Q12 The Guitar Of John Renbourn (1977) KPM 1203


Q11 The Guitar Of John Renbourn

Q11 The Guitar Of John Renbourn (Back)




John Renbourn: Guitar
Jacqui McShee: Vocal (8,9)
Tony Roberts: Flute, Recorder
Keshav Sathe:Percussion (9,10,11) 
Unkown: Clarinet 
              
[Side A]               
1. Swallow Flight
2. Light Traveller           
3. Reflections (1)                
4. Reflections (2)             
5. Freedom Road                
6. Introspection               
7. Passing Time   R10

[Side B]
8. Portrait Of A Village   R13 V1
9. Glastonbury   R7 R14
10. Summer Song
11. Little Hands
12. Deserted Streets   R10

注)Jacqui McShee、Tony Roberts、Keshav Satheの参加については、クレジットの表示がないので、聴こえる楽器・声のサウンドからの推定です。

すべてインストルメンタル(ボーカルもハミングのみ)

注 写真上: オリジナル・レコード盤のジャケット表紙
      中: オリジナル・レコード盤のジャケット裏面
      下: Castleから発売されたCD盤のジャケット表紙  

このLPは、ジョン・レンボーンが出版社の音楽ライブラリーのために制作したギター曲集で、業界関係者のみに販売されたもの。KPMはロンドンを本拠地とする音楽出版社で、ドキュメンタリー、教育関係、コマーシャルやテレビ番組などの映像作品や、ホテルや病院などに流すバック音楽を制作する業者のために、あらかじめ録音された音源からなるライブラリーによって廉価な音楽を提供するビジネスを行っていた。様々な種類の音楽があり、そのなかのひとつとしてジョン・レンボーン制作のギター音楽集があった(ステファン・グロスマンのものもあるらしい)。このLPは一般のファンにはその存在さえほとんど知られていなかったもの。かく言う私も40年来の大ファンでありながら、本作の存在をインターネットを通じて知ったのは十数年前のことだった。

ジャケット表面はKPM Music Recorded Library のロゴ、ロンドンオフィスの住所と電話番号が表示されただけで、ジョンの名前はどこにもない。裏面に、標記タイトルと曲名・演奏時間、および利用者向けの参考として曲毎のイメージが一言Remarksとして記載されている。もともと一般向けに製作されたものではないので、他のソロアルバムと同じ次元で評価するのはアンフェアと思われるため、本書では「その他」のQジャンルで掲載した。ペンタングルやジョン・レンボーン・グループ、およびソロアルバムなどで普段彼が見せる音楽に対する厳しい姿勢、ギター演奏の完璧主義はここにはなく、多少のピッキングやリズムの乱れを許容し、リラックスした穏やかなムードに満ちている。通常の作品のように、制作の際に入念なリハーサルや多くのテイク録りを重ねた感じはなく、ギターのオーバーダビングやフルートの演奏なども、ラフで自然な仕上がりとなっている。そういう意味で、低予算で気楽に作られた作品とはいえ、彼の別の一面が出ていて、聞いていて大変楽しい作品となった。

1.「Swallow Flight」はバート・ヤンシュのソロアルバム「Rosemary Lane」1971冒頭の曲「Tell Me What Is True Love」のギター伴奏に似た感じの、ゆったりしたアルペジオで始まる。多重録音による2〜3台のフルートが清々しい雰囲気でメロディーを奏でる。クラシカルなベースのなかにジャズの自由さが見え隠れするスタイルは、トニー・ロバーツの独壇場だ(彼の名前のクレジットはないが、ほぼ間違いないものと推定される)。Remarksで「優しい、田園的」とコメントされた(以下2.以降の曲のコメントについては番号のあとに括弧書きした)。2.「Light Traveller」(素早く、流動的)はレンボーンお得意のバンジョー風ピッキングにフルートが絡むもの。3.「Reflections (1)」(考え深い)はR1の「Something Lonesome」または Q1の「Lucky Thirteen」で演奏される、ジョンお好みのリフパターンに乗せて、多重録音によるエレキギターがゆったりと演奏される。4.「Reflections (2)」は3.のリード・ギター抜きのバージョンで、伴奏ギターのテイクは同じ。

5.「Freedom Road」(リラックスした、気軽な)は本作のなかではR&B色が強い内容。エレキギターのダビングとフルートが活躍する。6.「Introspection」(思いに沈んだ、もの思いを喚起させる)は、クリエイティヴな雰囲気がするギター演奏で、リードギターの絡みは「Reflection」1971 T6 の「So Clear」と「Black Balloon」1979 R11の中間をゆくサウンドだ。7. 「Passing Time」(やさしく、急がない)のギター伴奏パートは、1978年発表の R10に収録されたステファン・グロスマンとのデュエット「The Drifter」の原曲。伴奏ギターのアルペジオはほぼ同じで、オーバーダビングによるジョンのエレキギターの旋律が、後者のグロスマンのものとは一部異なる。

