E11  Crossroads Guitar Festival  (2004)  Eric Clapton Etc. 


James Taylor : A. Guitar, Vocal
Jerry Douglas : Dobro
Joe Walsh : E. Guitar (2)
Larry Goldings : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass  
Steve Gadd : Drums

1. Copperline [Reynolds Price, James Taylor] A14 A15 B33 B41 E7 E10 E14 E20
2. Steamroller  A2 A15 B10 E1 E5 E8 E10 E14


収録: 2004年6月6日, The Cotton Bowl, Dallas Texas


クロスロードは、1998年、エリック・クラプトンがカリブ海のアンティグア島に設立した薬物依存の治療施設だ。現地の穏やかな環境で良質のリハビリテーションを行うもので、その治療は心の身体の両面にわたり、費用援助制度もあるとのこと。彼の言葉によると、「始めた理由はシンプルだ。僕のように、かつて薬物やアルコールを飲んでいたものの、もう飲みたくないと思っている人達のためだ。僕のヒーロー達は選択権がなかった。リロイ・カーは酒で死んだ。ビッグ・メイシオも酒で死んだ。僕が救われたような援助があれば、彼等は今も生きていたかもしれない。」

クロスロード・ギター・フェスティバルは、上記の厚生施設の運営資金調達のために、2004年6月4〜6日の3日間にわたり開催されたものだ。出演者はクラプトンが尊敬するギタリストを招いたもので、その中から6時間にわたるパフォーマンスが2枚組みのDVDに収められた。エリック・クラプトンを筆頭に、ロバート・クレイ、バディ・ガイ、BB キング、ヴィンス・ギル、ジェリー・ダグタス、J.J. ケール、カルロス・サンタナ、ジョン・マクラグリン、ラリー・カールトン、スティーブ・ヴァイ、エリック・ジョンソン、ジョー・ウォルシュ、ZZ トップ等のそうそうたるメンバーが参加している。「クロスロード」という名前は、ブルースの神様ロバート・ジョンソンが残した傑作「Crossroads」、そしてクラプトンがクリーム在籍時にカバーした同曲(ライブアルバム「Wheels Of Fire」 1968)に由来するものと思われる。

JTは3日目の6日に出演、「Something In The Way She Moves」、「Copperline」、「October Road」、「Carolina In My Mind」、「Steamroller」、「Sweet Baby James」の6曲を演奏したという。そこから1.2.の2曲がDVDに収録された。ラリー・ゴールディングとスティーブ・ガッドが演奏する1.「Copperline」は、クリフォード・カーターとカルロス・ヴェガと異なる趣がある。ここではリードギタリストの代わりにドブロ奏者のジェリー・ダグラスがソロを担当する。2.「Steamroller」はJTがファースト・ヴァースを歌っている間に、ギターを持ったジョー・ウォルシュが登場し弾き始める。彼は1970年代前半にロックグループのジェイムス・ギャングで有名になり、ソロ活動の後にイーグルスに加入、確固たる名声を確立した。間奏ではラリーのオルガンソロに続いて、ジョーがソロを取る。ブルース・フィーリングに溢れた豪快なサウンドで、強靭なソウルにあふれた演奏だ。

JTを含め各アーティストの演奏が1〜2曲で終わってしまうため、全体的に物足りない感じがするが、この手のイベントで多くを望むのは贅沢かな?


E12  American Drummers Achievement Awards Honoring Steve Gadd (2004)



James Taylor : A. Guitar, Vocal
Michael Landau : E. Guitar
Larry Goldings : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass  
Steve Gadd : Drums

1. October Road  A17
2. Country Road (部分)

収録: 2003年9月13日, Berklee Perfomance Center, Boston


ジルジャンは、15世紀イスタンブールの錬金術師アヴェニス・ジルジャンが開発した合金技術により設立されたシンバルメーカーだ。その製品は、後にクラシック音楽にも取り入れられて、1920年代以降はアメリカに拠点を移し、名実ともに業界トップの座に君臨している。アメリカではジーン・クルーパなどジャズ・ドラマーとの親交を通じて、ハイハットなど現代のドラムキットを開発。特にアーマンド・ジルジャン(1921-2002)は、ドラム奏者の庇護者として多くの人に愛され、ボストンのバークリー音楽院の理事として業界の振興に尽くした。今回のセレモニーは、スティーブ・ガッドの表彰と故アーマンド・ジルジャンの栄誉を讃えるものであり、本イベントの入場料(1名あたり300ドル!)および本DVDの収益は、両者の名を冠した奨学金制度の設立に充当された。

まずアヴェニス・ジルジャン・カンパニーのCEOであるCraige Zildjianが登場し、開会のスピーチを行った後、Vice President, Human ResousesのDebbie Zildjian、そして孫娘達が紹介され壇上に並ぶ。凄い女系家族だ!ジルジャン・カンパニー主導による内輪の業界イベントという感じで、奨学金設立目的とはいえ、こういうイベントを市販の商品にしてしまう所はスゴイ。次にスティーブ・ガッド夫妻、子供達、お兄さんといった家族が紹介される。そしてアーマンドの奥さんが話をして、アーマンドのドキュメンタリー・フィルムが流される。、それにしてもアメリカ人はこの手のトリビュートが好きだな〜! ここでコメディアンとして有名なビル・コスビーが登場し、司会を引き受ける。彼はコメディアンとして成功する前は、ドラム奏者だったそうで、その縁での登場とのこと。伝説的ドラマーであるルイ・ベルソンのスピーチの後に、スティーブ・ガッドのドキュメンタリー・フィルム(Part 1)が上映される。子供の頃のドラム演奏のシーン、後のスタイルの基礎にもなったマーチング・バンドでの映像の他、アメリカ陸軍のビッグバンドでの演奏シーン(制服を着た丸刈りのガッドだ!)他、チック・コリア、ポール・サイモンとの演奏シーンが挿入される。

