Tanglewood 2016




James Taylor: Vocal, Guitar
Michael Landau : Electric Guitar
Larry Goldings : Piano, Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Steve Gadd : Drums
Louis Conte : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Keyboards
Lou Marini Jr. : Clarinet, Sax
Arnold McCuller, Kate Markowitz, Kim Taylor: Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin
Henry Taylor: Vocal, Back Vocal

[Set 1]
1. Something In The Way She Moves 
2. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin]
3. Walking Man
4. Don't Let Me Be Lonely Tonight
5. Today, Today, Today
6. Country Road
7. On The 4th Of July
8. Copperline [Reynolds Price, James Taylor] 
9. Carolina In My Mind
10. (I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That [Danny Kortchmar]
11. Fire And Rain
12. Shower The People

[Set 2]
13. The Frozen Man
14. Promised Land [Chuck Berry]
15. You've Got A Friend  [Carole King]
16. Angel Of Fenway
17. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
18. Sweet Baby James
19. Steamroller
20. Mexico
21. Your Smilig Face
22. In The Midnight Hour [Wilson Pickett, Steve Cropper]
23. How Sweet It Is (To Be Love By You) [Holland, Dozier, Holland]  
24. You Can Close Your Eyes


録音: 2016年7月3日 The Koussevitzky Music Shed, Tanglewood, Lenox, Massachusetts


タングルウッドは、マサチューセッツ州バークシャー郡レノックスとストックブリッジ、コネチカット州に跨る丘陵地帯で、ボストン交響楽団の夏の活動拠点となっている。JTは 2010年以降ほぼ毎年、7月3, 4, 5日の独立記念日とその前後でコンサートを行うことが慣例になっている。JTの地元であること、彼および奥様とタングルウッドの運営組織との縁が深く、加えて大規模なコンサートを行うことで、同地のPRに貢献し、資金面でのサポートをしているものと思われ、JTにとってもひとつのステータスになっている。会場のクーゼヴィッキー・ミュージック・シェド(創設者の名前を冠したもので、「シェド」は「小屋」の意味)は、1938年建立、1959年改築の屋根付き開放型の音楽堂で、その建物の背後には芝生が広がっていて、オーディエンスは寝転んだり、椅子を持ち込んだりして音楽を楽しむことができる。本音源の特徴は、JTとオーディエンスとの一体感が強く感じられることだ。彼らは、7月初旬に行われるJTのコンサートを毎年楽しみ、独立記念日を祝う高揚感も合わさって、和気あいあいとした雰囲気のなかで繰り広げられるパフォーマンスには、他のコンサートにはないマジックが確かにある。

2016年は7月3日と4日の二日間行われたとのことであるが、本音源は3日のコンサートをノーカットで録音したもの。ファーストセットはオーディエンス録音としては最高レベルで、セカンドセットは、録音モードを変えたとのことで、サウンドは悪くないが、観客のノイズがかなり拾われており、少し気になるかな。以下簡単に述べる。1.「Something In The Way She Moves」は、バンド、コーラス付きの演奏。2.「Everyday」でJTは、今年の北アメリカ・ツアーは、作者のバディ・ホリーの故郷であるテキサス州ルボックから始めたと言っている。 6.「Country Road」になるが、JTは「私の讃美歌であり、自然を教会と見做す戯言ヒッピー(bullshit hippies) の歌」 と紹介して笑いを取っている。「あまり演奏しないんだけど」と言いながら、7.「On The 4th Of July」を演ったのは、コンサート開催日の関係からかな?8.「Copperline」は友人の故レオナルド・プライス(1933-2011、詩人、小説家、戯曲作家)との共作で、自分が育ったノースキャロライナの景色を描いたと言っている。10.「(I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That」は、「Song About Obsession」とのこと。12.「Shower The People」で、コーラス隊に加わった息子のヘンリーを紹介。

セコンドセットは、ホーンセクションとアンドレアのバイオリンのアンサンブルによるイントロが美しい13.「The Frozen Man」から。14.「Promised Land」は、JTが70年代のライブで演奏し、アルバム「Walking Man」 1974 A6に収録したチャック・ベリーのナンバー。ここではアレンジが前述のものと変わっていて、「Covers」 2008 A29の「Hound Dog」のようなニューオルリンズ・スタイルの演奏。ここはレッドソックスの地元なので、16.「Angel Of Fenway」の曲紹介は大いに盛り上がる。歌のブリッジ部分では、ヘンリーのソロボーカルがフィーチャーされる。18.「Sweet Baby James」の前にはアコギ、ベースによる長めのイントロが付き、曲中の「Stockbridge to Boston」という歌詞では、地元そのものなので、オーディエンスは大騒ぎ。19. 「Steamroller」は、弱音器を付けたトランペット、オルガン、エレキギターのソロ。アンコールはウィルソン・ピケット 1965年全米2位の 22.「In The Midnight Hour」から。最後の 24.「You Can Close Your Eyes」は、コーラス隊と一緒に歌う。

