌っている。 ここでジョンは、ギブソンのアコースティックで間奏ギターソロを弾いている。7.「Jump Baby Jump」は、今のところ映像は出回っていないが、おそらく放送時間の関係で、1~2分でフェイドアウトしてしまうためだろう。

「Reflection」T6、「Salomon's Seal」T7 といったペンタングル後期のレパートリーを捉えた貴重な映像で、演奏・撮影ともに最高の宝物だ!

[2018年1月作成]


 
Civic Centre, St. Albans, Hertfordshire, UK (1972) [Pentangle] (音源
 
Bert Jansch: Guitar, Vocal (1,4)
John Renbourn : Guitar, Sitar, Vocal (2), Back Vocal (6)
Jacqui McShee : Vocal, Back Vocal (3, 6)
Danny Thompson: Bass
Terry Cox :  Drums


1. When I Get Home 
2. The Cuckoo
3. She Moves Through The Fair
4. The Snows
5. Instrumental (Theme From Charles Mingus' The Shoes Of The Fisherman's Wife Are Some Jive Ass Slippers) [C. Mingus]
6. Cruel Sister 
7. Jump Baby Jump  

収録: Civic Centre, St. Albans, Herfordshire, UK, 1972年10月27日
 

 
1973年に解散したペンタングルの最後のツアー(1972年10~11月)のオーディエンス録音。音質的にまあまあで、音楽として十分楽しめるレベル。

ロンドン郊外の町セント・オールバンズのシビック・センターでのライブ(「The Albums」 2017 T13に添付されたコリン・ハーパーの資料では「Civic Hall」とあるが間違い)。解散前のライブということで、昔のようなグループとしての一体感、向上心は感じられず、各人が自分の役割を淡々と演じているような感じがする。1.「When I Get Home」は、ワウワウペダルを使用したジョンのエレキギターがイカしている。2.「The Cuckoo」は、ジョンの弾き語りで、アルバム「Faro Annie」 1971 R7のヴァージョン。ジョンのエレキギターは、バンジョーのようなサウンドを出しているが、途中からワウワウ・エフェクトがかけられて、スタジオ録音のアコギ演奏にはない味を出している。

3.「She Moves Through The Fair 」は、初期ペンタングルでの公式録音がない曲で、ジャッキーのボーカルとダニーのベースによる演奏。録音が途中で切れてしまうのが残念。4.「The Snow」はバートの弾き語り。5.は本音源のハイライト。資料では、「Three Part Thing (title? 9 minute jam)」とあるが、後の「John Renbourn & Stefan Grossman」1978 R11に収められたの「Theme From Charles Mingus' The Shoes Of The Fisherman's Wife Are Some Jive Ass Slippers」と同じテーマで、この曲の原形が初期ペンタングルのレパートリーにあったという発見。テーマにおけるダニーの弓弾きバースによる重低音と、途中からのインプロヴゼイションの部分は全く異なり、ギター、ドラムス、ベースのソロが入って 9分を超える熱演となっている。6.「Cruel Sister」では、ジョンが奏でるシタールの音が聞こえる。最後は 7.「Jump Baby Jump 」 (資料では「Travelling Song」とあるが間違い)。

初期ペンタングル最後のツアーの音源で、珍しい曲を聴くことができる。

[2022年4月作成]

 
Grenoble University [With Jacqui McShee] (1974) 音源  
 
John Renbourn: Vocal, Guitar
Jacqui McShee: Vocal

1. Whiteg House Blues
2. John Donne Song
3. Baffaro [Davey Graham]
4. Bransle Gay
5. The Earl Of Salisbury
6. Trotto
7. So Early In The Spring
8. Potland Town [Derroll Adams]
9. The Tree They Grow High
10. Wedding Dress
11. I'm A Maid That's Deep In Love
12. The Cuckoo
13. Blackwaterside
14. Kokomo
15. I Died For Love
16. Reynardine
17. A Maid In Bedlam
18. Jew's Dance
19. Geordie
20. Watch The Stars
21. Sweet Potato
22. Willy O'Winsbury
23. Turn Your Money Green
24. Way Behind The Sun

収録: Grenoble University, Grenobel, France, Jun 23, 1974

注: 15はジョン非参加


 
フランス南東部にあるグルノーブル大学で行われたジョンとジャッキーのコンサートを、社交事務担当秘書 (The Social Secretary) のジョエル・ボエール (Joel Boher) 氏が録音し、ジャッキーが保管していたもの。2022年彼女が 「In Loving Memory Of John Renboun」というメッセージとともに、YouTubeに投稿してくれた。録音年は1974年となっているが、1975年ではないかというコメントもある。

いずれの年にせよ、ペンタングル解散と契約トラブル等で、レコードを出せなかった空白の時期にあたり、しかも1970年代のジョンとジャッキーのコンサートの全体を捉えた音源として、とても貴重なものだ!

曲間にはカットが入るが、流れと雰囲気から、当日演奏された曲のすべてと推定される。最初の1.「White House Blues」では、カセットテープの経年劣化のせいか、ギターの音がすこしヨレているが、曲が進むにつれて解消し、ボーカル、ギターともに音楽として楽しむには十分なレベル (当時の私家録音の設備を考慮すると、あまり贅沢は言えないね)。ジョンは、2.「Song」をイギリスの詩人ジョン・ドンによる17世紀の作品と紹介している。4.「Bransle Gay」では途中弾き間違えて、「ワア!」と声を出している。そして残念ながら途中で切れてしまい、5.「The Earl Of Salisbury」に唐突に繋がる。

8.「Portland Town」からジャッキーが加わる。この曲は、アメリカ生まれで 1950年代に渡欧して同地におけるフォーク音楽の教祖的存在となったデロール・アダムス(1925-2000 T16参照)の代表曲。1967年朝鮮戦争に向けて書かれた反戦歌で、ジャッキー、ジョンがこの曲を歌った音源は公式・非公式含めて、私が知る限りこれだけ。その後はペンタングル時代や「Faro Annie」 1971 R7の曲が続くが、その中に13. 「Blackwaterside」、16.「Reynardine」、17.「A Maid In Bedlam」、18.「Jew's Dance」といった、後1977年にジョン・レンボーン・グループの「A Maid In Belam」 R10で公式発表される曲が含まれていることに注目。それらの曲がグループ結成以前からジョンとジャッキーのレパートリーになっていたことを示すものだ。アイリッシュ・ソングと紹介される 15.「I Died For Love」は、ジャッキーの独唱。ペンタングル、ジョン・レンボーン・グループでの公式録音がない曲だ。英国のトラッドで、ジョンの弾き語りによる 19.「Geordie」も他で聴くことができないお宝トラック。

コンサートが終盤になると、オーディエンスの拍手・歓声が一層大きくなり、「長い間演っていないけど、できるかな?」と言って始めるアンコールの 24.「Way Behind The Sun」でコンサートは終了する。

1970年代のジョンのギターの切れ味の凄さがこれでもかと堪能できる、ジャッキーからの素敵な贈りもの。

[2022年5月作成]


McCabe's, San Francisco [With Stefan Grossman] (1978) 音源 
 
John Renbourn: Vocal, Guitar
Stefan Grossman: Vocal, Guitar

1. Looper 's Corner
2. Shoes Of The Fisherman's Wife Are Some Jive Ass Slippers [C. Mingus]
3. So Early In The Spring
4. By The Banks Of Sweet Primroses
5. Lindsay
6. Sweet Potatos
7. Great Dream From Heaven
8. Death And The Lady
9. The Young Man Who Wouldn't Hoe Corn
10. Medley
  Lamentation For Owen Roe O'Neil
  The Orphan
  The English Dance

11. Twelve Sticks
12. Bermuda Triangle
13. My Creole Bell
14. Mississippi Swamp March
15. Tightrope
16. John Henry
17. The Way She Walks

18. Medley
  Bonapart's Retreat
  Billy In The Lowground
19. All Things That Rise Must Converge
20. Candyman
21. Snap A Little Owl
22. Spirit Levels

23. Mississippi Blues

1~2, 18~23: Stefan Grossman, John Renbourn
3~10: John Renbourn
11~17: Stefan Gorssman (ジョン非参加)
 
収録:  McCabe's Guitar Shop, San Francisco, CA, Jun 3, 1978

注: 資料では「Instrumental」と記載されていた 1, 6, 11, 12, 21, 23につき、正しい曲名にしました。



ステファン・グロスマンとのデュオのライブの公式盤が 1984年の「Live In Concert」 R20であるのに対し、1978年録音の本音源はアルバム「John Renbourn And Stefan Grossman」 1978 R11 発売直後の初期の演奏。マッケイブスはサンフランシスコにあるギター・ショップで1958年開店。店内にある収容人員150人の小さなホールで開催されるコンサートに多くの著名ミュージシャンが出演し、多くのライブ・アルバムが製作されている。私のコレクションの中では、マリア・マルダーの「Gospel Night」 1980、バート・ヤンシュの「Heartbreak」 1982の再発盤 2012のボーナス・ディスクなどがある。スタッフによる録音の音質の良さには定評があり、本音源でも二本のアコースティック・ギターの演奏が最良のステレオ録音で捉えられている。また曲間のチューニングや語りなどのカットがなく、(おそらく)ノーカットであることも魅力。

まず二人で2曲演奏した後、ソロコーナになるが、R20ではステファンの担当であったが、ここではジョンが弾いている。彼のソロのステージにおけるレパートリーが並んでいて、ジョン・レンボーン・グループで演っていた 8.「Death And The Lady」が珍しいところ。

11.「Twelve Sticks」からはステファンのソロで、R11に入っていた自作の 12.「Bermuda Triangle」を友人のバート・ヤンシュ、ダック・ベイカー的と紹介しているのが面白い。13. 「My Creole Bell」の前に彼得意の語りが長々と繰り広げられる。ギターを弾きたいと思う人に対するアドバイスとして、マッケイブスに行って安いヤマハを買い、オーク出版(当時ステファンの本を多く出していたところ)の教則本を開いて、C, F (クラシックのセゴビアがやらない6弦を親指で抑えるヤツ)、Gのコードとオルタネイティング・ベースを覚えてと語り(巧みな話術で、オーディエンスはギャアギャア笑っている)、それっと13.「My Creole Bell」を始める。途中でオーディエンスに合唱を促す際に、「Sure good to be in a English speaking country」 と言っているが、このコンサートの前、ジョンと一緒に日本をツアーしていたため。集中して聴いていると、約45年前に東京で彼らのステージを観た記憶が蘇ってくる。ちなみに彼らが日本滞在中に録音したアルバムに、ステファンの「Acoustic Guitar」1978 Q16(ジョンが2曲に参加)、2018年の発掘盤 「Live In Kyoto」 R13がある。確かに日本の観客の前では、得意の語りをいつものように聞かせることは難しいだろうね。

ダック・ベイカーとの共作と紹介される 19.「All Things That Rise Must Converge」からは二人の演奏。この曲のライブの公式盤は「BBC Live In Concert」R18のみだ。21. 「Snap A Little Owl」のライブは公式盤にはないので、美味しいトラック。他の曲でもそうだが、ジョンのリードギターのソロは毎回全く異なる内容なので、本当にスリリングで最高だ。コンサートはアンコールの 23.「Mississippi Blues」で終わる。

公式盤のライブにない曲があり、録音、オーディエンスの反応も良いお勧め音源。

[2022年5月作成]

 
Theatre des Variete, Paris [Solo & John Renbourn Group] (1981) 音源  
 




John Renbourn: Guitar, Vocal
Jacqui McShee: Vocal
Tony Roberts: Flute, Krumhorn, Northumbrian Small Pipes, Vocal,
John Molineux: Dulcimer, Mandolin, Fiddle, Vocal
Keshav Sathe: Tabla

[John Renbourn Solo]
1. So Early In The Spring 
2. a Trotto
  b English Dance
3. Lindsay [Archie Fisher]
4. The Bank Of Sweet Primroses
5. The Young Man That Wouldn't Hoe Corn
6. a Lament For Owen Roe O'Neil
  b Mist Covered Mountain Of Home
  c The Orphan
7. Cherry [Dollar Bland]
8. Great Dreams From Heaven [Joseph Spence]
9. My Sweet Potato [Booker T. Jones]

[John Renbourn Group]               
10. a Belle, Que Tiens Ma Vie
   b Tourdion
11. Van Dieman's Land
12. The Curel Sister
13. a The Month Of May Is Past
   b Night Orgles
14. The Maid On The Shore
15. John Dory
16. Breton Dance
17. Ye Mariners All
18. High Germany
19. Sidi Brahim
20. Fair Flower
21. John Baleycorn Is Dead

注) 12, 13 はレンボーン非参加

録音: Thatre des Variete, Paris, France, May 21, 1981

 

Thatre des Varieteは、パリのモンマルトル通り、オペラ座の近くにある小さな劇場。歴史的建造物に指定された1807年創設の古風な会場は、ジョン・レンボーン・グループの音楽にぴったりだ。コンサートは前半44分がジョンのソロで、後半70分がジョン・レンボーン・グループという二部構成。音質的に少し角があるオーディエンス録音は、聴いていて少し耳がキンキンするが、楽器の音はそれなりにクリアなので、音楽として十分楽しめるレベル。なお音源に付いていた資料は、曲名不明としているものが数多くあったが、本稿作成にあたり確認のうえ上記の曲目に特定した。

ジョンのソロの曲目の初出公式録音は以下の通り。

Sir Joh Alot Of Murrie Englandes...... 1968 R5 : 9
The Lady And The Unicorn 1970 R6 : 2a
The Hermit 1976 R9 : 6a
Black Balloon 1979 R14 : 2b 6b 6c
So Early In The Spring 1980 R17 : 1 3 4 5 8
The Three Kingdams 1986 R22 : 7

1981年ということで、翌1982年の日本でステージレパートリーを録音した「So Early In The Spring」R17の曲が多くなっている。 2. a 「Trotto」、b 「English Dance」は、二つのダンス曲をメドレーで弾いているが、前者が DGDGCD、後者がDGDGBD とチューニングが異なるため、最初の曲のラストで開放弦を弾きながら 2弦を緩めて素早く C→Bへの音程変更を行い、ほぼ切れ目なく次の曲を始めるという離れ業をやっている。これは凄いね~。3.「Lindsay」 は同年4月録音(翌年発売)の「Live In America」R9ではグループで演っていた曲。5.「The Young Man That Wouldn't Hoe Corn」でジョンは、「ジーン・リッチー(Jean Richie 1922-2015、"フォーク音楽の母"と呼ばれるアメリカの歌手)の歌で、"Lazy Farmer"とも言われています」と紹介している。7.「Cherry」では、オーディエンスから「ブルースを!」という声が飛んだのを受けて、これは「アフリカのブルースだよ」と答え、ジャズ・ピアニストのダラー・ブランドがアフリカの音楽を取り入れて作ったこの曲を演奏している。9.「My Sweet Potato」は、圧倒的なテクニックとピッキング・スピードを見せつける、締めの常連曲。エンディングで6弦をA→G→F→Eとベンディング・ダウンして、最後に6弦のDを弾いてお終いにするところは誠にカッコイイ。

ジョン・レンボーン・グループの曲目の初出公式録音は以下の通り。

A Maid In Bedlam 1977 R12 : 21
The Enchanted Garden 1980 R16 : 10a 10b 14 19
Live In America 1982 R19 : 11 12 13a 13b 15 16 17 18 20

「Live In America」R19は1982年発売だけど、1981年4月の録音なので、本音源と1ヵ月しか違わないことになり、重複する曲が多くなるのは当然だろう。10. a「Belle, Que Tiens Ma Vie」で聞こえるチャルメラのような音がする管楽器はクルムホルンという古典楽器。12.「The Curel Sister」はジャッキーの無伴奏ソロ。 13. a「The Month Of May Is Past」、b「Night Orgles」はジョン・モリノーのソロで、出ずっぱりのジョン(レンボーン)は、この間に休憩しているのかな?ピックアップを通してエフェクターをかけたエレキサウンドで、前半はダルシマー、途中で音が切れてプラグを繋ぎ変えて、後半はマンドリンを弾いているように聞こえる。いずれも驚異的なテクニックだ。舞台がパリなので、フランス人のジョン・モリノーが嬉しそうに母国語で話している。ジャッキーが他人事のような感じで「酒飲みの歌です」と紹介する17.「Ye Mariners All」はグループによるアカペラ歌唱。19.「Sidi Brahim」はグループ演奏力のショーケースで、ジョンのギター、トニーのフルート、ケジャヴのタブラが大活躍する。20.「Fair Flower」で聞こえるバグパイプのような音は、トニーが演奏するノーザンブリアン・スモールパイプで、ふいごを右腕に挟んで押すことにより空気を送り込む構造。ダルシマーの演奏が多いジョン・モリノーは、ここではフィドルを弾いている。そしてアンコールは、グループの輪唱による 21. 「John Baleycorn Is Dead」で厳かに終わる。

