G1 Guitar Pieces  (1972) Oak Publications
G2 Guitar Pieces   (1979) Music Sales Corp.



G3 Guitar Pieces

   曲名と収録作品
1. Judy  R1 R3 R20 V2 K1 K2
2. A Day At The Seaside   R4
3. Debbie Anne R4
4. Another Monday   R4
5. My Dear Boy   R5 K1 K4
6. Ladye Nothynges Toye Puffe  R4 R21 Q13 K1
7. The Princess And Puddings  R9 R21
8. The Lady And The Unicorn  R6
9. Lady Goes To Church  R5
10. Trotto  R6 V2 V7 K5
11. Saltarello  R6 K5
12. La Rotta  R6 T3 T10
13. Bransle Gay  R6 T3 T10 K1
14. Bransle De Bourgogne R6
15. The Irish Ho-Hoane
16. The Earle Of Solisbury R5 R5 R13 T3 T10 K5
17. Alman R6
18. Westron Wynde: Part 1 R6
19. Westron Wynde: Part 2 R6



ジョン最初のインストメンタル曲の楽譜集。最初のソロアルバム「John Renbourn」 1966 R3 から「The Lady And The Unicorn」 1970 R6 までの作品を収めたもの。本作では1曲15.「The Irish Ho-Hoane」のみ未発表で、7.「The Princess And Puddings」は後に「Thr Hermit」 1976 R9 で発表された。リュートを持つ若者を描いた中世風の版画の表紙が素晴らしく、裏表紙は煙草をくわえながらギブソンES-335を持つジョンのステージ写真とロビン・デンスロウの解説が掲載されている。彼の初期の名曲が惜しげもなく収められており、ファンにとって夢の楽譜集だ。オーク出版はステファン・グロスマンの初期の教則本の制作等により、当時のギターファン馴染みの出版社で、その良心的な制作姿勢と挿入写真やイラスト、および表紙や構成の素晴らしさは特筆ものであった。G1は運指や使用弦等の指図が付いたクラシック・ギター用の普通の楽譜のみで、残念ながらタブ譜は掲載されなかった。

後にミュージック・セールス社(当時のオーク出版の日本代理店)が本書の日本版を制作するにあたり、中川イサト氏が本人の来日時に確認して監修したタブ譜が追加されたのは大変有り難いことであった。表紙デザインや挿入写真の出来はG1のほうがはるかに勝っていたが、何といってもタブ譜の魅力は決定的であった。といってもG2のデザインもそれなりに趣味の良い出来で、KMP 出版から発売された中川イサト氏の楽譜集の名作「ミスター・ギター・マン」 1975 の編集を担当した田中汪臣氏が担当している。ただしG1の挿入写真が家族と一緒のジョンのスナップショットや、ギター(リュート) を抱えた中世の版画等の非常に面白いものであったのに対し、G2の挿入写真はジョンがステファン・グロスマンと一緒に来日した1978年の演奏写真が中心で、掲載曲の内容と合わないもの。(写真自体はグロスマンのソロアルバム「Acoustic Guitar」 1978 Q16 のレコーディング風景なので、それなりに興味深いものではあったのだが....)

本書に収められた曲のうち、4分の3が他の楽譜集や教則ビデオで入手可能であるが、ブルース色の濃い初期の作品2.3.4.や、クラシックの現代風オリジナルというべき諸作品群7.8.9.の楽譜は、何故か再発売されていない。特に8.は彼の作品中でも傑作といえるものであり、もっと多くの人に知って欲しいもので残念。かなり難しい曲もあるけど、挑戦しがいのある楽譜集だぞ。

[2023年1月追記]
ジョンのホームページの年表より発売年が特定できましたので、修正しました。


 
G3 Songs For The Guitar  (1974) OAK PUBLICATIONS 
 
G1 Songs For The Guitar
 
  曲名と収録作品
1. White House Blues R7 V2 V7 K2
2. If You Can't [E.E.Cummings, Renbourn] 
3. Candyman R1 R3 R13 R20 V2
4. So Clear T6 T12 T13 T13
5. Rainy Day  R2 Q1
6. Sleepy John R8
7. Riverboat Song  R8
8. Green Willow R8
9. Just Like Me  R8
10. Lord Franklin R24 T5 T10 V5 V7 K2
11. Willy O'Winsbury R7 R12 T7 T11 T12 T16
12. Joseph And Mary  T7 T9
13. Reynardine R10 T10
14. Scarborough Fair R6
15. Song  R2 R3 T3
16. To Glastonbury R8 R12 R17 Q15
17. Floating Stone R8
18. O Death R8
19. The Young Man's Song  R8