B面最初の曲8.「Portrait Of A Village」(リリカルな、伝統的な)はトラッドのメロディーで、ジャッキー・マクシーのハミング・ヴォイスが入っている(彼女の名前のクレジットはないが、あの声は間違いようがない)。この曲は後にジョン・レンボーングループのR13(1980)で歌付きのバージョン「A Maid On The Shore」が録音される。9.「Glastonbury」はレコード裏表紙およびラベルには「Summer Song」とあるが、次の曲「Glastonbury」との明らかな入り繰りミスなので、ここでは正しい曲順に訂正した。ということで、9.(快活な、おだやかな)は、当時未発表だった「To Glastonbury」という曲のインスト版(ジャッキーのハミング入りではあるが)で、後の80年に R14で再録音、96年にはオリジナル録音が R7で発掘された。独特の変拍子風のギターのリフと中盤のブルース風の展開が面白い雰囲気を作っていて、ジョン・レンボーン・グループのケジャブ・サテと思われるタブラの音が聞こえる。10.「Summer Song」(ある時代の田舎のダンス)は、リラックスした感じのミディアム・テンポのダンス曲で、レコーダーとパーカッションがフィーチャーされる。このメロディーは他の録音では聞かれなないものだ。ジョンのギターもリラックスしている、

11.「Little Hands」(シンプル、子供のような)は本作のなかで最も優しい感じの曲で、ギター伴奏もゆっくり、シンプルで音数も少な目。こんなにレイドバックした曲は他にはないぞ。これもレコーダーとパーカッションとの演奏。最後の12.「Deserted Streets」(孤独な雰囲気)は、7.と同様R10に収録された「Spirit Levels」の原曲だ。ここでは氏名不明のクラリネット奏者がテーマ部分の即興演奏を演奏し、R10で展開されるグロスマン伴奏・レンボーンのソロによる中盤のインプロヴィゼイションのパートはない。テーマのジャズっぽいコード進行をバックに演奏されるクラリネットがアヴァンギャルドな良い出来で、先入観なしに聞くと、オレゴンのギタリスト、ラルフ・タウナーと、たまにクラリネットも演奏するリード奏者ポール・マッキャンドレスによる未発表録音であるかのように聞こえる。

本作品は長い間一部のマニアのみが存在を知るコレクターズアイテムとして入手困難な一枚だったが、2004年にキャッスルから発売されたR8 R9の再発盤のボーナストラックに、本作から数曲が収録されるとの予告が同社のホームページで発表された。しかし届いたCDには入っておらず、その代わりに他の既発表曲に差替えられていた。その後2005年4月、同じキャッスルから本作全体がCDとして復刻された。CD盤でも9.10.の入り繰りは解消されていないようだ。ともあれ、めでたし、めでたし。なおキャッスルから再発売されたCDのジャケットデザインはオリジナルと異なるものであったが、2005年にストレンジデイズ・レコードから日本発売された紙ジャケットものでは、オリジナルのデザインが復刻された。業界関係者向けのレコードということもあり、ふくよかで艶のある音質が素晴らしかったが、再発されたCDではその良さは完全に生かされなかったようだ。


Q13 Acoustic Guitar (1978) [Stefan Grossman] 東芝 East Wind EWLF98001

Q12 Acoustic Guitar

John Renbourn: Guitar
Stefan Grossman: Guitar

1. a Bonaparte's Retreat [Trad.] *   R12 R17
  b Billy In the Lowgrouds [Trad.] *   R12 R17
2. Sprit Levels * [Renbourn, Grossman]   R10 R17 Q12 V2 V3 V4


   

ステファン・グロスマンとジョン・レンボーンの来日の際に、当時のトランスアトランティック・レーベルの発売元であった東芝で制作したグロスマンのソロアルバムにゲスト参加。このレコードはダイレクト・カッティングという通常と異なる方式で録音されたもの。通常のレコードはいったんテープに録音した後にレコードにカッティングするのだが、この場合はテープを使わずに生の演奏を直接カッティングしたもの。テープノイズのない究極のアナログ録音とされるが、演奏はレコード片面分本番一発録りとなるため、エンジニア、演奏者ともにミスが許されない。最近のデジタル録音の時代からみると前近代的にみえるが、ダイレクト・カッティング・レコードの再生音の生々しさはデジタル録音にない独特のもの。

1.「a Bonaparte's Retreat b Billy In the Lowgrouds」はグロスマンがフラットピックでソロをとるフィドル・テューン。2.「Sprit Levels」は二人のオリジナルで、本番一発録音のためかレンボーンのソロに凄まじい緊張感と気迫が感じられ、出色の出来となっている。使用ギターはグロスマンが1.がマーチンD28 、2.はプレイリー・ステート(シカゴのラーソン兄弟が制作したアーチドトップをカリフォルニア州バークレーのジョン・ランドバークがフラットトップに改造したもの)。レンボーンはお馴染みのギルド D55。本作の解説によると彼のギルドはネック、トップともに大幅な改造をされているとのこと。実際にギルド D55を弾いてみたことがあるが、とてもあの様な音が出るとは思えない。やはり改造がなせるわざであると思う。また解説書には1.2.のタブ譜が掲載されていたが、本当に簡単なもので楽譜といえる代物ではない。ちなみに本作は日本から欧米へ輸出され、グロスマンのキッキング・ミュールからも販売されたようで、そのためか欧米の中古市場でもけっこう出回っている。


