ジャケット表面はKPM Music Recorded Library のロゴ、ロンドンオフィスの住所と電話番号が表示されただけで、ジョンの名前はどこにもない。裏面に、標記タイトルと曲名・演奏時間、および利用者向けの参考として曲毎のイメージが一言Remarksとして記載されている。もともと一般向けに製作されたものではないので、他のソロアルバムと同じ次元で評価するのはアンフェアと思われるため、本書では「その他」のQジャンルで掲載した。ペンタングルやジョン・レンボーン・グループ、およびソロアルバムなどで普段彼が見せる音楽に対する厳しい姿勢、ギター演奏の完璧主義はここにはなく、多少のピッキングやリズムの乱れを許容し、リラックスした穏やかなムードに満ちている。通常の作品のように、制作の際に入念なリハーサルや多くのテイク録りを重ねた感じはなく、ギターのオーバーダビングやフルートの演奏なども、ラフで自然な仕上がりとなっている。そういう意味で、低予算で気楽に作られた作品とはいえ、彼の別の一面が出ていて、聞いていて大変楽しい作品となった。
1.「Swallow Flight」はバート・ヤンシュのソロアルバム「Rosemary Lane」1971冒頭の曲「Tell Me What
Is True Love」のギター伴奏に似た感じの、ゆったりしたアルペジオで始まる。多重録音による2〜3台のフルートが清々しい雰囲気でメロディーを奏でる。クラシカルなベースのなかにジャズの自由さが見え隠れするスタイルは、トニー・ロバーツの独壇場だ(彼の名前のクレジットはないが、ほぼ間違いないものと推定される)。Remarksで「優しい、田園的」とコメントされた(以下2.以降の曲のコメントについては番号のあとに括弧書きした)。2.「Light
Traveller」(素早く、流動的)はレンボーンお得意のバンジョー風ピッキングにフルートが絡むもの。3.「Reflections (1)」(考え深い)はR1の「Something
Lonesome」または Q1の「Lucky Thirteen」で演奏される、ジョンお好みのリフパターンに乗せて、多重録音によるエレキギターがゆったりと演奏される。4.「Reflections
(2)」は3.のリード・ギター抜きのバージョンで、伴奏ギターのテイクは同じ。
B面最初の曲8.「Portrait Of A Village」(リリカルな、伝統的な)はトラッドのメロディーで、ジャッキー・マクシーのハミング・ヴォイスが入っている(彼女の名前のクレジットはないが、あの声は間違いようがない)。この曲は後にジョン・レンボーングループのR16(1980)で歌付きのバージョン「A
Maid On The Shore」が録音される。9.「Glastonbury」はレコード裏表紙およびラベルには「Summer Song」とあるが、次の曲「Glastonbury」との明らかな入り繰りミスなので、ここでは正しい曲順に訂正した。ということで、9.(快活な、おだやかな)は、当時未発表だった「To
Glastonbury」という曲のインスト版(ジャッキーのハミング入りではあるが)で、後の80年に R17で再録音、96年にはオリジナル録音が
R8 で発掘された。独特の変拍子風のギターのリフと中盤のブルース風の展開が面白い雰囲気を作っていて、ジョン・レンボーン・グループのケジャブ・サテと思われるタブラの音が聞こえる。10.「Summer
Song」(ある時代の田舎のダンス)は、リラックスした感じのミディアム・テンポのダンス曲で、レコーダーとパーカッションがフィーチャーされる。このメロディーは他の録音では聞かれなないものだ。ジョンのギターもリラックスしている、
1.「a Bonaparte's Retreat b Billy In the Lowgrouds」はグロスマンがフラットピックでソロをとるフィドル・テューン。2.「Sprit
Levels」は二人のオリジナルで、本番一発録音のためかレンボーンのソロに凄まじい緊張感と気迫が感じられ、出色の出来となっている。使用ギターはグロスマンが1.がマーチンD28
、2.はプレイリー・ステート(シカゴのラーソン兄弟が制作したアーチドトップをカリフォルニア州バークレーのジョン・ランドバークがフラットトップに改造したもの)。レンボーンはお馴染みのギルド
D55。本作の解説によると彼のギルドはネック、トップともに大幅な改造をされているとのこと。実際にギルド D55を弾いてみたことがあるが、とてもあの様な音が出るとは思えない。やはり改造がなせるわざであると思う。また解説書には1.2.のタブ譜が掲載されていたが、本当に簡単なもので楽譜といえる代物ではない。ちなみに本作は日本から欧米へ輸出され、グロスマンのキッキング・ミュールからも販売されたようで、そのためか欧米の中古市場でもけっこう出回っている。