「Live In America」R19と同時期の録音なので内容的には近いものがあるが、こちらはジョンのソロとの2部構成になっている点で、若干異なる雰囲気になっている。


 
Take Three Women "Kate" (Episode 1) (1982) テレビ映像   
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal, Hamming
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums (Oepning, Closing Theme Only)

Susan Jameson : Kate

Guy Meredith : Writer
Richard Martin : Director

放送 : 21 September 1982, BBC2
  
 

1969年~1971年に放送された「Take Three Girls」の続編として、シーズン1に出演した3人の女性の12~13年後を描いたドラマ。シングル・マザーのケイト、チェロ弾きのヴィクトリア、絵描きのアヴリルの役をオリジナル・エピソード出演女優(スーザン・ジェイムソン、リザ・ゴッダード、アンジェラ・ドーン)が演じた。各人の名前と、3人の連名(最終回)のタイトルによる計4エピソードが制作され、1982年9月~10月 BBC2で放送された。ヴィクトリアを演じたリザ・ゴッダード等によるYouTube投稿などで、全エピソード4回分を観ることができる。

ペンタングルは本シリーズでも音楽を担当。当初このドラマの存在を知ったとき、1982年という制作年だったので、音楽については1969年~1970年製作の「Take Three Girls」の録音を使い回しているのではと思ったが、実際聴いてみると、本ドラマのために録音されたもので、リユニオンは俳優のみでなく、音楽についてもであった。ペンタングル解散後の履歴を辿ってみると、1982年は彼らが一時的に再集結した年で、同年12月のイタリア公演の音源が残っている。さらにその際にドラムスのテリー・コックスが交通事故で足を負傷したため、前半のギグに参加できなかったという情報もあり、本ドラマのための演奏に彼が加わっていない事と辻褄が合う。ということで、本ドラマシリーズは、オリジナル・ペンタングル解散後 1982年のリユニオンの仕事として、彼らの演奏を聴くことができる貴重なものだ。

以下、各エピソードにつき、粗筋とペンタングルの演奏が聴ける場面について述べます。内容の濃い早口の台詞がとても多い舞台劇のようなドラマで、かつ慣れないイギリス英語のため、聞き取りが大変難しいのですが、わかる範囲内で書きます。台詞の一部しか聞き取れないので、ドラマの良否については、コメントしません。

初回「Kate」(50分)は、ケイトが主人公。演ずるスーザン・ジェイムソン(1941- ) は、1960年代から現在に至るまで長いキャリアを誇る女優。「Take Three Girls」後、12~13年経た後の容貌の変化は見もの。
☆00:00-00:53 「Light Flight (Opening Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums (時間表示は映像下部にあるタイムコードの時間です)ロンドンの街角風景と3人の主演女性のポートレイト。
大物らしき人物がヘリコプターでロンドンに到着。
子供のサッカー試合で、息子(12~13才位)のプレイを見学していたケイトは、隣りの人が持っていたサンドイッチを突然取り上げて食べる(この奇行の原因は後に判明)。
☆02:37-02:46 「If I Had A Lover」 Humming, Bass
試合が終わり、息子がチームメンバーと風呂に入っている。その間、控室でケイトと息子の先生の会話。先生は子供と彼女に好意を持っていて、「子供には父親が必要」と諭し、彼女をパーティーに誘う。
☆05:29-05:32 断片 Guitar, Bass
自宅でケイトと息子の会話。息子が勉強で、妊娠について書かれた本を読んでいる。ケイトが「もし弟・妹ができたらどう?」と言うと、息子は「結婚してないからありえない」と答える。息子は先生がケイトを好いているのを知っている。
☆08:21-08:26 断片 Guitar, Bass
トレンディ週刊誌の出版社オフィス。ケイトは、ボスから大物ルーカス氏(ヘリで到着した人物)のインタビューを取るよう指示される。
☆11:57-12:24 「If I Had A Lover」 Humming, Guitar, Bass
ケイトが突然スナックを食べ出し、つわりの症状(冒頭のサンドイッチのシーンの理由が判る)を見せた後、ボスに妊娠を告白。ボスは困惑し「父親は誰?」、「私が街をうろついていると思っているの?」。二人の会話からボスが父親であることがわかる。仕事の話に戻り、ケイトは取材先に向かう。
☆13:55-14:43 「Sweet Child」 Vocal (1st Verse) Humming, Guitar, Bass
ルーカス氏のオフィスでインタビューを申し込むが会えず。同氏はかなり気難しい人のようだ。スタッフから「後で連絡する」と言われる(ここで流れるロック音楽は別の音楽 → ペンタングルではない)
ケイトはオフィスに戻り、ボスにルーカス氏に会えなかった旨報告。ボスが妊娠につき、困惑気味に「これからどうしよう」と相談。誠意のない態度にケイトは自分の問題だからと応対を拒否し、明日にしましょうと答える。
自宅で息子と会話(息子が観るTVから流れるロック音楽は別の音楽)。息子のグループ旅行の準備をしている。自分で準備しようとしない息子に注意するが、息子は母親から子供扱いされることに立腹。
☆20:00-20:13 「No Love Is Sorrow」 Humming, Bass
オフィスで、同僚から「あの男は女たらしだから止めたほうがよい」と言われる。
☆23:16-20:36 「Sovay」 Guitar, Bass
スタッフから電話を受けレストランに行くが、ルーカス氏は「ウェイターが気に食わない」と去った後で、ケイトはがっかりする。
自宅にいるケイトに花束が届き、同時にボスから電話がある。花束はボスからではなかった。翌日昼にパブで今後につき相談しようと約束。花束に添えられたメッセージを見て、ルーカス氏がいる船上パーティーへ向かう。ケイトは船に乗ったが、ルーカス氏はいなかった。その代わりに先生がケイトを見つけて喜ぶ。花束とメッセージを寄越したのは先生で、ケイトの勘違いだった。
☆28:23-28:34 「If I Had A Lover」 Humming, Guitar, Bass
ケイトは、船を降りることができないので、仕方なく先生の話しに応じるが、飲みながら(懐妊中のケイトは流石にジュース)話し込むうちに意気投合する。パーティー会場の音楽(ライトジャズ)は別の音楽。
早朝、すっかり打ち解けたふたりは船から降り、タクシーでケイトの家へ向かう。
☆35:37-36:12 「If I Had A Lover」 Humming, Guitar, Bass
ベッドイン後にぎこちなく服を着るふたり。ケイトが突然告白「私、妊娠しているの」。先生「えっ!もうなの?」、「以前からよ。あなたではないわ」。彼は怒るどころか、彼女の身体をいたわり、朝食を作ってあげようとする。ケイトは相手の男はいい人で上手くいっていると嘘をつき、先生を諦めさせようとする。ボスとの約束の時間になったので、慌てて家を出る。
☆41:01-41:23 「Reflection」 Humming, Guitar, Bass
パブでボスと会う。ボスは結婚指輪を出し、ケイトは驚く。しかしボスは生まれる子供の面倒をみなくてはと言うが、彼女に対する愛は感じられない。彼女は求婚への回答を保留し、今晩電話してと言い、ボスは去る。たまたまパブにランチを食べに来た先生が二人のやりとりを目撃。ケイトの側に座って、子供二人を喜んで受け入れるので、自分を頼ってくれと言う。
☆46:52-47:17 「If I Had A Lover」 Humming, Guitar, Bass
午後ルーカス氏のオフィス(流れているロック音楽は別)で、やっと彼と会い、インタビューを試みるが、「トイレはどこだ?」という言葉しか取れず。でもケイトはさばさばした表情。
子供が旅行から帰ってくる(子供がつけたTVから流れる音楽は別)。息子は「誰も僕の事を好いてくれない」と悩みを打ち明けるが、ケイトは「大人の世界にようこそ。もがき苦しみ、そして立ち向かうことが人生」と応じて、彼を抱きしめる。(ボスからの)電話が鳴るが、ケイトは出ないことにする。

☆51:20-52:24 「Light Flight (Ending Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
ルーカス氏がヘリコプターでロンドンを去る。エンディング・クレジット

オープニングとエンディング・テーマは、「Take Three Girl」の時と同じ録音と思ったが、ジャッキーが歌う歌詞が違う!若い「Girls」でなく成熟した「Women」を意識した内容になっているのだ。ドラムスが入っていて、ボーカル以外は同じ演奏に聞こえるので、昔録音した伴奏トラックにジャッキーが歌入れしたものと推測される。それ以外はドラムスなしの演奏。「Reflection」 1971 T6、「Solomon's Seal」 1972 T7など、「Take Three Girls」の後に録音されたアルバムに入っていた曲をベースとした演奏があること。また「If I Had A Lover」のように、ペンタングル解散前の公式録音がなく、1980年のバートのアルバム「Thirteen Down」が初出で、同年12月のミラノでのライブで演奏された曲があるのが興味深い。また1980年代という時代を考慮してか、シーンによりペンタングル以外の音楽を取り入れている点が「Take Three Girl」と異なる。

1982年のペンタングル・リユニオンの演奏が聴ける。彼らの音楽が、ドラマに凛とした品格を付与しているのがよくわかる作品。

[2022年12月作成]

[2023年1月追記]
「Take Three Woman」のその後のエピソードを見て、先生が出てこないので、当初書いた「(ボスからの)電話が鳴るが、ケイトは出ないことにして、先生のオファーを受けることにした」という部分につき、「先生のオファーを受けることにした」の部分を削除しました。結論として、ケイトは息子と二人で生きる道を選んだことになります。


Take Three Women "Avril" (Episode 2) (1982) テレビ映像   

Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal, Hamming
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums (Oepning, Closing Theme Only)

Angela Down : Avril

Julia Jones : Writer
Roger Bamford : Director

放送 : 28 September 1982, BBC2

  

第2回「Avril」(50分)は、画家を志したアヴリル・ポンド (アンジェラ・ドーン)の12~13年後の物語。彼女以外に、父親(ジャック・ワトソン)、母親(ステラ・タンナー)、そして脚本(ジュリア・ジョーンズ)も 「Take Three Girls」の時と同じ顔ぶれで、台詞・演技の濃密感が、時を経てそのまま引き継がれている。

以下、粗筋とペンタングルの演奏が聴ける場面について述べます。内容の濃い早口の台詞がとても多い舞台劇のようなドラマで、かつ慣れないイギリス英語(コックニー訛りもある)のため、聞き取りが大変難しいのですが、わかる範囲内で書きます(間違いがあったらすみません)。なお台詞の一部しか聞き取れないので、ドラマの良否についてはコメントしません。

☆00:00-00:53 「Light Flight (Opening Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
(時間表示は映像下部にあるタイムコードの時間です)ロンドンの街角風景と3人の主演女性のポートレイト。
アヴリルのギャラリーが展示会を開催。豪華・盛況で、顧客が絵を見て「これはコピー?」「いや、ビアズリー風の作品」(飾られている絵は、模写ではなく、有名画家の作風を真似た模倣作品で、クリムト風の絵もある)。母(「Take Three Girls」の時とはうって変わり、とてもいい服を着ている)が客に「これは娘が書いたのよ!」と自慢し、飲食の給仕を手伝おうとするが、アヴリルに止めさせられる。
☆03:25-05:10 「Jump Baby Jump」 Humming, Guitar, Bass
アヴリル、アートスクールで絵を教えていて、一人の若者に気をかけている。
食堂で同僚の男性教師と会話。展示会は成功。作品の売れ行きは好調で、ビジネスとしてお金になると話す。
父親がギャラリー(兼アヴリルの住処)に来る。母同様、仕立ての良いスーツを着ている(子供の成功により経済的に豊かになった風)。一緒に食事をしながら、父親が自分が描いた絵を見せ、ギャラリーで展示して売ってほしいと言うが、ゴーギャン等の下手なコピーで、アヴリルは拒否。父は怒って帰る。
アートススクールの若者が自作の絵を見せに来て、アヴリルはその才能を認める。二人で飲食しながら、若いころパリで3年間絵描きの修行をし、その後パトロンがつき、彼が亡くなって遺産を引継ぎ、ギャラリーを開いたと話す(模倣作品によるビジネス上の成功、相続によるギャラリー開設など、幸福そうには見えない屈折した心情が伺える)。話し込むうちに、恋心が膨らんで若者にキスする。二人は外出して手をつないで歩く。
☆23:01-23:55 「Pentangling」 Vocal, Guitar, Bass
スクールでの実習中も二人は目を合わせて微笑む。食堂で同僚と食事。その間も他席に座っている若者に目がゆき、同僚から若者との関係につき、やんわりとクギを刺される。彼からデートに誘われるが断る。学校帰りに若者の後を追いかけようとするが、同僚に制止され「お前はバカだ」。
☆27:05-27:12 「Jump Baby Jump」 Guitar
アヴリルがギャラリーに戻ると、秘書よりシンシナティーに住むアメリカ人から現地での展示会のオファーがあったとの報告を受ける。母が待っていて、「お父さんにひどいことをしたわね」と責められる。絵を断られた事に意気消沈して、ベッドから出なくなったという。病気ではないので、アヴリルに家に来て何とかしてほしいと頼む。
アヴリルは両親の家に行き、ベッドにいる父と話す。「俺は駄目だ。役立たずだ。諦めた」彼が握りしめているのは軍帽(彼が軍人だった昔の栄光に囚われ、除隊後は満足な人生を送っていない様が暗示される)。「ニセモノを売るギャラリーに戻れ!」
テレビでアイススケート(演技用の音楽としてマイケル・ジャクソンの「Ben」が流れている)を見ている母との会話。母は父にうんざりしている。彼と最初に会ったときは。軍服姿で格好良かった。母はここを出て、カナダにいる妹の所に行きたいと言う。父に呼ばれてアヴリルが、「ベッドから起きて、ちゃんとしなさい」と泣き喚き、家から出てゆく。母は「彼女はいままで泣いたことがないのに、なんて事をしてくれたの」と責める。
☆39:30-40:22 「A Maid That's Deep In Love」 Humming, Guitar, Bass
夜ギャラリーに戻ると、書き置きがあり、パブに行くと、若者が若い女性とじゃれ合っている様が目に入り、黙ってその場を去る。
翌日スクールで、若者をじっと見つめるアヴリル。食堂で若者から話しかけられる。若者 「パブに来なかったね」 アヴリルは何も言わない。「自分は年寄りよ」 若者のくどき文句や 「あなたの絵を描きたい」に取り合わず、「あなたの女の子のもとに帰りなさい」と諭す。
母がギャラリーに来て、彼女が家に来なかった事を責める。父はベッドから出たようだが、フラフラしているとのこと。アヴリル「お父さんかわいそう」、母「私はかわいそうじゃないの?」、アヴリル「お母さんは生き残った人(Survivor)だからね!」、母「そうね」。この言葉で母は落ち着き、「ねえ休暇をとってみんなでどこか行きましょうよ」。シンシナティーの顧客が来店し、母は帰る。
アートスクールで同僚との会話中に若者が割って入る。アヴリルをめぐり、二人で言葉の鍔競り合いが繰り広げられるが、同僚との夕食の約束を受け、若者は諦める。
ギャラリー(自宅)での同僚との夕食。同僚から求愛を受ける。アヴリルは2階のアトリエに彼を案内し、自作の絵(自分のスタイルで描いた絵)を見せて、シンシナティーの金持ちアメリカ人に気に入られたと話す。同僚は「自分は離婚経験者だけど、職も家もあるし、どうかね?」「それともシンシナティーに移住する?」アブリルは冷静で、「考えなくちゃね」。
☆52:04-52:43 「Light Flight (Closing Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
エンディング・クレジットと、ギャラリー入口(ガラス戸に「Gaerie Ponde, Genuine Phonies (本物の偽物)」の店名が書かれている)に、「改装中のため閉店」という貼り紙。最後に女性の絵が写って終わり(両親と休暇をとった? or 同僚と一緒になった? or シンシナティーに行った? 結末はここでは不明)。

オープニング・テーマの「Light Flight」は、「Take Three Girls」と異なる歌詞であると前作「Kate」の時に述べたが、注意深く聴いていると、「Take Three Women」 第2話の歌詞は、第1話のものとも異なることがわかった。結構手が込んでいるよね!音楽が挿入される場面は比較的少ないけど、場面の切り替わり時など、台詞がないところで長めに流れるので、演奏をより楽しむことができる。

[2022年12月作成]


 
Take Three Women "Victoria" (Episode 3) (1982) テレビ映像   
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal, Hamming
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums (Oepning, Closing Theme Only)