次にドラム奏者のリック・マロッタが登場し、スピーチを行った後に、マイケル・ランドウ、ラリー・ゴールディングス、ジミー・ジョンソンといったJTバンドの面々に、トム・スコット(テナーサックス)を加えてセッションを始める。ゲストとしてベース奏者のウィル・リーがボブ・ディランの「Watching The River Flow」を歌う。彼のボーカル、ブルースハープを聴くのは初めてだが、ウマイもんだ。アメリカのスタジオ・ミュージシャンの底力を見たような気がした。次にスコットの「Dirty Old Man」は、切れ味良いクロスオーバー・サウンドで、いつになくソリッドなジミー・ジョンソンのベースプレイを観ることができる。そういえば彼は、早弾きギタリストのヒーロー、アラン・ホールズワースのグループでベースを担当しており、そこではギンギンにプレイしているのだ。JTバンドでの控えめな演奏からは想像できないけどね。マイケル・ランドウはピックと指弾きを巧みに使い分けて、繊細で味のあるソロをとる。これを聴くと何故彼がJTのファーストコール・ギタリストであるかがよく分かる。ガッドの恩師であるEastern School Of Music のジョン・ベック教授が、若き日のエピソードを披露し、ドキュメンタリー・フィルム(Part 2)が流れる。エリック・クラプトン、ラス・タイトルマンなどのインタビューと、スタッフ(リチャード・ティー、エリック・ゲイル、コーネル・デュプリー、ゴードン・エドワーズ等と組んだスーパーグループ)での演奏シーンを観ることができる。「彼はドラムのパートを作曲(Compose)する」というコメントが印象的だ。ベース奏者アンソニー・ジャクソンのホメ過ぎスピーチの後に、セッション・バンドがチック・コリアの曲「Nite Sprite」を演奏する。ラリー・ゴールディングスのアグレッシブなソロが聴ける。第2部ではドラム奏者のヴィニー・コラウタが現れ、スタッフのレパートリーだった「Subway」を演奏する。ここでもジミー・ジョンソンのプレイは圧倒的。今晩はドラムスが主役とあって、リックもヴィニーも張り切ったプレイで最高だ。二人によるドラムスだけの曲「Duke's Lullaby」の後、スティーブが呼び出されて、表彰を受け感謝のスピーチを行う。

イベントも大詰めに近づいたところで、いよいよJTが登場し、「This year has been one of the best of my life. And no small part of that is due to my good fortune of having Steve Gadd in my band」と言って、オーディエンスの喝采を浴びる。スティーブがドラムセットに座り、 1.「October Road」が始まる。イントロのスネアドラムのマーチングバンドのような響きは彼の独壇場だ。その後トム・スコットのテナーサックスが加わり、4ビート・ジャズ・チューンのインスト曲「Things Ain't What They Uesed To Be」(デューク・エリントンの曲)を演奏してフィナーレとなる。本当に何でも演奏できるバンドだね!

DVDは上述の内容であるが、本イベントに係る当時の記事によると、第1部の最後にポール・サイモンが登場し、スティーブ・ガッドの必殺イントロプレイそのものが曲の良し悪しを決めたといえる「50 Ways To Leave Your Lover」を演奏したというが、残念ながらDVDではカットされている。またJTは、当夜は「October Road 」に続いて「Country Road」も演奏している。後者については、このDVDには入っていないと当初思ったが、DVD2枚目に収められた35分間におよぶスティーブ・ガッドのインタビューで、JTについてのパートで「Country Road」の話になり、「カルロス・ヴェガのためのトリビュートの気持ちで演奏している」と言い、そしてこの曲の演奏シーン(ドラムスのブレイクからエンディングまでの部分の映像)が挿入されるのだ。そしてそれが本当に高揚感があって素晴らしい!1曲通して収録して欲しかった気もするが、このパートだけを観ても物足りないと思わない位スゴイのだ。

本作は、教則本・DVDの出版社であるHal Leonard Corp.から発売された2枚組DVDで、上記のイベントの他、演奏曲のリハーサル・シーンや、スティーブ・ガッドの演奏フィルム(ドキュメンタリーに挿入されたもののノーカット版で、前述の陸軍バンドでの貴重な映像や、グルーヴ感が尋常でないスタッフのライブ演奏曲も含まれている)の他、アーティストとのインタビュー(ノーカット版)、スピーチ、など音楽以外のものが多くを占めるとは言え、全部で6時間10分という圧倒的な量を誇るアイテムだ。でも現地価格で49.95ドル、日本での輸入価格ではJTの曲を目当てとして購入するには目の玉が飛び出るような値段になってしまった。それでも普段は見ることができないJTバンドの顔をじっくり楽しむこともできたし、涙を飲んで買った価値はあったけどね!


[2007年12月作成]

E13  A Musicares Person Of The Year Tribute Honoring James Taylor (2006)  Warner Brothers


James Taylor : A. Guitar (12,13) Vocal (10,11,12,13)
Michael Landau : E. Guitar
Larry Goldings : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass  
Steve Gadd : Drums
Luis Conte : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Frugelhorn, Synthesizer
Lou Marini : Sax
Andrea Zonn : Violin, Back Vocal
Arnold McCuller, David Lasley, Kate Markowitz: Back Vocal

Dean Parks : A. Guitar
Rudy Guess : A. Guitar (19)

1. Shower The People Dixie Chiks (Natarie Maines : Lead Vocals, Martie Seidel : Violin, Back Vocal, Emily Erwin : Back Vocal)
2. Rainy Day Man  Bonnie Raitt (A. Guitar) 
3. Secret O' Life  India. Arie
4. Mexico  Jackson Browne, David Crosby, Sheryl Crow
5. You Can Close Your Eyes  Sting (Lute)
6. Everybody Has The Blues   Dr. John (Piano), Taji Mahal (E. Guitar)
7. Carolina In My Mind  Allson Krauss (Violin), Jerry Douglas (Dobro)
8. Country Road  Keith Urban (E. Guitar)
9. Millworker  Bruce Springsteen (A. Guitar)
10. You've Got A Friend [Carole King]  Carol King (Piano) & James Taylor  A3 A15 B16 C3 C4 E7 E8 E10 E14 E15
11. Shed A Little Light  James Taylor  A14 A15 B42 E7 E10 
12. How Sweet It Is (To Be Love By You) [Holland, Dozier, Holland]  James Taylor  A7 A15 B16 E1 E4 E5 E8 E10 E21
13. Fire And Rain  James Taylor  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E5 E7 E8 E10 E14 E15 E17 E21 E25


収録: 2006年2月6日 Los Angeles Convention Center
DVD 発売: 2006年10月


70年代に一世を風靡したロック・アーティストのなかには60歳を超える人が出てきて、トリビュートなるイベントが頻繁に行われるようになった。ということは、自分もそれなりに年をとったわけで、よくここまで来たもんだという感慨がある。JTに関するトリビュート・コンサートはこれが初めてで、彼自身壇上で、「How strange to be an event like this and still be alive」と言って、皆を笑わせている。ミュージケアーズは、NARAS (National Academy Of Recording Arts And Science、邦訳はレコーディング・アカデミー。グラミー賞を取り仕切っている団体)が1989年に設立した組織で、ミュージシャンの医療や老後の福利厚生に係る事業を行う他、ハリケーン・カトリ−ナにより大きな被害を受けたニューオリンズの復興支援などの社会貢献活動も行っている。ミュージケアーズは、1991年より毎年、大いなる貢献をしたアーティストを Person Of The Yearとして選出し、グラミー賞授与式の直前にパーティー開催し表彰している。最初は内輪のみで非公開だったセレモニーも、近年は資金集めのチャリティーショーとしてより豪華になった。本映像は2006年のJTのセレモニーの模様を撮影したものだ。過去の受賞者は以下のとおり。1991年デビッド・クロスビー、1992年ボニー・レイット、1993年ナタリー・コール、1994年グロリア・エステファン、1995年トニー・ベネット、1996年クインシー・ジョーンズ、1997年フィル・コリンズ、1998年ルチアーノ・パヴァロッティ、1999年スティーヴィー・ワンダー、2000年エルトン・ジョン、2001年ポール・サイモン、2002年ビリー・ジョエル、2003年ボノ、2004年スティング、2005年ブライアン・ウィルソン、2007年ドン・ヘンリー、2008年アレサ・フランクリン、2009年二ール・ダイヤモンド、そして2010年はニール・ヤングが予定されており、JTがゲスト出演する予定とのことだ。