信頼感に満ちた最高の雰囲気の中で、JTとオーディエンスとの気持ちのよいやりとりと、リラックスしたプレイが楽しめる。

[2022年11月作成]


 
Holiday In Brooklyn 2016 
 
James Taylor: Vocal, A. Guitar, Hamonica
Sara MacLachlan: Vocal
Jimmy Buffett: Vocal, A. Guitar

Larry Goldings: Piano, Keyboards, Accordion
Mac McAnally: A. Guitar
Owen Young: Cello
Vanessa Freebairn-Smith: Cello
John Sauter: Double bass, Electric bass
Pete Halley: Drums
Robert Greenidge: Street Drums

Arnold McCuller: Back Vocal
Kate Markowitz: Back Vocal
Kim Taylor: Back Vocal

1. I Will Remeber You [Sara MacLachlan, Seamus Egan, Dave Merenda]
2. Have Yourself A Merry Little Christmas [Hugh Matin, Ralph Blane]
3. Sweet Baby James
4. Carolina In My Mind
5. Something In The Way Sh Moves
6. Here Comes The Sun [George Harrison]
7. Fire And Rain
8. You've Got A Friend [Carole King]
9. Only One
10. (I'm A) Roadrunner [Edward Holland Jr., Lamont Dozier, Brian Holland]
11. Shower The People
12. Mexico
13. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Edward Holland Jr., Lamont Dozier, Brian Holland]
14. Auld Lang Syne [Traditional, Lyrical Adaptation by Charles H. Witham]

収録: Barclays Center, Brooklyn, NY, 2016 December 9

 

CBSラジオ傘下のWCBS-FM 101.1が主催した「ホリデイ・イン・ブルックリン」は、サラ・マクラクリン、ジミーバフェット, JTが参加して、ブルックリンのバークレイズ・センターで開催された。ステージはサラ、ジミー、JTの順番で行われ、ジミーを除く二人の音源を聴くことができた。ステージ後方でのオーディエンス録音のようで、リバーブ感が深めではあるが、それなりに良い音で捉えられている。主催者がラジオ局なので、本コンサートがラジオ放送されたように思えるが、私が聴いたのはオーディエンス録音だった。3人ともほぼ同じバンドが伴奏、ベースのジョン・サウターとドラムスのピート・ハーレイは、JTが小編成のバンドを組成するときに呼ばれる人達で、2013年の「A Nation Remembers (A Tribute To John F. Kennedy」や、2015年の「Newport Folk Festival」などに参加した記録が残っている。チェロのオーウェン・ヤングは、ボストン交響楽団の奏者で、彼も2010年代のJTのコンサートによく出演している。もう一人の女性チェロ奏者ヴァネッサ・フリーバイルン・スミスは、クラシックからロック(ポール・マッカトニーやジェフ・ベック等)まで幅広い音楽をカバーする人で、ここではサラ・マクラクリンのバックを担当している。ギタリストのマック・マックナリーは、シンガー・アンド・ソングライターであり、またセッションマン、プロデューサーとしてカントリー音楽界で多くのライブや録音に参加した人で、ジミー・バフェットのバンド「ザ・コーラル・リーファー・バンド」のメンバーでもある。

コンサートはサラの演奏から始まる。冒頭の紹介で、JTが「井戸水のように純粋な歌声」と讃えた彼女は、カナダ・ノヴァスコシア生まれのシンガー・アンド・ソングライターで、彼女の代表曲の他に、季節柄クリスマス・ソングを歌っている。なかでもジョニ・ミッチェルの「River」は、JTが2006年の「James Taylor At Chrismas」 A19でカバーした曲で、ピアノを弾きながら歌う声が美しい。なおこの曲については映像を観ることができた。そして最後の曲 1.「I Will Remeber You」でJTが登場し、コーラスを一緒に歌った他、ファースト・ヴァースとブリッジの前半でJTが独唱する。この曲は1995年の映画「The Brothers McMullen (邦題 :マクマレン兄弟)」のサウンドトラックが初出で、1999年発売のバージョンが全米14位のヒットを記録した彼女の代表作。ヴァネッサがチェロを弾き、キムとケイトがバックボーカルを付けている写真がある。そして次にジミー・バフェットが登場し6曲歌ったというが、私が聴いた音源には含まれていなかった。セットリストの記録によると、最後の曲「Son Of A Son Of A Sailor」でJTが再登場し、一緒に歌ったそうだ。