Liza Goddard : Victorial
Susan Jameson : Kate

Charlotte Bingham, Terence Brady : Writer
Les Chatfield : Director

放送 : 5 October 1982, BBC2


第3回「Victoria」(50分)は、チェロ弾きのヴィクトリア・エドガーコム (リザ・ゴッダード)の12~13年後の物語。ヴィクトリア主演作については、「Take Three Girls」 シーズン1, シーズン2 の計7エピソードのうち6件が廃棄により失われている。リザ・ゴッダード氏は、YouTubeに当シリーズのエピソードを公開している人であるだけに、かわいそうだ。唯一生き残った「Variation Of May And September」 (シーズン1, エピソード2)も非公開のため、主演作としては本編が唯一鑑賞可能なものだ。そのため、「Take Three Girls」の後日談として観るには、イメージが沸かない感があるのは、致し方がないか。

☆00:00-00:37 「Light Flight (Opening Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
(本画像はタイムコード表示がないため、YouTubeの再生時間で表示します)ロンドンの街角風景と3人の主演女性のポートレイト。
雨の葬儀場を走る霊柩車と、未亡人となったヴィクトリアと娘が車に乗っている。
☆01:43-02:24 「Snow」 Humming, Guitar, Bass
ヴィクトリアの回想による、馬の調教師だった夫の事故死の新聞記事(そこそこ有名な人のようだ)と、叫び声、車のブレーキ、悲鳴、救急車のサイレンによる事故の音声。田舎にある自宅での葬儀出席者の集まり。いかにも上流階級といった感じのヴィクトリアの父、兄との会話。年齢差がある結婚に反対していた父は冷淡、兄は家の中にある銀製の小物をポケットに入れて盗み、会話中にシニカルに笑うなど、弔意のかけらもない。別室での母「ヴィクトリアかわいそうに」、義母「息子は56才の誕生日を迎えるところでした」、母が父に「彼女の年齢に見合った人をみつけるわよ」。ヴィクトリアと両親・兄弟との間に微妙な距離感があり、以前から彼らとの仲は良くなかったようだ。
居間のピアノに立て掛けたボッチェリーニ(Boccherini) の楽譜を見つめるヴィクトリア。「これは誰?」と義母が手にした写真立てに、「アヴリル、ケイトで、以前フラットをシェアしたことがあるの、結婚式の時に花嫁介添人をしてもらったわ」。娘と墓参りをするヴィクトリア。
義母との会話。夫がやっていたビジネスの状況が悪く、ギャンブル漬けで借金もあり、経済的に破綻していることが判明。
☆12:50-13:25 「Hunting Song」 Guitar
自宅の隣室で所持品、家財道具のオークションが行われている音声を聴きながら、義母と会話。大切なチェロを競売にかけられそうになり、止めさせた話など。ヴィクトリアはロンドンに引っ越すつもりであるが、住む場所は未定。
田舎で犬を散歩させているシーンから、ロンドンの通りでタクシーを待つシーンに変わる。 (15:33-16:02のチェロとピアノは別の音楽)。スケートボードやパンク・ファッションの若者など、ロンドンの変わりように戸惑う(流れるロック音楽は別)。住む候補のフラットを見た後、タクシーでケイトの家に行く。
ケイトの家での会話。田舎での生活では、夫が嫌ったため、夫以外の人々との交流はあまりなかったようだ。ケイト「これからどうするの? 時が経てば、きっとうまくいくわ」、「みんなそう言うだけ。どうしよう」。経済的に問題があることを告白し、自分はチェロを弾くことしかできないと嘆き、今後の生活への不安を訴える。ケイトはヴィクトリアを泊まらせる。
翌朝ケイトが息子にヴィクトリアを紹介。ヴィクトリアが帰る際に、ケイト「次に会うのは8年後じゃないよね?」。ヴィクトリア 「わからない。ロンドンでやってゆけるかどうか.... とにかく住む所を決めないと」。
宿泊先での娘、シッターとの会話。娘は住んでいた田舎の家を売ることに不満。ヴィクトリアは部屋に置いてあるチェロを眺める。
チェロ奏者のオーディション(オーディションで弾かれるのはクラシック音楽)。面接者(上流階級の男)は、演奏中に大きな音で鼻をかんだり、下卑た冗談を言うなど、傲慢かつ下品な人物。彼女にボッチェリーニ(Boccherini)の曲を弾くよう要求する。弾いているうちに夫の事故がフラッシュバックして演奏できなくなる。
ケイトの自宅にて。今度は娘と一緒。ケイトは自分の家にしばらく滞在するよう説得し、それを受けてヴィクトリアは荷物を持ち込む。
ケイトの自宅でパーティー。オーディションという言葉を聞きつけた音楽家との会話がはずむ。「セッション、スタジオ・ワークをしたことはあるかい?スタジオをやっていて、弦楽器奏者が必要なんだ」。先日のオーディション先から電話が入り、翌日11:00に来るよう言われ、希望が沸いてくる。
オーディション会場に行くが、秘書が応対し、弾いているチェロの話になって 「これは亡くなった夫からのプレゼントです」。秘書「これを売るつもりはないかね?」。目的は彼女でなくチェロであったことが判り、ヴィクトリアは呆然とする。
ケイト宅にて食事。ヴィクトリアは苛立って娘に当たる。ロンドンで暮らせないと言って、娘と対立し切れる。ケイトが、パーティーで会った男から、電話するよう連絡があったと伝える。
スタジオでのセッション。他のミュージシャンと顔合わせの後、初見で本番録音。47:30-48:26 「Stardust」を演奏する。 ミュージシャンが彼女に微笑みかけ、うまく溶け込んだ感じ。
子供達を連れてスタジオに迎えに来たケイトに 「うまくいったわ!2テイクとったけど、ファーストテイクが使われるかも」。男から「また頼むよ」 と言われ、稼ぎ口を確保できたので、ほっとしたヴィクトリアはすっかり明るくなり、「田舎の生活は退屈だったのよ」。ケイト 「あなたのママはポップスターになるのよ!」、ヴィクトリア 「違う、後ろでカリカリやっている人たちよ」。チェロを車に積んで、皆で家に帰ろう。
☆50:00-50:30 「Light Flight (Closing Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
エンディング・クレジット

オープニング・テーマの「Light Flight」は、「Kate」、「Avril」のものと歌詞が異なっているが、大変残念なことに、画像がジャッキーの歌唱の途中からスタートし、しかも一瞬途切れる部分もある。しかし他のエピソードと異なり、クロージング・テーマにボーカルが入っているので、ジャッキーが歌う歌詞をしっかり聴けことができる(ただし演奏的には編集で切れている部分があるのが惜しい。編集により両方のテーマを繋ぎ合わせることで再現できるかも)。

他のエピソードに比べ、何故かペンタングルの演奏部分が著しく少ないけど、本エピソード独自の歌詞による「Light Flight」が聞けるなど、捨て難い存在。

[2022年12月作成]

 
Take Three Women "Victoria, Kate And Avril" (Episode 4) (1982) テレビ映像 
 
Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal, Hamming
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums

Liza Goddard : Victorial
Susan Jameson : Kate
Angela Down : Avril

Lee Langley : Writer
Julian Amyes : Director

放送 : 12 October 1982, BBC2



主演女優3人の共演による、シリーズ最後の作品 (50分)。

☆00:00-00:33 「Light Flight (Opening Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
(本画像はタイムコード表示がないため、YouTubeの再生時間で表示します)ロンドンの街角風景と3人の主演女性のポートレイト。
ケイトの家。朝起きてきた息子が学校へ行く。
ヴィクトリアが家で娘と食事。届いた手紙の宛先の大半は亡くなった夫あてだったが、彼女宛の手紙で、母校の資金集めへの協力依頼があった。
☆01:59-02:15 「Light Flight」 Guitar, Bass,
アヴリルがオフィス(どこか不明)を訪問しノックする。落ち着きがない風。
ケイトのオフィス。ボス(エピソード1参照)から仕事の指図を受ける。
ヴィクトリアから電話。資金集めの協力依頼があったことを話す。
ヴィクトリアが娘とショーウィンドウの服を見て、「こんな高いの無理よ!」
アヴリルのギャラリー。若者(エピソード2参照)が諦めきれず、アヴリルに付きまとっている。「もう貴女に教えることはできないわ」。元気がない彼女を見て「大丈夫?」。ビジネスは上手くいっているので問題ないと答える。
ヴィクトリアと娘がギャラリーを訪れる。突然の訪問に驚き、再会を喜ぶ。娘を紹介し、娘「あなたの事は写真で見た事があります」。アヴリルはケイトとは会っていないと言う。
アヴリルが医者と相談。精密検査を受けるよう言われる(乳がんの疑い?)。彼女は動揺する。
ケイトのオフィス。ボスから相談あると言われ、赤ん坊のために資金援助の申し出でがあるが、「父性の発揮ね」とケイトは取り合わず。ボス「結婚の申し込みをした、君を失いたくない」。ケイト「私は貴男のものにはなっていない」。レストランでの食事の約束をする(前エピソ-ドでは冷淡だったボスの態度が変わってきている)。
川辺でケイトとヴィクトリア。ヴィクトリアはアヴリルと会ったことを話す。以前ケイトとアヴリルの間に誤解があって仲違いをしたことが明らかになる。
アヴリルがヴィクトリアの家に飾る絵を持ってくる。ヴィクトリアはケイトのせいではないと言う。仲直りを勧めるヴィクトリアの「人生は短いから」という言葉に、アヴリルは複雑な表情を見せる。
ヴィクトリア、スタジオで録音セッション(演奏曲は不明)。
ケイトの家、ヴィクトリアが預かってもらった娘を迎えに来る。娘が悪い言葉を使っているのを聞いて叱り、ケイトの息子からの影響と責める。「子供の教育に悪いからロンドンから離れたいわ」。ケイト「あなたはひどくお高くとまっているわ。ここは博物館ではないの。田舎で庇護された生活とは違う。成長して現実に向き合わなくではいけないの」。
公園でのヴィクトリアとアヴリルの会話。「ギャラリーを閉めようと思っている」と悩んでいる様子。娘が乗馬の練習をしている。「あなた破産したんじゃなかったの?」。誰か(聞き取れず)の援助を受けているようだ。
ヴィクトリアの家。悩んでいる風のアヴリルに「本当にだいじょうぶ?」。電話がかかり、録音セッションの仕事が入ったとのこと。
スタジオで男(キット)との会話。ヴィクトリアはケイトと口論したことを話す。キット「ケイトは息子が批判されたら母として黙っていないからね」。
☆21:00-21:25 「Light Flight」 Guitar, Bass, Drums
駅で列車から降りてきたケイトを迎える息子。
ヴィクトリアは家で娘と食事。
アヴリルがオフィスを尋ねノックする(オフィスは医院でした)。ケイトはそれを偶然見かけ、オフィスに入り、「医者と話がある」と嘘をついて待合室でアヴリルを待つ。診察室から出てきたは、ケイトから声をかけられ、「異常なしだった!」と安堵のあまり泣き出し、ケイトは優しく抱擁する。
ヴィクトリアと娘が家に帰る。娘の言葉使いに戸惑うが、我慢する。スタジオから出された宿題をしていたら、ケイトがやってくる。続いてアヴリルが現れて、お祝いよとワインを差し出す。
3人の再会を喜ぶ会話(この部分はあまり聞き取れませんでした)。キットが来て皆で夕食をとる。
皆帰り、娘も寝て、ヴィクトリアとキットの二人になる(28:28-31:17のピアノ曲、バッハ作メヌエット ト長調は別の音楽 → ペンタングルでない)。ヴィクトリアはナーバスに。キットが彼女に軽くキスをすると、「まだ早い(Early)わ」。キット「もう(夜)遅いよ」。「早い(Soon) のよ」。キットが年上の前夫が父親代わりだったことに言及すると、「ごめんなさい...... 謝る意味ではないの」。
ケイトのオフィス。ヴィクトリアが来る。冒頭で出た資金調達イベントの企画にケイトが関わっている。
アヴリルのギャラリー。先生(エピソード2参照)が来ると、怒った風の若者が代わりに出てゆく。資金調達イベントで絵を売るアイデアを話す。若者の彼女に対し、自分は友達にすぎないと説明したと先生に話す。「君はひとりでやってゆける人だ」(先生との関係も友達として続けるようです)。
☆34:25-35:45 「Light Flight」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
3人によるイベント準備作業(ヴィクトリア:音楽企画、アヴリル:絵の準備、ケイト:文書作成)
資金調達イベント会場での3人。即売用の絵、アンティック、レコードが陳列され、キットがステージのセッティングをしている。ケイトの依頼により即売用のレコードを寄贈した紳士から、チェロを教える仕事のオファーを受ける。
イベント終了後、主催者と成功を祝う乾杯。部屋に飾ってある絵を主催者が自慢する。アヴリルは偽物と指摘。「描かれている建物は作者が亡くなった10年後に建てられたもの」という証拠を示すが、主催者は取り合わず、別の来客に対し従来通り絵の自慢をする(ここはシニカルながらもユーモラスなシーン)。
帰りの電車の中での3人の会話(この部分はよく聞き取れませんでした。ヴィクトリアがオファーされた仕事について話しているようです)。
着いた駅にボスがいる。雑誌の広告契約が取れたので、いまから出張するとのこと。彼女に仕事を託し、別れに軽くキスする。お腹が大きくなったケイトにボス「だいじょうぶ?」。ケイト「救急車に乗るところよ!」、「えっ!」、「もちろんだいじょうぶよ」(冗談でした)。「明日戻るから待っていて!」。ボスはケイトと話すのが楽しそうで、ケイトも軽くあしらいながら満更でもなく、二人のやりとりはいい感じ。
☆47:15-47:41 「If I Had A Lover」 Humming, Guitar, Bass
ケイトの息子とヴィクトリアの娘が迎えに来ている。駅で別れて各自家に帰ってゆく
☆48:15-49:02 「Light Flight (Closing Theme)」 Vocal, Humming, Guitar, Bass, Drums
エンディング・クレジット

3人とも、それぞれが抱える悩み・問題が解決・好転し、互いにすっかり打ち解け、自立する女性として明るい未来が見えた所で終わっているので、大団円と言ってもいい気持ちの良いエンディングになっている。

冒頭の 「Light Flight」は映像・音声で途切れる場面があるが、34:25-35:45は、ボーカル付きの演奏が最初から最後まで続き(ただし途中の編集によるカットはあり)、途中台詞の挿入もないので、音楽鑑賞用としてはおあつらえ向き。以上総括です。

1.「Take Three Women」の4エピソードにおける「Light Flight (Opening Theme)」において、ジャッキーが歌う歌詞はいずれも違うものでした。「Take Three Girls」の歌詞は、いずれのエピソードも同じです(公式録音とは異なります)。
2.テリー・コックスは「Take Three Woman」の録音セッションには加わっていないようです。
3.録音方法につき、「Light Flight (Opening Theme, Closing Theme)」は、「Take Three Girls」、「Take Three Women」とも、同じベイシック・トラックにジャッキーがボーカル、ハミングを入れている。ベイシック・トラックは公式録音(「Basket Of Light」1969 T4) を編集により短くしたものではないかと思います。
4.その他の音楽については、① 本ドラマのために予め録音したものの使い回し ② スクリーンで動画を見ながら、それに合わせて演奏したもの の併用と思われます。

[シリーズの投稿を終えて]
私の能力では聞き取り不能な部分が結構多く、まだまだ修行が足りないと痛感しました。私の理解に間違いがあるかもしれませんが、その点については何卒ご容赦ください。

いままで40年以上、数多くの字幕なしの映画・ドラマを観てきましたが、私なりの楽しむコツは、すべてを聞き取ろう、理解しようと無理しないこと、と思います。聞き取れない部分があることにより、がっかりして鑑賞の意欲・楽しみを削いでしまうのは損なことです。わかった部分につき自分なりに満足と達成感を持ち、そこから想像力と推理力を働かせてそれなりの理解に達すること。大事なのは、今回はここまでだったけど、次回はモアベターよ! と研鑽に励むこと、そしてその研鑽と成長を楽しむことが大事であると思います。

また有難いことに、現在は昔の映画の多くについて、インターネットで粗筋または脚本を見ることができるので、それを最大限に活用することですね。その際もわからない単語・語句に拘泥せず、リズム良く読み進んでゆくことが秘訣であると思います。

[2022年12月作成]


  
Cambridge Folk Festival [Pentangle] (1982) 映像  
 
Bert Jansch: Guitar, Vocal (1)
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass


1. Bruton Town [Traditional]

収録: Cherry Hinton Hall, Cambridge July 30~August 1, 1982

 

イタリアでのツアーのオファーを受け、約10年振りに再結成されたペンタングルは、最初のギグとして1982年7月30日から8月1日までの期間で開催された第18回ケンブリッジ・フォーク・フェスティバルに出演した。ただし、テリー・コックスが直前の自動車事故により怪我をしたため、本ステージはドラムス抜きの4人による演奏となった。怪我の内容については、腕(同コンサートの音源資料)という説もあったが、バートのWikipedia、コリン・ハーパー著「Dazzling Stranger」2000 にある足(車椅子)が正しいようだ。