副題は「John Renbourn Book Two」。1970年代前半までの歌物のレパートリーを集めたもので、インスト曲はない。発売当時に本書を渋谷のヤマハで買った記憶がある。当時のヤマハはフィンガースタイル・ギターのレコードや楽譜の輸入・販売を盛んに行っており、ステファン・グロスマンのキッキング・ミュール・レコードを最初に買ったのも同店であった。本書は1996年に「Lost Sessions」R8 が発売されるまで、掲載曲のほとんどが未発表という、とても不思議な楽譜集だった。この楽譜を読みながら、いったい彼の演奏はどんな感じなのだろう、どうしてレコードにしないのだろうとあれこれ20年以上も想像していたのだ。それだけに1996年になって、この作品群のオリジナル録音を聴いた時は何とも言えない感慨があった。

まず前半は通常の楽譜で曲と歌詞が、後半で各曲のタブ譜が掲載されている。冒頭にはジョン自身による各曲の簡単な説明がある。曲は4つのグループに分類され、最初の1.〜5.はアメリカのトラディショナルをベースとした曲。1.「White House Blues」は第25代米国大統領マッキンリーが1901年9月6日に暗殺された事件を取り扱ったバラッドで、レンボーンの演奏は悲しみに満ちているが、当時南部で彼が忌み嫌われていたため、彼の死を喜ぶバージョンもあるそうだ。2.「If You Can't」はE.E.カミングスの詩に曲を付けたもので、12弦ギターでプレイするとよいという。5.「Rainy Day」は R1収録の「Winter Is Gone」、そして後にバート・ヤンシュとのデュエットである「Lucky Thirteen」(Q1)に発展した曲。グループ 2(6.〜9.)はコンテンポラリーなオリジナル。ジョンお好みのモダンなフォーク・ソングがならんでいる。ちなみに本書に挿入されている白黒の挿絵や挿入写真が素晴らしく、その一部が「Lost Sessions」R8の解説書に使用されている。

グループ 3(10.〜14.)はイギリスのトラッドを題材とした曲で、お馴染みの曲が並んでいる。12.「Joseph And Mary」は別名「Cherry Tree Carol」といい、この名前で「Solomon's Seal」1972 T7 にアンサンブル・バージョンが収録された。13.「Reynardine」は「A Maid In Bedlam」1979 T8 にグループ演奏のバージョンが収録されただけで、ジョンのソロ・バージョンの録音はない。お馴染みの14.「Scarborough Fair」は歌詞付きで、サイモン・アンド・ガーファンクルの有名なバージョンとは異なり、歌詞が延々と続く。ジョンのギターアレンジは、ポール・サイモンよりオーソドックスなもの。最後のグループ4 (15.〜19.)は古風な感じの歌で、宗教的な意味合いを持つものもある。しかしギターアレンジは素晴らしくモダンで、特に16.「To Glastonbury」ははっとするようなひきらめきに溢れている。

インストルメンタルが無い分、彼の楽譜の中では地味な存在だが、若々しさにあふれた内容で、オーク出版のデザインも丁寧な出来。裏表紙にロビン・デンスロウ氏による解説が掲載されており、ペンタングルの契約問題に悩み、思うように作品を発表できなかったこと、トニー・ロバーツ、スー・ドレハイムとバンドを組もうとしていること等、1975年当時のジョンの状況が述べられており、興味深い。

[2023年1月追記]
ジョンのホームページの年表より発売年が特定できましたので、修正しました。


G4 Solo Guitar Pieces (1979) CHAPPELL MUSIC LTD.


G4 Solo Guitar Pieces

  曲名と収録作品
1. The Lamentation Of Owen Roe O'Neill   R9 R13 R20 R24 R27 V5 V7 K3
2. Lord Inchiquin  R9
3. Mrs.Power (Carolan's Concerto)    R9
4. Bouree I And II  R14
5. The Moon Shines Bright  R14
6. The English Dance    R13 R14 R17 R19 R20 R25 V1 V2 V5 V7 V8 V9 K1 K3 K5
7. The Hermit    R9
8. Luke's Little Summner    R11
9. Goat Island  R9
10. Faro's Rag  R9
11. John 's Tune  R9
12. Old Mac Bladgitt  R9
13. Luckett Sunday   R11
14. Bicycle Tune  R9
15. Pavanna (Anna Bannana)  R9