DVDはまず、JTの事を「私とヒラリーの良き友人」と言うクリントン元大統領のスピーチから始まる。それからJTを紹介するフィルムが上映される。2001年の「The Concert For New York City」B40 における「Fire And Rain」、子供の頃の写真に続き、1969年のTV番組「Bobbie Gentry Show」で「Something In The Way She Moves」を演奏する若き日のJT、1979年のブロッサム・シアター(映像作品「In Concert」 E1)での「Steamroller」での姿、そして2004年の「Crossroad Guitar Festival」 E11で「Copperline」を演奏する映像の断片が映し出される。終了後、会場の拍手に促されてJTが立ち上がり軽く挨拶する。実はこの前後でポール・サイモンが登場し、「Sweet Baby James」を歌っているのだが何故か本映像ではカットされている。当日の新聞記事を読むと、「個性的な」という表現なので、恐らくポールがその出来栄えに満足しなかったためと推測される。ということで現在確認できるのは、彼の演奏風景を捉えた写真のみである。従ってDVD上は、ディキシー・チックスによる「Shower The People」から始まりとなる。彼らは2002年のテレビ番組「Crossroads」、2004年の「Vote For Change」でJTと共演しており、ここでもナタリー・メインズがJTに向けて最大限の賛辞を送っている。彼らは当時ブッシュ政権批判の発言のため、保守的なカントリー音楽界で排斥運動が起きるなどのトラブルを経験していたが、同じ民主党を支持するJTはそれをサポート。結果的に彼等は新たなファン層を獲得してグラミー賞を獲得、スーパースターの仲間入りをした。この曲はディキシー・チックスが前述のコンサートでJTと一緒に歌っていた曲で、ここではナタリーがリードボーカル、他の二人はコーラスを担当する。前述の共演では太めだったナタリーは、ダイエットのためかすっきりしたシェイプだ。バンドの演奏で重要な位置を占めるJT本人のギターの代わりに、セッション・ギタリストのディーン・パークスがアコースティック・ギターを弾いているのがサウンド面で特筆すべき点で、JTとは大きく異なるギターサウンドを付加している。いつもはJTのギターソロとなる間奏部分は、マーティー・シーデルがバイオリンを弾く。そしてエンディングのボーカルソロは、前半はアーノルド、後半はナタリーが担当する。続いてボニー・レイットが登場。1949年11月生まれなので、この時彼女は57歳。すっかり年をとり顔の皺も多くなったが、美しく老けているなあと思う。彼女は大学生の頃にJTの前座で出演し、彼にギターの弦を交換してもらった思い出を語っている。その彼女がギルドのギターを持ち、「JTのダークサイドに魅かれる」と言って歌う 2.「Rainy Day Man」は、ハスキーな歌声で貫禄たっぷりだ。3.「Secret O' Life」はネオ・ソウルの若手歌手、インディア・アリー(1975- )が歌う。彼女は2001年モータウンからデビュー、従来の黒人音楽の枠をはみ出したスケールの大きな音楽性を持っている人だ。彼女の歌は若々しく伸びやかで、会場の隅々まで伝わる感性が素晴らしく、新鮮な解釈は曲に新しい命を吹き込んだ。ここでもディーン・パークスのギターと、バンドがいつもと全く異なるサウンドを生み出している。ここでJTの友人ジミー・バフェット (C33, C47, C62参照) がスクリーン上に登場、写真を見せながら二人の共通点をおもしろおかしく述べる。次にシェリル・クロウ、デビッド・クロスビー、ジャクソン・ブラウンの3人が登場。ステージに立つのが本当にうれしそうなシェリルは、ミュージシャンを目指したきっかけは、12才の頃に両親が連れていってくれたJTのコンサートだったと告白する。彼女のリードボーカルに男性二人がコーラスを付ける 4.「Mexico」は、前向きな雰囲気たっぷり。ちなみにこの後もシェリルとJTの親交は続き、チャリティー・コンサートでの共演、タングルウッドでのJTのコンサートへのゲスト出演などがある。それにしてもジャクソン・ブラウンがチラッと見せる笑顔は魅力的。

スティングはリュート(といっても昔そのままではなく、現代的にアレンジされたもの)を持って登場する。1971年にJTのコンサートを観て、路線を変えてパンクバンド(Police)のベーシストになったと言い、オーディエンスを笑わせる。「もし間違えたら、それは練習不足ではなく、JTの前で演奏する緊張のためだ」と言って、弾き語りで演奏する 5.「You Can Close Your Eyes」は歌は素晴らしいが、楽器の演奏は間違いだらけで、スティングの魅力である鋭さに欠け残念。気取らないで普通のギターで演奏すればよかったのに.........。ここで漫談家のチーチ・マリン(1946- )が登場。彼は1970年代にトミー・チョンとの「Cheech & Chong」で大評判をとった人で、ライブハウスでの共演でロック・アーティストとの親交が厚かった。その後のソロ活動では、本業のトークの他に子供向けの音楽やアニメの声優もやっている。そして彼の紹介で、ブルース界代表としてタジ・マハールとドクター・ジョンが 6.「Everybody Has The Blues」を演奏する。JTは、過去にステージでタジの「She Caught The Caty (And Left A Mule To Ride)」をカバーしており、お気に入りのアーティストのようだ。彼のだみ声の歌と尖がったギター演奏は、凄い存在感。ドクター・ジョンは、どちらかと言えばピアノ演奏に集中しており、ブリッジと最後の掛け合いのみ歌うが、ライティングのミスで彼の顔がタジの影に入ってしまう時があり、可哀想。アリソン・クラウスとジェリー・ダグラスによる 7.「Carolina In My Mind」は本映像のベストトラックのひとつ。イントロの独奏から最後まで、ジェリーのドブロがガンガン鳴っていて、アリソンの草原を吹く風を思わせるボーカルと完全にマッチしている。バックの伴奏は控えめであるが、アンドレア・ゾーンがコーラスの他にビオラのような低い音を出し、間奏ではアリソンのバイオリンが参加し合奏となる。完璧としか言いようがないプレイだ。そしてキース・アーバン(1967- )による 8.「Country Road」は、文句なし本映像のベストだ。オーストラリア育ちの彼は、若い頃から才能を発揮。地元音楽界で成功した後に活動拠点をナッシュヴィルに移し、カントリー音楽界の若きスーパースターとなった。彼は、演奏前のスピーチで言っているように、JTバンドとの共演を本当に楽しんでいる。イントロのコーラスからJTの演奏とは異なるアレンジで、カントリー・ロックの魂あふれる歌と、独特の味があるエレキギターのプレイは筆舌に尽くしがたいほど素晴らしい。特に間奏におけるスティーブ・ガッドとの掛け合いはスリリングで、何度観ても鳥肌が立ってしまう。そして最後にアンドレアに合図を送ってバイオリンにソロを取らせるなど、バンドへの敬意もしっかり出ており、その態度は大変好感が持てる。彼はこのプレイでかなり男を上げたのではないかな?演奏終了後にちらっと写るニコール・キッドマン(二人は後に結婚)の勝ち誇ったような顔が印象的。