以前より「If I Had A Lover」、「People On The Highway」、「Sovay」の音源が出回っていたが、2023年11月Cherry Tree が「Reunions & BBC Sessions」T18 というCDボックスセットを出し、そこに同コンサートの演奏6曲が収録され、晴れて公式録音となった。なおCDの資料は収録日を「8月」としているが、厳密には開催期間7月30日~8月1日のいずれかとなる。そしてここで紹介するのは、コリン・ハーパー氏がYouTubeにアップロードしたBBC2テレビの映像で、1982年リユニオンのライブ演奏を捉えた貴重なものだ。

司会者の「久々のオーディエンスを前にした演奏」という紹介を受けて1.「Bruton Town」が始まる。画質がイマイチなのでメンバーの細かな表情・風貌はわからないが、 バートとジョンはでっぷり太り、ダニーの髪の毛が薄くなっていて歳月の経過を感じさせる。使用ギターは、バートはヤマハ、ジョンは当時時々弾いていたアリアのエレコードで、どちらも日本製だ。曲が終わった後、オーディエンスはスタンディング・オーベイションで応えていて、この復活が待望されたものであったことがわかる。

[2023年11月作成]


 
BBC Six Fifty Five Special [Pentangle] (1982) 映像   
 
Bert Jansch: Guitar, Vocal (1)
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass

1. Sovay [Traditional]
2. If I Had A Lover [Traditional]

収録: BBC Studio, August 5, 1982

 

BBCテレビ制作の「Six Fifty Five Special」は、1981年~1983年に放送された芸術・娯楽番組で、サリー・ジェイムスとデビッド・ソウル(アメリカのテレビドラマ「スタスキー・アンド・ハッチ」のハッチ役を演じ、1977年に「Don't Give Up On Us」という全米・全英1位の大ヒット曲を歌った人)がプレゼンターを務めた。

本映像はケンブリッジ・フォーク・フェスティバル出演後に撮影されたもので、ペンタングルの1982年リユニオンの様子を伝える映像として貴重なものだ。テリー・コックスの怪我のため、ここでもドラムス抜きの4人での演奏となっている。

良質の映像で、出演者の表情がはっきりわかる。特に印象的なのはジャッキーで、1943年生まれなので撮影時は38才ということになる。ズボンをはいたカジュアルな服装、短めにしてパーマをかけた髪型は、70年代のペンタングルのトラディショナルな恰好とは大違い。そして顔のクローズアップでは、目尻の皺がもろに見えてしまう。あちらの女性は早く老けるなあと実感。それでも貫禄がついたようで、見かけとしては悪くないね。

なおこの2曲は、 2023年11月、Cherry Treeより発売されたCDボックスセット「Reunions & BBC Sessions」T18に音源として収録されました。

[2023年11月作成]


Teatro Orfeo, Milan [Pentangle] (1982) 音源  
 
Bert Jansch: Guitar, Vocal (1,2,5,6,8,9,10,11,12,13,16,17)
John Renbourn : Electric Guitar,
Jacqui McShee : Vocal (1,2,3,5,7,11,12,13,14,15), Back Vocal (6,8,16,17)
Danny Thompson: Bass
Terry Cox :  Drums, Back Vocal (3)

1. Bruton Town [Pentangle]
2. People On The Highway [Pentangle]
3. Light Flight  [Pentangle]
4. Cherry [D. Brand] 
5. A Bold Young Farmer  [Traditional]
6. Train Song [Pentangle]
7. If I Had A Lover [Traditional]
8. Open Up The Watergate [Bert Jansch]
9. One Scotch, One Burbon [R. Toombs]
10. Blackwaterside [Traditional]
11. Sovey [Traditional]
12. Sweet Child [Pentangle]
13. Pentangling [Pentangle]
14. I've Got A Feeling [Pentangle]
15. Cruel Sister [Traditional]
16. Sally Free And Easy [Tawney]
17. Moonshine [Traditional]


注) 5, 9, 10 はジョン非参加

収録:  Teatro Orfeo, Milan, 1982年12月9日

   

オリジナルメンバーによるペンタングルの再結成は、1991年の「Derroll Adams 65th Birthday Concert」 T16 (但しテリー・コックス抜き)と、2008年のBBC Fork2 Award をきっかけとする再結成ツアーがあるが、実は1982~1983年に 5人が集まった時期があった。グループを解散してメンバーが自分の道を歩みだしてから10年後、イタリアでのツアーのオファーが好条件だったため、全員承諾したという。しかしリハーサルの段階でテリーが交通事故に合い、そのため最初のギグとして予定されていたイギリスのフォーク・フェスティバルの出演は4人となった。しかし12月のイタリアのツアーには、テリーが車椅子で復帰、5人全員によるリユニオンが実現した。本音源はその模様を捉えた貴重なものであり、過去から現在に至るペンタングルのミッシング・リンクを補うものである。

音響機材に問題があったようで、ジーというノイズがするが、各楽器はクリアーに録音されている。1.「Bruton Town」でのプレイは、昔の演奏の繊細さに比べて、ワイルドで自由な感じだ。特にダニーのベースはピックアップの技術進歩のせいもあり、大変生々しいプレイで驚かされる。ジョンはエレキギター(またはエレアコ)によるリードプレイに専念。間奏部分でリズムが合わなくなるのはご愛嬌かな? 2.「People On The Highway」でのバートのボーカルは少しダミ声風で、10年という歳月が経った事を感じさせる。代表曲 3.「Light Flight」は、テリーの繊細なドラミングが命であることがわかる演奏。4.「Cherry」はダラー・ブランドのピアノソロをアレンジしたもので、ジョンの単独演奏。公式録音はステファン・グロスマンとの共演盤 「The Three Kingdoms」1986 R22が初出なので、本音源はそれよりもかなり以前の演奏ということになる。この手の曲としては、エレアコっぽいサウンドが少し気になる。5.「A Bold Young Farmer」はジャッキーが無伴奏で歌う。ジョン・レンボーン・グループの「The Enchanted Garden」1980 R16 に収められていた曲。ジョンによる短いギター独奏の後、6.「Train Song」が始まる。弾き込んでいた現役当時に比べて、リズムにもたつきがあるのは、致し方ないだろう。 解散後10年間のうちに、確実な技術的進歩を遂げたダニーによる縦横無尽のプレイが素晴らしい。イントロでダニーのベースソロが入る 7.「If I Had A Lover」は、バートのソロアルバム「Thirteen Down」 1979 でジャッキーがゲストで歌っていた曲。従ってペンタングルとしての演奏はここだけという貴重な音源。8.「Open Up The Watergate」はバートのソロアルバム「L.A. Turnaround」1974 からの曲で、30年近くも経った後に、ペンタングル 5人による演奏を聴けるなんで、感慨無量。個性的なリズムセクション、ジョンのオブリガード、そしてジャッキーのハーモニー・ボーカルにより、ペンタングル・サウンドそのものに仕上がっており、本音源での聴き所のひとつとなった。スヌークス・イーグリンの 9.「One Scotch, One Burbon」は、バートがステージで演奏していた曲で、ここでは彼一人による演奏。公式発表はバートが参加したオムニバス盤の「Just Guitars」 1984 だ。10.「Blackwaterside」は、バートとダニーの二人演奏という珍しいバージョン。ここでのダニーの骨太プレイは最高に素晴らしい。11.「Sovey」は、「Sweet Child」 T3のオリジナルと同様バートとジャッキーによる男女の掛け合いボーカルを聴くことができる。12.「Sweet Child」ではジョンのリードギターが大活躍する。こういう曲を聴いていると、ペンタングルっていいなあ~と思うよね!メンバー紹介の後に、バンドの演奏力のショーケースである大作 13. 「Pentangling」が始まる。「この曲はどうなってゆくか分からない」というバートの紹介のとおり、インプロヴィゼイションが気の赴くまま延々と続く。ジョンのソロに続くダニーが展開する無伴奏ソロが圧倒的。14.「I've Got A Feeling」はダニーのベースソロがフィーチャーされる、よりジャジーな演奏で、良い出来。アンコール最初の曲 15.「Cruel Sister」が始まると、オーディエンスから拍手が起きる。ジョンのギターとバックコーラスのみの伴奏から始まり、途中からリズムセクションが加わる。 ジョンの声が聞けるのはここだけだ。バートが「One Of My Favorites In Pentangle」と紹介する 16.「Sally Free And Easy」は、バートが歌を間違えるシーンがあるが、ジョンのリードギターも含め聴き応えがある演奏。17.「Moonshine」は、バートによるソロアルバム(1973)のタイトル曲で、ペンタングルによる演奏は初めてだ!ジョンのギター、ジャッキーのハーモニー・ボーカルもしっかり入った感動の1曲!!

演奏自体は荒っぽさもあるが、総じて良い出来だと思う。ただし本コンサートを含むイタリアツアーについてのバートのコメント「Some of it was good, some of it was great, but we weren't enjoying the tour, and we weren't creative」(コリン・ハーパー著「Dazzling Stranger」より)にある通り、当時ジョン・レンボーンはダーリントン大学への入学を決めており、ペンタングルとしての演奏活動にそれほど情熱がなかったはず。さらにバートとジョンの音楽志向に大きな隔たりがあり、新しい作品を創る余地がなかったものと思われる。その後ジョンは、1983年のオーストラリアやドイツでのコンサートの後に脱退、バートの「A Rare Conundrum」 1977 に参加したマイク・ピゴー(ギター、バイオリン)が後任者として加入することになる。新しいラインアップにおいて、創造的であろうとするバートの思いは生かされたようで、1985年に発表されたアルバム「Open The Door」 は、全く新しいサウンドで新生ペンタングルと呼ぶに相応しいものだった。

本音源におけるジョンのリードギターのプレイは、自由に弾いている分ミストーンも多々ある。上述の事情もあり、バンドにおける音楽的な貢献度はあまり大きいとはいえないが、ペンタングルおよびジョンのキャリアにおいて、1970代と1980年代を繋ぐ重要な部分に位置する貴重な音源。

[2023年11月追記]
2023年11月、Cherry Treeより発売されたCDボックスセット「Reunions & BBC Sessions」T18 に本音源 5~17が収録されました。


  
Thiene (1982) [Pentangle] 音源   
 
Bert Jansch: Guitar, Vocal (1,2,5,6,8,9,10,11,12,13,16)
John Renbourn : Electric Guitar,
Jacqui McShee : Vocal (1,2,3,5,7,11,12,13,14,15), Back Vocal (6,8,16)
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Back Vocal (3)

1. Bruton Town [Pentangle]
2. People On The Highway [Pentangle]
3. Light Flight  [Pentangle]
4. Ragtime Tune (Cannonbal Rag) [M. Travis]  
5. A Bold Young Farmer  [Traditional]
6. Train Song [Pentangle]
7. If I Had A Lover [Traditional]
8. Open Up The Watergate [Bert Jansch]
9. One Scotch, One Burbon [R. Toombs]
10. Blackwaterside [Traditional]
11. Sovey [Traditional]
12. Sweet Child [Pentangle]
13. Pentangling [Pentangle]
14. I've Got A Feeling [Pentangle]
15. Cruel Sister [Traditional]
16. Sally Free And Easy [Tawney]


注) 4, 5, 15 はバート非参加

収録: Thiene, Italy 1982年12月10日

  

ミラノのコンサートの翌日、ティエーネでのコンサートのオーディエンス録音。同地はミラノとヴェネチアの中間地点のの少し北に位置する人口2万4千人の小さな町だ。前日のミラノとほぼ同じ曲目で、異なる点は4曲目のジョンのソロが、ミラノでは「Cherry」だったのに対し、ここでは 4.「Ragtime Tune」となっていること。またミラノで最後に演奏した「Moonshine」がないことだ。後者については当日演らなかったのか、または演ったが本音源から漏れたのか、のどちらかは不明。

オーディエンス録音ということで、ミラノより音質は劣るが、最大の問題点はピッチにある。テープの録音スピードに問題があったようで、演奏が本来より速くなり、その結果音も高くなっていることは明らかだ。ここでの演奏曲をオリジナルと比較して聴くとよくわかる。また速くなった結果、レンボーンのソロ曲は人間では不可能な早弾きとなってしまっている。私は編集ソフトを使ってピッチを遅く調整したものを聴いている。調整により音質が落ちるけどしょうがないね。またオーディエンス録音ということで、聴衆の歓声や口笛が大きく聞こえて、かなり耳障りという問題もある。大歓声で応える大変乗りが良いオーディエンスとも言えるが、演奏中でも平気で叫んだり口笛を吹くマナーの悪い輩がいる。ジャッキーの独唱 5.「A Bold Farmer」で彼女が歌っている間もざわざわした音が聞こえるのだ。まあお喋りなイタリア人のお国柄かもしれないな。

といろいろ文句を言ったが、1982年のリユニオンにける貴重な音源であることは間違いない。演奏の内容は前日とほぼ同じであるが、異なる点だけ言及しよう。4曲目のジョンのソロ演奏は、資料では 「Ragtime Tune」というタイトルになっているが、正しくは彼が当時のコンサートで演奏していたマール・トラヴィスの「Cannoball Rag」だ。この曲はソロアルバムには入らず、正式録音は、2007年に発売されたジョンのベスト盤「Nobody's Fault But Mine (John Renbourn Anthology 1966-2005)」Q32に収められた。また13.「Pentangling」におけるダニーのべースソロは、前日と全く異なる内容で、途中突然「Sweet Child」1968 P3のライブ盤にあった「Haitian Fight Song」の一節が出てきて、テリーの伴奏がつく部分があるのが面白い。ミラノのコンサートの記事で述べた通り、本ツアーでの演奏には創造性・新しさがないと言えるが、ジョンのリードギター、ダニのベースはその分自由奔放にプレイしている感があり、それはそれで悪くない。

なお2023年11月、Cherry Tree より発売されたCDボックスセット「Reunions & BBC Sessions」T18に、本音源から 1~4が収録されました。

[2023年11月作成]


 
Bottom Line, New York  John Renbourn's Ship Of Fools  (1988)  
   
John Renbourn: Guitar, Citern, Vocal
Maggie Boyle: Flute, Whitsle, Bodhran, Vocal
Tony Roberts: Flute, Northumbrian Pipes, Soprano Sax
Steve Tilston: Guitar, Mandolin

1. Death And The Lady
2. Sandwood Down To Kyle [Dave Goulder]
3. Cobbler's Jig *
  Maltese Brawls *
4. The Verdant Braes Of Screen
5. Lark In The Air *
6. Ye Mariners Soul
7. Cruel Sister
8. 'Round Midnight [Thelonious Monk] *
9. Serching For Lambs
10. Ship Of Fools [Renbourn, Tilson, Boyle, Roberts]

収録: Bottom Line, New York, 1989 April 17


ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあったライブハウス、ボトムライン(2004年閉鎖)で行われたシップ・オブ・フールズのコンサート音源で、時々マイクが擦れる音が入る良質なオーディエンス録音(ステレオ)。各演奏曲の公式初録音は以下のとおり。

John Renbourn's Ship Of Fools 1988 R23 : 2, 3, 4, 5, 8, 9, 10
A Maid In Bedlam (John Renbourn Group) 1977 R10 : 1
Live In America (John Renbourn Group) 1980 R16 : 6
Cruel Sister (Pentangle) 1970 T5 : 7
The Three Kingdoms (John Renbourn & Stefan Grossmsn) 1986 R22 : 8

1.「Death And The Lady」はジョン・レンボーン・グループのレパートリーから。シップ・オブ・フールでは公式録音がない曲だ。ギターの伴奏で2本のフルートとジョンをリードとした合唱による演奏。ジョンによるマギーの紹介の後に始まる 2.「Sandwood Down To Kyle」はジョンのギターが冴えわたり、マギーがホイッスルで寄り添う。ここではアルバム「John Rebourn's Ship Of Fool」1988 R23の言及がないので、本コンサートはおそらくアルバム発表前のものと思われる。 3. 「Cobbler's Jig/Maltese Brawls」はダンスチューンで、トニー・ロバーツはノーサンブリアン・パイプ(Northumbrian Smallpie)、ジョンはシターン、スティーブはマンドリンを弾いている。マギーは何らかの管楽器で、途中で彼女は打楽器のバウロン(Bodhran)に持ち替え、トニーは管楽器を吹いている。4. 「The Verdant Braes Of Screen」はスティーブがリード、マギーがハーモニーボーカルを担当、終盤は合唱になる。間奏はマギーのホイッスル、トニーのノーサンブリアン・パイプが鳴っている。マギーの紹介による 5.「Lark In The Air」はレコード同じくフルート2本による演奏。音源に資料には記載がなかったが、次の曲 6.「Ye Mariners Soul」はジョン・レンボーン・グループがライブで演っていたアカペラ曲。