 
Q14 The Journey (2006) [Ralph McTell] Leola OLABOX60 
 

Ralph McTell : Vocal, Guitar
John Renbourn : Guitar

1. A Leaf Must Fall [Clive Palmer]
2. Blues Run The Game [Jackson C. Frank] R2 R14 Q7

Recorded at Morgan Studios, London, June 1990

ラルフ・マクテル(1944〜 )は、ブリティッシュ・フォークの重鎮として説明不要。彼とバート・ヤンシュとの共演の音源・映像は、けっこうある。一方ジョンについては、過去にフォーククラブ等で一緒に演奏する機会はあったはずであるが、後に残った音源・映像はこれが初めてだろう。本作は、彼のキャリア40周年を記念して製作されたCD4枚組のボックスセットで、1966年のデモ録音から 2006年に本作のために録音された新曲まで計66曲が収められ、内3分の1が未発表録音という構成になっている。その中にラルフとジョンの共演が2曲含まれており、1990年6月という録音時期および場所により、1982年に発表されたアルバム「Water Of Dreams」のアウトテイクであると推定される。

クライブ・パルマー(1943〜 )は、1965年にロビン・ウィリアムソンとインクレディブル・ストリング・バンドを結成した人で、ファーストアルバムを製作して脱退、インド・中近東を放浪後、ギタリストのピーター・ベリマン等と一緒にフェイマス・ジャグバンドを結成。その後もソロ、バンドで活動していたが、2000年代以降はロビン・ウィリアムソンとデュオ活動を展開、バート・ヤンシュのドキュメンタリー・テレビ番組「Dreamweaver」2000 (バートの「その他音源・映像」参照)にロビンと一緒に参加している。1.「A Leaf Must Fall」は、フェイマス・ジャグバンドの1枚目のアルバム「Sunshine Possibilities」1969に入っていた曲で、賑やかなジャグバンドのアレンジではなく、クライブ・パルマーとピーター・ベリマンのアコースティック・ギターをバックにジル・ジョンソンが静かに歌っている。彼女は当時、クィーンのドラマーとして有名になる前のロジャー・テイラーのガールフレンドだった人で、バンドの2枚目のアルバムでは彼がパーカッションとバックコーラスでゲスト参加している。ここではオリジナルと比較して、ラルフ、ジョン両者のギターの上手さ・味わいが光っている。2.「Blues Run The Game」はジョンの愛奏曲で、何度も録音され、コンサートでの常連曲でもある。この曲については、Q7またはバート・ヤンシュのディスコグラフィーのS11を参照して欲しい。ちなみに1997年に発表されたサイモン・アンド・ガーファンクルのボックスセット「Old Friends」1997に、彼等のLP「Sound Of Silence」1966のアウトテイクとしてこの曲が初めて公式発表され、後に前述のアルバムにボーナストラックとして収録されている。ラルフのギター、ボーカルもさることながら、この曲でジョンのリードギターが聴けるのはうれしい。

本ボックスはラルフの代表曲が網羅されていると思われるが、丁寧な作りで写真満載のブックレット(ジョンが書いた文章も掲載)は付いているものの、歌詞カードがないのは日本人にとって残念。名曲「Streets of London」は、オリジナルが1968年の「Spiral Staircase」で、1974年シングルカットされて全英2位の大ヒットとなったバージョンは、翌年の「Streets」に収録されているが、本ボックスでは、その中間にあたる1971年のアルバム「You Well-Meaning Brought Me Here」のアメリカ盤のみに収められたバージョンで聴くことができる。ロンドンで暮らす貧しく孤独な高齢者達の姿を暖かい視線で見つめる歌詞・歌声が素晴らしい。他のトラックでは、フェアポート・コンベンションの連中、ペンタングルのダニー・トンプソン、マイク・ピゴー、ロッド・クレメンツ、ゲリー・コンウェイなどがバックを担当しているが、以前あれだけ共演音源・映像を残しているバート・ヤンシュが参加している曲が、本ボックスにひとつも含まれていないのは不思議。

シンプルな歌唱・演奏で、ジョンのリードギターが美しい。2曲だけのためにボックスセットを買うのはしんどいけど、ジョンのファンにとってはその価値はあると思う。私のように、これまでラルフ・マクテルをあまり知らなかった人も、これを機会に本ボックスセットを購入して、インターネットで歌詞を調べて聴いてみるのもいいと思うよ!


Q15 Scream For Help  (1985)  [John Paul Jones]    
 


John Paul Jones : Vocal, Keyboards, Bass
John Renbourn : Acoustic Guitar
Graham Ward : Drums

1. When You Fall In Love [Jacinda Jones, John Paul Jones]

Recorded and Mixed at Sunday School

 

ジョン・ポール・ジョーンズ(1946〜 )は、レッド・ツェッペリンのベーシストであるが、その前の1960年代からスタジオニュージシャンとして、ローリング・ストーンズ、ハーマンズ・ハーミッツ、ドノヴァン、ジェフ・ベック、キャット・スティーブンス、ロッド・スチュアート等、多くのセッションに参加していた。セッションワークを通じてジミー・ペイジと知り合い、1968年レッド・ツェッペリン結成に参加、ベースのみならず、キーボードおよびアレンジ面で多大な貢献をした。1980年にドラムスのジョン・ボーナムの死去によりバンドが解散した後は、他のアーティストとのセッションを行う他、ソロアルバムを発表、近年はフーファイターズのデイブ・クロールとの仕事がある。ツェッペリンとしては1985年のライブ・エイド、および2007年アーメット・アーティガン(アトランティック・レコードの創始者)の追悼チャリティー・コンサートで再結成したことがある。