ここでブルース・スプリングスティーンが登場。大きな拍手と一緒にブーイングも聴こえ、彼は「孤立するんだよね〜 」と応えている。ここで彼が指摘する「JTは南部の声を持っている」という点はJTの魅力の秘密のひとつに迫っていると思う。そして彼が話す「The River」を一緒に歌ったというエピソードは、1995年4月12日のレインフォレスト・ファウンデイション・ベネフィット・コンサート(「その他断片 1990年代」を参照)での事だ。さらブルースが大好きな映画としてJTが出演した唯一の作品「Two Lane Blacktop 」(邦題「断絶」) 1971を上げているのが興味深い。さて肝心の 9.「Millworker」演奏は、コードやメロディーを変えて、すっかりブルース・スプリングスティーン風に染め替えているのが凄い。彼の音楽性に合った曲とも言え、ぶつけるように吹くハーモニカと合わせて聴き応え満点だ。そしてゲストのトリを務めるキャロル・キングが登場。「何よりもこの曲が物語るでしょう」といって 10.「You've Got A Friend」を始める。演奏中よく見ると、近年彼女の伴奏を担当するルディー・ゲスがアコースティックギターを弾いているのが見える。ブリッジの途中からJTがサプライズで登場。ピアノの椅子に座り、一緒に歌う。観客はスタンディング・オーベイションで応える。ここでニール・ポートナウが再登場し、彼に賛辞とアワードを送る。JTは冒頭のジョークをかました後に、バンドの紹介をし、スタッフと家族の名前を読み上げ感謝の意を送る。最後に弟リヴィングストン・テイラーの名前が出て、彼は立って挨拶する。ここからはJT本人の演奏となり、マ−チン・ル−サー・キングの誕生日に書いたという 11.「Shed A Little Light」は、リベラルな雰囲気に溢れた会場の雰囲気を象徴している。フィナーレの12.「How Sweet It Is」では、二人の息子ヘンリーとローガンを連れて壇上に上がったリヴィングストンが1節歌う。本映像は、イベントに参加したセレブのショットが随所に挿入されるが、アーロ・ガスリーが写ったのにはビックリ。エンディングのR&B風アップテンポの乗りの部分で、異なる反応を示す双子の仕草が面白い。アンコールではJTは椅子に座り、13.「Fire And Rain」をしっとりと歌う。 

この手のトリビュート・コンサートの中でも出色の出来だと思う。エンディングのクレジットを見ていたら、ミュージカル・ディレクターにフィル・ラモーンの名前があった。むべなるかな。何度観ても聴いても味わい深いのは、バックバンドの素晴らしさと、アーティスト達のJTおよびJTの音楽に対する愛情が生み出す素晴らしい雰囲気によるものが大きいと思う。

[2009年11月作成]


E14  One Man Band  James Taylor (2007)  Hear Music



James Taylor : A. Guitar, E. Guitar (10, 13), Vocal
Larry Goldings : Keyboards

[First Set]
1. Something In The Way She Moves  A1 A15 B3 B10 B18 B41 E5 E15
2. Never Die Young  A13 B44 C85 E5
3. The Frozen Man  A14 E7 E10
4. Mean Old Man  A17 B48
5. School Song * [Larry Goldings]
6. Country Road  A2 A15 B6 E7 E15 E25
7. Slap Leather  A14 A15
8. My Traveling Star  A17
9. You've Got A Friend  [Carole King]  A3 A15 B16 C3 C4 E7 E8 E10 E13 E15
10. Steamroller Blues A2 A15 B10 E1 E5 E8 E10 E11

[Second Set]
11. Secret O' Life  A9 A15 B27 B28 E1 E7 E25
12. Line 'Em Up  A16 B36 E8
13. Chili Dog  A4
14. Shower The People  A8 A15 B16 E5 E6 E8
15. Sweet Baby James  A2 A15 B3 B5 E1 E4 E5 E7 E10 E15 E17
16. Carolina In My Mind  A1 A1 A15 B3 B10 B16 B22 B25 B26 B41 B46 E1 E5 E10 E15 E25
17. Fire And Rain  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E5 E7 E8 E10 E13 E15 E17 E21 E25
18. Copperline  A14 A15 B33 B41 E7 E10 E11 E20
19. You Can Close Your Eyes  A3 B3 B4 E4 E7 E8 E10 E15

* JT非参加

Don Mischer : DVD Producer, Director
Dave O'Donnell, James Taylor : CD Producer

収録: 2007年7月19, 20日 Colonial Theatre, Pittsfield, MA
DVD・CD 発売: 2007年11月

 
このホームページは、全曲解説をモットーに曲の背景や構成、エピソードなどをなるべく詳しく書くことにしています。しかし、本作での彼の「語り」は作品そのものであり、ここでその内容の詳細を伝えることは、この記事を読んでから初めて鑑賞する人々にとって、作品の魅力を大いに損なうことになると思われます。そのため本作の紹介記事を書くにあたり、どうしようか大いに迷いました。私は、本HPの利用方法につき注文をつけるつもりはありませんが、まず最初にさっと見ていただき、もし興味があれば作品を購入。そのうえでじっくり読んでいただければよいなと思っています。実際のところ、作品についての「ネタバレ」的なことも多く書いており、それが作品の鑑賞の妨げになるケースもあり得るわけですが、記録・資料として残すにはこれでもよいかなと思ってやってきました。以上の理由により、本作については、JTの語りの内容を詳しく書くことを、あえて差し控えたいと思います。したがって本作に係る記事はさっぱりした内容になり、資料としては物足りないかもしれませんが、ご了承ください。

本作は、大半の曲につき、JTのギターとラリー・ゴールディングスのキーボードのみの伴奏で行ったライブコンサートの模様を収録したものであるが、プロジェクターによる映像を利用したJTの語りが大きな要素を占めている。デビュー当初は、コンサートでの「お喋り」が苦手だった彼が、年齢を重ねるつれて磨いてきた話術の総決算と言えるものだ。「ワンマン・バンド」と名づけられたツアーの実施記録は以下のとおり。

1. 2006/3/3 - 5/13   全米 24ヶ所 25回
2. 2006/10/7 - 11/18 全米 13ヶ所 19回 (フルバンドのサマー・ツアー後に再開されたもの)
3. 2007/2/13 - 2/24  カリフォルニア 2ヶ所8回
4. 2007/4/11 - 4/30  イギリス 12ヶ所
5. 2007/7/14 - 7/20  バーモント、マサチューセッツ 2ヶ所4回 (本作品が収録)
6. 2007/8/15 - 8/24  アメリカ東部 5ヶ所 (その後フルバンドのツアーを秋に実施)
7. 2008/3/29 - 4/23  ヨーロッパ各地 11ヶ国 15ヶ所