Q17 The Journey (2006) [Ralph McTell] Leola OLABOX60
Ralph McTell : Vocal, Guitar
John Renbourn : Guitar
1. A Leaf Must Fall [Clive Palmer]
2. Blues Run The Game [Jackson C. Frank] R1 R3 R17 R29 Q10
Recorded at Morgan Studios, London, June 1980
ラルフ・マクテル(1944- )は、ブリティッシュ・フォークの重鎮として説明不要。彼とバート・ヤンシュとの共演の音源・映像は、けっこうある。一方ジョンについては、過去にフォーククラブ等で一緒に演奏する機会はあったはずであるが、後に残った音源・映像はこれが初めてだろう。本作は、彼のキャリア40周年を記念して製作されたCD4枚組のボックスセットで、1966年のデモ録音から
2006年に本作のために録音された新曲まで計66曲が収められ、内3分の1が未発表録音という構成になっている。その中にラルフとジョンの共演が2曲含まれており、1980年6月という録音時期および場所により、1982年に発表されたアルバム「Water
Of Dreams」のアウトテイクであると推定される。
クライブ・パルマー(1943- )は、1965年にロビン・ウィリアムソンとインクレディブル・ストリング・バンドを結成した人で、ファーストアルバムを製作して脱退、インド・中近東を放浪後、ギタリストのピーター・ベリマン等と一緒にフェイマス・ジャグバンドを結成。その後もソロ、バンドで活動していたが、2000年代以降はロビン・ウィリアムソンとデュオ活動を展開、バート・ヤンシュのドキュメンタリー・テレビ番組「Dreamweaver」2000
(バートの「その他音源・映像」参照)にロビンと一緒に参加している。1.「A Leaf Must Fall」は、フェイマス・ジャグバンドの1枚目のアルバム「Sunshine
Possibilities」1969に入っていた曲で、賑やかなジャグバンドのアレンジではなく、クライブ・パルマーとピーター・ベリマンのアコースティック・ギターをバックにジル・ジョンソンが静かに歌っている。彼女は当時、クィーンのドラマーとして有名になる前のロジャー・テイラーのガールフレンドだった人で、バンドの2枚目のアルバムでは彼がパーカッションとバックコーラスでゲスト参加している。ここではオリジナルと比較して、ラルフ、ジョン両者のギターの上手さ・味わいが光っている。2.「Blues
Run The Game」はジョンの愛奏曲で、何度も録音され、コンサートでの常連曲でもある。この曲については、Q10またはバート・ヤンシュのディスコグラフィーのS11を参照して欲しい。ちなみに1997年に発表されたサイモン・アンド・ガーファンクルのボックスセット「Old
Friends」1997に、彼等のLP「Sound Of Silence」1966のアウトテイクとしてこの曲が初めて公式発表され、後に前述のアルバムにボーナストラックとして収録されている。ラルフのギター、ボーカルもさることながら、この曲でジョンのリードギターが聴けるのはうれしい。
本ボックスはラルフの代表曲が網羅されていると思われるが、丁寧な作りで写真満載のブックレット(ジョンが書いた文章も掲載)は付いているものの、歌詞カードがないのは日本人にとって残念。名曲「Streets
of London」は、オリジナルが1968年の「Spiral Staircase」で、1974年シングルカットされて全英2位の大ヒットとなったバージョンは、翌年の「Streets」に収録されているが、本ボックスでは、その中間にあたる1971年のアルバム「You
Well-Meaning Brought Me Here」のアメリカ盤のみに収められたバージョンで聴くことができる。ロンドンで暮らす貧しく孤独な高齢者達の姿を暖かい視線で見つめる歌詞・歌声が素晴らしい。他のトラックでは、フェアポート・コンベンションの連中、ペンタングルのダニー・トンプソン、マイク・ピゴー、ロッド・クレメンツ、ゲリー・コンウェイなどがバックを担当しているが、以前あれだけ共演音源・映像を残しているバート・ヤンシュが参加している曲が、本ボックスにひとつも含まれていないのは不思議。
本作は、彼が音楽を担当した1984年の映画「Scream For Help」(日本未公開)のサウンドトラック盤だ。監督のマイケル・ウィナー(Michael