本作は、彼が音楽を担当した1984年の映画「Scream For Help」(日本未公開)のサウンドトラック盤だ。監督のマイケル・ウィナー(Michael Winner 1935〜 )は、チャールス・ブロンソン(1921〜2003)主演の「The Mechcanic」1972、「Chato's Land」1972、好評のためシリーズ化された「Death Wish 邦題(狼の挽歌)」1974で有名な映画監督。ニューヨーク郊外に住む少女が、義父が母親と自分を殺そうとしていると訴えるが、誰も信じてくれず、最後は自ら対決することになるサスペンス・スリラー。低予算で作られたものらしく、登場人物の描き込みや心理描写が不十分なため、サスペンスのシーンで観客が主人公に感情移入できないという脚本・演出面での問題が大きく、興行的にも失敗した。出演した俳優達は皆知名度が低く、本作以降も有名になることはなかった。そのため、後にビデオ化されたが、いまだにDVDでは発売されていないようだ。

ジョーンズが本作の音楽を依頼されたのは、監督が以前「Death Wish II 邦題(ロスアンゼルス)」1982の音楽をジミー・ペイジに頼んだ実績があること、彼に音楽を担当させることで、話題作りを狙ったのではないかと思われる。インタビューで、彼は「初めてサントラの依頼を受けたから」と答えているそうだ。製作にあたり、インストルメンタルではギターをジミー・ペイジに頼み、歌ものは本人が自ら歌う他に、イエスの歌手であるジョン・アンダーソン、ヨーロッパで活躍するセッション・シンガーのマデリン・ベルにゲスト参加を頼んでいる。ジョーンズとジョン・レンボーンは、当時近所付き合いがあったそうで、本作のしばらく後に制作されたレンボーンとステファン・グロスマンのデュエット・アルバム「The Three Kingdoms」R19では、ジョーンズがプロデューサーを担当している。

本作へのレンボーンの参加は1曲(3曲とする資料もあるが間違い)で、1.「When You Fall In Love」は、ロック調のビートが効いた急速テンポの曲。彼の切れ味鮮やかなアルペジオのおかげで、ぴりっとした感じに仕上がっている。ツェッペリンでは歌うことがなかったジョーンズのボーカルは、あまり上手いとはいえないが、ダークな曲想に合っている。ドラムスのグラハム・ウォードは、本作以降にステファン・グラッペリやポール・ヤングなどのセッションに参加した経歴がある人。映画を観たが、この曲の使われ方は、登場人物が車を運転している際のカーステレオの音楽として数秒流れるのみで、曲の良さの割りにもったいない気がする。ちなみに、この曲の作詞はジョーンズの娘ヤシンダが担当している。

他の曲ではマデリン・ベルが歌うR&B調の曲やバラード、およびアンダーソンが歌うエンド・クレジットで流れる曲が比較的良い出来で、一方インストルメンタルは80年代のシンセサイザーのリズムが鼻につき、今聴くと褒められたものではない。ジミー・ペイジが参加したトラックもレッド・ツェッペリンの偉業に比べると足元にも及ばない。そして、これらの音楽が映画の中で効果的に使われているとは思えない。

映画、サントラいずれもイマイチの出来ばえであるが、本曲自体はなかなか良い出来。ジャケット表紙下部にジミーペイジ、ジョン・アンダーソンの名前が明記され、ツェッペリン、イエスのファンのためのコレクターズ・アイテムとなった。そこにはジョン・レンボーンの名前は表示されず、レンボーンのファンにとって知名度は乏しいが、彼がロック調の曲でアコースティック・ギターを弾くという珍しい取り合わせでもあり、これ1曲のためだけでも本作を購入する価値は十分あると思う。

注:本作の関係者は、「ジョン」が3人いるので、ラストネームで区別することにしました。


 
Q16 Amiga Alba e Delgada  [Emilio Cao]  (1985) 
 





Emilio Cao: Vocal, Harp, Acoustic Guitar
John Renbourn: Acoustic Guitar, Electric Guitar

1. Illa Do Sur (Island In The South) [Emilio Cao]
2. O Cravo (The Nail) [Rosalia de Castro, Emilio Cao]
3. Quen Na Outa Tarde (Who In The Late Evening) [Uxio Novoneyra, Emilio Cao]