7.「Cruel Sister」はペンタングルの名曲で、シップ・オブ・フールズでの演奏はこれだけ。マギーの声で聴くのもいいね。間奏の2本のフルート、彼女が歌っている間のトニーのフルートも新鮮。セロニアス・モンクの名曲 8.「'Round Midnight」は、トラッド主体のこのグループとしては異色。基本的なアレンジは「Three Kindoms」1986 R22に近く、スティーブがナイロン弦ギターによる伴奏、ジョンがリードギターという役割分担。間奏でのトニー・ロバーツのソプラノ・サックスはジャズそのもので、この人の懐の深さは恐ろしいほどだ。マギーのバウロンから始まる 9.「Serching For Lumbs」は、レコードとほぼ同じ演奏で、間奏はトニーのフルート。ジョンが「最後の曲」と紹介する 10.「Ship Of Fools」は、モダンなリズム・演奏で、ソプラノ・サックスが入ってフュージョン音楽っぽい感じになる。

数少ないシップ・オブ・フールズのライブ音源で、良質なサウンドで楽しめる。

[2023年11月作成]


Tekla, Bristol  John Renbourn's Ship Of Fools  (1989)
 
John Renbourn: Guitar
Maggie Boyle: Flute, Whitsle, Bodhran, Vocal
Tony Roberts: Flute, Northumbrian Pipes
Steve Tilston: Guitar, Mandolin

1. I Live Not Where I Love [Traditional] (Fade In)
2. Plains Of Waterloo [Traditional]

収録: Telka, Bristol, U.K. , 1989 September 20

 

テクラはもともと輸送船だったが1982年に改造され、イギリス・ブリストルに係留されてナイトクラブとなり、現在もフォークやロックのコンサート会場となっている。本映像は、そこでのコンサートの模様を撮影したオーディエンス・ショット。

1.「I Live Not Where I Love」は彼らが1988年に発表した唯一のアルバム R21に収められていたトラッドで、残念ながら映像が途中から始まるが、観れただけでもよしとするか。マギーボイルは、椅子に座ってギターを弾くレンボーンとスティーブ・ティルソンの間に立って歌う。芯のある綺麗な声ですね。間奏ではトニー・ロバーツと一緒にフルートを吹いている。レンボーンは御馴染みフランクリン・モデル、スティーブはレコードと同じくクラシック・ギターを弾いている。2.「Plains Of Waterloo」は、ジョン・レンボーン・グループのアルバム「The Enchanted Garden」 1980 R16に収録されていた曲で、シップ・オブ・フールズでの公式録音はないため、お宝映像となった。スティーブはマンドリンを弾き、ステージ向かって左端のトニー・ロバーツは、ノーサンブリアン・パイプ(抱えた手で空気を送り込む小型のバグパイプ)を演奏している。マギーは歌いながらボウラン(アイルランドの伝統的な打楽器で、大きなタンバリンのような形)を抱えてバチで打ったり、間奏ではペニーホイッスルを吹いている。マギーの歌声は、ジャッキー・マクシーとは違った魅力がある。

私は、これ以外にシップ・オブ・フールズの映像を観たことはなく、貴重なものだと思う。多少の手振れはあるものの、ミュージシャン達の姿は正面からしっかり捉えられており、サウンドもまあまあだ。


 
 Festival d'Ete de Quebec  (1990)
 

 
John Renbourn : Vocal (2,3,5,7), Back Vocal (20), Guitar (1~7,20)
Bert Jansch : Vocal (8,10,12,13,17,18,19) , Back Vocal (20), Guitar (8~20)
Jacqui McShee : Vocal (8,9,6,7,12,14,16,18,19,20), Back Vocal (10,17)
Peter Kirtley : Electric Guitar (1~6,9~20), Bass (7,8)
Gerry Conway : Drums (8~20)
Nigel Portman Smith : (1~6,9~20), Piano(7,8)

[John Renbourn]
1. Sweet Potato [Booker T.Jones]
2. Great Dreams From Heaven [J. Spence]
3. Lord Franklin [Traditional]  
4. Little Niles [Randy Weston] (Cut)
5. Lindsey [Archie Fisher]
6. Cherry [Dollar Brand]
7. Kocomo Blues [Trad.]

[Pentangle]
8. Bramble Briar [Traditional] (Fade In) 
9. Taste Of Love [Pantangle]
10. Sally Free And Easy [Cyril Tawney]  
11. Eminstra [Pantangle]
12. Mother Earth [M. Nascimento]
13. Lucky Black Cat [Pantangle]  
14. Lassie Gathering Nuts [Traditional]
15. Gaea [Pantangle] 
16. So Early In The Spring [Traditional.]  
17. Is It Real [Jansch]
18. Yallow [Traditional]
19. Reynardine [Traditional]  
20. Cruel Sister [Traditional] 

収録: 1990年7月10日 Paec de la Francophonie, Quebec, Canada

注: 8~19 はジョン非参加


「Festival d'Ete de Quebec」は英語で「Quebec City Summer Festival」という意味で、1968年から現在まで毎年7月第1週目に開催されており、本映像はジョン・レンボーンとペンタングルが1990年に出演した際のもの。当フェスティバルは主に三か所の会場で行われるが、冒頭の映像から市内の公園「Paec de la Francophonie」で行われたものであることがわかる。ケベックはカナダの北東に位置する美しい街で、人々はフランス語を話し、ヨーヨッパ的な匂いがする街だ。特に街の真ん中の高台に立つ城 「シャトー・フロンテナック」は、現在はホテルとして多くの人々を魅了している。少し離れた所から撮影したオーディエンス・ショットで、クローズアップの画像はないが、スタンド備え付けなので手振れはない。固定画面ではバンド全員が入らないので、ギターソロの際などはカメラを横に動かして調整している。画質はピンボケであるがライティングの様々な色は綺麗。音質も悪く、ジョンやバートのアコースティック・ギターの繊細な響きはなく、バンドサウンドの中に溶け込んでいる。しかしナイジェル・ポートマン・スミスのベースがはっきり聞こえるので、バンドサウンドとして十分楽しむことができ、ピート・カートレイのエレキギター、ジェリー・コンウェイのドラムスなど荒っぽいながらも迫力のある音だ。

最初はジョン・レンボーンのソロのステージだ。屋外ステージで風が強くギター・マイクが使えないとのことで、ピックアップによるエレアコっぽいサウンドからは、残念ながらアコギの音の良さは微塵も感じられない。最初の曲 1.「Sweet Potato」から飛ばしているが、テンポが速く、早弾きのテクニックをひけらかし過ぎている感じ。レンボーンのこの手の演奏は、個人的には好きではない。2.「Great Dreams From Heaven」は飄々と歌っているが、ここでもテンポは早め。3.「Lord Franklin」になると、少し落ち着いてきたかな? 4.「Little Niles」は、流石に巧みなフレーズで聴かせるが、私が観た映像ではエンディングで切れてしまい残念.......。5.「Lindsey」もテンポが速い。6.「Cherry」は乗り乗りの演奏で、弾きながら唸りに近いようなハミングを合わせているのが面白い。猛烈なテンポの7.「Kocomo」のドライブ感は圧倒的で、気分が高揚したジョンは「Sweet Home Kokomo」という歌詞を 「Sweet Home Chicago」と原曲のロバート・ジョンソンの歌詞で歌う場面がある。 

以下8~19までは、ジョンがいない後期ペンタングルの演奏。8.「Bramble Briar」は、初期ペンタングルの「Bruton Town」と同じ曲であるが、ここではベースとドラムスがよりリズミカル。映像は演奏の途中から始まる。バートとピーター、ジャッキーは椅子に腰掛けて演奏し、ナイジェルはその後ろに立ってエレキベースを弾いている。ドラム奏者の顔は隠れてよく見えないが、ゲリー・コンウェイ。リズムセクションとエレキギターの音が強調されたソリッドな音作りだ。「Open The Door」 1985 からの9.「Taste Of Love」は、ピーターの弾くテレキャスター系のリードギターソロの音が歌心豊かで心地良い。バートのアルペジオとのコンビネーションも良い感じ。10.「Sally Free And Easy」は、初期とは異なるロックっぽいアレンジ、ソリッドなリズム感が新鮮。子供のぐずり声が聞こえるのは、オーディエンス録音ならでは。1989年の「So Early In The Spring」からの選曲が多く、インストルメンタル 11.「Eminstra」もそのなかのひとつ。ブラジルの国民的アーティスト、ミルトン・ナシメントスの12.「Mother Earth」は、ソロでの演奏に比べてはるかに厚みがあるプレイで、奔放なリードギター・ソロが魅力的。ブルース曲 13.「Lucky Black Cat」は、比較的クールな演奏。14.「Lassie Gathering Nuts」と15.「Gaea」では、ナイジェルがピアノ(エレクトリック・グランドピアノ)に座り、ベースギターはピーターが代わりに弾いている。ペンタングルでキーボードというのは斬新で、特に変拍子の後者では、ピアノが前面に出て、ここそとばかりに弾くまっている。

16.「So Early In The Spring」におけるリズムセクションの16ビートの演奏は、フュージョン・バンドのよう。ジャッキーの声はきれいだけでなく、バンドに負けない力強さを持っていることを改めて確認できるパフォーマンスだ。 17.「Is It Real」の公式録音はバートのソロのみなので、ペンタングルとしての演奏は珍しい。ジャッキーはコーラス部分の「Real」という部分だけハーモニーを入れている。 このあたりになると、バンドは十分に熱くなってきたようで、18.「Yallow」での怒りをこめた演奏は、ハードでロックグループそのもの。特にジェリー・コンウェイのパワフルなドラミングが凄い。19.「Reynardine」は、さらに熱狂的な演奏で、ペンタングルのクールはイメージとは全く別の世界が広がる。ピーターのリードギターはアグレッシブで、切れ味鋭いプレイ。リズムセクションのグルーブも聴き応え十分だ。

アンコールで、ジョンが一緒に登場して演奏される 7. 「Cruel Sister」は、新旧ペンタングルの共演! ジャッキーのボーカルに、ジョンが「ファラララ」とコーラスを付けるシーンはファンとして感動的。バートも後半でコーラスに加わる。

遠くからのショットで画質も良くないので、メンバーの表情など分からないが、様々な色のライティングが綺麗、かつ迫力あるサウンドでコンサートの臨場感は味わえる。90年代の後期ペンタングルの演奏、ジョンとバートの共演を観ることができる貴重なソースだ。


[2014年2月追記]
本映像の全編を観ることができ、また資料より収録場所および年の特定ができましたので、書き直しました。

[2023年2月追記]
日の特定ができたので、追記しました。


Bottom Line, NY With Stefan Grossman And Larry Coryell  (1992)

John Renbourn : Guitar, Vocal
Stefan Grossman : Guitar
Larry Coryell : Guitar

1. Twelve Sticks [Rev. Gary Davis]
2. a Intro
 b Struttin' Rag
3. a South Wind
  b The Blarney Pilgrim
4. From Sandwood Down To Kyle [D. Goulder]
5. Opus One [Larry Coryell]
6. Transparence [Larry Coryell]
7. Goodbye Pork Pie Hat [Charlie Mingus]
8. Mississippi Blues
9. Improvisation (仮題)


録音: 1992年2月8日 ニューヨーク、ボトムライン

注: 1,2 はステファン・グロスマンのソロ演奏、5,6 はラリー・コリエルのソロ演奏


ラリー・コリエル(1943-2017)は、ジャズ・ロック・ギターの開拓者として、1960年代の後半から1970年代前半にかけて、保守的なジャズギターの世界にロック的な奏法と発想を持ち込み、センセイションを巻き起こした人だ。今と違って当時は、音楽のジャンルを飛び越える事は驚天動地の出来事だった。彼の音楽のジャンルや垣根にこだわらない姿勢は、その後もアコースティック・ギターによる演奏へのこだわりや、クラシックやブルースなど幅広い音楽への取り組みに顕著の現れている。その多彩な活動の中で、彼は1990年代にステファン・グロスマンと交流を持ち、彼の会社から数本の教則ビデオ(現在はDVDで発売)を出した他、シャナーキーから出したソロアルバム「Dragon Gate」1990 には二人のデュエット演奏も収録された。1992年、ステファンとジョンにラリーが加わったジョイント・コンサートが実現したのは、前述の関係のためと思われる。

音源はステファンのソロから始まり、彼の持ち味である軽妙な語りを加えながら、ゲイリー・デイビスの曲、単弦弾きによるブルースロック風の即興演奏、そしてお得意の 2b 「Struttin' Rag」を演奏する。次にジョンのソロとなり、常連曲の 3.「a South Wind b The Blarney Pilgrim」、4.「From Sandwood Down To Kyle」を演奏。そしてジョンの紹介により、ラリー・コリエルが登場。オーベイションの12弦ギターによる 5.「Opus One」は全編ハーモニクスのアルペジオによる不思議な感じの曲。6.「Transparence」は、1991年のラリーのソロアルバム「Twelve Frets To One Octave」に入っていた独奏曲。

その後ステファンとジョンが加わり、3人によるセッションが始まる。ラリーによると、「リハーサルなし、前打ち合わせなし」とのこと。ラリーの「何をやろうか?」という問いに、ステファンが「チャイコフスキーの........」と答えてオーディエンスは大笑い。ミンガスをやろうという事になり、ステファンが「Goodbye Pork Pie Hat」のコード進行は、教則ビデオを製作した時にラリーから習ったものだと明かす。7. 「Goodbye Pork Pie Hat」は、ステファンとジョンによるいつものテーマ演奏に、ラリーが音をかぶせ、時々鋭いパッセージを切り込むように挿入する。最初のソロはジョン。いつもより気合が入っているのは明らか。続くラリーのソロは、彼独特のゴリゴリ、ガリガリとした感じの骨太の早弾きだ。そんじょそこらの軟弱なクロスオーバーギタリストを蹴散らすような、タッチの強いピッキングは圧倒的。演奏中にステファンとジョンから盛んに掛け声がかかり、エキサイティングなムードに満ちている。エンディングのテーマ演奏では、ラリーはアーティフィシャル・ハーモニクスで音を加えている。ここでステファンが「このあとオレゴンが演奏します」とアナウンスし、彼らがオレゴンの前座で出演していることがわかる。私にとって最高の取り合わせ。観たかったな~!8.「Mississippi Blues」では、ラリーが繰り出すブルース・フレーズが巧みで、何でも即座に対応出来る、この人の懐の深さを十分に感じさせるプレイだ。途中ステファンが「次はブギーだよ!」などと、曲の次の展開を伝えながら進行してゆく。アンコールの9.「Improvisation」は、モダンな感じの即興演奏的なリフをバックに、ラリーが弾きまくる。

ステファンとジョンの二人にラリー・コリエルが加わった、異色の取り合わせによるお宝音源。


Lone Star Roadhouse With Bert Jansch & Jacqui McShee (1992) 

Bert Jansch : Vocal, Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal

1. Bruton Town [Traditional]
2. The Time Has Come [Ann Briggs]
3. Sally Free And Easy [Cyril Tawney]
4. First Light (Instrumental) [Unknown]
5. Baron Of Brackley [Traditional]
6. When I Was In My Prime [Traditional]
7. Chasing Love [Bert Jansch]
8. If I Had A Lover [Traditional?]
9. Come Back Baby [W. Davis]
10. Sovay [Traditional]

注) 6 はジョン非参加

収録:  Lone Star Roadhouse, 1992年4月14日


1976年、ニューヨーク 5番街と13丁目のコーナーにオープンしたローンスター・カフェは、テキサスを中心とするカントリー・ロックの大物アーティストが多く出演、またジェイムス・ブラウンがライブアルバムを録音し、ブルース・ブラザースがデビューした場所として歴史に名前を残すことになった。1989年、この場所がクローズされた時に、同じ経営者が52丁目ウエストにオープンしたのがローンスター・ロードハウスだった。しかし経営が上手くいかなかったようで、この場所も1992年頃クローズされたという。本音源は、1992年にバート・ヤンシュとジョン・レンボーン、ジャッキー・マクシーの3人が、この場所で行ったコンサートの一部(Early Set)である。

1990年のデロール・アダムス65歳誕生記念コンサート T16 でペンタングルのリユニオンが実現した後、バートがロンドン・フォークシーンを振り返るプロジェクト「Acoustic Routes」1993 の製作のため、ジョン・レンボーンと再会してセッションを行ったが、昔のような創造性を取り戻すまでには至らず、結局公式録音は残されなかった。その代わり、当時一緒に演奏活動を行う機会があったようで、本コンサートはそのひとつと思われる。その頃ジャッキーとバートは、(後期)ペンタングルとして一緒に活動しており、この二人にジョンがリードギタリストとして加わった編成となっている。したがって、本音源にはジョンが歌ったり、メインで演奏する曲はない。