Winner 1935-2013)は、チャールス・ブロンソン(1921〜2003)主演の「The Mechcanic」1972、「Chato's
Land」1972、好評のためシリーズ化された「Death Wish 邦題(狼の挽歌)」1974で有名な映画監督。ニューヨーク郊外に住む少女が、義父が母親と自分を殺そうとしていると訴えるが、誰も信じてくれず、最後は自ら対決することになるサスペンス・スリラー。低予算で作られたものらしく、登場人物の描き込みや心理描写が不十分なため、サスペンスのシーンで観客が主人公に感情移入できないという脚本・演出面での問題が大きく、興行的にも失敗した。出演した俳優達は皆知名度が低く、本作以降も有名になることはなかった。そのため、後にビデオ化されたが、いまだにDVDでは発売されていないようだ。
ジョーンズが本作の音楽を依頼されたのは、監督が以前「Death Wish II 邦題(ロスアンゼルス)」1982の音楽をジミー・ペイジに頼んだ実績があること、彼に音楽を担当させることで、話題作りを狙ったのではないかと思われる。インタビューで、彼は「初めてサントラの依頼を受けたから」と答えているそうだ。製作にあたり、インストルメンタルではギターをジミー・ペイジに頼み、歌ものは本人が自ら歌う他に、イエスの歌手であるジョン・アンダーソン、ヨーロッパで活躍するセッション・シンガーのマデリン・ベルにゲスト参加を頼んでいる。ジョーンズとジョン・レンボーンは、当時近所付き合いがあったそうで、本作のしばらく後に制作されたレンボーンとステファン・グロスマンのデュエット・アルバム「The
Three Kingdoms」R22では、ジョーンズがプロデューサーを担当している。
本作へのレンボーンの参加は1曲(3曲とする資料もあるが間違い)で、1.「When You Fall In Love」は、ロック調のビートが効いた急速テンポの曲。彼の切れ味鮮やかなアルペジオのおかげで、ぴりっとした感じに仕上がっている。ツェッペリンでは歌うことがなかったジョーンズのボーカルは、あまり上手いとはいえないが、ダークな曲想に合っている。ドラムスのグラハム・ウォードは、本作以降にステファン・グラッペリやポール・ヤングなどのセッションに参加した経歴がある人。映画を観たが、この曲の使われ方は、登場人物が車を運転している際のカーステレオの音楽として数秒流れるのみで、曲の良さの割りにもったいない気がする。ちなみに、この曲の作詞はジョーンズの娘ヤシンダが担当している。
Emilio Cao: Vocal, Harp, Acoustic Guitar
John Renbourn: Acoustic Guitar, Electric Guitar
1. Illa Do Sur (Island In The South) [Emilio Cao]
2. O Cravo (The Nail) [Rosalia de Castro, Emilio Cao]
3. Quen Na Outa Tarde (Who In The Late Evening) [Uxio Novoneyra, Emilio
Cao]
注) 写真上: レコード盤ジャケット
写真下: CD再発盤ジャケット
スペインのアルバ(ハープ)奏者エミリオ・カオは、1950年代前半ガリシアのサンチャゴ・デ・コンポステラに生まれる。ガリシア州はスペインの北西部(ポルトガルの北)に位置し、アイルランド、スコットランド、フランスのブリターニュ地方とならびケルト文化圏のひとつと考えられている。サンチャゴ・デ・コンポステラは、マドリードからは列車で10時間かかり、大聖堂と旧市街は1985年世界遺産に登録された。彼は若い頃はポップスを演奏していたが、当時のフランコ独裁政権に反抗するフォーク音楽運動に傾倒して曲を書き始める。1970年代にヨーロッパ各地を放浪した後、故郷で中古のハープを買い人生が定まる。1977年に発表したソロアルバムは、当地におけるケルト音楽復興の先駆となり、その後は多くのフォロワーを生んだ。そして各地のハープ奏者や音楽家との交流を深めながら、ダンス、劇場音楽の作曲にも活動を広げ、いままでに6枚のソロアルバムを発表、最近ではスコットランドのロビン・ウィリアムソン
R25、ブリターニュのアラン・スティーヴィルなどとともに、ケルト音楽のハープ奏者のオムニバスCD「Master Of The Harp」2002に参加している。本作は1985年に発表された4枚目のアルバムで、タイトルを英訳すると「Dawn-pale