注) 写真上: レコード盤ジャケット
   写真下: CD再発盤ジャケット


スペインのアルバ(ハープ)奏者エミリオ・カオは、1950年代前半ガリシアのサンチャゴ・デ・コンポステラに生まれる。ガリシア州はスペインの北西部(ポルトガルの北)に位置し、アイルランド、スコットランド、フランスのブリターニュ地方とならびケルト文化圏のひとつと考えられている。サンチャゴ・デ・コンポステラは、マドリードからは列車で10時間かかり、大聖堂と旧市街は1985年世界遺産に登録された。彼は若い頃はポップスを演奏していたが、当時のフランコ独裁政権に反抗するフォーク音楽運動に傾倒して曲を書き始める。1970年代にヨーロッパ各地を放浪した後、故郷で中古のハープを買い人生が定まる。1977年に発表したソロアルバムは、当地におけるケルト音楽復興の先駆となり、その後は多くのフォロワーを生んだ。そして各地のハープ奏者や音楽家との交流を深めながら、ダンス、劇場音楽の作曲にも活動を広げ、いままでに6枚のソロアルバムを発表、最近ではスコットランドのロビン・ウィリアムソン R21、ブリターニュのアラン・スティーヴィルなどとともに、ケルト音楽のハープ奏者のオムニバスCD「Master Of The Harp」2002に参加している。本作は1985年に発表された4枚目のアルバムで、タイトルを英訳すると「Dawn-pale And Thin Friend」(青ざめて痩せた友よ)。レコード盤のジャケットデザインは、帽子を被り髭を生やした彼のポートレイトだったが、1998年に再発されたCDでは、レコードの中袋にあった写真を配したものに変更された。彼のホームページのバイオグラフィーに掲載された写真に、その服装や雰囲気で、この写真と同時期に撮られたと思われるものがあり、その説明からこの写真が1957年、サンチャゴ・デ・コンポステラから西に50キロ程の海辺の村リアンソで撮られたもので、ボートと一緒に写っているのは、母親と彼を含む4人の子供達、そしてエミリオは左から2人目の子供であると推定できる。という意味で、古きよき良き時代に対する思いが込められた作品といえよう。

私はスペイン音楽には詳しくないので印象でしか言えないが、本作の音楽はケルトの香りを漂わせながら、スペイン古来の歌謡曲にモダンな味付けを自然にブレンドしたもののように思われる。明るい陽射しと海の香り、夢に見るヨーロッパの景色、昔見た欧州映画の1シーンのような、ノスタルジックな雰囲気に溢れている。曲毎のパーソナルが掲載されていないので、レンボーンがどの曲に参加しているか明確な記録はないが、エミリオによるアコースティック・ギターの演奏はシンプルなフィンガースタイル(スリー・フィンガー、アルペジオ)なので、聴いていると「あっ、これはレンボーンだろうな」という感じで、ここでは上記のとおり全11曲中3曲につきレンボーン参加と推定した。1.「Illa Do Sur」はエミリオのギターの弾き語りにジョンがリードをつける。カポを高フレットにつけて弾いていると思われ、別の小型弦楽器のような響きだ。歯切れのいいピッキング、流れるようなアルペジオはまさにレンボーンタッチであるが、演奏自体は控え目で、主人公の引き立て役に徹している。エミリオの歌は、高く優しい繊細な声だ。海辺の滞在をテーマとした美しい歌。本作は英語の訳詩がついているので、歌の内容が理解でき有り難い。2.「O Cravo」は地元の詩人の古い作品に曲をつけたもので、「心に打ち込まれた釘」がテーマ。心をえぐるような歌詞の素晴らしさは特筆もの。ここではレンボーンは右チャンネルでアコギのリードを、左でエレキギターの和声をつけている。シンプルな演奏だ。3. 「Quen Na Outa Tarde」は「Black Balloon」 R11の「The Pelican」を思わせる、低音弦でメロディーを奏で、高音弦でアルペジオを鳴らす鮮やかなレンボーンのイントロから始まるが、現代詩(短いながらも俳句のような奥深さがある)が歌われて、30秒足らずで終わってしまう。もっと聴きたいなと思ってしまうのだが、まあしようがないか。

レンボーン不参加の曲では、ハープが演奏されていて、その軽やかな響きは古典的でありながら、どこか現代的なムードもある。バイオリンの他に、シタールやタブラが加わった曲もあり、3曲のインストルメンタルもいい出来だ。疲れている時、寝る前に聞くには最適の作品。いつも気持ち良くなって途中で寝てしまうので、なかなか最後まで聞けないのが欠点。

(本作の資料を提供いただきましたJ さん、ありがとうございました。)


Q17 Christmas Guitars  (1989) [Various Artists] GREEN LINNET GLCD 1103

Q16 Christmas Guitar

John Renbourn: Guitar

1. I Saw Three Ships *  R21 R22 V5 V8 V9 K3

〔楽譜掲載〕  K3




18人のアーティストによるオムニバス形式のクリスマス・ソング集。レンボーンの他、ラリー・コリエル、エイドリアン・ブリュー、ジョン・スコフィールド、エミリー・レムラー等のギタリストやアル・クーパー、タージ・マハール、ナンシー・ウィルソン等が参加している。ジョンは愛奏曲の「I Saw Three Ships」1曲で参加。かなりラフな出来のスタジオ録音で「Wheel Of Fortune」1993 R21のライブ・ヴァージョンとも異なる部分があり、おそらく即興演奏と思われる。僅か1分48秒の短い小品ではあるがなかなかの出来。本作の収益はホームレスの人々をサポートする団体「National Coalition For The Homeless」に寄付された。


