T11 Captured Live (2003) |
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Bert Jansch : Guitar, Banjo (3), Dulcimer (5),Vocal
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Vocal
1. Will The Circle Be Unbroken T6 T10 T13 T13 T17
2. No Love Is Sorrow [Pentangle] T7 T9 T12
3. Wedding Dress T6 T17
4. Reflection [Pentangle] T6 T12 T13 T13
5. Willy O'Winsbury R7 R12 T7 T12 T16
6. People On The Highway [Pentangle] T7 T9 T17 T18 T18
5,6はジョン不参加
収録時間: 約30分
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以前海賊盤ビデオで出回っていた作品が、2003年やっとDVDにて正式発売された。1996年発売のペンタングル初の公式映像 (V7 参照)がわずか3曲のみだったので、まとまった公式映像としては初めてだった。1972年6月10日ベルギーのテレビ局RTBFへの出演とのことで、「Reflections」
1971 T6 と「Solomon's Seal」 1972 T7 といった後期アルバムからの曲が演奏されている。
1.「Will The Circle Be Unbroken」は、楽器のセッティングのシーンから始まる。シンプルなPA機材の設置が時代を感じさせる。聴衆のいないスタジオライブで、バートのギターはマーチン000-28 タイプ にピックアップを付けてしているためエレキ・ギターに近い音。ジョンはお馴染みの J50以外に、ギブソン製ホロウ・ボディのエレクトリック・ギターを主に使用している。2.「No Love Is Sorrow」でアップになるバートの顔にびっくり。何とあご髭をもじゃもじゃに生やしているのだ。通常の彼のイメージと全く異なり、ロック・ドラマーのカーマイン・アピスにそっくり! 曲中でジョンがファンお馴染みのギブソン J50でリードギターのソロをとるが、いまひとつ生気がない。3.「Wedding Dress」ではバートがバンジョーを弾く。4.「Reflection」のイントロのダニーのソロがかっこいい。全身をぶつけるようにして弾く彼のアクションはメンバー中一番派手。ダニー以外のメンバーは全員椅子にすわって演奏しているためか。ジャッキーによると、立って歌うと緊張して足が震えて駄目とのこと。途中テリーのドラム・ソロが入るが、画面をわざと歪めて少しサイケデリックな処理をしているところが当時の映像らしく、今観ると微笑ましい。実は収録時ジョンはかなり酒を飲んでいたようで、この曲の後半部分ではいすに座っているのがやっとという感じ。ずっとうつむいたままでタバコをふかし、時たまギターをいじり、ワウワウペダルを踏んでいるが、音が出ていない。ジャッキーが歌いながら「しようがない人ね~」とチラチラ睨んでいるのが生々しい。そのため後半のインスト部分はバートのギター演奏のみでカバーしている。
ジョンとテリーが抜けた3人で演奏される 5.「Willy O'Winsbury」では珍しくバートがダルシマーを弾いている。歌うジャッキーの超アップが少し異様。歌っている時の動きの少ないクールな表情が何とも印象的。余談であるが1995年バートとジャッキーの来日時、私は香港に住んでいたため、コンサートに行って彼女の歌う姿を拝むことができずとても残念であった。6.「People
On The Highway」はバートとジャッキーのデュエット。ここではジョンは完全にダウンしたようで一切画面に写っていない。ジョンを除いた4人で演奏に集中しようとする意気込みが感じられ、それなりにリリカルな雰囲気の演奏となった、ジャッキーとバートが互いに見つめ合いながら、ほんのちょっとだけ微笑むところが良い!
当時、ジョンやバートの泥酔や遅刻という事件は日常茶飯事だったようで、ロック・バンドとしてのハード・スケジュールとストレスのため、クレイジーでギスギスした状況がうかがえる。各メンバーの異常に淡々とした表情と妙にクールな雰囲気の理由がわかるような気がする。演奏としては特筆すべきものはない。ともかくこの映像はペンタングル末期の姿を生々しくとらえており、ファンにとって貴重なドキュメントである。
なお2007年に発売されたペンタングルのCD4枚組ボックスセット「The Time Has Come 1967-1873」T12 に収められた「RTBF
Belgium TV 1972」3曲(3. 4. 6.)は「Previously Unreleased」とあるが、本作と同じ音源である。
[追記 2018年1月]
ペンタングルのボックスセット「The Albums」 2017 T13 2017のブックレットにある年表に、本映像の収録日がありましたので、その旨修正しました。
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T12 The Time Has Come 1967-1973 (2007) (Box Set) Sanctuary (Castle) |
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Bert Jansch: Guitar, Banjo, Dulcimer, Vocal
John Renbourn : Guitar, Sitar, Hamonica, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Glockenspiel, Piano, Vocal
[CD-1: Studio 1967-1969]
1. Mirage (T2)
2. Waltz (T2)
3.Poison [Bert Jansch] (1967 Aug.) From the band's first studio session
4. Travelling Song (T8 Non-album Single)
5. Forty-Eight - John Renbourn (R4)
6. Koan (Alternate Take) [James Sullivan] Outtake of T2 (Take 1) T2
7. In Your Mind (T10) (Previously released in monoral)
8. Sovay (T10) (Previously released in monoral)
9. In Time (T3)
10. Sweet Child (T3)
11. The Tree They Do Grow High (Alternate Take) (T3 2001 Remasterd CD)
12. Moon Dog (T3)
13. Light Flight (T4)
14. Once I Had A Sweetheart (T4)
15. I Saw An Angel (T8 Non-album Single)
16. Springtime Promises (T4)
17. Cold Mountain (T8 Non-album Single)
18. Train Song (T4)
19. Hunting Song (T9, T10)
[CD-2: Studio 1970-1973]
1. Lord Franklin (T5)
2. Jack Orion (T5 Instrumental Edit)
3. Cruel Sister (T5).
4. Helping Hand (T6)
5. Faro Annie - John Renbourn (R7)
6. Reflection (Alternate Take) [Trad. Arranged by Pantangle] Outtake of T6 (Take 4) T6 T11 T13 T13
7. So Clear (aka John's Song) [Pentangle] Outtake of T6 (Take 11) T6 T13 T13
8. The Snows (T7)
9. Jump Baby Jump (T7)
10. Yarrow - Bert Jansch
11. Tam Lin [Pentangle] (1971) From The Film 「Tam Lin」 T19
12. The Best Part Of You [Pentangle] (1971) From The Film 「Tam Lin」 T19
13. Green Willow - John Renbourn (R8)
14. Once I Had A Sweetheart (T4)
[CD-3: Live At The Royal Festival Hall June 29 1968 All Tracks T3]
1. Waltz (2001 Remastered CD)
2. Way Behind The Sun (2001 Remastered CD)
3. The Time Has Come
4. Let No Man Steal Your Thyme (2001 Remastered CD)
5. So Early In The Spring
6. Hear My Call (2001 Remastered CD) 7. No More My Lord
8. Three Dances a Bransle Gay b La Rotta c The Earl Of Salisbury
9. Market Song
10. Bruton Town
11. A Woman Like You 12. No Exit
13. Haitian Fight Song
14. Goodbye Pork-Pie Hat
15. Bells (2001 Remastered CD)
16. John Donne Song (2001 Remastered CD)
17. Watch The Stars
18. Turn Your Money Green
19. Travelling Song (2001 Remastered CD)
[CD-4: Live, TV & Film 1970-1973]
1. Pentangling [Pentangle] (1970 Mar.) Aberdeen Music Hall T2 T15 T17 T18 2. Sally Go Round The Roses [Phil Spector] (1970 May) Granada TV 「The Two Brewers」 T4 T4 T4 T10 3. Sarabande [Bach, Arranged by Renbourn] (1970 May) Granada TV 「The Two Brewers」R6 R28 4. Sally Free And Easy [Cyril Tawney] (1970 May) Granada TV 「The Two Brewers」R2 T7 T16 T17 T18
5. Wondrous Love [Trad. Arranged by Pentangle] (1971 Apr.) LWT 「Journey Into Love」
(With The David Munrow Ensemble) T13 6. Sweet Child [Pentangle] (1971 Apr.) LWT 「Journey Into Love」T3 T10 7. Willy O' Winsbury [Trad. Arranged by Renbourn] (1971 Jun.) Granada TV 「Set Of Six」 R7 R12 T7 T11 T16 8. Rain And Snow [Trad. Arranged by Pentangle] (1971 Jun.) Granada TV 「Set Of Six」 T6 T13 9. No Love Is Sorrow [Pentangle] (1971 Jun.) Granada TV 「Set Of Six」T7 T9 T11
10. Wedding Dress (1973 Jan.) (T11 RTBF (Belgian) TV) 11. The Furniture Store (1972) [Pentangle] From The Film 「Christian The Lion」 T20 12. Christian The Lion (1972) [Pentangle] From The Film 「Christian The Lion」 T20
13. Reflection (1973 Jan.) (T11 RTBF (Belgian) TV) 14. People On The Highway(1973 Jan.) (T11 RTBF (Belgian) TV)
[Souce]
T2: Pentangle 「Pentangle」 (1968)
T3: Pentangle 「Sweet Child」 (1968)
T4: Pentangle 「Basket Of Light」 (1969)
T5: Pentangle 「Cruel Sister」 (1970)
T6: Pentangle 「Reflection」 (1971)
T7: Pentangle 「Solomon's Seal」 (1972)
T8: Pentangle 「People On The Highway」 (1992)
T9: Pentangle 「Live At BBC 1969-1972」 (2004)
T10: Pentangle 「The Lost Broadcasts 1968-1972」 (2004)
T11: Pentangle 「Captured Live」 (2003)
S8: Bert Jansch 「Moonshine」 (1973)
R4: John Renbourn 「Sir John Alot ......」 (1968)
R6: John Renbourn 「Faro Annie」 (1971)
R7: John Renbourn 「Lost Sessions」 (1996)
注) CD-3 11.12. は T19、 CD-4 11.12.は T20 を参照のこと
赤字は未発表曲、青字は従来と異なるフォーマットで発表されるもの。
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待望のボックスセットだ! 2007年2月BBC Radio2で放送された「Folk Awards」でのライフタイム・アチーブメント・アワーズの受賞に続き、3月の本セットの発売。再評価の機運が大いに高まるものと思われる。
馴染みコリン・ハーパー氏が監修した本セットは、同氏のホームページによると、当初の計画では上記の未発表曲以外に以下のトラックを収録する予定だったという。
A. Market Song (1967) From the band's first studio session B. I've Got A Feeling (1967) From the band's first studio session C. Bruton Town (Take 1) (1968) From outtake of T2