「The Hermit」 1976 R9、「Stefan Grossman & John Renbourn」 1978 R11、「The Black Balloon」 1979 R14の3枚の作品からの楽譜集。未発表曲はない。表紙および挿入写真はお馴染みのギルド D-55を弾く彼の写真の他、1枚だけフェンダー・ストラトキャスターを抱えた写真があり興味深い。今回はデザインよりも楽譜に専念した構成で、彼自身の簡単な解説と各曲の普通の楽譜の後にタブ譜が掲載されている。上述の3枚の作品からデュエットやアンサンブルものを除いたギターソロ作品のほぼ全てが収められており、内容は非常に濃い。

8.12.13.14.等の大好きな曲を弾いて、大変楽しませてもらった個人的に思い入れ深い楽譜集。


G5 Original Guitar Solos (1986) Hal Leonard Publishing Corp.


G5 Original Guitar Solos

   曲名と収録作品     
1. The Hermit   R9
2. Luke's Little Summer  R11
3. Goat Island  R9
4. Faro's Rag  R9
5. John's Tune  R9
6. Old Mac Bladgitt R9
7. Luckett Sunday  R11
8. Bicycle Tune  R9
9. Pavanna (Anna Bannana) R9
10. Pavan d'Aragon  R21
11. Clarsach R21
12. The Nine Maidens R21
13. The Fiddler  R21


「The Hermit」 1976 R9、「Stefan Grossman & John Renbourn」 1978 R11、「The Nine Maidens」 1985 R21 の3枚の作品からの楽譜集。未発表曲はない。R21 と全く同じデザインの表紙が使用されており、本書の目玉は何と言っても10.〜13.の同作の楽譜、タブ譜の掲載であった。挿入写真はなくジョン自身の解説と楽譜、タブ譜だけの飾り気のない楽譜集。

[2022年4月追記]
曲目に大きな間違いがありましたので、修正しました。


G6 The Black Balloon (1992)  Mel Bay Publications


G6 The Black Balloon

  曲名と収録作品
1. The Mist Covered Mountains Of Home R14 R17 R20 R24 V5 V7 K1 K2 K3
2. Bourree I And II  R14
3. The Tarbolton R14
4. The Orphan  R13 R14 R17 R24 V5 V7 K1 K2 K3
5. The Pelican  R12
6. The English Danse R13 R14 R17 R19 R20 R25 V1 V2 V5 V7 V8 V9 K1 K3 K5
7. The Moon Shines Bright R14



1979年にトランスアトランティックから発表された「Black Balloon」R14は、後にアメリカのシャナーキーよりステファン・グロスマンのギター・アーティストリー・シリーズの1枚として、新装ジャケットにてCD化された。その際CDにタブ譜が無料添付されたが、それとは別にメル・ベイ出版より発売された楽譜+タブ譜が本書。シャナーキーの再発盤のジャケット写真をそのまま表紙とした、解説や挿入写真のない全19ページの小冊子であるが、従来の楽譜集に未掲載の曲が収められており、そういう意味で貴重。

すなわち3. 5.のタブ譜は本書が初掲載(同時期にシャナーキーから再発されたCD盤に添付されたタブ譜にも掲載)で、特に5.は彼の作品中でも屈指の名曲でありながら、上記 G4,G5にも収められていなかったもの。そういう意味で本書を買う価値は十分にあった。


G7 Guitar Duets Of S. Grossman & John Renbourn (1992) Mel Bay Publications


G7 Guitar Duets Of S. G.  & J. R.

  曲名と収録作品  
1. Looper's Corner  R11 R20 V2 V4
2. Why A Duck  R11
3. Snap A Little Owl  R11
4. The Drifter  R11 Q15
5. Woman From Donori  R11
6. Idaho Potato R15
7. Swedish Jig  R15
8. The Blarney Pilgrim  R15 R24 R25 R27 V5 V8 K3
9. Midnight On The Water R20
10. Mississippi Blues No.2 R15 R20 V3
11. The Resurrection Of Blind Joe Death  R15
12. Four For The Roses R15
13. Montagu's Pact R15
14. The Rights Of Man  R15
15. All Things Parallel Must Converge R15 R18