JTのステージは、「October Road」2002 A17、「James Taylor At Christmas」2006 A19に収録された2.「Have Yourself A Merry Little Christmas」から始まる。本音源の特徴は、バックにリード・ギタリストがいないため、オーウェンのチェロが大きくフィーチャーされ、それが演奏に穏やかな味わいをもたらしていることだ。3.「Sweet Baby James」、4.「Carolina In My Mind」、5.「Something In The Way She Moves」とすべての曲で、チェロの美しい響きが目立っている。ちなみに 5.の紹介の際に、同年9月の「All For The Hall」(「映像の部」参照)と同じくアップル・レコードでのオーディションで、彼が「メタンフェタミン(通称ヒロポン)を飲んだチワワのように緊張した」というジョークを披露してオーディエンスの笑いをとっている。またオーディションで聞いた同曲を気に入ったジョージ・ハリソンは、家に帰って自分の曲を書いた(歌詞の出だしが同じ「Something」のこと)というエピソードを語っている。チェロ、ベース、ドラムスの紹介をした後、ジョージに対し失礼な事を言ったと述べ、ジョージ・ハリソン作の 6.「Here Comes The Sun」を演奏する。2008年のヨー・ヨー・マのアルバム「Songs Of Joy And Piece」C89に収録されていた曲で、ここで両者のチェロの音色の違いを楽しむことができる。7. 「Fire And Rain」は曲前の紹介なしに淡々と始まる。8.「You've Got A Friend」の紹介で、JTは「キャロル・キングがトゥルバドゥールでの彼女の歌を気に入り、彼女の許しを得て録音させてもらった曲が、残りの人生で必ず演奏する曲になるとは思わなかった」と話し、笑いをとっている。ここでもコーラス部分でコーラス隊と一緒にオーディエンスが歌っているのが聞き取れる。

コーラス隊と一緒に歌った 9.「Only One」の後は、趣向を変えて、予め録音してあった伴奏をバックに 10. 「(I'm A) Roadrunner」を歌うが、ここでのハーモニカはJTがライブで吹いている。ここではチェロはお休み。11.「Shower The People」が終わった後、ジミー・バフェットが登場し 12.「Mexico」が始まる (12.〜14.は映像も観ることができた)。ファーストとサード・ヴァースをジミーが歌うというお宝ものだ。間奏でスティール・ドラムスを演奏するロバート・グリニッジは、「ザ・コーラル・リーファー・バンド」のメンバーだ。13.「How Sweet It Is」ではサラも登場し、コーラス隊と一緒に歌うが、彼女の声が前面に出ている。そしてセカンド・ヴァースで再びジミーが歌う。ブラスセクションがいないので、間奏はラリーのオルガンとロバートのスティール・ドラムスのソロだ。コーラス隊がアップになると、チェロを置いたオーウェン・ヤングが彼らと一緒にいる様が見えて楽しい。そしてフィナーレの 14.「Auld Lang Syne(蛍の光)」では、ヴァレリーとオーウェンの二人がチェロを弾き、ファースト・ヴァースをジミー、セカンド・ヴァースをJT、サード・ヴァースをサラが歌い、最後はみんなの合唱でしっとりと終わる。

ほぼ全編で響き渡るチェロの美しい調べを背景に、JTが素晴らしいゲストと一緒に歌うお宝音源。

[2021年11月作成]


 
Mitsubishi Electric Halle, Dusseldorf, 2022  
 
James Taylor: Vocal, Guitar, Electric Guitar (8), Harmonica (8)
Michael Landou : Electric Guitar, Back Vocal
Jimmy Johnson : Bass
Steve Gadd : Drums

[Set 1]
1. Something In The Way She Moves 
2. Country Road
3. Walking Man
4. (I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That [Danny Kortchmar]
5. Sweet Baby James
6. Millworker
7. Never Die Young
8. Steamroller
9. Copperline [Reynolds Price, James Taylor] 
10. Long Ago And Far Away
11. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King, ]

[Set 2]
12. Teach Me Tonight [Gene De Paul, Sammy Cahn]
13. Bittersweet [John Sheldon]
14. Don't Let Me Be Lonely Tonight
15. Fire And Rain
16. Carolina In My Mind
17. Mexico
18. Shower The People
19. Your Smilig Face
20. You've Got A Friend  [Carole King]
21. How Sweet It Is (To Be Love By You) [Holland, Dozier, Holland]
22. Song For You Far Away