D. I Loved A Lass (1968) (T10 Previously released in monoral)
E. Wondrous Love (1971) From outtake of T6 F. Pentangling (1968) From NRK TV (Norway) G. Light Flight (1970) From Isle Of Wright Festival H. Will The Circle Be Unbroken? (1970) From Isle Of Wright Festival
最終版は、上記の曲がオミットされた代わりに、CD1に 1、CD2に14、が加えられ、CD1では曲順の一部変更、CD2では、「Christian The Lion」からのトラック2曲がCD4の 11,12に移され、曲順も変更された。その結果この手のボックスセットとしては、未発表・レアトラックが少ないものとなり、CD4の中にスタジオ録音のトラックが入り込むなど、構成的にみてもバランスを欠いたものになったと思う。これらの未発表トラックが直前になってはずされた経緯について、正確な事情は分からないが、雑誌「ストレンジデイズ」2007年8月号におけるジャッキー・マクシーのインタビューにあるとおり、ペンタングルのメンバーがその内容に不満を持ち、相談のうえ収録に同意しなかったものと推測される。例えば、1970年のワイト島のフェスティバルは、他のアーティストの録音が多く残っており、当然ペンタングルのものも存在するわけだが、メンバーの追想によると、そのステージはアーティストを運ぶヘリコプターの騒音に気を取られ、演奏に集中できる状態でなかったようで、「そこでの良い思い出は、ジミ・ヘンドリックスのライブを観れたこと」と言っている位なので、しようがないといったところか?一般的にアーティストと熱心なファンとの間には、一定のギャップがあるようで、それを埋める存在がブートレッグということになる。また本ボックスセットが、熱心なファン向けか、それとも今回を機会に初めてペンタングルを耳にする入門者のためなのか、という想定によって、収録曲の基準が大きく変わるものと思われ、そういう意味でどっちつかずの中途半端な内容になってしまった気がする。批判的な事をいろいろ述べたが、本ボックスセットに対して、否定的なつもりは決してなく、お宝音源がそれなりにしっかり収録されているので、逃すことはできないぞ。
CD1は初期のスタジオ録音を収めたたもので、既にCastleからリマスタリングCDが発売されているものは別として、音質は向上していると思う。でも私が思うに、この手の音楽はやはりアナログのレコード(しかも当時の英国盤)を良質の機材(特に針)で聴くのが一番であり、音の透明感やクリアー度合いが劣っても、当時の時代でしか出せない音があると思うのは、偏見だろうか? 3.「Poison」は、ペンタングル初めてのスタジオ録音というが、バートとジョンが共にエレキギターで演奏しており、ブルース的な色彩が強いものだ。意外な感じがするが、アコースティック楽器使用による新しいトラッド、フォーク音楽というペンタングルのデビュー時の肩書きは、売り込みのためのイメージ作りであったと言える。曲自体は、バートが後に1969年のソロアルバム「Birthday Blues」に収録したもので、ここでの演奏はかなり荒っぽい。6.「Koan」は、T2のリイシューCDのボーナストラックとして収録された未発表インストルメンタル曲の別テイクで、T2ではベースソロから始まったが、ここではレンボーンのギターのリフから始まるバージョンだ。曲全体を支配するベースの乗りは前者のほうが良いような気がする。7. 「In Your Mind」、 8.「Sovay」はBBC Radio1のために1968年9月23日に録音された音源で、11月3日の番組「Top Gear」および後に「Top Of The Pops」でも放送されたもの。当初発表されたT9のモノラルに対し、本セットはステレオというが、左右のトラックが完全に分離しているものではない。その他として、ここではペンタングルのシングル曲(オリジナルアルバム未収録曲)が3曲すべて収録されており、1992年のT8が廃盤となっている今、4.「Travelling Song」がベスト盤、15.「I Saw An Angel」と17.「Cold Mountain」が、T4 「Basket Of Light」のリマスターCDのボーナストラックに分かれて収録されていたので、ここでまとまったかたちで収録されたのは、ファンにとっては有難いといえるだろう。ちなみに、19.「Hunting Song」につき、ボックスセットでは1969年5月12日とあるが、同一録音が収録された T9, T10では8月17日となっており、おそらく後者のほうが正しいと思われる。
CD2は中後期のスタジオ録音からなる。未発表曲の6.「Reflection」(Take4)は、スタジオでの会話から始まる。アルバム収録バージョン(約11分10秒)よりも演奏時間が長く(13分10秒)、ベースのアルコ(弓弾き)によるイントロ部分や間奏のソロもじっくり演奏している。エレキギターを弾いているレンボーンについて、彼のハーモニカ演奏もしっかり入っているので、単なるリハーサル・没テイクではなく、ダビングなどの処理を施した完成版といえるものだ。大きく異なるのは、ジャッキーのボーカルで、オリジナルは本人が多重録音で自分の声を重ねているのに対し、本セットのバージョンでは単独になっていることだ。また間奏におけるテリーの伴奏パターンがかなり異なり、オリジナルでは
8ビートのドラミングを見せるが、本セットのテイクでは4ビートで通し、代わりにバートのギター・リフを前面に出していることだ。またテリーのドラムソロのあたりに聞こえるパーカッションのサウンドも本セットのほうがずっと目立つ。どちらが良いか甲乙つけがたい出来で、素直に別テイクの出現を喜ぶべきだろう。7.「So
Clear」(Take11)は、ジョンのアコギとダニーのベース、そしてテリーのピアノのみからなる録音で、T6に収録されたオリジナル版のような、全編にわたるジョンのエレキギター、間奏部分のテリーのドラムスのオーバーダビングがされていない。その分よりピュアな感じがして、この曲が大好きな私にとっては、めっけものとなった。ちなみに「aka」は「also
known as」の略。本作の目玉の一つである映画「Tam Lin」の音楽についての詳細は、T19を参照して欲しい。11.「Tam Lin」は、現存するフィルムのサウンドトラックから採取した音源を約7分30秒に編集し、音質向上の処理を施したもので、映画では断片的に挿入されていた音楽をうまくつなげている。最初のボーカルパートは、二日酔いになった主人公のタム・リンが、乱痴気騒ぎから逃れて屋敷の外に出歩くシーンに流れ、次のパートはジャネットがムーア(草原の丘)を一人歩くシーン(この直後に二人は運命的な出会いをする)。3番目は教会で二人が出会うシーン。4番目のジャッキーがオーケストラをバックに独唱風に歌うことから始まるパートは、タム・リンがカザレ夫人に好きな人ができたことを打ち明けるシーンで、途中挿入されるストリングスによるパート(アルフレッド・ヒチコック監督の名作「サイコ」におけるシャワー室での殺人のシーンに流れる音楽に似ている)は、夫人の嫉妬に狂った目のクローズアップにおけるもの。本音源におけるオーケストラ・パートはペンタングルのメンバーによるものではなく、本映画の音楽監督が効果音的に付け加えたものだ。映画のサウンドトラックは、通常セリフの部分と、音楽・効果音のふたつからなっており、ここではセリフはカットできても、効果音はそのままというわけだ。なので川の流れの音なども随所に聞こえる。5番目はカザレ夫人の警告を無視して、タム・リンとジャネットが一緒に逃げることを決心するシーン。最後のパートは映画のラストにおけるもので、ジャネットの献身的な愛に阻まれて、タム・リンを死に追いやることができなかったカザレ夫人の怒りのシーンで終わる。思ったよりも音質が良く、編集も大変うまくまとめたと思う。ペンタングルによるインストルメンタルの断片や、シーンの関係で、わずか20秒ほどでカットされてしまう「Name
Of The Games」を除くと、本映画におけるペンタングル音楽のエッセンスは網羅されているといってもいいだろう。12.「The Best
Part Of You」が、突然始まるのは、映画の冒頭における郊外へのドライブのシーンで、登場人物がカーステレオのスイッチを入れたことろで、いきなりこの音楽がかかるためだ。ここではペンタングルのメンバー以外に、ブラスセクション、エレキピアノ、エレキベース(結構カッコイイ!)がオーバーダビングされており、かなりドライブが効いていて、彼らの作品のなかで最もロック的な仕上がりとなっている。映画版の市販のビデオで聴くよりも、遥かに良い音に処理されており、この曲が大好きな私にとって本当にうれしいトラックだ。2.「Jack
Orion」は未発表音源ではなく、T5 「Cruel Sister」の間奏部分だけを抽出したもの。愛する人を下男に陵辱されたジャック・オライオンの怒りと悲しみという、テーマのある間奏部分での演奏なんだけど、独立したインスト曲として聴くと、また異なる趣きがあって大変興味深い。既存の曲のボーカル部分をカットした事については批判する人もいると思うけど、このケースはアイデアの勝利だと思う。
CD3は、ペンタングルが1968年6月29日、ロイヤル・フェスティバル・ホールで行った伝説的コンサートの音源で、2枚組みのアルバム「Sweet
Child」 T3 に収められていたものと同じものだ。LP未収録だった未発表曲については、2001年に発売されたリマスタリングCDにボーナストラックとして収められた7曲がすべてのようなので、曲目という意味では、今回のボックスセットに目新しさはない。今回大きく異なるのは、曲間の拍手、曲紹介のアナウンス、開始前のチューニングがカットされ、曲順を全面的に変えたことである。この処理については、音楽誌における本ボックスセットのレビューなどで、いろいろ批判されていたようだが、私はファンとして大変有難い事と評価している。上述のアルバムの1枚目に収録された本ライブ音源は、ヒストリカル・パフォーマンスとしての価値は高く、演奏の水準もかなりのものであったが、オーディエンスの拍手の音量が大きすぎること、曲間のアナウンスや開始前のチューニング・ノイズの時間が多すぎるという大きな欠点があった。それらはライブ録音としてのスリルを味わうためには効果的であるが、音楽として繰り返して聴く分には耳障りになものである。もうひとつのポイントとしてあげたいのが、本音源の演奏についてである。このコンサートがライブ盤製作のために録音されるという前提で、彼らは入念なリハーサルをしたはずであり、その結果としてここでの演奏は、大変に抑制が効いた整然としたものになっている。後年発表されたBBCのラジオ音源を聴いて、その自由奔放な表現の迸りを耳にして唖然とした記憶がある。私が言いたいのは、これらの演奏はライブとしての臨場感よりも、普通の音楽として何度も聴き込むことにより楽しむほうが向いているということだ。いままで音楽以外のノイズが気になったために、あまり聴いていなかった本音源が、今回のフォーマットによりじっくり聴けるようになったことに私は感謝したい。そういう意味で接すれば、「Sweet
Child」を持っている人でも、単なる重複でないといえると思う。曲順の変更についても同じで、オリジナルLPに収録されなかった7曲を、2001年発売のリマスタリングCDのように、単に後にくっ付けるだけでは、全く効果がないのは明らかだ。オリジナル盤の司会者のアナウンス、聴衆の拍手、そして「Market
Song」の出だしがあまりにも鮮やかなため、ここだけは残して欲しい気もしたが、製作者の意図は、オリジナル「ライブ盤」の呪縛を完全に解き放ち、純粋な音楽として楽しめるものにする事にあったと思われるので、そういう意味で考えると本作での曲順のラディカルな変更は納得がゆくものである。ここではバートやジョンによりアナウンスやチューニング・ノイズは完全にカットされたが、聴衆の拍手は音量を落とし、時間を短くした調整した上で一部残されており、それらは以下の曲の後で聞こえる。
トラック 2, 3, 6, 10, 11, 12 (フェイドアウトで少しだけ聞こえる), 13(実際は14が始まる前のフェイドイン),14,15,17,18,19
ということで、拍手はそこそこ残っているが、音量・長さとも控えめで気にならない程度となり、特に 8.「Three Dances」でレンボーンの短いインスト演奏が終わる都度に聞かされる、大音量の拍手と曲解説にうんざりしていた私には喜ばしいことだったのである。もちろん初めての人には、オリジナルの「Sweet Child」版を是非聴いて欲しいが、ペンタングルの音楽を楽しみたいファンには、このボックスセット版をお勧めする次第である。 ちなみに2007年11月に届いたニュースでは、2008年6月29に同じ場所で、再結成ペンタングルにより40周年記念コンサートが開催された。さらに7~8月に英国12都市でコンサートが行われた。
CD4は、未発表ライブ音源特集ということで、ファン期待の一枚だ。そういう意味で、1970年アバディーンのライブ、19分36秒におよぶ 1.「Pentangling」は本セットのベストトラックのひとつだ。いつもよりスローなテンポで演奏されるテーマ、全体的に荒っぽい感じはするが、迸るような奔放なインプロヴィゼイションが凄まじい。このトラックを聴いて、エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャーベイカーのライブ名盤
「Wheels Of Fire」1968 を思い出してしまった。ここで間奏で頑張るのがダニーのベースで、時には一人で、時にはテリーのドラムスをバックに縦横無尽に弾きまくる。途中マイルス・デイビスの名曲「So
What」(1959年のアルバム「Kind Of Blue」収録)や、「Haitian Fight Song」の一節も飛び出す。再びバンドが加わった後もブルースのジャムセッション風のパートがあったり、凄い飛ばし方だ。録音の関係で、バートのギターがオフ気味なのが残念であるが、その分ジョンのエレキギターがはっきり聞こえ、その演奏の妙をたっぷり楽しむことができる。
2.「Sally Go Round The Roses」、3.「Salabande」、4.「Sally Free And Easy」は、演奏・録音ともに最高で、ロンドンにあるパブ「The
Two Brewers」での生演奏を収録したものという。特にジョンのソロアルバム収録のインスト曲を演奏した3.は珍しい。文句なし本作におけるお宝音源だ。2.3.におけるリズムセクションの凄さには改めて感嘆してしまう。古い聖歌
5.「Wondrous Love」で共演したデビッド・マンロウ(1942-1976)は、クラシック音楽の側からのアプローチにより、イギリスの古典音楽を学術的なものにとどまらない、楽しめる音楽として現代に蘇らせた立役者の一人で、教育者としても活躍した人だった。私はイギリス古典音楽・トラッドはあまり詳しくないが、ペンタングルがそういう人と共演した音源が残っていたことは、その方面では極めて画期的な事だったようだ。6.「Sweet
Child」も快演。グラナダTVにおける別音源 7.「Willy O' Winsbury」、8.「Rain And Snow」、9.「No Love
Is Sorrow」でもバンドの調子は良かったようで、リズム隊が跳ねていて、バートとジャッキーのボーカル、レンボーンのソロも最高。録音も申し分なし。テレビ用の音源というけど、映像は残っていないのかな?