ステファン・グロスマン・ギター・ワークショップによる、ステファンとジョンのデュエット楽譜集。メル・ベイ出版によるこのシリーズの特徴は掲載曲を収録した専用カセットやCDの入手が可能(ただしすべて既発表の録音のみで未発表のものはない)なことで本書ではカセットの入手が可能だった。なお1997年1月現在の価格は本が US$9.95、カセットがUS$10.98。本書の掲載曲の大部分につき、R11 はレコードに添付されたタブ譜、R15 ではレコード会社への別途注文によるタブ譜の入手が可能だったもので、本書初掲載のものは9. のみ。しかし以前の楽譜ではデュエットのうち伴奏部分のみの掲載だったのに対し、本書はリード・ギターのパートもしっかり収められているため、価値のあるものだ。

ステファンによる、いつもの丁寧で良心的な仕事ぶりが感じられる出来で、まず冒頭にステファンとジョンによる対談が掲載、デュエットに対する取り組み姿勢や考えについての議論をたっぷり読むことができ、資料としても大変興味深い。次にステファンによるギターの選びかたや、弦、カポその他のアクセサリーについてのお勧め品コーナー。マーチンのOMモデルや、本人愛用のラーソン・ブラザース製作のユーノフォン、プレイリー・ステートについての言及があり、とても面白い内容。

楽譜はスタンダード・ノーテイションの下にステファン方式のタブ譜を掲載する方法で、採譜は女性ギタリストとしても有名なジャネット・スミス(キッキング・ミュールから発売されていた「Woman's Guitar Workshop」というオムニバス・レコードに参加。ソロアルバムやカセット付ギター教則本も出している) 。


G8 Complete Anthology Of Medieval & Renaissance For The Guitar  (1995)
   Mel Bay Publications



G8 Complete Anthology Of ....

  曲名と収録作品
1. a Lamento Di Tristan #   R6
  b Rotta #   R6 T3 T10
2. Saltarello #   R6 K5
3. Trotto #   R6 V2 V7 K5
4. Stantipes
5. The English Dance #  R13 R14 R17 R19 R20 R25 V1 V2 V5 V7 V8 V9 K1 K3 K5
6. Saltarello #   R6 K5
7. Gittern Pavan
8. a Gittern Dance [Hans Neusiedler] #  R10 R12 R13
  b Jews Dance #   R10 R12 R13
9. Fantasia [Alonso Mudarra]
10. Se Lo M'Accorgo
11. Bransle Gay # [Claude Gervaise]   R6 T3 T10 K1
12. Bransle De Bourgogne # [Claude Gervaise]  R6
13. The Irish Ho-Hoane
14. Bandola Lullaby [Anthony Holborne]
15. Pavanne D'Espagne [Nicolas Vallet]
16. Bouree I - Bouree II #  R14
17. Mal Sims
18. The Earle Of Solisbury # [William Byrd] R5 R5 R13 T3 T10 K5
19. Courante [Robert Ballard]
20. The Moon Shines Bright #  R14
21. Toy For Two Lutes #  R9
22. Westron Wynde #  R6
23. Alman #  R6
24. My Lord Willobie's Welcome Home #   R9
25. Veri Floris #  R6
26. Triple Ballarde # [Guillaume De Machaut]  R6
27. Redford's Meane [John Redford]
28. Lachrimae Antiquae [John Dowland]


メル・ベイ出版から発売された、ジョンの古典音楽のアレンジの総決算。15ドルという定価の割りに176 ページ、28曲とたっぷり収められ、普通の楽譜とタブ譜の2通りちゃんと掲載されている実用盤。楽譜やタブもゆったりした構成で読みやすい。本人による序文や巻末の詳細な曲解説および、自己または他のアーティストによる当該曲の録音のリスト等、盛り沢山の内容で良心的。ただし挿入写真等のサービスはなく、ひとえに実用に徹した感じ。また上記「#」印の曲については、別売のCDが入手可能。CDの表紙は楽譜のものと同じデザイン。またこのCDの収録曲はすて既存の作品で発表されたものと同一バージョンで、別録音や未発表曲は含まれていない。
8.の「Gittern」はフランス語でジプシーの意味。

彼のソロアルバム、「Sir John Alot...」 1968 R5 から1曲、「The Lady And The Unicorn」1970 R6 より10曲、「The Hermit」 1976 R9 から2曲、「A Maid In Bedlam」 1977 R10 より2曲、「The Black Balloon」 1979 R14 から2曲、何故か「Nine Maidens」 1985 R21 からの曲は1曲のみ。特筆すべき点は、未発表曲が11曲も掲載されていることで、いつかこれらの曲の録音が発表されるといいなあと思ってしまうが、楽譜を見る限りでは小品が多いようだ。また28. 27.はギターの4重奏、25. 26. は3重奏、21. 22. 23. 24. は2重奏となっており、ジョンによるオリジナル録音では、バイオリンやチェロ、コンサーティナ等の他の楽器とのアンサンンブル演奏であるのに対し、本書の楽譜では全てギターの多重奏によるアレンジに改変されている。