1.「Bruton Town」は、ペンタングルのデビューアルバム 1968 T2から。この曲をこのメンバーで聴くと懐かしくて、昔の若い頃を思い出しますね。ここではベースとドラムスがない分、ジョンのリードギターが頑張ってる。バートとジャッキーのハモリも息がぴったり合っていて良い。2.「The Time Has Come」でのジョンのリードギターは、「Sweet Child」1968 T3での演奏に比べると、遥かに自由な境地で演奏しているように思え、その間のアーティストの成長を感じさせるプレイだ。ジャッキーのボーカルも伸びがあっていいね!3.「Sally Free And Easy」は、ペンタングルの最後のアルバム「Solomon's Seal」1972 T7 からで、モダンな香りがする佳曲。バートのリードボーカルにジャッキーがハミングで寄り添う部分はゾクッとするスリルがある。4.「First Light」は、前述の「Acoustic Routes」のために撮影され、映画には収められたが、アルバムには収録されず、2013年の再発盤のボーナス・ディスクで初めて正式発表された曲。作者は不明であるが、しっかり作り込まれた感じはなく、一定のリフをベースとしたジャムセッションによる産物と思われる。出来はまあまあかな~? ともかく、この1曲だけでファンにとっては、お宝音源になる価値はある。

5.「Baron Of Brackley」は、後期ペンタングルが「So Ealy In The Spring」1988 で取り上げていたスコットランドのトラディショナル。これをジョンのリードギターで演奏しているバージョンで聴くことができるのは有難い。6.「When I Was In My Prime」は、「Cruel Sister」1970 T5と同じジャッキーによる無伴奏の独唱だ。7.「Chasing Love」は、「Acoustic Routes」1993 にバートとジャッキーの二人による演奏が収録されていたが、ここではジョンのリードギターが加わるため、とても面白いバージョンになった。バートのアルバム「Thierteen Down」 1979 で、ジャッキーがゲストで歌っていた 8.「If I Had A Lover」も同様。 9.「Come Back Baby」は、バートのソロ「Birthday Blues」1969 が初出であるが、彼が若い頃から歌っていた古いレパートリー。ジョンお得意のブルース調のリードギターが入ることに加えて、ジャッキーがセカンド・ヴァースを歌いだしたのにビックリ!そしてサード・バースは二人のハモリを聴くことができる。「Sweet Child」1968 T3 の10.「Sovay」も懐かしい曲で、バートとジャッキーが掛け合いで歌う様がカッコイイ。

1990年代初め、彼らが一緒に活動した短い期間の音源として、大変貴重な記録となった


  
Trowbridge Village Pump Festival With Issac Guillory (1993) 映像 
 

John Renbourn : Guitar, Vocal (1, 2)
Issac Guillory : Guitar, Nylon-String Guitar (3), Vocal (5, 7)

1. Kokomo Blues [Traditional] (Fade In)
2. Buckets Of Rain [Bob Dylan] 
3. A Child Is Born [Thad Jones]
4. 4-Way Street [Unknown, Probably Guillory]
5. Sixteen Ton [Merle Travis]

6. All Blues [Miles Davis]
7. End Of The Line [JJ Cale]

1993年7月 Trowbridge Village Pump Festival, Trowbridge, Wiltshire, U.K.


トロウブリッジはイギリス南西部ウィルトシャー州にある村。トロウブリッジ・ビレッジ・パンプ・フェスティバルは、そこにあるビレッジ・パンプ・フォーク・クラブが始めたイベントで、1984年より郊外の農場に場所を移して行われた。本映像は、1993年第20回目のフェスティバルにおけるジョン・レンボーンとアイザック・ギロリーの公演を捉えたオーディエンス・ショットで、画質・音質ともにまあまあといったところ。アイザック・ギロリー(1947-2000) は、キューバ米軍基地生まれのアメリカ人で、フロリダ、シカゴなどに住んだ後、徴兵逃れでヨーロッパに渡り、イギリスに定住する。ピック、フィンガー・スタイルいずれもこなす人で、親指と人差し指でピックを持ちながら、中指と薬指でつま弾く奏法が得意。クラシック、フォーク、ブルース、ジャズ、フュージョン等幅広い音楽性を持つ人だったが、彼一人によるコンサート活動が中心で、レコード発売も自主レーベルからが多かったので、大変な名手であったにもかかわらず、地味な存在だった。2000年にがんによる併発症で死去(享年53)。ジョンはそんな彼を大いに評価していたようで、ジョンのオフィシャル・サイトの「共演者」コーナーに、彼に対する賛辞が寄せられている。

仮設テントの会場で、演奏中も多くの人がステージ前の通路を行き交うという、自由な雰囲気でのパフォーマンス。1.「Kokomo Blues」は間奏部分からフェイドインする。 アイザックはピックで弾きながら、同時に中指と薬指で指弾きをしている様が見える。映像全編を通して、内から溢れて噴き出ているかのごとく弾きまくっていて、「ヴァーチュオーゾ」と呼ぶに相応しいプレイだ。2.「Buckets Of Rain」でも縦横無尽なオブリガード、間奏ソロを付けている。 使用ギターは日本製のタカミネ (ジョンはいつものフランクリン)。3.「A Child Is Born」のみナイロン弦のエレアコに持ち替えている。この曲はサド・ジョーンズが作曲してサド・ジョーンズ-メル・ルイス・オーケストラのアルバム「Cunsummation」1970 に収めた曲で、その後歌詞がつけられてジャズのスタンダード・ソングになった。ジョンがここでしか聴けないジャズ・チューンを演っている。

4.「4-Way Street」は、ラテン調のリズムによるフュージョン風の曲で、アイザックとジョンによるソロの応酬が凄い。調べた限りでは、アイザックのアルバム「Easy」1994に入っている曲だったが、これは過去に発表済の曲のコンピレーションとのことで、オリジナル・アルバムについての資料がなく詳細は不明。ここで彼が「歌おうか」と言って、マール・トラヴィスによる炭鉱労働者の歌 5.「Sixteen Ton」を歌いだす。フォークソングなのに、ジャズのようなアドリブ満載の歌唱で、この人はギターだけでなく歌も上手い。間奏のソロもフュージョン・ギター風で、ぶっとんでいる。ジョンは楽しそうに伴奏を付け、ソロも取る。なんか他アーティストの共演の時よりも、ずっと気合が入っているように見える。

この後、ふたりはステージを降りるが、アンコールで戻ってきて、マイルス・デイビスの 6.「All Blues」(アルバム「Kind Of Blue」 1959収録の名曲)を演る。そしてメドレーでアイザックが歌うブルース 7.「End Of The Line」(J.J. ケールのアルバム「Travel-Log」 1990 より)に移り、大歓声の中コンサートが終了する。

ジョンとアイザックは1990年代前半に共演していたようだが、公式録音・良質の音源が残されなかったことは大変残念だ。


[追伸]

私が知る限り、二人の共演の動画がもうふたつある。
① 1991年9月17日 Victoria Room, Bristol における「Kokomo Blues」」
② 1992年3月        同上    における「Unknown Title (フュージョン風のインストルメンタル)」

上記2つの動画を観ると、会場のセッティングおよび二人の服装が一致しているので、同じコンサートでの撮影であり、どちらかの日付が誤っているものと思われる。

[2023年1月作成]


Kuumbwa Jazz Center, Santa Cruz Archie Fisher (1997) 源 
 


Archie Fisher: Vocal (12, 13以外), Guitar (12,13以外)
John Renbourn: Vocal (13), Guitar (1~9以外)

1. Will Ye Gang, Love
2. The Final Trawl
3. Cosshieville
4. Locheamhead
5. Tall Shio On The Ocean
6. The Ballon Of The Cowdenknowes
7. Blow The Winds Of Freedom
8. The Surge Of The Seas
9. Sneider Trophy

10. Tumbledown Shack
11. For Old Times Sake
12. South Wind
   Blaney Pilgrim
13. Sandwood Down To Kyle
14. Loneliness
15. Lindsey
16. Other Side Of The Mountain
17. All That You Ask

収録: Febuary 2, 2017, Kuumbwa Jazz Center, Santa Cruz, CA

注: 1~9はジョン非参加

 

アーチー・フィッシャー(1939- ) はスコットランド生まれで、主に地元で音楽活動やラジオ・パーソナリティーとして活躍した人。ソロアルバムの他に、フィッシャー・ファミリー、バーバラ・ディックソンとの共演などでレコードを出している。彼を敬愛するジョン・レンボーンは、作品「Lindsey」を録音。コンサートで定番曲として演奏した。2017年二人はカナダと米国をツアーし、本音源はカリフォルニア州サンタクルズにおけるコンサートを録音したものだ。サウンドボード録音で、一聴したところでは、アーチーのコンサートにジョンがゲスト参加したような構成になっている。しかし、実際はジョイント・コンサートだったものを、このような形に編集したものかもしれない。

最初の9曲はアーチーのソロで、ジョンは非参加。聴いていると、スコットランドそしてケルト音楽の伝統が強く感じられる。この9曲は、資料・公式録音がないものが多く、曲の作者(一部の曲はトラディショナルと思われる)も定かでないため作者のクレジットは未記載とし、解説も省略することとした。9曲目が終わったところでアーチーがジョンを紹介し、二人による演奏が始まる。アーチーのギターは生っぽい音であるのに対し、ジョンのギターはエレアコ風の音になっていて、アーチーの歌とギターにジョンがリードギターとして音を付け加え、間奏ソロをとる内容となっている。簡単なヘッド・アレンジで演奏している感はあるが、ジョンのこの手のプレイはそれなりに味があるものだ。アーチーのギタープレイは、インストルメンタルを弾く人ではなく、歌伴としての演奏ではあるが、かなり上手。彼の英語にはスコットランド訛りがあって、語りや歌唱の聞き取りが難しく、アメリカ英語に慣れている私には分からない部分がある。11.「For Old Times Sake」が終わった時点で、休憩のアナウンスが入る。

12~13曲目はジョンのソロ演奏。12曲目は資料では「Clare Tunes」となっていたが、正しくはジョンの定番曲「South Wind」と「Blaney Pilgrim」のメドレー。13.「Sandwood Down To Kyle」のギター演奏は、霧がかかったようなエレアコの音がこの曲の雰囲気にピッタリ合っていて、とても素晴らしい出来だ。アーチーが歌う 15.「Lindsey」は、ジョンのカバーにはないギター演奏部分があり、両者を比較すると面白い。ジョンも弾きなれているせいか、ギターのデュエットとして、この曲の出来は各段に良い。曲のエンディングでオーディエンスが大笑いするが、音だけなので、残念ながら何が起きたか分からない。最後の曲 17.「All That You Ask」は、アーチーのアルバム「Sunsets I've Galloped Into」1995に収められていた曲。

二人の共演の公式録音が残されておらず、私が知るライブ録音は他にないため、本音源は大変貴重なものだ。

[2022年12月作成]


The Alma Tavern, Clifton, Bristol (1999)   映像

John Renbourn: Guitar, Vocal
Keith Warmington: Harmonica (10,11,16,17)

[1st Set]
1. Judy *
2. Angie [Davey Graham] *
3. Watch The Stars
4. Blues Run The Game [Jackson C. Frank]
5. The Young Man Who Wouldn't Hoe Corn
6. Getting There [Mose Allison]
7. Cannonball Rag [Merle Travis] *
8. Lord Franklin
9. Little Niles [Randy Weston] *
10. That's All [Marle Travis]
11. Candy Man {Rev. Gary Davis]

[2nd Set]
12. The Snows
13. Goodbye Pork Pie Hat [Charles Mingus] *
14. Sandwood Down To Kyle [Dave Goulder]
15. a Bunyan's Hymn *
   b I Saw Three Ships *
   c The English dance *
16. Kokomo Blues
17. Buckets Of Rain [Bob Dylan]

The Alma Tavern, Clifton, Bristol U.K.  Jun 22, 1999


注: * = インストルメンタル

ブリストルは英国西南部(ロンドンから西に約170キロ)にある都市。同地のパブ、アルマ・タバーンの2階にある50人収容のシアターで行われたコンサートのオーディエンス撮影。ゲストとして、地元で活躍する司会者、DJ、ハーモニカ奏者のキース・ワーミングトンがゲスト出演した。彼はスティーヴ・ティルソン、デイブ・エヴァンスや地元のポップバンド、ザ・コーギスのアルバムに参加している。

画質はまあまあであるが、手振れが少なく、ズームアップ等の動きがあるので、飽きずに観ることができ、音質もそれほどクリアーではないが、音楽を楽しむには十分なレベル。ジョンが使用しているギターはフランクリン製。1.「Judy」、2.「Angie」は切れ目なしの演奏。曲が終わりチューニングを変える間、ジョンが語りを入れてオーディエンスを笑わせるシーンが随所にあるが、声がこもり気味なのと、私の拙いリスニング能力のため、何を言っているのかよくわからないのが残念。4.「Blues Run The Game」の紹介でジョンは、作者のジャクソン C. フランクにつき、イギリス滞在時に親交があり良い奴だったが、帰国後ホームレスになって最近死んだと語っている。彼が亡くなったのは、1999年3月3日(享年56)なので、コンサートの約3~4ヵ月前ということになる。5. 「The Young Man Who Wouldn't Hoe Corn」はドック・ワトソンをイメージしたマウンテン・バンジョー風の演奏。6.「Getting There」は、アメリカのジャズ・ピアニストで、大変理知的な曲を書いたモーズ・アリソン(1927-2016) の作品。シニカルな雰囲気のブルースで、作者本人が歌う映像が残っている。ここではジャズピアノをギターに置き換えるジョン得意のアレンジが光っている。この曲は長らく公式録音がなかったが、2015年ジョンの死後発売されたウィズ・ジョーンズとのライブ盤「Joint Control」2016 R29に収録された。 7.「Cannonball Rag」 は、公式録音として「Nobody's Fault But Mine (John Renbourn Anthology 1966-2005)」 2007 Q32に未発表トラック「Cannonball Stomp」として収められた曲。9.「Little Niles」が終わった後、ジョンが声をかけて、キースが客席からステージに上る。二人で演った曲 10.「That's All」は、 マール・トラヴィス 1947年の作品。ウィリー・ネルソンが1969年にカバーし、さらに2008年のウィリーとウィントン・マルサリスの共演盤の録音がある。ジョンによる公式録音がないお宝トラックだ。ファーストセットは 11.「Candy Man」を楽しそうに演奏してお終い。

ファーストセットの撮影は、安定したカメラと、ノーカットと思われる内容だったが、セカンドセットの 12.「The Snows」の動画は、途中から始まる。ファーストセットの時よりも後ろの席からの撮影で、多少気になる手振れがあるのと、カットされている部分もあるのが残念。13.「Goodbye Pork Pie Hat」の公式録音は、バート・ヤンシュとのデュエット P1だったが、ここではジョンの独奏! これが凄い出来で、ミンガスがレスター・ヤングのリクイエムとして書いたこの曲のダークな雰囲気が見事に表現されている。このソロバージョンの公式録音が残されなかったことは本当に残念だ。 ジョンお馴染みのレパートリーが続いた後、キースが再びステージにあがり、16.「Kokomo Blues」と17. 「Buckets Of Rain」を演奏して、二人はステージを降りる。ここで動画が終わるので、アンコールはカットされているようだ。

ハーモニカ奏者との共演、公式録音がない曲・演奏が楽しめる映像。

[2022年11月作成]


Pavia, Italy (With Johnny Dickinson And Hans Theessink) (2005)   映像



John Renbourn: Vocal (1,4,8,9以外), Guitar
Johnny Dickinson: Vocal (9), Slide Guitar (7-10)
Hans Theessink: Vocal (8), Guitar (7,9), Slide Guitar (8,10)

1. Sweet Potato [Booker T. Jones]
2. The Snows
3. Great Dreams From Heaven [Joseph Spence]
4. Cannonball Rag [Merle Travis]
5. Gettin' There [Mose Allison]
6. Lord Franklin
7. Blues Run The Game [Jackson Frank]
8. Walking The Dog [Rufus Thomas]
9. She Moves Through The Fair
10. Kokomo (Fade Out)

Piazza delle Vittoria, Pavia, Italy September 7, 2005


パヴィーアは、イタリア北部ロンバルディア州にある中世の面影を残した古い町で、中心部にあるヴィットリア広場で行われた野外コンサートのオーディエンス映像。多少の手振れはあるが、あまり気にならない。画質・音質まあまあで、音楽として十分楽しむことができる。共演者のジョニー・ディキンソン(2019没)はイギリスに生まれ、ロック、ブルーグラスを経て、ソロでフォーク・ブルースを演奏していた人で、スライドギターが得意。ハンス・シーシンク (1948- ) は、ウィーンを活動拠点とするオランダ人で、デルタ・ブルース・スタイルで歌う。