9.でのレンボーンは、アコギでソロを取っている。10.「Wedding Dress」と、13.「Reflection」、14.「People
On The Highway」は同じ音源なのに、何故12.を間に入れたのか、製作者の意図が理解できない。4枚目は未発表音源とあるが、これらの3曲については、過去に「Captured
Live」T11 として映像で発表されたものだ。といっても本作に収録された3曲の音質は映像版よりも遥かに良いので、重複感はない。映像版ではメンバー間の確執が見え見えで、ギスギスした雰囲気が嫌だったのに対し、音源だけになると、同じものでも気にせずに聴けるのは意外だった。ただこのセッションの時に不調だったレンボーンは、演奏にはほとんど加わっていない。映画のサウンドトラック録音である 11.「The
Furniture Store」 12. 「Christian The Lion」が、ライブ音源のCD4に収録されているのは、何とも収まりが悪い気がするが、収録時間の関係からそうしたものと推測される。これらのトラックについての詳細は、T20を参照して欲しい。11.は主人公であるビル・トラヴァースが、子供ライオンのクリスチャンとの出会いの場となる家具屋に行くシーンで流れる、シタールを使用した中近東風音楽。12.は「Tam
Lin」と同じく、各シーンに流れる音楽を編集でつないだもの。最初のパートはクリスチャンが教会の庭で放されて戯れるシーン、次の「People On
The Highway」のメロディーをジャッキーがハミングするパートは、クリスチャンが海辺で遊ぶシーンの他、数箇所で使用される。ジャッキーのボーカルによるテーマは、クリスチャンが車に乗って郊外に引っ越すシーンで歌われる。次のインストルメンタルは、映画の随所で挿入される短時間の演奏のひとつ。続いてジャッキーの歌によるテーマ(ケニアで仲間を見つけた)内容。続いてバートのハミングのギターによる、喜びを表す演奏。そして不安を表すインスト(ライオンの仲間とのお見合いのシーンで、喧嘩の唸り声が入る)。最後にジャッキーのボーカルによる結びのテーマといった構成。実際は、映画のかなりの部分で、彼らが画面を観ながら演奏したというインストが使われており、編集により本トラックに収められたのは、そのうちのごく一部である。しかしこれらは断片であり、独立した演奏・楽曲として聴くものではないので、しかたがないだろう。
本ボックスセットにはブックレットが付いており、コリン・ハーパー氏執筆によるペンタングルの記事は、量・質ともに本1冊分に足る内容の濃いもの。メンバーや関係者からのインタビューも豊富で、いままで資料が少なかったペンタングルの当時の活動状況を知ることが出来る貴重な資料だ。またそこには本人が集めたと思われる、雑誌の切り抜き記事や写真、チラシ、コンサートのチケットなどがクリップ的に貼り付けられており、その量には圧倒される。
以上のとおり述べた。私なりに十分に楽しんだし、ボックスセットというものは、一般向けなのか、熱心なファン向けなのかという対象の絞り込みが難しい商品であるとも感じたが、本作を手にして、皆それぞれに感じ受け止めるものと思われるので、私の考えを押しつけるつもりは毛頭ありません。少しでも参考になればよいと思っています。
[2007年12月作成]
[2017年追記] ・CD4の7~9「Set Of Six」はグラナダTVの放送音源であるが、2017年に映像がインターネットで公開された。 ・CD4の1「Aberdeen Music Hall」のライブ音源につき、2017年に発売されたボックスセット「The Albums」T18に「House Carpenter」と「Light Flight」が新たに収録された。 ・上記未収録曲のうち、A「Market Song」、B「I've Got A Feeling」、E「Wondrous Love」が、ボックスセット「The Albums」T13に収録された。 ・上記未収録曲のうち、F「Pentangling」 は、ノルウェーの国営テレビ局が公開したインターネット・アーカイブで映像を観ることができる。その資料から1968年5月30日、Visefestival i Kroa, Dolphin Club, Osloでの演奏であることも明らかになった。
[2018年1月追記]
2017年、CD-4の7~9の映像がインターネットで公開された。「その他の音源・映像」の「Set Of Six」1972を参照ください。
[2022年3月追記]
2019年、CD-4の2~4の映像 (サンプル)がインターネットで公開された。「その他の音源・映像」の「From The Two Brewers」1970を参照ください。
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T13 The Albums (2017) (Box Set) Cherry Red |
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Bert Jansch: Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar, Harmnica, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Back Vocal
[The Pentangle: Bonus Track]
1. Koan [Take 2] T2 Bonus Track, Feb 1968
2. The Wheel T2 Bonus Track, Feb 1968
3. Veronica (The Casbah) T2 Bonus Track, Feb 1968
4. Bruton Town [Take3] T2 Bonus Track, Feb 1968 5. Hear My Call [Alt. Take] T2 Bonus Track, Feb 1968 6. Way Behind The Sun [Alt. Take] T2 Bonus Track, Feb 1968 7. Way Behind The Sun [Instrumental] T2 Bonus Track, Feb 1968
8. Bruton Twon [Take 5] (Previously Unreleased) Feb 1968 T2 T2 T3 T10 T17
T18 T18 T18 T18
9. Koan [Take 1] T16, Feb 1968
10. Travelling Song [Single] T8, Feb 1968
11. Posion T16, Aug 1967
12. I've Got A Feeling (Previously Unreleased) Aug 1967 T3 T9 T10 T14 T16
T17 T18 T18 T18 T18
13. Market Song (Previously Unreleased) Aug 1967 T3 T17 T18
注:3は、本作では「The Casbah」というタイトルになっていますが、バートのデビュー・アルバムではミスにより「Veronica」と表示されており、それが定着にているので、ここではあえて「Veronica」の表記にしました。
[Sweet Child: Bonus Track]
14. Hole In The Coal [Alt. Take] T3 Bonus Track, Aug 1968
15. The Trees They Do Grow High [Alt. Take] T3 Bonus Track, Aug 1968
16. Haitian Fight Song [Studio Take] T3 Bonus Track, Aug 1968
17. In Time [Alt. Take] T3 Bonus Track, Aug 1968
18. A Woman Like You (Previously Unreleased Mix) Nov 1968 T3 T15 19. I've Got A Woman (Previously Unreleased Mix) Nov 1968
20. I Am Lonely (Previously Unreleased Mix) Nov 1968 T10 T10
21. Poison [From 「Birthday Blues」 1969 by Bert Jansch] Nov 1968
22. Blues [From 「Birthday Blues」 1969 by Bert Jansch] Nov 1968
23. Sally Go Round The Roses [Alt. Take #2] T4 Jun And Aug 1969 24. Moondog [Full Band Version] (Previously Unreleased) T3 T10
[Busket Of Light: Bonus Track]
25. Sally Go Around The Rosess [Alt. Take #1] T4 Jun, Aug 1969
26. Cold Mountain [Single B-Side] T8 1969
27. I Saw An Angel [Single B-Side] T8 1969
28. House Carpenter [Live] (Previously Unreleased) 1970 T4 T9 T10 T17
29. Light Flight [Live] (Previously Unreleased) 1970 T4 T9 T9 T10 T17 T18
T18 T18 T18
30. Pentangling (Live) T16 1970
[Cruel Sister : Bonus Track]
31. Will The Circle Be Unbroken ? [Take 1] (Previously Unreleased) March
16, 1971 T6 T10 T11 T13 T17
32. Rain And Snow [Take 2] (Previously Unreleased) March 17,1971 T6 T12
33. Omie Wise [Take 2] (Previously Unreleased) March 16,17,1971 T6 Q28
34. John's Song (allas So Clear) [Take 7] (Previously Unreleased) March
31,1971 T6 T12 T13
35. Reflection [Olympic Studio Take 1] (Previously Unreleased) March, 1971
T6 T11 T12 T13
36. When I Get Home [Alt. Vocal] (Previously Unreleased) March 16, 1971 T6
T13
[Reflection : Bonus Track]
37. Shake Shake Mama [From 「Farro Annie」 1971 R7]
38. Kokomo Blues [From 「Farro Annie」 1971 R7]
39. Faro Annie [From 「Farro Annie」 1971 R7
40. Back On The Road Again [From 「Farro Annie」 1971 R7]
41. Will The Circle Be Unbroken [Alt. Vocal] (Previously Unreleased) March
16, 1971 T6 T10 T11 T13 T17
42. Reflection [Command Studio Take1](Previously Unreleased) March 19,
1971 T6 T11 T12 T13
43. John's Song (allas So Clear) [Take 5, Fuzz Guitar] (Previously Unreleased)
March 24,1971 T6 T12 T13
44. Wonderous Love (Previously Unreleased) March 16, 1971 T12
[Solomon's Seal : Bonus Track]
45. When I Get Home [Live At Guildford Civic Hall] (Previously Unreleased)
Nov 10, 1972 T6 T13 46. She Moved Through The Fair [Live At Guildford Civic Hall] (Previously Unreleased) Nov 10, 1972
47. Train Song [Live At Guildford Civic Hall] (Previously Unreleased) Nov
10, 1972 T4 T9 T10 T18 T18
注:黒字は既発のもので、[ ]の後の番号は、それらが収録されたアルバムを指している。
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グループ結成50年を記念して、発売された初期ペンタングルのボックスセット。トランスアトランティックの5枚とリプリーズからの1枚が、見開きも再現したオリジナ・デザインの紙ジャケット仕様で、分厚い解説書と一緒に箱に収まってる。以下、未発表曲の解説をおこないます。
[The Pentangle: Bonus Track]
3曲が未発表。8.「Bruton Town (Take 5)」は、T2のボーナストラックに入っていたTake3とほぼ同じ内容で、ジャッキーが一人で歌っている。異なるのはジョンによる間奏のギターソロで、スタジオ録音だけあって、予め十分に練り上げたものと思われるため基本的な構成は同じであるが、細部につき両者の差異を楽しむことができる。12.「I've
Got A Feeling」、13.「Market Song」は、「The Time Has Come」 T13 収録の11.「Poison」と同じく、グループとして初めての録音というが、ジョン、バートは共にエレキギターを弾き、ジャッキーのボーカルも緊張のせいか固くエッジがあり、特に12.はテンポが早く落ち着きがない。ペンタングルの良さを全部とったらこうなるといった感じで、後年録音されたアルバム収録バージョンのほうが遥かに出来が良い。これらは歴史的意義がある最初期の録音と言うべきだろう。
[Sweet Child : Bonus Track] 5曲が未発表またはリミックス。18.「A Woman Like You」は、バートのソロアルバム「Birthday Blues」1969 と同じ録音であるが、オリジナルと異なり、フェイドアウトせずに最後まで続く約20秒長いバージョン。その分エンディングにおけるバートの絶妙なギタープレイを楽しめる。19.「I've Got A Woman」、20.「I Am Lonley」も同じアルバムからで、ここではレイ・ワーレイのサックス、フルードのオバーダビングがカットされ、ドラムスとベースとのトリオ演奏(前者)、バートの弾き語り(後者)となっている。ここでのバージョンのほうが、バートのボーカルとギターをより集中して聴くことができるようだ。24.「Moon Dog」は本ボックスセットの目玉のひとつ。「Sweet Child」1968 T3ではテリー・コックスのハンド・ドラムとボーカルのみだったが、これはジャッキーのボーカルによるフルバンドバージョンだ!音質に難があるT10のライブでしか聴くことができなかったバンド演奏が、スタジオ録音で聞けるとは、素晴らしい。コリン・ハーパーの解説によると録音に問題があっため未発表になったそうだが、ちょっと荒っぽい音質だけど十分聞けるぞ。
[Basket Of Light : Bonus Truck]
2曲が未発表。28~30は1970年アバディーンでのライブで、録音は3月26日と4月4日のふたつの説があるとのこと。30.はもうひとつのボックスセット「The
Time Has Come」 2007 T13 に収められている。28.「House Carpenter」は、バートのバンジョーとジョンのシタールが響き渡る。何故かバートのボーカルがオフ気味。30.「Light
Flight」は、ベースとドラムスのリズムセクションが俄然押している。特にテリーの繊細なスネアドラムとシンバルのプレイが素晴らしい。ペンタングルがリズムセクションあってのバンドであることがよくわかる好演。最後にジャッキーが大きく咳をしているのが珍しい(コロナの時代では嫌われそう?)