ジョン自身による解説は、ダーリントン大学を卒業した後講師をしているという彼らしく、他のアーティストによる掲載曲カバーの一覧つきの、極めてアカデミックな内容。


G9 Guitar Styles ! Folk (1994) Oxford University Press


G9 Guitar Styles ! Folk

[Solo]
1. Parlour Tunrs
2. Chapel Hill
3. Sandy Bells
4. Smokestown Chimes
5. Mister Adams
6. The South Wind  R23 R24 R25 R26 R27 V5 V8 V9 K3
7. Norse Hymn
8. Blarney Pilgrim  R15 R24 R25 R27 V5 V8 K3
9. Arc Et Senas

[Duo]
10. Sheebeg And Sheemore [O'Carolan]

[Trio]
11. Through The Watches Of The Night

[Quartet]
12. Schafertanz And Nachtanz [Susato]  R10


 オックスフォード大学出版による「ギター・スタイルズ!」シリーズの1冊。他にベース、クラシック、フラメンコ、ジャズ、ロックの巻があるらしい。ジョン・レンボーンはフォークの部を担当し、6. 8. を除き未録音の曲からなる。本書ではフォークの様々なスタイルが取り上げられ、その歴史を広くカバーする意図で選曲されている。

1.は昔流行したパーラー・ギターのスタイルの曲。とても易しい曲でタブ譜を見ながらすぐに弾けるものだ。2.は左利きなので右利き用のギターを弾くエリザベス・コットンのスタイルで、曲名は彼女の出身地からとったもの。3.は現代的なブルース調の曲で、エジンバラにある古いパブにちなんで命名されたという。4.はフィンガースタイル奏法のルーツであるケンタッキー州出身のシルベスター・ウィーバーが住んでいた地名から。5.はバンジョー奏者で欧州のフォーク界に大きな影響を与えたデロール・アダムスの事(T16参照)。6.はアイルランド西部のクレア州に伝わるスローエアー(パイプとフルートによる演奏)をアレンジしたもの。いつもコンサートで演奏される彼のフェイバレット曲で、スタジオ録音では1998年の「Traveller's Prayer」R26 に収録された。7.はケルト音楽のハープ曲をイメージしたもので、「ラメント」と呼ばれるメランコリックな曲だ。8.はアイリッシュ・ダンス・チューンで、普段はホウィッスルまたはフィドルで演奏される。9.はニューエイジ派のギタリストのイメージで作曲したもの。

10.はギター2台による演奏で、アイルランドの盲目のハープ奏者オカロランの代表曲。多くのギタリストがアレンジ・録音しているが、レンボーンによる録音はない。11.はギター3台のアレンジで賛美歌風の曲。12.はジョン・レンボーン・グループの「A Maid In Bedlam」 1977 R10 でアンサンブルで演奏されていたダンスチューンを4台のギターの演奏に改変したもの。

いつかレンボーン本人による演奏を聴いてみたいが、入門者用のシンプルな曲が多いので、難しいかな?


G11 Bert Jansh & John Renbourn 20 Tablatures Transcrites Par Remy Froissart (1979) Chappell S.A. 
 

[Tablatures de Bert Jansch]
1. I Have No Time  
2. The Bright New Year
4. Veronica  
5. Oh! How Your Love Is Strong  
6. Blues  
7. Wayward Child  
8. Alice's Wonderland 
9. Courting Blues  
10. Harvest Your Thoughts Of Love  

[Tablatures de John Renbourn]
11. Sweet Potato  R5 r12 R20 R24 V3 V5 V7 K1 K2
12. Buffalo  R1 R4 K1 K4
13. White Fishes  R5
14. I Know My Babe  R4 R13 V7
15. Lord Franklin  R24 T5 T10 V5 V7 K2
16. Willy O'Winsbury  R7 R12 T7 T11 T12 T16
17. Scarborough Fair  R6
18. Morgana  R5
19. One For William  R4
20. The Trees They Do Grow High R5 R18 R19 R27 T3 T3 T10 T16

Transcribed by: Remy Froissart

 