以上の記録からワンマン・バンドは、約2年間にわたり、通常編成のツアーを間にはさみながら行われたことがわかる。JTのキャリアにおいて、コンサート活動のほとんどはフルバンドの伴奏付きのもので、弾き語りまたは少人数でのステージは、1970年以前のデビュー当時のものを除くと、私が知る限り、1975年のケープコッド、1986年のシャルロットなど、数えるほどしかなかった。JTによると、この企画の動機は「初心に戻ること」だったというが、定評が高い彼の弾き語りによるコンサートを望むファンの要望(私もその一人だった)、バックバンドとのコンサートを長期間行ってきたことによるマンネリの打破などが理由にあげられ、完璧主義のJTは、自己の体力・気力が十分なうちにやろうと思ったんじゃないかな? 2006年3月に行われた初期のコンサートの音源を聴くと、構成およびJTの語りの内容は本作とほとんど同じであることがわかる。ワンマン・バンドは、最初から入念な準備を経て実施された企画だったのだ。ただし、初期のコンサートでは、「Slap Leather」が「The Frozen Man」の前に演奏されていたり、「Line 'Em Up」の後に本作では演奏されていない「Valentine's Day」があったり、「Copperline」の代わりに「The Nearness Of You」が歌われていたりと、演奏曲目や曲順に若干の相違があり、JTとスタッフがコンサートをやりながら微調整を行っていたことがわかる。 本作品の収録は、このフォーマットによるコンサートを始めてから約1年3ヵ月後であり、最も充実した時期を選んだことは間違いない。開催地のピッツフィールドはマサチューセッツ州内陸部のバークシャー山地にあり、JTの地元として、知り合いや昔からの忠実なファン(演奏中に叫んだり口笛を吹いたりしないなど、ビデオ製作に対し大変協力的な人達)が多い地域だ。そして会場のコロニアル・シアターは1903年建設の古い劇場で、1950年に老朽化のために閉鎖されたが壊されずに保存され、その後修復のうえ2006年にリオープンした歴史的建造物だ。本作はそういう内輪的な雰囲気に満ちており、何ともいえない暖かさを感じる。

本DVDは、バークシャー山地、ピッツフィールドの町と会場の風景が写り、JTがコンサートを企画した動機、会場や地元への思いを述べるところから始まる。そしてJTが登場し、ギターを取り上げて 1.「Something In The Way She Moves」を演奏する。小さな劇場だけど、内装はとても豪華だ。ステージの中央にJTが座り、ステージに向かって彼の左にラップトップのパソコンが机の上に置かれ、右にはスクリーンが吊り下がり、舞台の左手にはグランドピアノが置いてある。ステージセットはとてもシンプルかつクラシカルで、赤い緞帳が鮮やかだ。続いてラリー・ゴールディングが登場し、作曲についての話の後、2.「Never Die Young」を丁寧に歌う。ラリーのピアノは間奏でのソロも含めて、控え目なプレイだ。3.「The Frozen Man」についての語りは、以前からコンサートで行われていたが、その内容には一層の磨きがかけられている。本作品での彼の語りは、コンサートで以前から話していたものもあるし、この企画のために新たに書き下ろしたものもあるようだ。JTの話は、Gentle、Politeで、かつDarkなもので(これは英語で言わないとニュアンスが正確に伝わらないですね)、ここではその本領が遺憾なく発揮されている。かなり辛らつなことも言っているのだが、嫌味にならないのは、彼の品格の良さのためだろう。JTが語りながらフットスイッチを押し、画面が切り替わってゆく。ここではラリーが弾くヤマハ製のグランドピアノが、エレキピアノのような音を出している。親指で素早くベースノートを弾くJTのギター演奏の上手さが際立っている。4.「Mean Old Man」で、JTはギターを置き、立って歌う。ラリーのピアノ伴奏が絶品で、モダンスタイル、昔風のストライド奏法を取り混ぜて、思いのままに弾いている。ジャズピアニストの面目躍如たるプレイだ!曲の最後で、スクリーンはテイラー夫妻のスナップショットになり、カメラは観客席のキムと双子の息子の姿をとらえる。ラリー・ゴールディングスの紹介に続き演奏される 5.「School Song」はラリーのソロ。ジャズ臭さがないノスタルッジクな香りがする小品で、 6.「
Country Road」のイントロの役割を果たしている。ここでのラリーのピアノは、抑制が効いた無駄のないプレイで、JTのギターとの絶妙のアンサンブルが楽しめる。ここでアナログにこだわったJTが作ってもらったという究極のドラムマシーンが登場し、JTは工事現場で使うようなハンドマイクを手に7.「Slap Leather」を歌う。ラリーはピアノの上に設置されたオルガンを弾く。8.「My Traveling Star」では、奥さんが所属する Tanglewood Festival Chorus のメンバー16人がリハーサル・スタジオで予め録音したコーラスをバックにJTが歌う。スクリーンにはコーラスの面々が写り、真ん中にはキムがいる。ラリーは、携帯式の足踏みオルガンを弾いている。トゥルバドール、キャロル・キング、ジョニ・ミッチェルの話になり、9.「You've Got A Friend」が歌われる。エンディングのアドリブボーカルで、JTは街の名前を口にし、オーディエンスは大喜び。休憩前の最後の曲として、フェンダー・テレキャスターに持ち替えたJTは、 10.「Steamroller Blues」を演奏する。ラリーのオルガンに続き、JTのギターが間奏でソロを取る。エンディングのアドリブボーカルでのJTの豊かな表情が真に魅力的。

セカンドセットは、11.「Secret O' Life」から。JTのギターのピッキング音の綺麗さは、ひとつひとつの音の粒がキラキラ輝いているようだ。ここでのラリーのグランドピアノは、完全にエレキピアノの音になっている。12. 「Line 'Em Up」の曲の由来は、以前からJTがコンサートで話していたものであるが、今回はスクリーン映像がある分、より視覚的で面白いものになっている。曲の後編では、様々な「Line」のイメージの映像が出てくるが、ボストン・レッドソックスの集合写真が写ると、オーディエンスから歓喜の拍手が起きる。映像と音楽のアンマッチの例として、JTが「You've Got A Friend」のコーラス部分を弾くジョークの後、JTは再びエレキギターを手にして、再登場したドラムマシーン、ラリーのオルガンと一緒に、懐かしい 13.「Chili Dog」を演奏する。ラリーの得意楽器オルガンのプレイは、切れ味抜群だ。聴き慣れないピアノの独奏から始まった 14.「Shower The People」では、コーラス隊が再登場、エンディングのソロ・ボーカルは久しぶりにJTがとる。15. 「Sweet Baby James」では、JTはロイ・ロジャース、ジーン・オートリー風のカウボーイ・ララバイを作ったと語り、ジーン・オートリーの映像をバックに歌い始める。JTが「ボストン」と歌う歌詞のところでは、地元コンサート恒例の拍手喝采が起きる。最後の曲として演奏される 16.「Carolina In My Mind」では、JTの語りの妙をたっぷり楽しむことができる。初期の頃は何も喋れなかった若者がよくもここまで上手くなったもんだ。人間何でも努力すれば上達するんですね。  