[Cruel Sister : Bonus Track]
アルバム「Cruel Sister」 1970 T5にはアウトテイクは残っていないそうで、ここに収められているボーナストラックは全て「Reflection」
1971 T6 からで、全て未発表。31.「Will The Circle Be Unbroken」は、スタジオでの会話の後に始まるギターのイントロが異なり、テリーのハーモニー・ボーカル、ジョンのハーモニカやエレキギターなしの淡々としたプレイ。32.「Rain
& Snow」はハーモニーボーカル、ベース、ドラムなし(タンバリンのみ)で、その分シタールとバンジョーが目立っている。スタジオの会話とバートの笑い声から始まる
33.「Omie Wise」は公式発表版と比較してジョンのギターが目立たず(ギターのオーバーダビングがなく?)、間奏部分でバートがハミングしている。34.「John's
Song (So Clear)」は、ベースとピアノは入っているが、エレキギターのオーバーダビングがない。その分ジョンのアコギは聴きごたえある。35.「Reflection」はイントロのベース、ボーカル、ハーモニカのオーバーダビングなし。ジョンのエレキギター・ソロはしっかり入っているが違いが顕著。36.「When
I Get Home」は、演奏が同じでバートのボーカルのテイクのみ異なる。オーヴァーダビングなしにより、公式発表盤とはかなり異なったサウンドが楽しめる逸品。
[Reflection : Bonus Track] 未発表・リミックスは4曲。41.「Will The Circle Be Unbroken」は、公式発表ではオーバーダビングのボーカルが使用されたが、これはライブのボーカル。聴く限り、ハーモニー・ボーカルも入っており、余り違いを感じない。42.「Reflection」はテイク1であるが、35とは録音スタジオ違い。面白いのは、ここではジャッキーのボーカルがハミングになってる事で、歌詞が出来上がる前のリハーサル・テイクだろう。ギター、ベース、ドラムスの演奏も含め、それなりの雰囲気がある本作聴きもののひとつ。43.「John's Song (So
Clear)」は、ドラムスとファズトーンのリードギターのオーバーダビングが施されていて、公式発表のクリーンなサウンドとの比較が楽しめる。シェーカー教の讃美歌である
44.「Wondrous Love」は公式未発表曲であるが、T13で放送音源が公開されている。地味な感じで、お蔵入りしたのがわかる出来。
[Solomon's Seal : Bonus Track]
ボーナストラック3曲は、いずれも未発表。1972年の最後のツアーのオーディエンス録音で、音質は当時の基準では悪くない。なかではダニーのベースとジャッキーのボーカルのみによる 46.「She Moved Through The Fair」が貴重。オリジナル・メンバーでの公式録音がなく、グループ解散のためにキャンセルされたリプリーズ・レコードからのセカンド・アルバム用の曲のひとつだったとのこと。この曲の公式録音は、バート主導による後期ペンタングルのアルバム「In The Round」 1986 で聴くことができる。47.「Train Song」は、初期の曲の晩年の姿を拝むことができ面白い。
以前買ったCD 6枚分とダブルが、そこそこの数の未発表曲がボーナストラックとして収録され、さらにコリン・ハーパーによる本1冊分に相当する詳細極まりない解説と年表がついたので、ファンには美味しいご馳走となった。
[2022年2月作成]
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T14 Live On The Air 1967-1969 (2020) London Calling |
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[Danny Thompson Trio (1~6) ]
Danny Thompson : Bass
John McLaughlin : Electric Guitar
Tony Roberts : Tenor Sax, Flute
[Pentangle (7~10, 14~21) ]
Bert Jansch: Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar, Sitar, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Glockenspiel
[John Renbourn & Jacqui McShee (11~13)]
John Renbourn : Guitar, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
[CD 1]
1. Stratosfunk (Nov. 1967)
2. Mutiny On The Light (Nov. 1967)
3. Mysterianimoso (Nov. 1967)
4. Spectrum Plectrum (Nov. 1967)
5. Eighty One (Nov. 1967)
6. Gotta Go Fishing (Nov. 1967)
7. Sweet Child (Top Gear, 1967 Nov. 3)
8. In Your Mind (Top Of The Pops, 1967 Nov. 22)
9. I Loved A Lass (Top Of The Pops, 1967 Nov. 22)
10. Sovay (Top Of The Pops, 1967 Nov. 22)
[CD 2]
11. Watch The Stars (Night Ride, 1968 Dec 12) T3 Q6 V9 K2
12. Can't Keep From Crying Some Time (Night Ride, 1968 Dec 12) R1 R3 R4
R27 V9
13. Every Time When The Sun Goes In (Night Ride, 1968 Dec 12) T10
14. Once I Had A Sweetheart (Top Gear, 1969 May 18)
15. Hunting Song (Top Gear, 1969 May 18)
16. Sally Go Round The Roses (Top Gear, 1969 Jun 13)
17. Bruton Town (With Interview) (Top Gear, 1969 Jun 13)
18. I Got A Feeling (Top Gear, 1969 Jun 29) T3 T9 T10 T13 T16 T17 T18 T18
T18 T18
19. Hunting Song (Top Gear, 1969 Jun 29) T4 T9 T9 T17
20. Cold Mountain (Top Of The Pops, 1969 Jul. 18)
21. I'm Lonely (Top Of The Pops, 1969 Jul. 18)
22. Brian Matthew Interviews Jacqui McShee(Top Of The Pops, 1970 Apr.24)
注: 21.はジョン非参加
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2020年に発売されたBBC放送の音源集。大半の曲は既発というファン泣かせの一枚。
1.~6. は、ペンタングル結成前のダニー・トンプソンの名を冠したジャズトリオの演奏で、2003年に「Danny Thompson Trio
Live 1967」というタイトルで公式発表されている。共演者が凄くて、ギターのジョン・マクラフリン(1942年イギリス生まれ)は、当時スタジオ・ミュージシャンとしてジャズ、ロック界で活動中で、1969年に「Extrapolation」という初アルバムを発表した後に渡米。トニー・ウィリアムス(ドラムス)のグループに加わった後、マイルス・デイビスに認められて「In
A Silent Way」 1969、「Bitches Brew」 1970 などの野心作に参加する。その後もマハヴィシュヌ・オーケストラやシャクティ、スーパー・トリオ、チック・コリア(ピアノ)と組んだバンド等の活動により、米国ジャズ界でゆるぎない地位を築いている。本音源は、ジョンのファンにとって無名時代のライブ音源としてコレクターズ・アイテムとなっている。なおダニーとジョンが伴奏した公式盤で、ブルース・シンガーのダフィー・パワー
(バートのアルバム「Birthday Blues」1969 にハーモニカでゲスト参加した人)の「Innovations」1971があり、そこではテリー・コックスも参加している。サックスとフルートのトニー・ロバーツは、ペンタングルファンにとって、1970~80年代のジョン・レンボーン・グループでおなじみの人だ。ジョンのギタープレイが控えめで、リラックスした品格を感じさせる演奏で、これらのトラックを聴いていると、力が抜けて、つい気持ち良くて寝てしまう。
ペンタングルの 7.「Sweet Child」は、資料ではトップギアー1967年11月3日とあるが、2004年に発売された「The Lost
Broadcast 1968-1972」 T10 のトップギアー 1968年9月23日と同じ演奏。資料に誤りがあるか、BBCが音源を使い回していたかのいずれかと推定される。音質的には本作のほうがずっと悪いのに加えて、両者に微妙な音程差があり、当時のエアーチェック音源にみられるピッチの狂いがあるようだ(どちらが正確なのか良くわからない)。8.「In
Your Mind」、9.「I Loved A Lass」、10.「Sovay」 も T10 1968年9月23日と同じ演奏(音質的にはほぼ変わりなし)。本作ではイントロの演奏にアナウンサーの声が被っているが、T10ではその部分がカットされ唐突に始まっている。音楽鑑賞には声被りは耳障りではあるが、イントロを聴くことができることは、ファンとしてはそれなりに貴重であり、「どっちもどっち」といったところか。
Night Ride 1968年12月12日という 3曲はバートは非参加で、公式盤としては初出 (ただし2019年コリン・ハーパー氏によってYoutubeで公開されている)。ジョン・レンボーンとジャッキー・マクシーのデュオは、ジョンの「Another
Monday」1967 R4の世界だ。特に13.「Every Time When The Sun Goes In」は公式録音がなく、他に「The
Lost Broadcast 1968-1972」 T10 のTop Gear 1968年7月2日の録音があるのみ(両者は異なる演奏)。なので音質はイマイチであるが貴重なトラック。
14.「Once I Had A Sweetheart」、 15. 「Hunting Song」は、Top Gear 1969年5月18日とあるが、14.のジャッキーのボーカルが多重録音になっていて、両者をよく聴くと、なんとアルバム「Basket
Of Light」1969 T4 スタジオ録音と同じ演奏であることがわかった。しかもエアーチェックによる音質悪いモノラルなんて... これはひどいですね~
16. 「Sally Go Round The Roses」、17.「Bruton Town」も、資料ではトップギアー1969年6月31日とあるが、T10のトップギアー
19968年5月21日と同じ演奏。17.では演奏の前にジャッキーへのインタビューが挿入されている。そこで彼女は、2月の渡米がうまくゆき、7月のニューポート・フォーク・フェスティバルに出演することになったこと、同時にカナダでもコンサートの予定があると述べている。なお、いずれもイントロにアナウンスが被っているが、T10の「Sally
Go Round The Roses」のみイントロがカットされずにしっかり入っている。
18.「I Got A Feeling」、19. 「Hunting Song」 (Top Gear 1969年6月29日)は、T10 に同じ演奏はなく、私が知る限り、本作が初出。これらのトラックにはイントロにおけるアナウンサーの被り声はなく、リラックスした演奏が文句なしに素晴らしい。本アルバム一番の値打ちもの!
20. 「Cold Mountain」、21. 「I'm Lonely」は、私が聴く限り、T10のRadio 1 Club, 1969 Jun
19と同じ演奏と思われる(特に21.はバートの弾き語りなので分かりにくい)。これらもイントロにアナウンス声が被り、T10ではその部分がカットされている。
最後に、おまけとしてジャッキー・マクシーのインタビューが収録されている。男性4人とバンド活動することが、如何に大変であるかを楽しそうに語っている。
大半のトラックが既発の発掘盤と重複しているが、既発盤ではカットされて聴くことができないイントロ部分が含まれていたり、数少ない初出の音源の出来が良かったりと、問題はあるが、熱心なファンは見逃せない作品。
[2020年10月作成]
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T15 Live In Oslo 1968 (2017-2021) |
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Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion
1. The Time Has Come [Ann Briggs] T1T3 T10 T17 Q6 Q35
2. Mirage [Pentangle] T2 T17
3. A Woman Like You [Bert Jansch] T3 T13
4. Turn Your Money Green [Furry Lewis] R12 R27 T3 T10
5. Hear My Call [Staple Singers] T2 T2 T3 T10
6. Haitian Fight Song * [C. Mingus] T3 T3
7. Let No Man Steal Your Thyme T2 T3 T10 T17 T18 T18 V7
8. Bells * [Pentangle] T2 T3 V7
9. Bruton Town T2 T2 T3 T10 T13 T17 T18 T18 T18 T18
10. Travelling Song [Pentangle] T3 T8 T10 V7
11. Pentangling [Pentangle] T2 T12 T17 T18
収録: 1968年5月30日 Visefestival i Kroa, Dolphin Club, Oslo
注: 3はジョン非参加、*はインストルメンタル
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2017~2021年の間に、様々なレーベル・配信サービスから 「Live In Oslo」、「Oslo University, May '68」、「Oslo 68」、「Oslo Live '68」等のタイトルで出されたものであるが、音源的にはノルウェーのテレビ曲がアーカイブとして公開した「Visefestival i Kroa, Dolphin Club, Oslo」(「その他音源・映像」参照)と同じもの。
出回っているCD・配信は、① 1968年6月7日放送分の1~9のうち、9.「Bruton Twon」を除いたもの(9.の映像は最後のヴァースで演奏が途切れるため)、②
9.と 1968年7月19日放送分の 10, 11を含んだもの、の2通りある。②の 9.については、演奏が途切れた直後にオーディエンスの拍手を被せて、目立たないように細工している。
元の映像は、白黒であるが素晴らしい内容なので、音だけではもったいない気もするが、モノラルだけど音質がとても良いので、映像なしでも十分に楽しめ、音楽に集中するためには、むしろこの方がいいかも..........