動画は、最初にジョニー、次にハンスが各単独で演奏するシーンから始まる。そしてジョンが登場し、テンポが早めの 1.「Sweet Potato」を弾き出す。使用ギターは当時愛用のラルフ・バウン。画面はギターを弾くジョンの上半身ショットで、たまに歌う表情がクローズアップされる。また曲間にはカットが入る。3.「Great Dreams From Heaven」は前奏部分が長く、8分近くに及ぶ演奏だ。4. 「Cannonball Rag」はアルバム未収録で、2007年のベスト盤「Nobody's Fault But Mine (The John Renbourn Anthology 1966-2005)」に初めて収められた。5.「Gettin' There」は当時ジョンがステージで演奏していたブルージーなジャズ曲で、長らく 未発表だったが、死後に発表されたアルバム「Joint Control」2016 R29に入っている。ジョンのソロは 6.「Lord Franklin」で終わり、以降は3人のジョイントとなる。本コンサートでのジョンのプレイは、いつもより自由奔放な感じがする。

7.「Blues Run The Game」は、ジミーがスライドでオブリガードと間奏ソロをとり、ハンスは軽く合わせている。ジョンは二人に声をかけながら歌ってゆく。演奏中に一瞬カメラが動き、広場の背後に聳え立つパヴィーアの大聖堂が写し出される。ハンスが歌う 8.「Walking The Dog」は、R&B歌手ルーファス・トーマス(1917-2001) 1963年全米10位のヒット曲。間奏でのジョンのギターソロは乗り乗りで、ジミのスライドギターがそれに続き、ジミーとハンスのダブル・スライドギター、最後にジミーがギターを膝に置いた姿でスライドプレイを見せる。3人の意気が合ったグルーヴィーなパフォーマンスだ。9.「She Moves Through The Fair」は一転して厳かな感じのトラッドとなり、ジミーがスライドを弾きながらしっとりと歌い、間奏ソロはジョン。 10.「Kokomo」の間奏ソロはハンス、ジミーの順で、途中でフェイドアウトする。

本映像は、ジョンの死後投稿されたもので、冒頭に「John Renbourn Tribute」、最後に「This film is dedicated to the memory of John Renbourn....... We all miss your art, John R.I.P.」の字幕が出る。

珍しい取り合わせによる雰囲気のよいライブ映像。

[2023年4月作成]


BBC Radio2 Folk Awards (2007)   ラジオ音源

Bert Jansch: Guitar Vocal (1)
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox :  Drums, Back Vocal (2)

1. Bruton Town  
2. Light Flight 


放送: 2007年2月7日 BBC Radio2 Folk Awards
司会: Mike Harding
プレゼンター: Sir David Attenborough


マイク・ハーディング(1944- )は、フォーク歌手、コメディアン、旅行家、写真家など多くの顔を持つ人。彼が司会を務める「The Mike Harding Show」(BBC Radio2 毎週水曜日放送)は、BBC放送におけるフォークやルーツ音楽方面の代表的な番組。この番組の特番として、年間顕著な活躍をしたミュージシャンを表彰する「Folk Awards」があり、第8回目にあたる今回、ペンタングルが「Lifetime Achievements Awards」を受賞、その席で「More Than Thirty Years」ぶり(司会者による)の5人による再会セッションが実現した。そういえばT16で聴くことができた、デロール・アダムス65歳誕生日記念コンサート 1990 におけるペンタンタングルのリユニオンは、テリーが自動車事故による怪我のため参加できなかったため、残りの4人による演奏だった。1985年の「Open The Door」 は、ジョンを除く4人とマイク・ピゴー(ギター、フィドル)による編成だったが、その前1982~1983年にほんの一時期だけジョンが加わり5人が揃ったことがあるあるので、正しくは25年ぶりということになる。

1.「Bruton Town」におけるバートとジャッキーのボーカルは気合が入っている。ドラムスは正にテリー独特のタッチだし、ダニーの激しく動くベースラインも健在。正直言ってバートとジョンのギターはグループ現役当時と比べると、切れ味の面では見劣りがしてしまうし、何よりもグループとしての一体感がないのは明らか。それでも感動してしまうのは、長い歳月を経て再会した人達の心を感じるからであろうか? 2.「Light Flight」も最もペンタングルらしい曲であるが、何もこんなに難しい曲をやらなくてもと思うのであるが、ジャッキーの軽やかなボーカル、セカンド・ヴァースから加わるテリーのスキャット・ヴォイスなど、全盛期のサウンドを一瞬見せてくれるのがうれしい。

曲が終わると、プレゼンターとしてサー・デビッド・アッテンボローが登場する。彼はBBC放送で自然をテーマとした一連のドキュメンタリー・シリーズの製作に関わり、この手のジャンルの国際的なパイオニアと言われている人物で、俳優、監督のサー・リチャード・アッテンボローの弟。BBCにおける彼のキャリアの初期に、アラン・ロマックスが提供するフォーク、ルーツ音楽の製作に関わったことがあるようで、この手の音楽への造詣も深いようだ。彼のスピーチの後に賞が授与され、ペンタングルのメンバーが謝辞を述べる。最初の男性は名前の紹介がなかったが、「10年間演奏していなかった」とか、話のなかにスティーリー・ダンの名前が出てくるので、恐らくテリーだろう。次にバートがお礼を言って、ペンタングルのコーナーは終了する。

2時間の番組のうち、本件に係る部分は10分ほどで、開始後1時間30~40分経った後半部分だった。BBC Radio2は放送した番組につき、しばらくの間ホームページでプレイバックできるサービスがあり、この番組を聴くことができたのは、そのおかげだった。演奏の内容はともあれ、Historic Performance として理屈抜きで感動して聴くべし!

本番組でのリユニオン、およびボックスセットの発売などをきっかけとして再評価の機運が高まり、2008年6月29日に「Sweet Child」のライブと同じ場所で、再結成ペンタングルによる40周年記念コンサートが開催され、さらに7~8月に英国12都市でコンサートが行われた。


Stuart Maconie's Freak Zone [Pentangle] (2008) ラジオ音源

Bert Jansch : Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Back Vocal

1. Let No Man Steal Your Thyme [Pentangle]
2. Light Flight [Pentangle]  
3. Market Song [Pentangle]
4. I've Got A Feeling [Pentangle]  
 

録音 : 2008年4月27日 BBC Studio, London

放送 : 2008年6月8日 BBC6 Music


上記の曲はペンタングルのリニオン・ツアー開始前の4月27日に録音され、ツアー終了後の6月8日にBBC6 Music の番組 「Stuart Maconie's Freak Zone」で放送された。ラジオ放送用のスタジオライブという、オーディエンス、カメラがない状況で、落ち着いた感じの演奏となっている。2日後の「Later」のライブよりも安定感があるのは、リラックスして演奏できたからじゃないかな?

ダニーのアルコ奏法によるベースの重低音から始まる 1.「Let No Man Steal Your Thyme」は、現代技術により、各楽器の微妙なタッチまで聞き取れる大変クリアーな録音だ。テンポを少し落としてじっくり演奏される。ジャッキーの声は、昔のように若々しい張りはないけど、精神的な深さが感じられ悪くない。曲間のコメントや紹介無しで、切れ目なく演奏が続く。2.「Light Flight」では、ジャッキーの背後で聞えるテリーのスキャットボーカルが懐かしいね!「Sweet Child」P3 ライブの最初の曲だった 3.「Market Song」におけるバートの枯れた声を聴くと、40年という月日の重さを感じ、感慨深いものがある。4.「I've Got A Feeling」は、風格を感じさせる今回の演奏のほうが、昔のものよりも雰囲気が良いようにも思える。

録音・演奏の両面において、ペンタングル・リユニオン音源の決定版。4曲といわずに、もっと沢山演奏してくれればよかったのに!


Later With Jools Holland (2008) テレビ映像

Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Back Vocal

[April 29]
1. Let No Man Steal Your Thyme [Pentangle]

[May 2]
2. Light Flight [Pentangle]  
3. I've Got A Feeling [Pentangle]  
 

放送: 2008年4月29日、5月2日 BBC TV 'Later With Jools Holland'


2007年はバートやジョンのファンにとって刺激的な年となった。2007年2月の「BBC Folk Awards」におけるペンタングル・リユニオンが大評判となり、翌月の3月には待望のボックスセット「The Time Has Come」T12 が発売された。その頃は水面下で色々な話があったに違いない。そしてしばらく後に、コンサートの予告が発表されたのだ。しかも「Sweet Child」T3 に収録された歴史的なコンサートから、ちょうど40年後の2008年6月29日に、同じ場所ロイヤル・フェスティバル・ホールで行うという事で大きな話題となり、チケットは瞬く間に売り切れた。さらに英国各地を巡るコンサートツアーも追加発表されたのだ。

ジュールズ・ホランドがホストを務めるテレビ番組「Later」への出演は、6月末から始まるのコンサートに向けて行っていたリハーサルの成果を試すものだったに違いない。まず 2.「Light Flight」を観てビックリ! いつも椅子に座っていたジャッキーが、立って歌う姿を初めて観たことだ。昔のインタビューで彼女は、立つと緊張してうまく歌えないと言っていたが、大丈夫なのかな? また彼女の姿を観たのは、2005年のジョン・レンボーンとのコンサートのDVD V9以来だったが、今回の映像を観て、老けたな~というのが実感。男性陣については、バート、ジョン、ダニーは以前から現在の姿を見知っていたので意外性はなかったが、テリーを見るのは本当に久しぶりで、その眼鏡をかけた老人姿にも「おおっ」ときてしまう。とか何とか言っちゃっても、5人が一緒の姿を見るだけで感動してしまうのだ。演奏面では、当時の切れ味を望むのは無理な話であり、3.「I've Got A Feeling」と合わせて、貫禄と味わいで感じるべし!

感動的ではあるが、時の移ろいの残酷さも感じられる映像だ。

[2023年1月 追記]
4月29日の放送を観ることができました。1.「Let No Man Steal Your Thyme」での、会場セッティングおよびメンバーの服装が5月2日と同じなので、同時に収録し異なる日に放送したものでした。


Pentangle Reunion Concerts (2008) [Pentange]  映像・音源
Bert Jansch : Guitar, Banjo, Vocal
John Renbourn : Guitar, Sitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Glockenspiel, Back Vocal


[Royal Festival Hall, 2008年6月29日]

[1st Set]
1. The Time Has Come [Ann Briggs]
2. Light Flight 
3. Mirage
4. Hunting Song 
5. Once I Had A Sweetheart [Traditional]
6. Market Song
7. In Time
8. People On The Highway
9. House Carpenter [Traditional]
10. Cruel Sister [Traditional]

[2nd Set]
11. Let No Man Steal Your Thyme
12. No Love Is Sorrow
13. Bruton Town
14. A Maid That's Deep In Love [Traditional]
15. I've Got A Feeling
16. The Snows
17. Goodbye Porkpie Hat [Mingus]
18. No More My Lord [Traditional]
19. Sally Free And Easy [Tawney]
20. Wedding Dress [Traditional]
21. Pentangling
22. Willy O' Winsbury [Traditional]
23. Will The Circle Be Unbroken [Traditional]

注)特記ない場合はPentangle 作曲


[Harrogate, International Centre, 2008年7月10日]

[1st Set]
1. Let No Man Steal Your Thyme
2. Light Flight 
3. Mirage
4. Hunting Song 
5. Once I Had A Sweetheart [Traditional]
6. Market Song
7. In Time
8. People On The Highway
9. House Carpenter [Traditional]
10. Cruel Sister [Traditional]

[2nd Set]
11. The Time Has Come [Ann Briggs]
12. Bruton Town
13. No Love Is Sorrow
14. A Maid That's Deep In Love [Traditional]
15. I've Got A Feeling
16. The Snows
17. Goodbye Porkpie Hat [Mingus]
18. No More My Lord [Traditional]
19. Sally Free And Easy [Tawney]
20. Wedding Dress [Traditional]
21. Pentangling
22. Rain And Snow [Traditional]
23. Willy O' Winsbury [Traditional]


[Gatesshead , The Sage, 2008年7月12日]

Harrogate と同じ


        
2007年2月のBBC Radio2の「Folk Awards」で、ペンタングルが 「Lifetime Achivement Awards」を受賞し、そのセレモニーでオリジナルメンバー5人によるリユニオンが実現した。そして3月には未発表曲を含んだ待望のボックスセットが発売、ファンにとって2007年はうれしい年となった。そしてその後、「Sweet Child」T3 に収録されたロイヤル・フェスティバル・ホールでのライブ録音のちょうど40年後にあたる2008年6月29日に、同じ会場でリユニオンライブを行うことが発表され、大きな話題となった。さらにそれに続く以下12箇所のイギリス国内ツアー、および8月にウェールズで行われるグリーンマン・フェスティバルへの参加が決まった。

  6月29日(日) London , The Royal Festival Hall

  7月1日(火)  Cardiff , St David's Hall

  7月2日(水)  Brighton , Dome
  7月3日(木)  Cambridge , Corn Exchange
  7月5日(土)  Birmingham , Symphony Hall
  7月6日(日)  Oxford , New Theatre

  7月7日(月)  London , Lyceum Theatre
  7月9日(水)  Manchester , Palace Theatre
  7月10日(木) Harrogate , International Centre
  7月12日(土) Gateshead , The Sage
  7月13日(日) Glasgow , Royal Concert Hall
  7月14日(月) Liverpool , Philharmonic
  8月17日(日) The Green Man Festival, Wales


70年代に活躍したグループの多くは、ザ・ビートルズをはじめとして、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フー、レッド・ツエッペリンなど、オリジナル・メンバーの誰かが故人である場合が多く、そういう意味でメンバー全員が元気でリユニオンできたケースはペンタングルとクリームぐらいかな? 彼等はコンサートに向けて行ったリハーサルの成果を試すべく、 4月29日の「Later With Jools Holland」に出演した。また本番の直前の6月25日と26日に、ロンドンから北東90キロのところにある古い町、コレセスターでウォームアップのための小規模なコンサートを開催したようだ。そして6月29日(日)、満員のオーディエンスを前にコンサートが始まった。「Good evening, ladies and gentleman. Please welcome, Pentangle」というアナウンスの後、ライトが灯され、5人がステージに登場する。舞台前面の左にジョン、右にバートが座り、後方左は高椅子を置いて、時々腰掛けながらウッドベースを弾くダニー、右はテリーがドラムセットに鎮座。ジャッキーは中央に位置し、テレビ映像と同じく、椅子に座らず立ったままで歌う。 最初の曲を 1.「The Time Has Come」にしたのは、長年のブランクの後に実現したリユニン・コンサートの始まりを意図したものだろう。淡々とした演奏で、ジャッキーの声が緊張のため、かすれていて、バンドも硬い演奏で大丈夫かな?と少し心配になる。最初のコンサートという事もあって、オーディエンスもプレイヤーも、40年という時の移ろいにはせる万感の想いが曲に勝ってしまったようで、何となく「心ここにあらず」といったパフォーマンスだ。ただしその雰囲気は、コンサートが進むにつれて和らぎ、演奏もすぐに好調になる。これ以降のコンサートでは、最初の曲は彼等のファーストアルバムの冒頭を飾った「Let No Man Steal Your Thyme」となる。2.「Light Flight」を聴くと、このバンドの生命線がリズムセクションにあることがよくわかる。現役最前線で活躍するダニーのリズム感が健在なのは予想できるが、音楽活動から遠ざかっていたはずのテリーが意外に頑張っている。でもバンド全体のリズムの一体感、強靭さという点では、昔と比べると見劣りするのは事実であるが、随所で起こるリズムの乱れは、主にバートとジョンのプレイに起因するものだ。その代わりに往年にはなかった枯れた味わいがあるし、ジョン・レンボーンのリードギターの自由なプレイは魅力的であり、それらに焦点を当てて鑑賞すれば、十分に楽しめるものと思う。実は私は、彼等はフルコンサートに耐える水準の演奏ができるのだろうか? と危惧していたので、今回音源をじっくり聴いて、とても良かったので正直ほっとしているのだ。

3.「Mirage」ではジョンのリードギターを楽しめる。ペンタングル解散後はソロ活動を行いながら、ステファン・グロスマンとのデュオ、仲間のミュージシャンとのジョイント等によるコンサートやレコーディング等で、長年リードギターを担当してきたジョンにとって、今回のペンタングル・リユニオンは他のミュージシャンと異なり、昔通りに演奏するのではなく、長い月日の中で磨き発展させた腕前を試す機会となったようにも思われる。PAやピックアップの技術進歩もあって、エレキギターに頼らずアコギのままで繊細な音が拾えるようになったこともあり、今回の一連のコンサートにおけるジョンのリードギターのプレイは、同じ曲の演奏でも、コンサートによりその音使いは異なり、派手さはないが、とても自由な境地で弾いているように感じる。4.「Hunting Song」では、テリーのグロッケン(鉄琴の一種)を聴くことができる。5.「Once I Had A Sweetheart」では、ジョンの鋭いリードギターと、テリーのファルセットによるバックコーラスが聴きもの。7.「In Time」は、以前に比べると大人しい感じかな? 8.「People On The Highway」は、オリジナルと異なり前半はバートが一人で歌い、後半からジャッキーのハーモニーがつく。 9.「House Carpenter」では、昔と同じくバートがバンジョ-を、ジョンがシタールを演奏する。ジョンは長年弾いていなかったはずなので、かなり練習したんじゃないかな?10.「Cruel Sister」はジャッキーの歌に注目しよう。若い頃に比べて声の張りやつやはなくなったが、長年歌いこんだ年輪というか風格が感じられ、特に本曲のようなトラッドを歌う際にはその印象が強い。    