Q18 A Thousand Words (1992) Acoustic Music Records Best-Nr.319.1021.242

Q17 A Thousand Words
〔Duck Baker Feat. J. Renbourn〕

Duck Baker: Guitar
John Renbourn: Guitar

Peter Finger: Producer

1. Waltz On Sunday * [D. Baker]
2. Mr. Jellyroll Soul * [C. Mingus]
3. Lashta's Room * [D. Graham]


鬼才ギタリスト、ダック・ベイカーがピーター・フィンガーのアコースティック・ミュージック・レーベルから発表した意欲作。ジョンはゲストとして3曲でリードギターを担当。1.「Waltz On Sunday」ではファンキーなジャズ・ブルース調の曲にエレキっぽい音でハーモニーと間奏を付けている。ダックとの掛け合いが聞きもの。2.「Mr. Jellyroll Soul」は、「Goodbye Porkpie Hat」で有名なチャーリー・ミンガスの作によるスウィング・ジャズ風の気持良い曲で、ジョンのリードギター・ソロが楽しめる。3.「Lashta's Room」はデイヴィー・グラハムの曲で、以前キッキング・ミュールから発売された彼のソロアルバム「Complete Guitarist」に収録されていた曲。レンボーン未参加ではあるが、上記以外の曲でも聴きどころは多く、自分で伴奏しながらソロをとる(!)彼独特のスタイルの独壇場だ。特にBert Janschのオムニバス「Acoustic Routes」に別ヴァージョンが収録されていた「The Blood Of Lamb」は演奏者のソウルがグイグイ心に迫ってくる傑作だ。全編がセロニアス・モンクやダラー・ブランドなどを彷彿させるジャズ・ピアノのフィーリングに溢れている。


Q19  Wizz & Simeon Jones  (1993) [Wizz Jones] Fellside FECD91

Q18 Wizz & Simeon Jones


Wizz Jones: Guitar, Vocal
John Renbourn: Guitar, Vocal
Simeon Jones: Flute

1. Night Ferry [Wizz Jones]
 
1989年10月録音



ウィズ・ジョーンズが息子と一緒に制作したアルバムに1曲参加。故郷に帰る夜のフェリーの情景を歌った曲で、ひんやりした夜の静けさがよく表現された佳曲。ウィズ愛用のエピフォンのアコギによる伴奏にレンボーンがリードギターを付け、コーラス部分ではハーモニー・ボーカルで参加している。アルバム自体の出来も良いお勧め品。なお1996年7月の来日コンサートでも、二人で本曲を演奏していた。


 
Q20 Acoustic Routes (1993) [Bert Jansch] Absolute 






 

Bert Jansch: Guitar, Vocal (2)
John Renbourn: Guitar

1. First Light [Probably Bert Jansch]
2. Paper Houses [Bert Janch]


写真上: CD版表紙
写真中: DVD版表紙
写真下: 20th Anniversary Edition (CD2枚、DVD2枚)表紙

ドキュメンタリー映画「Acoustic Routes」のサントラ盤。バート本人のアイデアにより1960〜1970年代のフォーク・ムーブメントを映像とサウンドで回顧したもので、資金難のために色々苦労をしたようだが、最終的にスコットランド映画制作基金と BBCスコットランドがスポンサーとなって制作され、1992年に公開された。残念ながら日本では未公開となったが、2013年に製作20周年を記念して1993年に発売されたCDのリイシュー盤が発売され、DVDも発売された。映画はドキュメンタリー主体で、挿入曲の完奏版が全くないが、CDは音楽をじっくり味わうことができる。1993年発売のオリジナル盤には、バートとジョンの共演トラックは収められなかったが、今回の再発盤のボーナスディスク 「Volume 2」には、2曲の共演が収録された。

1.「First Light」は、当時バートとジョンのリユニオンとして話題となったが、映像版に一部収録されたのみだった。今回じっくり聴くと、二人の演奏はぎこちなく、曲も魅力に欠け、どうみても良くない出来である事は明らかであるが、初めての完奏版収録という意義を認めましょう。 2.「Paper Houses」は、映像版では自宅におけるリハーサルのシーンのみ写っていた曲で、ここではスタジオにおける完全版が初めて披露された。出来としてはまあまあかな?

なお本作についての詳細は、バート・ヤンシュの部の「Acoustic Routes」を参照ください。


[DVDについて  2013年12月追記]
バート・ヤンシュの歴史を語る場合、ジョンとのコラボレイションを避けて通ることはできない。映像版でのジョンの出番は、彼がバートの家を訪ね、昔と同じようにキッチンでリハーサルを始めるシーンから始まる。そこでバートが弾き語り、ジョンがリードギターのアレンジを考えながら合わせている曲は、後にバートのアルバム「Toy Balloon」1998 に収録される2.「Paper Houses」だ。オリジナルのフィルムでは2分ちょっとの短いシーンだったのに対し、リイシューのDVDでは6分間超と、たっぷり見せてくれる。ただし、リイシューCDに収められていたスタジオできちんと録音されたトラックは、DVDには収められなかった。ここでは司会役のビル・コノリー(近年コメディアンとして成功し、トム・クルーズ主演の「Last Samurai」2004年、ダスティン・ホフマンが監督したマギー・スミス主演のオペラのコメディー「Quartet」などに脇役で出演している)が、「Bert &John」T1のジャケットを取り上げて、二人が碁をプレイしているのを指摘。難しくミステリアスなゲームをしている二人に畏敬のコメントをするのが面白い。二人は本当にやっているのかな? 続いてスタジオでの二人の演奏 15.「First Light」。この曲のオリジナル映像は途中から始まるのに対し、リイシューDVDは最初から最後までの完全版となっている。