[2022年4月作成]
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T16 Anniversary (1992) Hyper Tension HYCD 200 123 |
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Bert Jansch : Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
1. Ever Yes, Ever No [Jansch]
2. Bonny Portmore
3. The Tree They Grow So High R5 R18 R19 R27 T3 T3 T10
4. Willie O'Winsbury R7 R12 T7 T11 T12
5. Sally Free And Easy [Pentangle] R2 T7 T12 T17 T18
6. Tell Me What Is True Love [Jansch]
7. I've Got A Feeling [Pentangle] T3 T9 T10 T13 T14 T17 T18 T18 T18 T18
1 2はジョン不参加
録音1990年10月 5日
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結成25周年を記念してドイツのハイパーテンション・レーベルから発売された1985年以降のペンタングルのベスト盤、ただしバートのソロアルバムのアウトテイクや、初期ペンタングルのリユニオン・ライブ等のトラックを多く含むため、ファンにとって価値あるものになった。これらはデロール・アダムス65才バースデイ・コンサートのライブで、1972年の解散以降のリユニオンであるが残念ながらテリー・コックスは不参加。ここでの演奏は素晴らしく臨場感のある録音の良さもあって最高の出来。当初は「Deroll
Adams 65th Birthday Concert」として1. 2. 4. 6. が発表されたが、その際未収録であった3. 5. 7.が本作では追加された。1.
2.はバートの弾き語りでジョンは不参加。3. 4.はジャッキーとジョンのみの演奏。2曲ともペンタングル時代のトラッドのレパートリーでジョンお好みの曲。ジョンは3.でハーモニー・ボーカルを付け、彼のギターが楽しめる。
ジョンの紹介によりダニーが加わり、いよいよ4人の演奏が始まる。5.を聴いて感じるのは、ペンタングルの現役時代にくらべサウンドおよび録音が格段に良くなったこと。特にアコースティックギターのピックアップ、録音技術の進歩が顕著。6.は、バートのソロアルバム「Rosemary
Lane」 1971 に入っていた曲で、ペンタングルの演奏としては初めての録音。バートのアルペジオ、ジョンのリード、ダニーのウッドベース、ジャッキーのボーカルが奏でる何とも言えない雰囲気は感動的で本当に素晴らしい。ペンタングルの数ある演奏のなかでも文句なしで最高の出来だと思う。最後の7.はマイルス・デイビスの「All
Blues」に似たリフにのって歌われるブルースで、演奏メンバーの貫祿が感じられ、とてもリラックスした懐の深い演奏だ。
本作は関係者の承諾を得ずに上記の未発表ライブ3曲を収録したようで、その後トラブルとなり早々に廃盤になってしまったため、現在は入手困難で中古市場で高値を呼んでいる。
[2022年4月追記]
「現在は入手困難で中古市場で高値」と書いてしまったが、2022年現在では中古品が廉価で出回っているようだ。その後の状況変化かガセネタのいずれか?
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Deroll Adams 65th Birthday Concert (1991) Waste Productions WP9101 |
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Bert Jansch : Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
(1. The Song Of Indecision)
(2. Bonny Portmore)
(3. Willie O'Winsbury)
(4. Tell Me What Is True Love)
5. Portland Town [Adams]
1.~4.はT12と重複
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1991年にベルギーの会社、 WASTE Productionから発売されたライブ盤。ペンタングルの他、ウィズ・ジョーンズ、ハッピー・トラウム、タッカー・ツィンマーマン、ビル・キース、ジャック・エリオット、そして本人自身の演奏を収めたもので、全20曲。
1990年10月 5日ベルギーの Kortrijkという都市にある「De Stadsschouwburg」という所で収録された。デロール・アダムスは1950年代米国西海岸で活動し、1956年に渡欧してベルギーに住み、ヨーロッパにおけるフォーク・ムーブメントの教祖的存在であった伝説的なフォークシンガーで、2000年死去。バンジョーを持って歌うスタイルは、ピート・シーガーに近いものを感じる。本作のゲストのほとんどは正当派のフォークシンガーであり、ペンタングルの連中はそのなかで異質の存在。当CDでは上記1.が「The
Song Of Indecision」というタイトルになっているが、「Ever Yes,Ever No」と同一曲。ペンタングルの演奏としてはすべてT12と重複しているため、フィナーレの参加者全員による歌で、そのなかにペンタングルのメンバーも含まれている5.
を除く、1.~4.は重複扱いとして()付きにした。
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T17 Finale (An Evening With Pentangle) 2016 Topic TXCD824D |
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Bert Jansch: Guitar, Banjo (9,19), Vocal
John Renbourn : Guitar, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Glockenspiel
[CD 1]
1. Let No Man Sreal Your Thyme T2 T3 T10 T15 T18 T18 V7
2. Light Flight T4 T9 T9 T10 T13 T18 T18 T18 T18
3. Mirage T2 T15
4. Hunting Song T4 T9 T9 T14
5. Once I Had A Sweetheart [Traditional] T4
6. Market Song T3 T13 T18
7. In Time T3 T3 T9 V7
8. People On The Highway T7 T9 T11 T18 T18
9. House Carpenter [Traditional] T4 T9 T10 T13
10. Cruel Sister [Traditional] R12 R27 T5 T18
[CD 2]
11. The Time Has Come [Ann Briggs] T1 T3 T10 T15 Q6 Q35
12. Bruton Town T2 T2 T3 T10 T13 T15 T18 T18 T18 T18
13. A Maid That's Deep In Love [Traditional] R12 T5 T10 V9
14. I've Got A Feeling T3 T9 T10 T13 T14 T16 T18 T18 T18 T18
15. The Snows R25 R26 T7 V8
16. Goodbye Pork Pie Hat [Mingus] R20 T1 T3 V2
17. No More My Lord [Traditional] T3 T10 Q6
18. Sally Free And Easy [Tawney] R2 T7 T12 T16 T18
19. Wedding Dress [Traditional] T6 T11
20. Pentangling T2 T12 T15 T18
21. Will The Circle Be Unbroken [Traditional] T6 T10 T11 T13 T13
Recorded during 2008 Pentangle tour in England
St. David's Hall, Cardiff July 1: 1, 10, 21
The Lyceum, London July 7: 2, 3, 5, 7, 8, 12, 13, 14, 18, 20
The Harrogate International Centre, Harrogate July 10: 4
The Sage, Gateshead July 12: 6
Liverpool Philharmonic Hall July 14: 9
The Manchester Place Theatre July 9 : 11, 17, 19
The Oxford New Theatre July 6: 15
The Glasgow Royal Concert Hall July 13: 16
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メンバー全員が健在で、ジョン、バートとジャッキーは共演実績ありということで、以前からペンタングルのリユニオンのアイデアはあったが、ベースのダニーが忙しい事に加えて、一番の障害は、ドラムスのテリー・コックスが現役を引退し、長年ミノルカ島でレストランを経営していることだった。前回の演奏が1982年(1990年の演奏の際、彼は交通事故のため参加できず、T16参照)なので、20年以上のブランクがあったことになる。きっかけはBBC
Radio2 フォーク・アワーズで、表彰会場での生演奏の打診を受けて2007年2月に出演し見事なパフォーマンスを見せたこと、そしてその前後に出されたボックスセット「The
Time Has Come」T12 の好評をうけて、本格的なリユニオンの話がまとまったようだ。そして6月29日から7月14日までのイングランド12ヵ所のツアーと、8月14日ウェールズのグリーン・マン・フェスティバルのコンサートが実現した。当時その一部につき音源や動画で視聴することができたが、長らく正式発売されないままだった。そしてバート2011年、ジョン2015年の死後、2016年に本CDが発売された。最初はこの録音は両者の承諾がないまま制作されたのかなと思っていたが、発売元のトピック・レーベルによると、生前のバートが曲目決定とミキシング、ジョンはマスタリングに関わっていたとのこと。
本CDに収められた21曲は13回のコンサートのうち、8ヵ所からのベストトラックを抽出したものだ。上記13ヵ所のセットリストを見たわけではないので断言できないが、各コンサートはほぼ同じ曲順(ただし初回のロンドンのみ1曲目と11曲目が入れ替わっている)で、CDもそれにならっている。ただしツアーで演奏されたが本CDに収められなかった曲として、セカンド・セットの2曲目「No
Love Is Sorrow」、最後から2曲目の「Willy O' Winsbury」、「Rain And Snow」の3曲がある。
演奏内容については「その他音源・映像」の部「Pentangle Reunion Concerts」を参照してほしい。2008年の演奏ということで、バートとしては2009年に肺がんと診断され手術を受ける前ではあるが、1960年代~1970年代の全盛期と比較するとギタープレイのリズムの乱れや指のもつれが随所にみられ、ボーカルも含めて衰えがあるのは明らか。それでも全盛期があまりに凄かったということで、ファンが音楽として鑑賞して楽しむには十分なレベルであると思う。
ひとつ言いたいのは、本CDは入門者用としては不向きであることで、ペンタングル、バートやジョンの音楽を初めて聴きたい人は全盛期の作品から挑戦してほしい。なお本作は「Finale」というタイトルがついているが、公式盤として最後という意味で、ペンタングルの最後の演奏は2011年となる。
本音源は、2023年にチェリーヒル・レーベルから発売されたボックスセット「Reunions & BBC Sessions」 T18のCD3、CD4に収められた。
[2024年1月作成]
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T18 Reunions, Live & BBC Sessions 1982-2011 (2023) Cherry Red CRTREE4BOX027 |
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Bert Jansch: Guitar, Banjo, Vocal
John Renbourn : Guitar, Back Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums
CD1 (Reunion At The BBC)
[Cambridge Folk Festival (BBC World Service) 1982 July-August]
1. Train Song T4 T9 T10 T13 T18
2. If I Had A Lover T18
3. People On The Highway T7 T9 T11 T17 T18
4. Sovay [Trad.] T3 T10 T18 T18
5. Bruton Town [Trad.] T2 T2 T3 T10 T13 T15 T17 T18 T18 T18
6. I've Got A Feeling T3 T9 T10 T13 T14 T16 T17 T18 T18 T18
[Six Fifity-Five Special (BBC2) August 5, 1982]
7. Sovay [Trad.] T3 T10 T18 T18
8. If I Had A Lover T18