アンコール最初の曲は 17.「Fire And Rain」。それにしても本作でのアコギの録音の良さは、異常な程だ。18.「Copperline」では、二人の名手による美しい演奏にどっぷり浸りましょう。ここで二人は退場し、再度アンコールとなる。一人でステージに出てきたJTは、オーディエンス、会場関係者への感謝と、劇場への賛辞を述べて、最後の曲 19.「You Can Close Your Eyes」を歌う。本作では、JT一人による弾き語りは最初と最後の2曲だけだ。コンサート終了後に、ステージ上でサインや挨拶などで、ファンへのサービスを行うJTの姿を写しながら、プロダクション・クレジットが流れる。そのなかに、語りが彼のオリジナルであることが示す「Written by James Taylor」という表示もある。またバックの音楽で、JTによるアコギのインスト曲が流れるのが面白い。DVDのプロデューサー、監督はテレビ業界で活躍する人で、過去に13個のエミーを獲得したという。またCDのプロデューサーとしてJTと一緒に名を連ねるデイブ・オドネルは、録音エンジニアとして有名な人。なおDVD Executive Producer として、シドニー・ポラックの名前があるが、2008年に亡くなった映画監督(代表作「追憶」1973、「トッツイー」1982、「アウト・オブ・アフリカ」1985) と思われる。

DVDには特典映像「Outtakes」として、JTの語りのボーナスシーン、「Carolina In My Mind」の冗談演奏を観ることができ、大変なお楽しみだ。本作品は、上記のDVDと、音楽鑑賞用に曲のみを収めたCDのセットからなっていて、スターバッグの関係会社である Hear Music から発売され、日本ではユニバーサル・ミュージック社から配給された。また本映像は、米国ではPBS (The Public Broadcasting Service)系列のテレビ局で放映され、日本でも2009年9月21日にBSハイビジョン「ワールド・プレミアム・ライブ」で放送された。でもこの番組の放送時間 90分に対し、本映像は約2時間あるので、曲や語りの一部がカットされたと思われる。


[2010年5月作成]

[2023年3月追記]
本映像は、JTの好意により、2022年11月に1週間のみYouTubeで観ることができた。


E15  Live At The Troubadour  Carole King & James Taylor (2010)  Hear Music 



 



James Taylor: Vocal, Acoustic Guitar
Danny Kootch: Electric Guitar, Acoustic Guitar (13)
Carole King : Vocal, Piano
Russ Kunkel: Drums
Leland Sklar: Bass

1. Blossom  A2 B3 E1
2. So Far Away [Carole King] C3
3. Machine Gun Kelly [Danny Kortchmar] A3 C98
4. Carolina In My Mind  A1 A1 A15 B3 B10 B16 B22 B25 B26 B41 B46 E1 E5 E10 E14 E25
5. It's Too Late [Carole King, Toni Stern] 
6. Smackwater Jack [Gerry Goffin, Carole King]
7. Something In The Way She Moves  A1 A15 B3 B10 B187 B41 E5 E14
8. Will You Still Love Me Tomorrow ? [Carole King, Gerry Goffin]  C3 C4 E28
9. Country Road  A2 A15 B6 E7 E14 E25
10. Fire And Rain  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E5 E7 E8 E10 E13 E14 E17 E21 E25
11. Sweet Baby James  A2 A15 B3 B5 E1 E4 E5 E7 E10 E14 E17
12. I Feel The Earth Move [Carole King]  
13. You've Got A Friend  [Carole King]  A3 A15 B16 C3 C4 E7 E8 E10 E13 E14
14. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]  A10 A15 B16 B40 C1 C4 E1 E5 E8 E28
15. You Can Close Your Eyes  A3 B3 B4 E4 E7 E8 E10 E14

Carole King & James Taylor : Creative Producer
Sam Feldman, Lorna Guess, Michael Gorfaine : Executive Producer
Peter Asher : Audio Producer
Nathaniel Kunkel : Recording & Mixing Engineer
Martyn Atkins : Video Producer

収録: 2007年11月28〜30日、Troubadour Club, Los Angeles
DVD・CD 発売: 2010年5月

写真: 上 ジャケット写真
     中 コンサートのポスター
     下 会場写真


 
トルバドゥールは、ロスアンゼルスのウエスト・ハリウッドにあるナイトクラブで、1957年の開業以来多くのアーティストがここを登竜門として有名になった。特に1960年代後半〜1970年代は、シンガー・アンド・ソングライター・ブームの中、エルトン・ジョン、リンダ・ロンシュタット、ジョニ・ミッチェル、ジャクソン・ブラウン、ボニー・レイット、ヴァン・モリソン等の他、レニー・ブルース、チーチ・アンド・チョン、スティーブ・マーチンのようなトーク・ショーの話し手、コメディアンも多く輩出した。JTは1969年7月がソロによる初ステージで、1970年11月24〜29日にはバンドで出演。その時彼は、当時ピアノを担当していたキャロル(以下「CK」と略す)による新曲「You've Got A Friend」に惚れ込み、ギターにアレンジして歌ってみせたところ、当時「Tapestry」の製作中だったCKがこの曲のシングル・リリースをプレゼント。そしてJT唯一の全米1位ヒット曲が生まれたというエピソードは有名。彼女がこの曲を歌った日は、前座でのソロ、JTバンドのステージでのゲスト、リハーサルのいずれだったのか、いろいろな記事やインタビューを読んでもはっきりしなかった。ちなみにCKについては、1971年5月、同所に出演した際の音源(チャールズ・ラーキーとダニー・クーチが一部参加している以外はソロ)が残っている。