収録: 2022年10月2日, Mitsubishi Electric Halle, Dusseldolf, Germany,

 

デュッセルドルフは、ドイツ西部、ライン川河畔の都市で人口62万人。金融・工業が盛んで日本企業が多く進出し、リトル東京もある。昔訪れたことがあり、綺麗な街だなという記憶がある。Mitsubishi Electric Halleは、1971年建立で収容人員は 7,500人。当初はPhilips Halleと呼ばれていたが、2011年に改称した。JTの10月2日のコンサートは、1月21日の当初予定がコロナのため延期になっていたもの。9月19日からリスケされていたヨーロッパ・ツアーが始まった。スペイン、アイルランド、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダ、イギリス、イタリア、スイス、デンマークの28箇所を11月20日までの2ヵ月で回るスケジュール。

JTのヨーロッパツアーの場合、経費・手間を省くため、いつものフルメンバーによるバンドではなく、ホーンセクションやコーラス隊無しの編成になることが多い。今回のツアーでは、ホーンとパーカッションに加えて、キーボード抜きになっているのが特徴。いままで聴いてきたバンド付き音源で、キーボード抜きだった記憶はなく、極めて珍しい編成と言えよう。しかも本公演を含むツアー開始の時期は、コーラス隊もなしになっているが、10月14日のイギリス・バーミンガムの動画ではコーラス隊がいるので、本コンサートのしばらく後に合流したものと思われる。ということで、バンドはJTのアコギ、エレキギター、ベース、ドラムスという、ロック・グループの基本のような 4人編成となり、和音を散りばめてウォールを作る鍵盤奏者がないため、ストリング・バンド的な透明感があるクリアなサウンドになっている。そして各奏者の音をはっきり聞き取ることができ、名手揃いのメンバーの手腕が際立っている。特に普段はあまり目立たないベースの音がはっきりわかること、そしてエレキギターがいつもやらない曲で間奏ソロを弾いている点が、本音源をとてもユニークなものにしている。音質はオーディエンス録音として、ほぼ完璧。

1.「Something In The Way She Moves」の途中からバンドがフィルインする。いつもは目立たないベースラインがはっきり聞こえるので大変面白い。3.「Walking Man」のファースト・ヴァースでは、ハーモニー・ボーカルが聞こえる。同時期に行われた他所のコンサート動画から(歌っているシーンではないので確実ではないが)、おそらくマイケルが歌っているものと思われる。そんなに上手くはないんだけど、いつもと違っていて、とても新鮮。他に13.「Bittersweet」、17.「Mexico」、21.「How Sweet It Is (To Be Love By You)」でもバックボーカルが付くぞ。4.「(I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That」は、イントロからエレキギターがギンギンに鳴りまくり、強者のリズムセクションと合わせてロックバンドとして最高の演奏だ。8.「Steamroller」では、JTがイントロと間奏で達者なブルースハープを披露する他、ジミーのベースソロも聞ける珍品。9.「Copperline」の紹介で、JTが「自分が育ったノース・キャロライナの事を歌う」と語ると、オーディエンスから拍手が起きるが、すかさず「皆さんが思っているのとは違うよ。後で演るからね(16.「Carolina In My Mind」のこと)」と返している。ここでの間奏は、いつものバイオリンの代わりにギターソロが入る。10.「Long Ago And Far Away」では、「Mud Slide Slim」1971 A3のマスターテープから抽出したとして、ジョニ・ミッチェルのバックボーカル録音を流しながらの演奏。

セカンドセットは、「American Standards」2020 A23に入っていた、12.「Teach Me Tonight」から。アルバムでは、ジョン・ピザレリがギターを弾いていたが、ここではマイケルがエレアコを演奏するので、両者の違いを楽しむことができる。 13.「Bittersweet」は、JTの友人ジョン・シェルドンの作品で、「The Best Of James Taylor」2003 B43に入っていたもの。この曲のライブ演奏音源は大変珍しい。14.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」は、各楽器の音がはっきり聞き分けることができ、特にJTのアコギの音が聴けるのがうれしい。ラストのマイケルのギターソロも含めて最高の出来。18.「Shower The People」は、予め録音したコーラス隊と一緒に歌う。普段はキーボードが頑張る 19.「Your Smilig Face」は、かなり異なるサウンドになっている。アンコールの20.「You've Got A Friend」でもジョニのコーラスがフィーチャーされる。 そして最後の曲としては珍しい 22.「Song For You Far Away」でコンサートは終了。

大変珍しい編成でのコンサートで、いつもと異なるサウンドが楽しめる。

[2022年11月作成]