[BBC Radio2 Folk Awards (BBC Radio2) Febuary 5, 2007]
9. Bruton Town [Trad.] T2 T2 T3 T10 T13 T15 T17 T18 T18 T18
10. Light Flight T4 T9 T9 T10 T13 T17 T18 T18 T18
(David Attenborough Presents Lifetime Awards To Terry Cox & Bert Jansch)
[Freak Zone (BBC Radio6 Music) April 27, 2008]
11. Let No Man Sreal Your Thyme T2 T3 T10 T15 T17 T18 V7
12. Light Flight T4 T9 T9 T10 T13 T17 T18 T18 T18
13. Market Song T3 T13 T17
14. I've Got A Feeling T3 T9 T10 T13 T14 T16 T17 T18 T18 T18
[Later With Jools Holland (BBC2) Apri 29, May 2, 2008]
15. Let No Man Sreal Your Thyme T2 T3 T10 T15 T17 T18 V7
16. Light Flight T4 T9 T9 T10 T13 T17 T18 T18 T18
17. I've Got A Feeling T3 T9 T10 T13 T14 T16 T17 T18 T18 T18
[Cambridge Folk Festival Highlights (BBC Radio2) August 2, 2011]
18. Bruton Town [Trad.] T2 T2 T3 T10 T13 T15 T17 T18 T18 T18
CD2 (Live In Italy)
[Thiene December 10, 1982]
19. Bruton Town [Trad.] T2 T2 T3 T10 T13 T15 T17 T18 T18 T18 S
20. People On The Highway T7 T9 T11 T17 T18
21. Light Flight T4 T9 T9 T10 T13 T17 T18 T18 T18
22. Ragtime Tune (John Renbourn Solo) Q32 V6
[Teatro Orfeo, Milan December 9, 1982]
23. A Bold Young Farmer (Jacque McShee Solo) R16
24. Train Song T4 T9 T10 T13 T18
25. If I Had A Lover T18
26. Open Up The Watergate [Bert Jansch]
27. Blackwaterside [Trad.] (Bert Jansch & Dannt Thompson)
28. Sovay [Trad.] T3 T10 T18 T18
29. Sweet Child T3 T10 T12
(Band Intros)
30. Pentangling T2 T12 T15 T17
31. I've Got A Feeling T3 T9 T10 T13 T14 T16 T17 T18 T18 T18
32. Cruel Sister [Trad.] R12 R27 T5 T17
33. Sally Free And Easy [Tawney] R2 T7 T12 T16 T17
34.Moonshine [Jansch]
CD3 & CD4
「Finale An Evening With Pentangle 2016」と同内容 (T17参照)
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Cherry Red Recordsから発売された4枚組CDボックスセットで、1枚目が1982年、2007~2008年、2011年のペンタングル再結成に係るBBC放送音源、2枚目が1982年のイタリア・ツアーの音源、3・4枚目が2008年のイギリス・ツアーの音源という内容。3・4枚目は2016年発売の「Finale」T17と同一内容なので、本ディスコグラフィーの対象外とした。
CD1 (ペンタングル再結成に係るBBC放送音源)
[Cambridge Folk Festival (BBC World Service) 1982 July-August]
イタリアでのツアーの好条件のオファーを受け、約10年振りに再結成されたペンタングルは、最初のギグとして1982年7月30日から8月1日までの期間で開催された第18回ケンブリッジ・フォーク・フェスティバルに出演した。バートは「Heartbreak」、
ジョンは「Live In America (John Renbourn Group)」R19の頃にあたる。ただし、テリー・コックスが直前の自動車事故により怪我をしたため、本ステージはドラムス抜きの4人による演奏となった。以前より「If
I Had A Lover」、「People On The Highway」、「Sovay」の音源が出回っていたが、2023年11月発売の本CDボックスセットで同コンサートの演奏6曲が公式発売となった。ドラムス無しのためいつもと異なる感じになっているが、ガッツが入った演奏で、やる気満々の素晴らしいパフォーマンスだ。なお
5.「Bruton Town」についてはYouTubeでBBC2テレビの映像を観ることができる(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[Six Fifity-Five Special (BBC2) August 5, 1982]
BBCテレビ制作の「Six Fifty Five Special」の映像はケンブリッジ・フォーク・フェスティバル出演後に撮影されたもので、テリー・コックスの怪我のため、ここでもドラムス抜きの4人での演奏。なおこの2曲については、 YouTubeでBBC2テレビの映像を観ることができる(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[BBC Radio2 Folk Awards (BBC Radio2) Febuary 5, 2007]
BBC Radio2は特番で年間顕著な活躍をしたミュージシャンを「Folk Awards」として表彰しており、第8回目の2007年2月、ペンタングルが「Lifetime
Achievements Awards」を受賞。その席で5人としては25年ぶりの再会セッションが実現した(「デロール・アダムス65歳誕生日記念コンサート」
1990 T16はテリー抜きの4人だったため)。ここでのバートとジョンのギターはグループ現役当時と比べると、正確性・切れ味で見劣りがしてしまうが、それでも感動的。曲が終わると、プレゼンターとしてサー・デビッド・アッテンボロー(俳優、監督のサー・リチャード・アッテンボローの弟)が登場し、彼のスピーチの後に賞が授与され、ペンタングルを代表してテリーとバートが謝辞を述べる(詳細は「その他音源・映像」参照)。
なおこの番組でのリユニオンおよびボックスセットの発売などをきっかけとして再評価の機運が高まり、2008年の40周年記念コンサートと英国の各都市での12回のコンサートが実現し、バートとジョンの死後の2016年にその時のライブ「Finale」T17が発売された。
[Freak Zone (BBC Radio6 Music) April 27, 2008]
上記の曲は2008年のペンタングルのリニオン・ツアー開始前の4月27日に録音され、ツアー終了後の6月8日にBBC6 Music の番組 「Stuart Maconie's Freak Zone」で放送された。ラジオ放送用のスタジオライブという、オーディエンス、カメラがない状況で、落ち着いた感じの演奏となっている。曲間のコメントや紹介無しで、切れ目なく演奏が続く。 13.「Market Song」におけるバートの枯れた声を聴くと、40年という月日の重さを感じ、感慨深いものがある。録音・演奏の両面において、ペンタングル・リユニオン音源の決定版(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[Later With Jools Holland (BBC2) Apri 29, May 2, 2008]
ジュールズ・ホランドがホストを務める人気テレビ番組「Later」へ出演。ペンタングルによる本番組への出演は4月29日(15.「Let No Man
Steal Your Thyme」)と5月2日(16.「Light Flight」、17.「I've Got A Feeling」)の2回であるが、会場セッティングおよびメンバーの服装が同じなので、同時に収録し異なる日に放送したもの(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[Cambridge Folk Festival Highlights (BBC Radio2) August 2, 2011]
2011年のペンタングル・リユニオンとして企画された3つのコンサートの2番目。バートは2ヵ月後の10月5日に亡くなるため、余命僅かであることが分かっていたものと推測される。本コンサートについてはオーディエンス・ショットの映像が出回っていて、「Hunting
Song」、「Cruel Sister」、「Soho」の3曲を観ることができたが、「Bruton Town」について本作で音源として聴くことができた。ただしイントロ部分がカットされていて、ジャッキーの歌から始まるようになっている。おそらくBBCの放送音源ということで、イントロ部分にアナウンサーの言葉が被っていたためカットしたものと推測される。なお「Cambridge
Folk Festival 2011」というタイトルのオムニバスDVDが2012年にイギリスで発売されており、そこにはペンタングルの「Bruton
Town」が収められているとのことであるが、私は未視聴(詳細は「その他音源・映像」参照)。
CD2 (1982年のイタリア・ツアーの音源)
[Thiene December 10, 1982]
グループを解散してメンバーが自分の道を歩みだしてから10年後、イタリアでのツアーのオファーが好条件だったため、全員承諾したという。しかしリハーサルの段階でテリーが交通事故に合い、そのため最初のギグとして予定されていたイギリスのフォーク・フェスティバルの出演は4人となった。しかし12月のイタリアのツアーには、テリーが車椅子で復帰、5人全員によるリユニオンが実現した。本音源はその模様を捉えた貴重なものであり、過去から現在に至るペンタングルのミッシング・リンクを補うものである。
イタリア北部の小さな町ティエーネでのコンサートを録音したもので、以前から出回ってる16曲のうちの最初の4曲にあたる。テープの録音スピードに問題があったようで、演奏が本来より速くなり、その結果音も高くなっていることは明らかだ。ここでの演奏曲をオリジナルと比較して聴くとよくわかる。また速くなった結果、レンボーンのソロ曲が人間では不可能な早弾きとなってしまっている。私は編集ソフトを使ってピッチを遅く調整したものを聴いている。公式発売である本作で、この問題が是正されなかったことは非常に残念だ。まあ最初の4曲だけでよかったとするべきか。
4曲目のジョンのソロ演奏 22. 「Ragtime Tune」は、正しくは彼が当時のコンサートで演奏していたマール・トラヴィスの「Cannoball
Rag」だ。この曲はソロアルバムには入らず、正式録音は、2005年に発売されたジョンのベスト盤「Master Anthology Of Fingerstyle
Guitar Vol.1 Nobody's Fault But Mine」Q32に収められた。なお前日のミラノのステージでは、この曲でなく「Cherry」(アルバム「The
Three Kingdom」1986 R22収録)が演奏されている。(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[Teatro Orfeo, Milan December 9, 1982]
上記ティエーネの前日に行われたミラノでのライブ録音。前日とほぼ同じ演奏曲目で、出回っている音源のうち5曲目以降を収録。音響機材に問題があったようで、ジーというノイズがするが、各楽器はクリアーに録音されている。23.「A
Bold Young Farmer」はジャッキーが無伴奏で歌う曲で、ジョン・レンボーン・グループの「The Enchanted Garden」R16
1980 に収められていた。イントロでダニーのベースソロが入る 25.「If I Had A Lover」は、バートのソロアルバム「Thirteen
Down」 1979 でジャッキーがゲストで歌っていた曲。従ってペンタングルとしての演奏はここだけという貴重な音源。26.「Open Up The
Watergate」はバートのソロアルバム「L.A. Turnaround」1974 からの曲で、30年近くも経った後に、ペンタングル 5人による演奏を聴けるなんで、感慨無量。個性的なリズムセクション、ジョンのオブリガード、そしてジャッキーのハーモニー・ボーカルにより、ペンタングル・サウンドそのものに仕上がっており、本音源での聴き所のひとつとなった。元の音源ではその後にあったバートの弾き語りによる「One
Scotch, One Burbon」は、本作では何故かカットされている。27.「Blackwaterside」はバートとダニーの二人演奏で、ダニーの骨太プレイが素晴らしい。メンバー紹介の後に、バンドの演奏力のショーケースである大作
30. 「Pentangling」が始まる。「この曲はどうなってゆくか分からない」というバートの紹介のとおり、インプロヴィゼイションが気の赴くまま延々と続く。31.「I've
Got A Feeling」はダニーのベースソロがフィーチャーされる、よりジャジーな演奏で、良い出来。33.「Moonshine」はバートによるソロアルバム1973
のタイトル曲で、ペンタングルによる演奏は初めて。ジョンのギター、ジャッキーのハーモニー・ボーカルもしっかり入った感動の1曲!!