セカンドセットは初回のロイヤル・フェスティバル・ホールでは 11.「Let No Man Steal Your Thyme」から始まるが、他のコンサートでは「The Time Has Come」だったようだ。ペンタングルの初めてのアルバムの最初の曲だっただけあって、コンサート最初の曲としては、やはり「Let No Man.....」のほうが相応しいように思える。12.「Bruton Town」では、バートとジャッキーのボーカルがバッチリ合っていて、調子が乗ってきた感じだ。主人公の悲しみ、怒りを表現する間奏のジョンのギターも良い。ダニーが中心となって書いたという 13.「No Love Is Sorrow」は、ちょっと固めの演奏。ジャッキーが前面に出る 14.「A Maid That's Deep In Love」と続き、ジャッキーが「マイルスの曲を基にした」と紹介する 15.「I've Got A Feeling」はリラックスした演奏。 16.「The Snows」はバートがメイン、17.「Goodbye Porkpie Hat」はさらっとした演奏だ。ジャッキーのボーカルが力強い 18.「No More My Lord」 、クールな 19.「Sally Free And Easy」。20.「Wedding Dress」は、バートバンジョーを弾き、テリーがタンバリンを叩きながらドラムスを演奏、バックボーカルも担当する。 21.「Pentangling」は、現役時代の長大な構成ではなく、ベースやドラムスの短いソロを含むさっぱりした演奏。トラッドの 22.「Willy O' Winsbury」の後に演奏される最後の曲 23.「Will The Circle Be Unbroken」のみオジリナルと異なる新しいアレンジだった。特にドラムスの乗りが全く違う。それなりに良い出来だと思うが、評判がイマイチだったようで、後のコンサートでは原曲に忠実な 22.「Rain And Snow」に差し替えられた。

特に何か新しい事をやっているわけでもないので、懐古趣味と言われればそれまでだが、昔になかった渋みというか、ゆったりした懐の深さみたいなものが感じらる。歴史的な意義を別として音楽的な見地からみたとしても、それなりに楽しめる音源であると思う。


(注: 映像について)

アマショットで画質は悪く、多くは曲の一部のみであるが、以下の映像を観ることができた(曲番はHarrogateのものを使用)。

London (The Royal Festival Hall) : 2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,
Cardiff (St. David's Hall) : 3,4,5,6,7
Oxford (New Theatre) : 2
London (Lyceun Theatre) : 7,9,12
Harrogate (International Centre) : 10,12,13,14,15,19,20,21
Glasgow (Royal Concert Hall) : 12
Wales (The Green Man Festival) : 1,4,12,17,

[2024年1月追記]
2016年発売の公式盤「Finale」 T17に収められた21曲は、13回のコンサートのうち8ヵ所からのベストトラックを抽出したものでした。私が知る限りで、公式発売、音源、映像の詳細は以下のとおりです。

06-29 London, England - Royal Festival Hall  音源23曲、映像10曲
07-01 Cardiff, Wales - St. David's Hall    公式3曲、映像5曲
07-02 Brighton, England - Dome
07-03 Cambridge, England - Corn Exchange
07-05 Birmingham, England - Symphony Hall
07-06 Oxford, England - New Theatre     公式1曲、映像1曲 
07-07 London, England - Lyceum Theatre   公式10曲、映像5曲
07-09 Manchester, England - Palace Theatre  公式3曲
07-10 Harrogate, England - International Centre  公式1曲、音源23曲、映像8曲
07-12 Gateshead, England - The Sage       公式3曲、音源23曲、映像5曲  
07-13 Glasgow, Scotland - Royal Concert Hall   公式1曲、映像1曲
07-14 Liverpool, England - Philharmonic    公式1曲 
08-17 Crickhowell, Wales - Green Man Festival   映像5曲


Voltex Jazz Club, London (2011) [With Robin Williamson]  映像





Robin Williamson : Harp, Guitar, Mandolin, Foot Drum, Vocal (1,3,4,5,8,9,10,11,12) Harmony Vocal (2,6)
John Renbourn : Guitar, Vocal (2, 6)

1. Can't Keep From Crying [Trad.]
 (Vocal, Harp, Guitar)
2. Great Dreams From Heaven [Joseph Spence]
 (Vocal, Harmony Vocal, Guitar)
3. Absolutely Sweet Marie [Bob Dylan]
 (Vocal, Harp, Guitar)
4. Don't Let Your Deal Go Down [Trad.]
 (Vocal, Harp, Guitar)
5. Unknown Title
 (Vocal, Guitar, Guitar)
6. Medley Buckets Of Rain [Bob Dylan]
      Peacock Rag [John Renbourn]
 (Vocal, Harmony Vocal, Mandolin, Guitar)
7. Unknown Title
 (Harp, Guitar)
8. Going Down Slow [Jimmy Oden]
 (Vocal, Harp, Guitar)
9. Tenneessee Whiskey [Dean Pillon, Linda Hargrove]
 (Vocal, Guitar, Guitar)
10. Unknown Title
 (Vocal, Guitar, Guitar)
11. Wang Dang Doodle [Willie Dixon]
 (Vocal, Harp, Guitar)
12. The Lights Of Sweet St. Anne's [Robin Williamson]
 (Vocal, Harp, Guitar)

April 27, 2011, Voltex Jazz Club, London, U.K.

 
この動画のレビューは、私にとって最難関レベルです。インクレディブル・ストリング・バンド、ロビン・ウィリアムソンの音楽を聴いていないこと。ロビンの音楽キャリアが長く、これまで発表した正式録音が膨大であること。さらに正式録音がない曲を多く演っていること、以上の複合要因によります。そんな状況のなか、すみません、ロビンの音楽につきあれこれ言える立場にないのですが、できる範囲で述べたいと思います。

ロビンはグラスゴー出身で、無名時代にバート・ヤンシュと共同生活をしたことがあるので、ジョンとの付き合いの始まりもかなり昔に遡るようだ。正式録音としては1993年のライブアルバム 「Wheel Of Fortune」R25になるが、その後も共演の動画が残っている。本動画は8年後の2011年、ロンドンのライブハウス、ヴォルテックス・ジャズ・クラブにおけるオーディエンス・ショット。固定カメラによる撮影で、画質・音質ともにまあまあであるが、63分にわたりじっくり観れるのがよい。

コンサート自体は、ロビン主体でジョンのメインは、2, 6のみ。左斜めからの撮影で、向かって左のロビンが近く、右のジョンは遠めに写っている。曲間の語りはすべてロビンで、各曲の間には編集によるカットが入る。面白いのは、ロビンの左足の先にバストラムが置いてあって、彼は一部の曲でハープやギターを弾きながらフットペダルでドラムを叩いていること。ジョンのリードギターは、ヘッドアレンジでさらっと弾いている感じ。1.「Can't Keep From Crying」は、ジョンも「Another Monday」1967 R4で演っていた曲で、トラディショナルとあるが 1928年のブラインド・ウィリー・ジョンソンがオリジナル。ロビンが「ブルース・ハープ」(本当はハーモニカなんだけどね)と呼ぶ、ハープでブルースを奏でるという凄いことをやっている。2. 「Great Dreams From Heaven」はジョンお馴染みのレパートリーであるが、ここではロビンがハーモニー・ボーカルをつけるのがユニーク。「Wheel Of Fortune」に入っていない曲なので美味しいね!3.「Absolutely Sweet Marie」はボブ・ディランが「Blonde On Blonde」1966で発表した名曲のカバーで、ロビンのアルバム「Just Like The River And Other Songs With Guitar」2008に入っている。4.「Don't Let Your Deal Go Down」は、トラディショナルで、ヒルビリーやブルーグラスで演奏されているが、ここでの歌詞はかなり異なり、ロビンが改作したものと思われる。彼のバージョンは「A Job Of Journey Work」 1998 に収録。5曲目はタイトル不明。ロビンが曲名を「Can't Leave It Alone」と言っているように聞こえるが、正確には聴き取れなかった。内容は酒飲みの歌。6.「Buckets Of Rain」も 2.と同じくロビンがハーモニーを付け、かつ「Wheel Of Fortune」に入っていない曲。ここではロビンがマンドリンを弾いている。メドレーで演奏される「Peacock Rag」はジョンのライブ用レパートリーで、正式録音は日本での「So Early In The Spring」1980 R17と2018年発売の「Live In Kyoto」1978 R13しかないという不思議な曲。

7.曲目はタイトル不明。ロビンは「何とか Mountain」と紹介している。インストルメンタルで、曲の後半はアイルランドの盲目ハープ奏者オカロランの曲だと思う。8.「Going Down Slow」は、1941年セントルイス・ジミーの録音が最初で、後に多くのブルースマンが「I Had My Fun」というタイトルでカバー、1950年のレイ・チャールズ、1960年のライトニング・ホプキンスの録音が有名。9.「Tenneessee Whiskey」も 5.と同じく酒飲みの歌。オリジナルがカントリー音楽という異色の曲で、1983年のクリス・ステイプルトン、ジョージョーンズの録音がある。10曲目はタイトル不明。11. 「Wang Dang Doodle」は、1955年のウィリー・ディクソンがオリジナルのブルース。ジョンは10. 11.でワウワウペダルを使っている。最後の 12.「The Lights Of Sweet St. Anne's」のみ、「Wheel Of Fortune」R25にも入っていた曲だ。

ジョンがあっさりとした感じで、ロビンの曲にギターを付けている。

[2023年2月作成]


UllapoolGuitar Festival (2011) [With Wizz Jones]  映像

 


John Renbourn: Vocal, Guitar
Wizz Jones: Vocal Guitar

1. National Seven [Alan Turnbridge]
2. Great Dream From Heaven [Joseph Spence] (John Solo)
3. Black Dog [Jesse Winchester] (Wizz Solo)
4. Fresh As A Sweet Sunday Morning [Bert Jansch]
5. The Ballad Of The Sad Young Man [Tommy Wolf, Fran Lardesman]
6. Sweet Potato [Booker T. Jones] (John Solo) *
7. Lucky The Man [Wizz Jones] (Wizz Solo)
8. Sermonette [Cannonball Adderley] *
9. Spoonful [Alan Turnbridge, Wizz Jones]
10. Blues Runs The Game [Jackson C. Frank]
11. Bad Influence [Robert Clay]
12. Lord Franflin [Traditional] (John Solo)
13. Grapes Of Life [Alan Turnbridge] (Wizz Solo)
14. Strolling Down The Highway [Bert Jansch]
15. Anji [Davy Graham] *

収録: 2011年10月7-9日 Ullapool Guitar Festival, Ullapool, Scotland

注: * はインストルメンタル、3, 7, 13 はジョン非参加
   写真はアラポールの風景

  

これはスゴイ映像を観ることができました!

アラポールはスコットランド北西部にある人口1,500人の小さな町で、ニシン漁の拠点港として作られたが、現在は大自然に囲まれた観光地としても有名。本、ダンス、演劇、音楽等の文化行事も盛んな所で、そのひとつアラポール・ギター・フェスティバルは毎年10月初めの週末に開催され、コンサート、ワークショップの他、ルシアー達によるギターの展示会なども行われる。本映像は、当該フェスティバルにおけるジョン・レンボーンとウィズ・ジョーンズのコンサート全貌を捉えたプロショットで、YouTube 投稿のタイトル・資料には日付が表示されず、インターネットにもフェスティバルの当時の記録が見つからなかったが、以下のエビデンスにより、2011年10月7~9日であることが断定できた。
① ステージ背景にあるダダリオ(弦メーカー)とファイルド(ギター製作者)の宣伝幕が、2011年撮影とされる他アーティスト(Clive Caroll, Steve Kaufman等)の動画と同じものであり、動画の撮影者・機材も同じと思われること。
② 二人によるコンサートツアーは2012年から2015年にジョンが亡くなるまで続いたというが、2011年10月6日に撮影された二人の演奏写真があること。
ジョンとウィズのレコーディング上の交流は、「Right Now」 1972 Q9、「Late Night And Long Days」 1993 Q22、「Lucky The Man」 2001 Q28 と長期に渡る。そして最後の「Joint Control」 2016 R29が、ジョンが亡くなる前の2014~2015年頃の録音とされる一方で、本映像は2011年という本格的共演の最初期の収録になるため、両者の内容には大きな相違があり、3~4年間で音楽的に大きく進化した様子を伺うことができる。しかもノーカットで、映像・録音・演奏いずれも素晴らしく、とても貴重なものだ。

1.「National Seven」は、ウィズがピート・スタンリーと製作したデビュー盤「Sixteen Ton Of Bluegrass」 1966に入っていた彼の代表曲。作者のアラン・ターンブリッジは、画家で本の表紙絵を多く書いた人。彼と親しかったウィズは、彼が作った曲を多く歌っている。強靭なスリーフィンガーのギターにジョンがリードギターを付けるが、「Joint Control」 での同曲と比べて、緻密さが段違いであるのが面白い。2.「Great Dream From Heaven」はジョンのレパートリーでお馴染み。二人で演奏するようになってから日が浅いせいか、「Joint Control」 と異なりジョンのソロによる演奏。3.「Black Dog」はジェシー・ウィンチェスターが1970年に発表したセルフタイトルのアルバム(ザ・バンドのメンバーが参加したことで、一部のファンの間で話題となり、幻の名盤と評された作品)に収録されていた曲。ヴィヴラートを効かすためにギター揺らし、ギターを爪弾きながら、指を弦に叩きつけてリズムを刻むウィズ独特のプレイスタイルを観ることができる。今若手のギタリストの間で流行っているフィンガースタイル・ギターのリズムカッティングの先駆者と言えよう。4.「Fresh As A Sweet Sunday Morning」は、「バートを偲んで」と紹介されるが、バート・ヤンシュが亡くなったのは2011年10月5日なので、本コンサートはその数日後ということになる。なお同曲はウィズがアルバム「Late Night And Long Days」 1993 Q22でカバーしている。バートの曲でジョンのリードギターを聴くと感慨がありますね。

5.「The Ballad Of The Sad Young Man」は、1959年のミュージカル「The Nervous Set」で使われた曲で、ウィズはデイヴィー・グレアムの演奏(名盤 「Folk Blues & Beyond」 1965) が基づくと紹介している。本曲は「Joint Control」には入っていない。6.「Sweet Potato」、7.「Lucky The Man」 (ウィズの同名のアルバム 2001 Q28が初出。娘のために書いた曲とのこと)は各人のソロ。デュオのレパートリーがまだ少ないため、ソロ演奏が多くなっているようだ。使用ギターは、ジョンがマーチンのジョン・レンボーン・シグネチャー・モデル、ウィズがエピフォン・テキサン。チューニングに時間をかけた後に演奏されるインスト 8.「Sermonette (短い説教)」は、「Lucky The Man」 2001 Q28で二人が演っていた曲で、アルトサックス奏者キャノンボール・アダレイ作曲、弟のナットアダレイ(「To The Ivy League From Nat」 1956)が初録音。これもデイヴィー・グレアム 「The Guitar Player」 1963 でのアレンジをベースにしたもの。 アラン・ターンブリッジとの共作 9.「Spoonful」 (アルバム「Solo Flight」1981収録)と続くこれら2曲は、「Joint Control」未収録の美味しいトラック。

10.「Blues Runs The Game」は、バートのギターから習ったというが、ウィズ独自の弾き方になっている。この曲でジョンのリードギターが聴けるのがうれしい。ブルースシンガー、ロバート・クレイの 11.「Bad Influence」はコードストロークによるプレイで、「Joint Control」ではLPレコード盤のみに入っていた曲。ジョンの愛奏曲12.「Lord Franflin」は、長めのイントロが面白い。この頃になると、ジョンのボーカルも上手くなったよね! ウィズのソロ13.「Grapes Of Life」は、1969年のセルフタイトル・アルバム収録曲でアラン・ターンブリッジの作品。バートの14.「Strolling Down The Highway」では、「Joint Control」との比較で、ジョンのリードギターが3~4年の間にいかに進化したかがよく分かる。ここで二人はステージから降り、アンコールで、ジョンのリードギターが楽しめる 15.「Anji」を演奏。 これも「Joint Control」未収録のお宝トラックだ。

2015年に亡くなったジョンと、(本稿執筆の2022年の時点では)既に引退した(といっても地元では時々演奏しているらしい)というウィズの共演をノーカットでたっぷりと拝むことができる。

[2023年4月作成]