And Thin Friend」(青ざめて痩せた友よ)。レコード盤のジャケットデザインは、帽子を被り髭を生やした彼のポートレイトだったが、1998年に再発されたCDでは、レコードの中袋にあった写真を配したものに変更された。彼のホームページのバイオグラフィーに掲載された写真に、その服装や雰囲気で、この写真と同時期に撮られたと思われるものがあり、その説明からこの写真が1957年、サンチャゴ・デ・コンポステラから西に50キロ程の海辺の村リアンソで撮られたもので、ボートと一緒に写っているのは、母親と彼を含む4人の子供達、そしてエミリオは左から2人目の子供であると推定できる。という意味で、古きよき良き時代に対する思いが込められた作品といえよう。
私はスペイン音楽には詳しくないので印象でしか言えないが、本作の音楽はケルトの香りを漂わせながら、スペイン古来の歌謡曲にモダンな味付けを自然にブレンドしたもののように思われる。明るい陽射しと海の香り、夢に見るヨーロッパの景色、昔見た欧州映画の1シーンのような、ノスタルジックな雰囲気に溢れている。曲毎のパーソナルが掲載されていないので、レンボーンがどの曲に参加しているか明確な記録はないが、エミリオによるアコースティック・ギターの演奏はシンプルなフィンガースタイル(スリー・フィンガー、アルペジオ)なので、聴いていると「あっ、これはレンボーンだろうな」という感じで、ここでは上記のとおり全11曲中3曲につきレンボーン参加と推定した。1.「Illa
Do Sur」はエミリオのギターの弾き語りにジョンがリードをつける。カポを高フレットにつけて弾いていると思われ、別の小型弦楽器のような響きだ。歯切れのいいピッキング、流れるようなアルペジオはまさにレンボーンタッチであるが、演奏自体は控え目で、主人公の引き立て役に徹している。エミリオの歌は、高く優しい繊細な声だ。海辺の滞在をテーマとした美しい歌。本作は英語の訳詩がついているので、歌の内容が理解でき有り難い。2.「O
Cravo」は地元の詩人の古い作品に曲をつけたもので、「心に打ち込まれた釘」がテーマ。心をえぐるような歌詞の素晴らしさは特筆もの。ここではレンボーンは右チャンネルでアコギのリードを、左でエレキギターの和声をつけている。シンプルな演奏だ。3.
「Quen Na Outa Tarde」は「Black Balloon」 R13の「The Pelican」を思わせる、低音弦でメロディーを奏で、高音弦でアルペジオを鳴らす鮮やかなレンボーンのイントロから始まるが、現代詩(短いながらも俳句のような奥深さがある)が歌われて、30秒足らずで終わってしまう。もっと聴きたいなと思ってしまうのだが、まあしようがないか。
Q20 Christmas Guitars (1989) [Various Artists] GREEN LINNET GLCD 1103
John Renbourn: Guitar
1. I Saw Three Ships * R25 R26 V5 V8 V9 K3
〔楽譜掲載〕 K3
18人のアーティストによるオムニバス形式のクリスマス・ソング集。レンボーンの他、ラリー・コリエル、エイドリアン・ブリュー、ジョン・スコフィールド、エミリー・レムラー等のギタリストやアル・クーパー、タージ・マハール、ナンシー・ウィルソン等が参加している。ジョンは愛奏曲の「I
Saw Three Ships」1曲で参加。かなりラフな出来のスタジオ録音で「Wheel Of Fortune」1993 R25のライブ・ヴァージョンとも異なる部分があり、おそらく即興演奏と思われる。僅か1分48秒の短い小品ではあるがなかなかの出来。本作の収益はホームレスの人々をサポートする団体「National
Coalition For The Homeless」に寄付された。
Q21 A Thousand Words (1992) Acoustic Music Records Best-Nr.319.1021.242
〔Duck Baker Feat. J. Renbourn〕
Duck Baker: Guitar
John Renbourn: Guitar
Peter Finger: Producer
1. Waltz On Sunday * [D. Baker]
2. Mr. Jellyroll Soul * [C. Mingus]
3. Lashta's Room * [D. Graham]
鬼才ギタリスト、ダック・ベイカーがピーター・フィンガーのアコースティック・ミュージック・レーベルから発表した意欲作。ジョンはゲストとして3曲でリードギターを担当。1.「Waltz
On Sunday」ではファンキーなジャズ・ブルース調の曲にエレキっぽい音でハーモニーと間奏を付けている。ダックとの掛け合いが聞きもの。2.「Mr.