演奏自体は荒っぽさもあるが、総じて良い出来だと思う。ただし本コンサートを含むイタリアツアーについてのバートのコメント「Some of it was
good, some of it was great, but we weren't enjoying the tour, and we weren't
creative」 (コリン・ハーパー著「Dazzling Stranger」より)にある通り、当時ジョン・レンボーンはダーリントン大学への入学を決めており、ペンタングルとしての演奏活動にそれほど情熱がなかったはず。さらにバートとジョンの音楽志向に大きな隔たりがあり、新しい作品を創る余地がなかったものと思われる。その後ジョンは、1983年のオーストラリアやドイツでのコンサートの後に脱退、バートの「A
Rare Conundrum」 1977 に参加したマイク・ピゴー(ギター、バイオリン)が後任者として加入することになる。新しいラインアップにおいて、創造的であろうとするバートの思いは生かされたようで、1985年に発表されたアルバム「Open
The Door」 は、全く新しいサウンドで新生ペンタングルと呼ぶに相応しいものだった(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[2024年7月作成]
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T19 Tam Lin (1971) (映画) Republic Entertainment Inc |
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Directed by: Roddy McDowall
Acted by: Eva Gardner (カザレ夫人)
Ian McShane (タム・リン)
Stephanie Beacham (ジャネット)
Music Composed and Conducted by: Stanley Myers
Songs Composed and Played by: The Pentangle
Bert Jansch: Guitar
John Renbourn : Guitar, Sitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Back Vocal
1. The Best Part Of You
2. Tam Lin (断片)
3. Name Of The Game (断片)
4. Tam Lin (断片)
5. Tam Lin (断片)
6. Instrumental (断片)
7. Instrumental (断片
8. Tam Lin (断片)
日本未公開 (日本語字幕付ビデオなし)
106分(冒頭のロディ・マクドウォールの紹介、約18分を含む)
録音: 1969年2月
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ペンタングルが音楽を担当した映画。このイギリス映画は、「The Ballad Of Tam Lin」、「Devil's Widow」、「Devil's
Woman」とも呼ばれ、名優ロディ・マクドウォール (1928-1998) 唯一の監督作品で、ハリウッドの大女優エヴァ・ガードナーが主演。1968年に製作されたが公開は1971年だった。製作後に映画会社が倒産し、版権の譲渡先が作品の真価を理解しなかったためか、公開時は全く不評で失敗作とされた。その後所有権が転々とする間にフィルムは行方不明となり、人々はこの作品のことを忘れ、監督の手元に残った35ミリフィルムが唯一の存在の証となる。25年後、マーチン・スコセッシ監督(「タクシー・ドライバー」、「ニューヨーク・ニューヨーク」、「ラスト・ワルツ」、「恋に落ちたら」、「カジノ」など作品多数。ロバート・デ・ニーロ主演の作品が多い)等により本作が再評価され、彼らの努力により著作権上の問題が解決、発掘・修復のうえ再公開され、1998年にビデオ化されたもの。
ロディ・マクドウォール出演の作品で一番思い出深いものは、ジョン・フォード監督の哀愁溢れる「わが谷は緑なりき (How Green Was My
Valley)」1941年だろう。炭鉱町の人々の生活を描き、涙なしには見れない作品だった。その後は「猿の惑星」1968年のコーネリアス教授の役が有名だ。エヴァ・ガードナー
(1922-1990) はハリウッド史上最も美しかった女優の一人で、自信を持てない性格のせいかキャリアは比較的地味に終わったが、「ショーボート」1951年、クラーク・ゲーブルと共演した「モガンボ」1953年、ハンフリー・ボガートとの「裸足の伯爵夫人」1954年、「北京の55日」1963年あたりが代表作。特に「裸足の伯爵夫人」では、貧しい裸足のダンサーから映画女優になり、伯爵夫人にまで上りつめるが、最後は非業の死を遂げる女性を熱演。シニカルな映画監督役のボガードの味わい深い演技、脚本も担当したジョセフ・マンキーウィッツ監督の技量もあり、素晴らしい作品となった。情熱と気品、知性と野生を兼ね備え、匂い立つような美貌と豪華なボディーが素晴らしい。この作品の彼女は40代の後半で、美しさのみならず、悪魔のような嫉妬、老いの醜さの面を見事に演じている。
ストーリーは、スコットランドに古くから伝わる有名な伝承物語がベースで、ロバート・バーンズやチャイルド氏が集めたバラッド集に収められている。いろいろなヴァージョンがあるようだが基本的な内容は以下のとおり。
昔タム・リンという名の青年がいた。彼はある日馬から落ちたため、妖精の女王によって妖精の姿に変えられてしまう。ジャネットという女性がタムリンに出会い恋に落ちる。彼女は妊娠するが、彼は女王が力を保つために7年毎に必要な生贄にされる運命にある。彼は元の姿に戻るために、「パレードで僕を馬から引きずり降ろし、抱きしめて絶対に離さないように」と彼女に協力を頼む。パレードの日、ジャネットがその通りにすると、妖精の女王が彼を渡すまいとして、様々な魔法をかけるす。タム・リンは、トカゲ、カエル、ヘビなど、ジャネットが嫌がりそうな物に姿を変えたが、彼女は、彼を抱きしめ続けた。女王は最後に彼を火ダルマにしたがジャネットは彼を離さなかった。女王は、とうとう彼のことを諦めた。魔法は解け、タム・リンは元の青年の姿に戻ることができた。
ここでは舞台を現代に移し、妖精の女王を金持ちの未亡人、取り巻きの妖精達をデカダンなモッズ(ヒッピー)の集団に置き換えている。中世の香りと現代的なゲーム感覚の人間模様が交じり合って、時代感覚が曖昧となって、観る者をファンタジーの世界に迷いこませる設定が新鮮だ。最初は未亡人のカザレ夫人と若い愛人タム・リンの愛のシーンから始まり、取り巻きの若い男女を連れて、4台の車でロンドンを抜け出しスコットランドの別宅に向かう高速道路のシーンで、クレジットタイトルが表示され、車のラジオからの音楽としてペンタングルの
1.「The Best Part Of You」が流れる。T4 の「Light Flight」、T6の「Reflection」のようなメロディーで、テリー・コックスが中心になって作曲されたのではないかと推測されるモダンな感じの軽快な曲。本作の底流に流れる人間模様のゲームが歌詞のテーマ。バックにブラスやエレキピアノが加わり、ペンタングルっぽくないロックバンドの音作りだ。といってもドラムスにはテリー独特のタッチがあるし、R&B調のリードギターはやはりレンボーンだ。彼が録音したギター演奏のなかで、最もロックしている曲。当時のグループでいうと、ジャズっぽいスタイルで人気があったブラッド・スウェット・アンド・ティアーズの音に似ているかな? この曲のサウンドとスコットランドへのドライブのシーンが、観る者を物語の世界へ誘うゲイトウェイとなっている。
美しい自然に囲まれたスコットランドの館で、彼等は享楽の日々を送る。そこで酒びたりの愛欲の生活を送るタム・リンは、小犬を届けにきたジャネットに出会う。演じるのは新進女優ステファニー・ビーチャムだ。彼女はその後マーロン・ブランドと「妖精たちの森」1971年で、愛欲でドロドロした主役を演じるが、女優としては大成しなかった。ある日、二日酔いのタム・リンが散歩にでかけた時、2.が流れる。「Tam
Lin」はトラッドとしてサンディー・デニーが歌うフェアポート・コンベンションのヴァージョンが有名(1969年の作品「Liege & Liet」に収録)だが、ペンタングルでの演奏の歌詞は、この曲の通常のバージョンとはかなり異なる。曲が流れるシーンと歌詞の内容がピッタリ合っていることから、この映画のために改作されているものと思われる。シタールによる演奏は、「Basket
Of Light」T4を思い起こさせる。家を出たジャネットがスコットランドのムーア(草山)を歩き、二人は小川のほとりで偶然出会う。音楽が語り部の役割を担っていて、全く異なる人生を送っていた二人を結びつける触媒のような効果がある。タム・リンが持っていたドン・ペリニオンの瓶を叩き割ると音楽が止み、二人が電撃的に恋に落ちる様が静止画像のカット割りで表現され、おとぎ話的な展開にシュールな効果を付与している。
夫人は、その後タム・リンの心変わりを敏感に感じとる。取り巻き連中によるパーティーのシーンで、3. 「Name Of The Game」がダンス音楽として流れるが、残念ながら20秒ほどで中断してしまう。いかにもテリー好みで、ジャッキーと一緒に歌われるこの曲は、その後ペンタングルのファンの間で幻の未発表曲として噂されたが、2004年に発売された未発表放送音源集「The
Lost Broadcast」T10で、ラジオ番組におけるスタジオライブのバージョンが初収録された。曲の後に行われる運勢当てゲームで、超能力を持った女性がタム・リンの秘密を知り狼狽する。それを見て気づくのが、キャラクターレスな取り巻き集団のなかで、唯一富への野心を持ち、タム・リンの後釜を狙う青年だ。タム・リンはジャネットの父親が牧師を勤める教会で彼女に再会(ここで4.が流れる)し、彼は夫人と別れる決心をして、ジャネットと逢瀬を重ねる。彼は意を決して夫人の部屋に行き(ジャッキーの独唱
5.)、別れ話を持ち出すが夫人は認めない。逆に彼女の執事に呼ばれて、過去の愛人がみな事故死していること知らされて愕然とする。囚われの身であることを悟った彼は何としてでも夫人から逃げ出そうとし、彼女は悪魔のように怒り狂うが、彼に一週間の猶予を与える。ジャネットは妊娠して悩んでいたが、タム・リンと再会して一緒に暮らす決心をする(ここで6.流れる)。二人は隠れるが、執事に見つかってしまい、タム・リンは拉致されてスコットランドの館に連れ戻される。取り巻き連中と後釜を狙う青年の悪意ある視線のなかで薬を飲まされた彼は、殺人ゲームの被害者として「殺される」という強烈な暗示をかけられ、恐怖と錯乱のなか家を逃げ出しマンハンティングの人々に追われる。探しにきたジャネットが合流して、車に乗り危険な暴走運転を繰り広げるが、車のキーを引き抜いて止めようとする彼女の機転で九死に一生を得る。錯乱状態のまま沼地を逃げ惑うタム・リンを人々が追いかける。薬の幻覚作用で、自分が熊や蛇に変身し、身体が炎に包まれ発狂寸前となるが、ジャネットがしっかり抱きしめ離さなかったため助かる。かくして嫉妬と復讐に燃えた夫人の策略は失敗し、彼女は後釜に居座った青年と海外に飛び立つ。最後に夫人の怒りに燃えた狂気の目がアップになり、8.が流れて映画は終わる。本作においてペンタングルの歌と演奏が聴ける部分はそれほど多くなく、大半のバックはスタンレー・メイヤーズ(「ディア・ハンター」の音楽が有名)による古典風の音楽が流れている。しかし彼等の曲はストーリー・テラー役として重要なシーンで挿入されているので、それなりに印象的。ちなみに上述の歌の他に、インストルメンタルの短い断片を2つほど聴くことができる。
トラッドの背景を知らない人には、出来損ないのホラー映画に思えるかもしれない。一般的には評価の低い作品だが、観る人によっては奥の深い大変魅力的な作品。伝承の世界が好きな人にはお勧め。私個人の感想としては、人間関係を鋭く捉えた脚本、印象的な演出、深みのある撮影、俳優の演技のレベルは高いと思う。でも何と言っても、この作品を支配しているのは主演であるエヴァ・ガードナーの圧倒的な存在感だろう。本作は、再評価の後はカルト・クラシックスの仲間入りを果たしている。当時サウンドトラック・レコードは発売されておらず、フィルム自体が所在不明になる位なのだから、ペンタングルの演奏のマスターテープなんて残っていないんだろうな~。いつかある日突然発掘されることを期待したいですね。現在日本語字幕付きのビデオは発売されておらず、海外のネットショップで入手可能。DVD化はされていないようだ。
2007年に発売されたれたペンタングルのボックスセット「The Time Has Come 1967-1973」T12 に、生き残ったフィルムのサウンドトラックから録音された1.と、2.4.5.8.を編集したトラックが収録された。
(Jさん、ありがとうございました)。
[2022年2月追記]
録音時期につき、ボックスセット「The Albums」2017 T13の年表から追記しました。
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T20 Christian The Lion (1976) (映画) |
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Directed by: James H. Hill, Bill Travers
Acted by: Bill Travers (ナレイションも担当)
Virginia McKenna (ナレイションも担当)
George Adamson (ナレイションも担当)
Terence Adamson
Anthony Bourke
John Rendall
Music by: The Pentangle