本コンサートはトルバドゥール開業50周年を記念して企画されたものだ。JTとCKの共演は、バンドメンバーとしては1972年、レコーディングでは1975年までで、その後は特別なチャリティー、支援コンサート、各種アワードのセレモニーでのみだったため、今回のような本格的な共演は実に約35年ぶりということになる。1970〜1972年の共演コンサートにおけるCKのパフォーマンスは、「Up On The Roof」をゲストとして歌った1970年10月22日の音源もあるが、概ねピアノ伴奏に徹しており、当時彼女がステージ恐怖症で人前で歌う自信がなかったことが理由という。ちなみに1971年6月18日のCKのNY凱旋コンサート(C4参照)には、JTがゲストで出演していた。少なくとも当時は、今回のコンサートのように各自のレパートリーを交互に歌うということはなかったはずで、厳密には「reunion」といっても、ありのままではないことになる。といっても、JTが「なるべく当時のままにした」と言っているとおり、オリジナル・メンバーによる5人の演奏は、その後導入されたシンセサイザーや新しいリズム、奏法、エフェクトを一切排除し、選曲もJTでは「Mud Slide Slim」1971 A3まで、CKでは「Tapestry」 1971 C4までと、当時演奏した曲・サウンドで再現しようとしている。そういう意味では、その後行われた、シンセやバックコーラスを入れてアレンジも変え、後年に作られた曲も演奏したリユニオン・ツアーとは、根本的に異なるポリシーとなっている。本コンサートの実施が発表された際は、大変な話題となり、わずか3日間、6ステージ、ロスアンゼルのみということで、世界中のJT、CKのファンからは羨望の声が多くあがったものだった。地元の人でも、コネがなければ225ドルのチケット(チャリティー・コンサートとして高額にセットされたもの)の入手も難しかったはずで、オーディエンスには、ミュージシャンの家族・親戚、音楽・映画関係者が多かったという。その模様は、しばらくの間は米国のニュース映像やオーディエンス・ショットなどで断片的に見れるだけだったが、何も発売されないのかなあと諦めかけた2年半後の2010年5月になってDVD + CDで公式発売された。それは同年3月から7月まで、オーストラリア、日本、アメリカ、カナダで行われたリユニオン・ツアーのプロモーションを兼ねたものだった。以下DVDの内容に基づき解説しよう。

DVDは、会場の外観と内部のショットから始まり、コンサート前のステージのシーンのバックに、JTとCKのコメントとサウンドチェックの音が流れる。二人がステージに登場し、すぐに1.「Blossom」を始める。JTのギターは丁寧なプレイで、CKのピアノが優しく寄り添う。JTは、メロディーやタイムを崩しながら、自由な感じで歌う。彼の声は少しドライな感じで、艶やかさに欠ける感じがするが、年齢のせいだからしようがない。収容人員300〜400人で立ち見という狭い会場のため、カメラマンの撮影には制約が多かったはずで、カメラを持ちながら、オーディエンスの邪魔にならないように移動するのは大変だっただろう。そのせいか、観客の頭越しのシーンや、手振れも多い撮影となっているが、その点は情状酌量すべきだろう。曲が終わった後、CKは「今回、昔演っていたこの曲を聴き直しました。頭は覚えていなかったけど、手は大丈夫、心は全く問題なかったわ!」とコメントし、皆の喝采を浴びている。ベースが加わった 2.「So Far Away」でのCKの声はかすれ気味であるが、心がこもった歌いっぷりで、昔よりも説得力が増しているような気がする。このように両者の曲を交互に歌っても違和感は全くなく、二人の音楽の親和性を改めて感じさせるものだ。全員がそろった演奏 3.「Machine Gun Kelly」は、リズム・セクションの感覚が1970年代初めのシンプルでストレートなグルーヴに満ちていて、素晴らしい。ここで、オーディエンスから送られた花束や、曲についてのエピソードなどのJTやCKの語りにつき、CDでは一部カットされていることに気がつくが、音楽の自然な流れを重視したためであろう。

4. 「Carolina In My Mind」は、ファースト・ヴァースの途中からピアノが入り、セカンドから他のメンバーが加わる。この曲については、数多くのスタジオ、ライブ録音を聴いてきたが、CKのピアノの力強い響きが最高だ。5.「It's Too Late」が始まるとオーディエンスから拍手が起きる。間奏におけるダニーのギターソロも含め、ここでの抑え気味の演奏はとても味わい深いものだ。6.「Smackwater Jack」を歌う際、CKはピアノの演奏をバンドのキーボード奏者に任せるのが通例であるが、ここでは自分で弾きながら、楽しそうに乗り乗りで歌っている。ダニーのギターもギンギンで、エンディングでJTがハーモニーを付けて盛り上がる。7.「Something In The Way She Moves」の紹介にあたり、JTはいつものアップル・レコードのオーディションのエピソードを披露した後、恩人としてミキシング・ルームから顔をのぞかせているピーター・アッシャーを紹介する。ここではJTのギターとリーのベースのみによる演奏であるが、コーラスの部分ではピアノ椅子に座ったCKが口パクを見せる。その表情が誠に魅力的で、アメリカ女性の象徴と言えるような笑顔が素晴らしい。ちなみに、後のリユニオン・ツアーでは、CKは実際にハーモニーを付けている。8.「Will You Love Me Tomorrow ?」の紹介で、CKは作詞を担当した当時の夫ジェリー・ゴフィンの話をするが、CDでは一部カットされている。とても丁寧で誠実な演奏で、特にコーラス部分でJTが付けるハーモニーは、何回聴いても感動してしまう。9.「Country Road」は、やはりこのメンバーが一番!後のアレンジの定番となったエンディングにおけるボーカルとドラムスの掛け合いのシーンもなく、当時のオリジナルに忠実な演奏で通している。10.「Fire And Rain」で、JTはラスのドラミングに対する賛辞を述べるが、CDではカットされている。 11.「Sweet Baby James」は、いつものJTの弾き語りではなく、バンドの伴奏付きで、CKがハーモニーを付けている。12.「I Feel The Earth Move」では、JTはギターをテレキャスターに持ち替え、ダニーのギターソロをフィーチャー、CKもガッツのある歌、ピアノ演奏を見せる。 13. 「You've Got A Friend」で、JTはCKに感謝の念を伝えて、二人で交互に歌う。ダニーはギターをギブソンのアコギ J160Eに持ち替えている。エンディングでは、CKがアドリブで「もうないと思っていたけど、ここでもう一度共演できたわ」というボーカルを入れている。本コンサートでは、14.「Up On The Roof」のみ、当時とは異なるアレンジ・構成で、最初はCKがピアノ主体で淡々と歌い、次にJTがキーを変えて、彼のバンドのアレンジで歌う。ブリッジで再びキーが変わってCKがボーカルを担当。そしてまたキーが変わってJTが歌い、最後は二人による合唱となる。ここであいさつの後バンドは退場、アンコールでは二人が登場し、15.「You Can Close Your Eyes」を一緒に歌ってお終いとなる。

当時のシンプルなバンドサウンドの醍醐味全開で、メンバー全員から発散されるオーラが聴く者の心に染み入る音源。単なる回顧趣味のコンサートとは次元を異にするスピリチュアルな雰囲気に溢れている。

[2013年7月作成]


E16  A Hundred Miles Or More (2008) [Alison Krauss]  Rounder







Alison Krauss : Vocal
James Taylor : Vocal
Ron Block : Classical Guitar
Grodon Mote : Piano
Barry Bales : Upright Bass
Greg Morrow : Drums

1. How's The World Treating You [Chet Atkins, Boudleaux Bryant] C80


注) 写真上: DVD (2008年発売)
   写真下: CD (2007年発売)

人気絶頂のアリソン・クラウスが2007年に発表したコンスピレーション・アルバム「A Hundred Miles Or More」は、過去に発表された映画のサウンド・トラック曲に、本作のために新たに録音された曲を加えたもので、そこには2003年のJTとのデュエット(C80参照) 1.「How's The World Treating You」の新しいバージョンも収録された。さらに翌年2008年には、このアルバムのために新たに録音されたセッションの模様を写した9曲入りの映像も発売された。