Jellyroll Soul」は、「Goodbye Porkpie Hat」で有名なチャーリー・ミンガスの作によるスウィング・ジャズ風の気持良い曲で、ジョンのリードギター・ソロが楽しめる。3.「Lashta's
Room」はデイヴィー・グラハムの曲で、以前キッキング・ミュールから発売された彼のソロアルバム「Complete Guitarist」に収録されていた曲。レンボーン未参加ではあるが、上記以外の曲でも聴きどころは多く、自分で伴奏しながらソロをとる(!)彼独特のスタイルの独壇場だ。特にBert
Janschのオムニバス「Acoustic Routes」に別ヴァージョンが収録されていた「The Blood Of Lamb」は演奏者のソウルがグイグイ心に迫ってくる傑作だ。全編がセロニアス・モンクやダラー・ブランドなどを彷彿させるジャズ・ピアノのフィーリングに溢れている。
Q22 Wizz & Simeon Jones (1993)[Wizz Jones] Fellside FECD91
Q24Living In The Shadows (2016) [Bert Jansch] Earth
Bert Jansch : Vocal, Guitar,
John Renbourn: Guitar
CD4
Picking Up The Leaves (Demos, Outtakes & Unreleased)
1. Untitled Instrumental II (Early Attempt With John Renbourn) *
2. Untitled Instrumental II (With John Renbourn) *
録音: 1992〜1993年頃(推定)
「Living In The Shadow」については、2017年3月にバート・ヤンシュのコーナーに投稿したのですが、ジョンのコーナーに反映させることを失念していましたので、以下のとおり書きました。
2017年1月、アース・レコードによるバート作品のリイシュー・プロジェクトのひとつとして、「The Ornament Tree」1993 S24、「When
The Circus Comes To The Town」 1994 S26、「Toy Balloon」 1998年 S28 の既発アルバムに、「Picking
Up The Leaves」と名付けられたデモ・別バージョン、未発表曲集を加えた4枚組CD またはLPで発売された。バートファンにはお馴染みコリン・ハーパー氏による解説が付いているが、歌詞および曲についてのクレジット(バックミュージシャンや録音日・場所など)の情報記述がないのが残念だ。
CD4 「Picking Up The Leaves」 (CD1〜3はバートの既発アルバム)の最後に収められたジョン・レンボーンとの共演。1992年二人は、ジャッキー・マクシーを加えた3人でコンサートツアーを行ったが、その当時デュエット・アルバムを作る構想もあったとのことで、これらはそのリハーサルで、「Acoustic
Routes」1993 S25における「First Light」と同じ頃のセッションと思われるので、録音時期は1992年〜1993年頃と推定した。曲の出来としてはまあまあといったところで、いまひとつ印象が薄い感じ。共演盤の製作が立ち消えになったことがわかる。
[2022年10月作成]
Q25International Guitar Festival (1994) Acoustic Music Best Nr. 319.1051.242
John Renbourn: Guitar
1. Im Wunderschonen Monat Mai * [Robert Schumann]
2. Little Niles * [Randy Weston] R24 R25 R27 R28 V5 V7 K4
ジョンとは、コンサートでの共演で親しくなったらしい。1.「The Part Time Ascetic」は「パートタイムの苦行者」という意味のタイトルで、CDジャケットにある「It's
a different world now when I was a kid. It has changed and it's a Stranger
World」という言葉の世界をを表現している。綺麗なアルペジオに乗って歌われる重い内容の歌であるが、本人の歌声は誠実さが籠っていて、聴いていて厳粛な気持ちになる。ジョンのリードギターは、ストレートで切れ味鋭く、曲の雰囲気を引き締めるとともに、奥の深い哀愁を加味させている。2.「Why
The Crows Don't Sing」も同じテーマの歌で、こちらはよりブルージーなサウンド。どんどん世知辛くなる仕事世の中をシニカルに捉えている。ジョンはブルースハープが鳴るなか、控えめなオブリガードを付けているが、短い間奏ではしっかり存在感を発揮しており、聴き応え十分な出来だ。
アルバムとしては、インストルメンタルと歌ものが半分ずつで、ギターソロは2曲。他はパーカッションやベースの伴奏つきで、ウィンダムヒルでお馴染みのマイケル・マーニングのフレットレス・ベースが大きくフィーチャーされている。彼はアメリカ帰国後に現在(2014年)に至るまで3枚のCDを発表しているが、ヨーロッパ時代の録音からセレクトした2004年の「Bittertruth」には、1.「The
Part Time Ascetic」が収められている。
Q27Swimming Pool (1998) [Al Jones] Weekend Beatbik WEBE 9033