Bert Jansch: Guitar, Vocal
John Renbourn : Electric Guitar, Sitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Marimab
1. インスト(ジャッキーのハミング、シタール) 家具屋にて
2. テーマ・ソング (ジャッキーの歌) クレジットタイトル
3. インスト(ジャッキーのハミング) 「クリスチャン」(ライオン)との出会い
4. インスト(ピアノ、エレキギター、ギター) クリスチャンが庭で遊ぶシーン
5. テーマ・ソング (ジャッキーの歌) 郊外への移転
6. インスト(ジャッキーのハミング) 郊外への移転
7. インスト(ジャッキーのハミング) アフリカへの移動の準備
8. インスト(バートのハミング) クリスチャンの愛情表現
9. テーマ・ソング (ジャッキーの歌、ギター) ケニアへの移動
10.インスト(ベース、マリンバ) ナイロビにて
11.インスト(ベース、マリンバ、エレキギター) 住みかへの移動
12.インスト(ギター) ライオン「ボーイ」を連れてくる
13.インスト(ジャッキーのハミング)イギリスの海辺で遊ぶクリスチャンの回想シーン
14.インスト(バートのハミング) ボーイの紹介
15.インスト(ベース、マリンバ) ボーイの怪我の治療
16.インスト(バートのハミング)エイス、ジョンとクリスチャンにじゃれる
17.インスト(エレキギター) ボーイとクリスチャン、子ライオン「カターニア」のお見合い
18.インスト(エレキギター) 3匹が緊張しながらも次第に慣れてゆく
19.インスト(エレキギター) 3匹の共同生活の始まり
20.インスト(ジャッキーのハミング)エースとジョンの帰国
21.テーマ・ソング (ギター) 3匹の野外生活の始まり、野生ライオンの脅威
22.インスト(ギター)3匹の野外生活
23.テーマ・ソング (ジャッキーの歌) 3匹の野外生活
24.インスト(エレキギター) 水辺に潜む危険
25.インスト(ベース、マリンバ) カタリーナの死
26.インスト(ベース、マリンバ) クリスチャンの昼寝
27.インスト(エレキギター) 雌ライオン「ジュマ」「ジェシカ」を連れてくる
28.インスト(バートのハミング) 雌ライオンとの野外生活の始まり
29.インスト(ベース) ジェシカの死
30.インスト(ギター) ボーイの怪我と治療
31.インスト(エレキギター) 新しい雌ライオン「モナ」と「リサ」加わる
32.インスト(エレキギター) 雌ライオンとのお見合い
33.インスト(ギター、ピアノ) 子ライオン「スーパーカブ」加わる
34.インスト(ジャッキーのハミング、エレキギター) 再び野生の生活へ
35.インスト(ベース) ボーイの悲劇
36.インスト(ジャッキーのハミング)ジョージの悲しみ
37.インスト(ベース、マリンバ) エイス、ジョンがクリスチャンに会いにくる
38.インスト(バートのハミング) クリスチャンは二人の事を忘れていなかった
39.インスト(ジャッキーのハミング) 他のライオンも彼等を歓迎する
40.テーマ・ソング (ジャッキーの歌) ライオンとジョージの夕陽のシルエット
41.インスト (ジャッキーのハミング)エンド・タイトル
注 ()内はフィーチャーされる主な楽器を表示しましたので、他にドラムス、ベース、ギター、エレキギターなどが含まれています。
日本未公開 (日本語字幕付ビデオなし)
89分
録音: 1971年~192年
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1.はじめに
ペンタングルが音楽を担当したもう1本の映画。都会で生まれ育ったライオンの子供をアフリカの自然に返す実話をドキュメンタリー風に製作したもの。「ドキュメンタリー風」というのは、冒頭のシーンなど明らかな再現シーンがあったり、カット割りで演出効果を出している部分があるため。1966年の映画「野生のエルザ」に関わった人々が多く参加している。フィルムが撮影されたのは1970年前後であるのに対し、一般公開がずっと後の1976年になったいきさつはよく分からない。アメリカでは1972年にテレビ放送されたらしい。ペンタングルはテーマのみならず、映画の全編でバックの音楽を担当している。全曲ナレイション絡みで、かつ断片ではあるが、彼らの演奏をたっぷり聞くことができる。この映画を解説するにあたり、まずは「野生のエルザ」とその関係者についての説明が必要なので、以下のとおり記述した。
2.「野生のエルザ」について、アダムソン夫妻、ビル・トラヴァース、ヴァージニア・マッケンナについて
(あらすじ) ケニアで監視官をしていたジョージは妻のジョーイと一緒に親のいないライオンのエルザを育てていたが、大きくなるにつれて人間との共存が難しくなったので、動物園には送らず野生に戻すことにする。野生ライオン社会への順応、狩りの仕方など苦労して慣れさせた後、彼女を野に放つ。1年後、夫妻がその場を訪れると、子供を連れたエルザがやってきて、以前と同じように夫妻に身を擦り付けて来た。彼女は立派なライオンに成長したが、彼らの事を忘れていなかったのだ。
孤児のライオンを育てて野生に戻すという実話を書いてベストセラーとなった本「Born Free」に基づいて製作された映画。本の著者であるジョーイ・アダムソンをヴァージニア・マッケンナ、夫のジョージ・アダムソンをビル・トラヴァースが演じた。この二人の俳優は実際も夫婦で、この作品の撮影を通じてアダムソン夫妻と親しくなり、その後も俳優活動を続けながら動物保護運動に身を投ずることになる。監督のジェームス・H
・ヒルはイギリスのテレビなどでドキュメンタリーを撮っていた人。この感動的な物語は多くの人々の共感を呼び、その野生尊重の考えは、後の動物保護運動に大きな影響を与えた。またジョン・バリー作曲による主題歌はアカデミー賞を受賞した。アダムソン夫妻はその後離婚し、ジョーイも別の場所で同じような活動を営むが、1980年彼女の厳しい指導を恨んだ雇い人に殺されてしまう(その時のニュースを聞いてショックを受けたことを覚えている)。一方ジョージは監察官を辞め、ライオンその他の動物を保護し野生に戻す活動に身を捧げる。その後も象を描いた「野生のポリー(An
Elephant Called Slowly)」1970年、本作「Christian The Lion」1976年を製作。しかし1989年盗賊に捕らえられた仲間を救いに行き、殺されてしまう。しかしその志はBorn
Free Fundとして残され、現在もなお野生動物保護へ多大な貢献をしている。
3. 「クリスチャン・ザ・ライオン」について
本作は「野生のエルザ」の4~5年後に撮影された作品で、ビル・トラヴァース、ヴァージニア・マッケンナ夫妻は実名で、そしてジョージ・アダムソン本人が重要な役割で登場している。ジョーイ・アダムソンはすでに別行動をとっていたようで、本作には一切登場せず、かわりに弟のテレンス・アダムソンが出ている。前作の主人公だった雌ライオンのエルザは病死したため、この映画には出ていない。
(あらすじ)映画は、郊外からロンドンのチェルシーへ買い物に来たビル・トラヴァース夫妻のシーンから始まる。登場人物のセリフは少な目で、ビル、ヴァージニア、ジョージのナレイションでストーリーは進行する。机を見るためにある家具店に入ったビルは、彼と気づいた二人の店員に呼び止められて、地下室へ案内される。そこで彼が見たものはライオンの子供だった。イギリスの動物園で生まれたライオンがデパート(ハロッズ)のクリスマス商戦で売られていたのだ。そのライオンに惚れ込んだ二人(エイスとジョン、各本人が実名で登場)がお金を工面して買い取り、4ヶ月の間地下室で飼っていたという。運動させる時は車で連れ出し、塀に囲まれて逃げ出せないようになっている教会の庭を借り、クリスチャンと名づけられたライオンを放していたが、だんだん大きくなってきたので、都市での飼育が難しくなってきたという。まずクリスチャンを郊外のビルの家に移し、二人も仕事を辞め近くに住んで世話をする。飼い主に飛びつくクリスチャンの愛情表現がすごい。ケニヤ政府の許可を得てアフリカの野生に戻すことになり、同国にいる友人のジョージ・アダムソンに協力を頼んだ。周到な準備によりライオンはビル、エイスとジョンと一緒に無事ナイロビに到着、そこからは車で目的地に運ぶ。面倒を見ることとなったジョージ・アダムソンは、「野生のエルザ」に出演し、野生化に成功した大人のライオン「ボーイ」、雌の子ライオン「カターニア」を別の地区から連れてきて、クリスチャンと会わせた。3匹はじきに慣れ、一緒に野生生活をするようになったところで、エースとジョンがイギリスに帰国する。野生に戻った3匹はその後もジョージと親交を続けるが、ある日カターニアが行方不明となり、ワニに襲われた事が判明。ジョージは別の場所から同じような境遇で育った雌ライオン2匹を連れてきて「ジェシカ」、「ジェンマ」と名づけるが、ジェシカは野生ライオンに襲われて死亡、ボーイも怪我をする。再び2匹の雌ライオン「モナ」、「リサ」と子ライオン「スーパーカブ」が加わって落ち着きを取り戻すが、ここで悲劇が起こる。ボーイがジョージのアシスタントを襲ったのだ。ジョージはボーイを射殺し、襲われたアシスタントは死亡(このエピソードはジョージの口から淡々と語られる)。落ち込んだジョージを慰めたのはクリスチャンだった。1年後、エースとジョンがクリスチャンに会いにやって来る。クリスチャンは2人の事を覚えていて、大きくなった身体で二人に飛びつく。クリスチャンの家族も彼等を受け入れる。厳しい野生の世界に生きるライオン達のこれからの運命は誰にも分からない、終わりが分かっているのはおとぎ話だけだ。
以上のとおり、感傷のかけらもない非常に厳しい内容の映画だ。わざとらしさはなく、野生の世界に生きることの大変さが淡々と描かれる。それにしても、いつも銃を片手にライオンと行動をともにするジョージ・アダムソンは、哲学者のような崇高さと仙人のような気高さが感じられる。こういう映画の製作に関わった理由は、売名行為などではなく、現地での活動資金の調達のためであったことが今回の調べて初めて分った。偉大な人物だと思う。ちなみに1999年にリチャード・ハリス主演で彼の事を描いた映画「To
Walk With Lions」が製作されている。
4. ペンタングルの音楽について
本作でのペンタングルは、テーマソングとしてジャッキーが歌う「Song Of Christian The Lion」(仮題)が、2, 5, 9,
23, 40のストーリー展開のポイントとなるシーンでフィーチャーされる。歌詞は映画のあらすじの沿ったもので、メロディーはジョセフ・スペンスの「Great
Dreams From Heaven」に似ている。インストでは、ジャッキーのハミングが入る上記13, 20, 34, 39のインストは、「Salomon's
Seal」T7に収録されていた「People On The Highway」のギターリフとメロディーを使用している。その他ジャッキーのハミングの曲
3, 6, 7 は平和・落ち着きを、バートのハミングが入る曲 8 14 16 28 38は喜び・高揚感をテーマとしているようだ。そしてバートのギター、ジョンのエレキギター、ダニーのベ-ス、テリーのマリンバがそれぞれメインとなるインスト曲が随所で演奏される。ベースとマリンバの演奏による曲は、緊張・不安を表現している。35のベースは悲しみの呻きそのもの。17~19では、ライオンの出会いと慣れるまでの緊張を表現するために不安な感じのベースのリフにレンボーンのエレキギターのソロが展開される。11,
19, 27 は「Reflection」T6 のタイトル曲の雰囲気に近い。 全体的なサウンド的には「Salomon's Seal」T7 に近いので、1971年ごろの録音と推定される。上述のとおり、すべてが断片で、常にナレイションが被さり、曲のみ独立して聞ける部分はあまりない。でもインスト曲はそれなりに楽しめるし、特にジャッキーまたはバートがハミングで歌う曲は十分聞き応えがあるので、ファンの方は満足できるだろう。
5. 最後に
ドキュメンタリー調なので、淡々とした筋書きで劇的な展開に乏しい感じがするが、ライオンが好きな人、ジョージ・アダムソンに興味がある人、自然保護に共鳴する人、そしてペンタングルのファンには面白い作品だろう。この作品もサウンドトラック・レコードは未発売なので、将来発掘されることを期待したい。現在日本語字幕付きのビデオは発売されておらず、海外のネットショップで入手可能。ビデオを納めるパッケージのデザインは、上記の写真以外にいくつかのバージョンがあるようだ。今のところDVD化はされていない。
(Jさん、ありがとうございました)。
6. 追記
2007年に発売されたれたペンタングルのボックスセット「The Time Has Come 1967-1973」T12 に、フィルムのサウンドトラックから録音され、1.の家具屋でのシーンにおけるジャッキーのハミングとジョンのシタール演奏、ジャッキーの歌による一連のテーマソング、ジャッキーやバートによるハミングや、ピアノ、マリンバ、ギター、ベースなどによるインストルメンタルの断片が編集されたトラッックが収録された。
[2011年10月追記]
近年クリスチャンに係るエピソードが話題となり、インターネットで本作の映像を観ることがあるが、別の音楽が添えられているケースが多いようだ。エピソードそのものには影響ないけどね.................
「ライオンのクリスチャン-都会育ちのライオンとアフリカで再会するまで」という本が、2009年早川書房から出版されています。
[2022年2月追記]
録音時期につき、当初資料では1971年とあったが、ボックスセット「The Albums」2017 T13の年表から1972年という説がでたので、改めました。
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