本作の発売にあたって製作された予告編を観ることができた。そこには、本編ではリハーサル風景のみだった「Paper Houses」の正式録音の模様(リイシューCDでは全編聴くことができるが、予告編ではNGシーンのみ)を観ることができる。何故本編にこの映像を収録しなかったのか、理解に苦しむところであるが、もし「30th Anniversary」のために取っておくという意図であれば、商魂たくましいもんですな。


Q21 International Guitar Festival (1994) Acoustic Music Best Nr. 319.1051.242

Q19 International Guitar Festival

John Renbourn: Guitar

1. Im Wunderschonen Monat Mai * [Robert Schumann]  Q26
2. Little Niles * [Randy Weston]   R21 R23 R24 V5 V7 K4

〔楽譜掲載〕 2. K4 F7






ピーター・フィンガー主催のアコースティック・ミュージック・レコードによるオムニバス盤。同レーベルに縁のある欧米各国のギタリスト9人が参加し、各1〜2曲提供している。レンボーンはイギリス代表として 2曲で参加。1.「Im Wunderschonen Monat Mai」は「美しき5月」という意味の題名で、クラシックの巨匠ロベルト・シューマンの曲をアレンジしたもの。わずか1分34秒の地味な小品ながらピリッとした美しいメロディーの曲。2.「Little Niles」はライブや教則ビデオでお馴染みの作品。もともとダック・ベイカーから借りたレコードで、南アフリカのピアニスト、ダラー・ブランドの演奏を気に入ったレンボーンが、作者のランディ・ウェストンのオリジナル・バージョンも手に入れてアレンジしたものという。彼らの演奏を忠実に再現したものではなく、レンボーン自身が感じたフィーリングでアレンジしたそうだ。スタジオ録音のため、予め考え抜かれた間奏部分の和音や構成が複雑で、ライブの自由奔放なインプロヴィゼイションとはかなり異なり大変興味深い。7分を超える大作だけど、長さを感じさせない幽玄なまでの奥深さを感じる傑作。最初はとっつきにくいけど、聞き込むとすごいぞ〜!なお本曲は、ずっと2011年に発売されたソロアルバム「Palermo Snow」に新録音で収録された。


 
Q22 Stranger World (1998) [Larry Conklin] Akustik  INAK9057CD 

 

Larry Conclin : Vocal, Acoustic Guitar
John Renbourn : Acoustic Guitar 
Manny Kniel : Percussion
Andreas Scherer : Blues Harp

Wolfgang Schmidt-Kuebler, Larry Conklin : Producer

1. The Part Time Ascetic [Larry Conklin]
2. Why The Crows Don't Sing [Larry Conklin]


ラリー・コンクリンは1980年にシアトルで、Jochen Blum(バイオリン、12弦ギター)との共演盤「Jackdaw」を自主製作で発表し、現地でそれなりの評判を得た(その後2009年にCD化)。その後イタリア、ドイツに渡り、2002年にアメリカに帰国するまでの間、現地のフォークシーンで活躍、7枚のCDを発表した。代表作は「Dolphin Grace」1990で、本作は1998年の作品。アルペジオとスライドギターを基本としながら、ブルースやトラディショナルについての造詣も深そうで、ウィンダムヒル・レーベル的なニューエイジと、ジョン・フェイ、ロビー・バショー的なスタイルを併せ持っているように思える。

ジョンとは、コンサートでの共演で親しくなったらしい。1.「The Part Time Ascetic」は「パートタイムの苦行者」という意味のタイトルで、CDジャケットにある「It's a different world now when I was a kid. It has changed and it's a Stranger World」という言葉の世界をを表現している。綺麗なアルペジオに乗って歌われる重い内容の歌であるが、本人の歌声は誠実さが籠っていて、聴いていて厳粛な気持ちになる。ジョンのリードギターは、ストレートで切れ味鋭く、曲の雰囲気を引き締めるとともに、奥の深い哀愁を加味させている。2.「Why The Crows Don't Sing」も同じテーマの歌で、こちらはよりブルージーなサウンド。どんどん世知辛くなる仕事世の中をシニカルに捉えている。ジョンはブルースハープが鳴るなか、控えめなオブリガードを付けているが、短い間奏ではしっかり存在感を発揮しており、聴き応え十分な出来だ。

アルバムとしては、インストルメンタルと歌ものが半分ずつで、ギターソロは2曲。他はパーカッションやベースの伴奏つきで、ウィンダムヒルでお馴染みのマイケル・マーニングのフレットレス・ベースが大きくフィーチャーされている。彼はアメリカ帰国後に現在(2014年)に至るまで3枚のCDを発表しているが、ヨーロッパ時代の録音からセレクトした2004年の「Bittertruth」には、1.「The Part Time Ascetic」が収められている。

個人的な実感として、世の中や仕事など、いろんな面で物事の考え方がどんどん厳しくなっているような気がする。歌のみでなく、インストルメンタルにもそういう思いが込められているようで、本作の世界に大いに共感を覚えることができる。


Q23 Lucky The Man  (2001)  [Wizz Jones] Scenescof SCOFCD 1009

Q21 Lucky The Man
 

Wizz Jones: Guitar, Vocal (2,3)
John Renbourn: Guitar
Jacqui McShee : Vocal (2)