Al Jones : Vocal, Guitar
Joh Renbourn : Guitar
1. In Stormy Weather [Al Jones]
アル・ジョーンズ(本名 Alun Ashworth-Jones、1945-2008)は、1960年代後半にブリティッシュ・フォークシーンで活動を始め、1969年、1972年にアルバムを発表した後に活動を停止、楽器やピックアップなどの開発・製作に専念した(Ashbory
Bassというギルドやフェンダーが生産したミニ・ベースギターが有名)。彼の名は一般からは忘れ去られたが、当時のアルバムはその後も一部のファンの間で高く評価された。1990年代に彼は仲間から誘われて活動を再開。ウィズ・ジョーンズやジョン・レンボーンなど当時の仲間とセッションを行ううちに、作曲意欲が沸き、1998年に本作を制作・発表した。マイナー・レーベルからの発売で、大きな話題にならなかったため、あまり売れなかったようだ。
Q30 Here I Go Again (2003) [Dorris Henderson] Market Square MSMCD117
Dorris Henderson: Vocal
John Renbourn: Guitar, Vocal (1)
1. Heart Over Mind [Renbourn]
2. Don't Cry For Me [Henderson, McGann]
1999年に「There You Go」1965 R2が復刻され、彼女に対する再評価の気運が高まったことをうけて、本当に久しぶりに制作されたソロアルバム。レンボーンをバックに、第2作目
「Watch The Stars」1967 Q6を発表した後もソロおよびバンド活動を続けたが不遇で、レコードの発売も僅かであったが、地道な音楽活動を続けてきたようだ。今回は夫君のMac
McGannや昔のバンド仲間のサポートを得て、長年のレパートリーを録音している。なかには「The Water Is Wide」や「God Bless
The Child」のようにR2, Q6に収録されていた曲の再演もある。
ドリス本人によるライナーノーツにあるとおり、ジョンは今回の録音のためにスコットランドの自宅から駆けつけてくれたそうで、なかなか義理固い人のようだ。1.「Heart
Over Mind」は R1の「Mist On The Mountain」を彷彿されるデュエットで、ジョンはハーモニーを担当。2.「Don’t
Cry For Me」では12弦ギターを弾いているのが珍しく、恐らく公式録音としては初めてと思われる。レンボーンのギター演奏もずいぶん円くなったもんだなあと、感慨無量。
1. A Pastoral Prayer
2. Traveller's Rest
3. Lullaby Of Hope
4. Joyful Morning
5. Summer Country
6. Thoughts In The Wind
7. The Minstrel's Tale
8. A Classic Period
9. In A Summer Garden
10. Tinker's Prayer
11. The Wind From The South
12. O'Farrell's Jig
13. Echoes Of The Dance
映像などのバックグラウンド・ミュージックとしてのライブラリーを販売する会社KPMは、1977年に「The Guitar Of John Renburn」Q15のレコードを製作したが、それが一般向けに発売されたのは2005年だった。KPMは、ジョンのライブラリー音源をもうひとつ製作したようで、それはインターネットの配信で2006年に公開された(CDで発売されたという資料もあるが、実際に出回ったものを見た事がない。また、記憶が定かでないが、実際に配信が始まったのは2006年ではなく、もっと後だったような気がする)。
1. A Pastoral Prayer → 1. Bunyan’s Hymn (Monks Gate)
2.Traveller's Rest → 2. When The Wind Begins To Sing
3. Lullaby Of Hope → 3. Wexford Lullaby
4. Joyful Morning → 4. I Saw The Three Ships/Newgate Hornpipe の前半
5. Summer Country → 4. I Saw The Three Ships/Newgate Hornpipe の後半
6. Thoughts In The Wind→ 5. Planxty Llanthony/Loftus Jones の前半
7. The Minstrel's Tale → 5. Planxty Llanthony/Loftus Jones の後半
8. A Classic Period → 6. Fagottanz
9. In A Summer Garden → 7. At The Break Of Day
10. Tinker's Prayer → 8. Traveller's Prayer
11. The Wind From The South → 9. South Wind/Feathered Nest の前半
12. O'Farrell's Jig → 9. South Wind/Feathered Nest の後半
13. Echoes Of The Dance → 10.Estampie