フランス人のレミー・フロアサールは、1967年にバートとジョンの音楽に出会い、その後彼らと知り合って、1970年代彼らのパリ滞在時に交流を深めたという。特にジョン・レンボーンと親しかったようで、彼の1979年のアルバム「Black Balloon」R13に収録された「The Pelican」は、当時レミーが住んでいたペリカン通り(Rue Pelican、パレ・ロワイヤル、ルーブル博物館の近くにある小さな通りで、長期滞在者用のアパートがたくさんある)にちなんだものという。現在彼は南フランスに住んでいるとのことで、ジョンがペンタングル時代に使用していたギブソンJ-50 (「Another Monday」R4 のジャケット写真のギター)を所有しているという。彼は自己名義でレコードやCDを発表した記録はなく、ギターの先生としてキャリアを積んだ人であるが、残された音源としては、「The Nine Maidens」1985 R21の「The Fish In The Well 」(ハイ・ストリング・ギターで参加)がある。ジョンのホームページのコラボレイターの欄で、優秀なギター教師として彼が紹介されており、2010年代にフランス、イタリア、スペイン、イギリスなど欧州各地で毎夏開催している1週間泊まりがけのジョン・レンボーン・ギター・ワークショップでは、彼が共同主催者として名を連ねている。

本書は、レミーが1979年に出版したタブ譜集で、出版社「Chappell S.A.」は、イギリスに本社があったチャペル社(ジョンの楽譜を出版している)のフランス現地法人。全54ページのうち、最初の11ページは序文と奏法解説に当てられており、ギターの構え方の見本として若きレミーの写真もある。全編フランス語なので、何が書いてあるかよくわからないけどね!残りのページで、バートとジョンの作品が10曲づつ掲載しているわけで、当然1曲あたりの紙面数が少なくなり、主にテーマ部分を中心とした内容で、リフの部分やその微妙なバリエイションは省略されている。バートの「Blackwaterside」、「Reynardine」やジョンの「My Dear Boy」、「Ladye Nothinge's Toye Puffe」など、ファン好みの有名曲が含まれていない代わりに、フルートやオーボエ、リコーダー、バイオリン等とのアンサンブル曲が多く取り上げられ、それらの伴奏部分についても採譜されている点が特徴的で、著者の個人的な趣味が反映されたものと思われる。

以下ジョン・レンボーンの作品について述べます。バート・ヤンシュの作品の記述は、バートのコーナーを参照ください。

ジョンの曲はバートより複雑なので、曲あたりのページ数も多めとなっている。11.「Sweet Potato」は、テーマとバリエイションの最初の2コーラスが1 3/4ページにわたり採譜されている。ただし、テーマの繰り返しの微妙な違いはカット。12.「Buffalo」は、テーマとバリエイションの最初の2コーラス分で 1 1/2ページ。テーマに戻った後に展開されるバリエイションの採譜はない。もともとはフルートとのデュオなんだけど、ソロで演奏しても十分魅力的な曲 13.「White Fishes」は、イントロのハーモニクス部分はカットされ、テーマから始まって、間奏部分のギター独奏とフルート・ソロの伴奏部分が、2ページにわたってしっかり採譜されている。14.「I Know My Babe」のギターは歌伴なので、テーマのリフ部分と最初の間奏のコーラスを採譜し、リフにおかる細かな違いや、エンディングのバリエイションは省略して、1 1/2ページにまとめている。15.「Lord Franklin」 (ペンタングルのアルバム「Cruel Sister」1970 T5より)、16.「Willy O'Winsbury」(ペンタングルのバージョンではなく、ジョンのアルバム「Farro Annie」1971 R7のアレンジ) は歌入りで、伴奏ギターはよりシンプルなので、ここでは各1ページ、3/4ページの短い採譜となっている。 

17.「Scarborough Fair」は、フルートとバイオリンのアンサンブルで、間奏部分でギター伴奏が様々な変奏を展開するが、採譜はテーマとエンディングのみで、1ページ弱。レコーダー、パーカッションとのアンサンブル曲 18.「Morgana」は、テーマ部分のみ1ページちょっとの採譜。19. 「One For William」はオーボエとのデュエットで、最初のギター独奏とオーボエによるテーマと、オーボエソロの伴奏部分が、2ページ弱で比較的きっちり採譜されている。 20.「The Trees They Do Grow High」は、フルートとの合奏曲であるが、ギター伴奏が大変精緻かつ複雑なので、2 1/2ページにわたる長い譜面となっている。  

ということで、アンサンブル曲など珍しい曲が多く採譜されているのが興味深い。

1970年代末・1980年代前半、フランスのみで発売された楽譜集なので、流通が少なく入手が大変難しいが、フランスの中古書籍のインターネット市場などを根気強く探せば、見つかるだろう。