1. Sermonette [Nat & Julian Adderley] *
2. Omie Wise [Trad.]   T6
3. Mountain Rain [Archie Fisher]


ウィズ・ジョーンズが2001年にインディ・レーベルから出したソロアルバムで3曲に参加。うち1曲2.には最近行動を共にするジャッキー・マクシーも参加している。

1. 「Sermonette」はファンキーなジャズで一世を風靡し、マイルスデイビスの名作「So What?」での名演でも有名なアルトサックス奏者、ジュリアン・キャノンボール・アダレイが、弟のナット・アダレイと共作したナンバーのインストだ。そういえば「Anji」の中盤に挿入される「Work Song」のメロディーはナット・アダレイによる曲だった。ウィズ・ジョーンズのインストルメンタルは珍しく、ギターの名手と言われながら、あまりないのは意外だ。しかもジョンとの共演という値打もの。ジョンにとってもインストもののスタジオ録音は久しぶり。ウィズ独特のベース弦をバシバシ言わせるパカーッシブなギターに、ジョンのリードが絡む。どちらかというとステファン・グロスマンとの共演に近い感じがするが、演奏内容はもっと複雑。

2.「Omie Wise」はペンタングルのT6でバートが歌っていた陰惨な殺人バラッドで、ウィズとジャッキーがリードとハーモニーを交代しながら歌う。女性の声が二人聞こえるのは、ジャッキーの多重録音だろう。歌の部分ではジョンのギターは高音部の装飾を担当。二人のギターの音は完全に溶け込んでいる。一方間奏で聞かれるジョンのリードソロは、歌の部分のメロディーがとてもシンプルな分、とても印象的だ。3.「Mountain Rain」はアーチー・フィッシャーの曲でカントリー調のサウンド。ウィズはカーターファミリー風のピッキングで、ジョンがサラッとリードをつけている。

時々一緒にコンサートツアーをするという彼らの親密さが感じられる共演だ。


Q24 Here I Go Again  (2003)  [Dorris Henderson] Market Square MSMCD117

Q22 Here I Go Again

Dorris Henderson: Vocal
John Renbourn: Guitar, Vocal (1)

1. Heart Over Mind [Renbourn]
2. Don't Cry For Me [Henderson, McGann]


1999年に「There You Go」1965 R1が復刻され、彼女に対する再評価の気運が高まったことをうけて、本当に久しぶりに制作されたソロアルバム。レンボーンをバックに、第2作目 「Watch The Stars」1967 Q4を発表した後もソロおよびバンド活動を続けたが不遇で、レコードの発売も僅かであったが、地道な音楽活動を続けてきたようだ。今回は夫君のMac McGannや昔のバンド仲間のサポートを得て、長年のレパートリーを録音している。なかには「The Water Is Wide」や「God Bless The Child」のようにR1, Q4に収録されていた曲の再演もある。

ドリス本人によるライナーノーツにあるとおり、ジョンは今回の録音のためにスコットランドの自宅から駆けつけてくれたそうで、なかなか義理固い人のようだ。1.「Heart Over Mind」は R1の「Mist On The Mountain」を彷彿されるデュエットで、ジョンはハーモニーを担当。2.「Don’t Cry For Me」では12弦ギターを弾いているのが珍しく、恐らく公式録音としては初めてと思われる。レンボーンのギター演奏もずいぶん円くなったもんだなあと、感慨無量。

全体的にシンプルでラフな演奏、荒っぽい編集、マスタリングなど自主制作盤の仕上りであるが、40年間近い人生の足跡に思いをはせながら、年老いて衰えたとはいえ、今生きている彼女の声を聞けるだけでもうれしくなる作品だ。黒豹のように敏捷な若いころのポートレート(ジャケット内写真)、照れ笑いのピンボケなスナップショットの表紙写真が、作品の雰囲気を物語っている。

インターネットで彼女の病没(2005年5月)を知りました。ご冥福をお祈り申し上げます。


Q25 Master Anthology Of Fingerstyle Guitar Solos Vol.1 2005 [Various Artists] Melbay


John Renbourn: Guitar


1. Parelmo Snow R24


メルベイ出版から発行されたフィンガースタイル・ギタリストの選集で、70人のギタリストの曲のタブ譜・楽譜が収められ、それらの演奏を添付された3枚のCDで聴くことができる。レンボーンのように未発表曲のケースもあれば、既発表の曲もあり、参加者も有名な人から知る人ぞ知る無名のプレイヤーまで、よくまあこれだけ集めたものだ。大変な力作。

レンボーンは「Parelmo Snow」という新曲で参加している。楽譜(タブ譜)のページでは「Parelmo Show」と表示されているのに対し、目次では「Snow」となっている。曲のイメージではイタリアの「パレルモに降る雪」のほうがロマンチックで、曲のイメージに合っているので、これが正しいタイトルだろう。近年の寡作なジョンの作品に見られる、求道的かつストイックなスタイルがよく出ていて、とっつきにくい曲ではあるが、聞き込むほどに味がでてくる。かなり複雑で難しい曲で、何故かイントロの部分は楽譜に掲載されていない。楽譜以外にジョンに関する紹介記事が1ページついている。

注) 本来であれば楽譜のコーナー(アルファベット「K」ではじまるRef番号)で掲載するべきなのですが、未発表曲なので敢えて「Q」シリーズとして取り扱いました。

[2011年9月追記]
本曲は、ずっと2011年に発売されたソロアルバム「Palermo Snow」R24に新録音で収録された。