これら9曲は、ナッシュビルにあるトラッキング・ルームというスタジオでライブ録音されたもので、彼女のバックバンドであるユニオン・ステイション(ジェリー・ダグラス: ドブロ、ダン・ティミンスキー:マンドリン、ロン・ブロック:バンジョー、ギター、バリー・ベイルズ:ベース)に加えて、トニー・ライス(ギター)、サム・ブッシュ(マンドリン)、ステュアート・ダンカン(ギター、フィドル)、アブラハム・ラボリエル(ベース)などの著名プレイヤーと、ジョン・ウェイト、ブラッド・ペイズリーといったゲストシンガーが参加して豪華なセッションとなった。JTはユニオン・ステイションの二人に、セッション・プレイヤー、シンガー・アンド・ソングライターとして売り出し中の盲目のピアニスト、ゴードン・モート、カントリー音楽界の有力セッション・ドラム奏者、グレッグ・モローが伴奏を務めている。アレンジ的には、2003年のオリジナル録音とあまり変わらないが、ギターとピアノの音の味わい深さは筆舌に尽くし難い。アリソンとJTのボーカルも最高!

他の曲では、やはりトニー・ライスのギターが素晴らしい(それにしても久しぶりに見る彼の老け様にはびっくり!)。2007年にロバート・プラントとのデュエット・アルバムを発表し、ますます多くのファンを獲得ている彼女の才能溢れる姿を楽しむことができる。DVDの最後、クレジット表示の後に、本曲の録音の際のNG場面が入っており、曲の最後の部分で、いつもは完璧な彼女が間違えて、照れ隠しにおどけるシーンが微笑ましい。


[2010年9月作成]


E17  Elvis Costello Spectacles Season 1 (2009) [Various Artists] Video Service Corp


James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Michael Landou : Electric Guitar
Jimmy Johnson : Electric Bass
Steve Gadd : Drums
Arnold McCuller : Back Vocal (2,4,7)
David Lasley : Back Vocal (2,4,7)
Kate Markowitz : Back Vocal (2,4,7)

Andrea Zonn: Back Vocal (2,4,7), Violin (4,8)

Elvis Costello : Acoustic Guitar (1,5), Vocal (1,3,5)
Laura Cantrell : Side Vocal (1)

Sir Elton John : Executive Producer

1. Bartender's Blues
2. How Sweet Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland] (Instrumental)
3. She Thinks I Still Care [Steve Duffy, Dicky Lee Lipscomp] (部分) A15
4. Why Baby Why [Darrell Edwards, George Jones] A20
5. Crying In The Rain [Carole King, Howard Greenfield] C57 C66
6. Fire And Rain A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E5 E7 E8 E10 E13 E14 E15 E21 E25
7. That Lonesome Road A11 A15 B47
8. Sweet Baby James A2 A15 B3 B5 E1 E4 E5 E7 E10 E14 E15
9. Hippopotamus Song A Muddy Love Story [Michal Flanders, Donald Swann] (部分)

注) 1.2. はJT非参加

収録: 2008年9月16日 Apollo Theatre, New York
放送: 2008年12月24日 Sundance TV (USA)、CTV (カナダ)
発売: 2009年11月


「Spectacle: Elvis Costello With ....」は、エルトン・ジョンがプロデューサーとなって製作されたテレビ番組で、ハービー・ハンコック、ルウ・リード、ザ・ポリス、ダイアナ・クラール、ノラ・ジョーンズ、トニー・ベネット等、錚々たるゲストを招いたものだった。エルヴィス・コステロによるインタビュー、ゲストの曲のカバー、ゲストの演奏、そしてセッションという興味深い構成。JTは第4回目 12月24日の放送に登場した。

小さな劇場でオーディエンスを前にした撮影で、9月16日ニューヨークのアポロ・シアターでの収録。オープニングでエルヴィスは、JTの曲 1.「Bartender's Blues」を、マーチンOM-45を弾きながら少しかすれ気味の声で歌う。コーラス部分では、カントリー音楽界の若手シンガー、ローラ・カントレルがサイドボーカルをつける。若い時のシャーロット・ランブリングを思わせるクールな美貌が印象的な女性だ。いつものバックバンド(何故かラリー・ゴールディングスがいない)が 2.「How Sweet Is (To Be Loved By You) 」を演奏するなか、エルヴィスの紹介でJTがステージに登場する。JTは、ここでは挨拶するだけで歌わない。この曲でのピアノなしの演奏って、ちょっと不思議な感じだね。

番組はエルヴィスとJTの語りに演奏を交えて進行する。まずは自己の音楽ルーツの話から始まる。エルヴィスが切り出したビング・クロスビーから、レッドベリー、ウッディ・ガスリー、そしてカントリー音楽の話になり、JTはノースキャロライナでの子供時代多く聴いたと言う。「Bartender's Blues」はジョージ・ジョーンズを意識して作曲したという話のなかで、JTは 3.「She Thinks I Still Care」をカバーした(「Live」 1993 A15に収録)と言い、エルヴィスの「今でもできる?」という問いかけに応え、ふたりでこの曲の1節を歌う。ここでエルヴィスが、「クロスビー、シナトラ、ビリー・ホリデイ、マール・ハガード、ジョージ・ジョーンズ、そしてあなたの声は、アメリカから世界への贈りものだ。音楽のジャンルにかかわりなくね!」と言い、JTは恥ずかしそうな反応する。続いて歌われる 「Covers」に収録されたジョージ・ジョーンズの曲 4.「Why Baby Why」は、コーラス隊とバンドによる演奏。それにしてもデビッド・ラズリーは太ったなあ〜!曲作りの話になり、キャロル・キングについて語った後に演奏される 5.「Crying In The Rain」はJTとエルヴィスのデュエットだ! エルヴィスはギブソンのセンチョリー・モデルを抱えている。アート・ガーファンクルのデュエットとは違う味わいがあり、とてもいい感じだぞ。 曲が持つ意味についての話の後で演奏される 6.「Fire And Rain」は定番曲だけど、キーボードがない分、マイケル・ランドウやジミー・ジョンソンのプレイがはっきり聴こえるので、ユニークで美味しいアイテムとなった。7. 「That Lonesome Road」は、学生時代に賛美歌を習ったことの影響への言及の後、コーラス隊とアカペラで厳かに歌われる。 JTは曲の由来についてのおなじみの内容を語り、7.「Sweet Baby Jame」を歌う。

最後の挨拶を済ませた後、JTがエルヴィスの耳に何か囁き、二人は突然アカペラで「Mud ! mud ! Glorious mud ! Nothing quite like it for cooling the blood. So follow me, follow, down to the hollow. And we will wallow in glorious mud」と歌いながら退場し、オーディエンスの笑いと喝采を受ける。この曲は「Hippopotamus Song A Muddy Love Story」。イギリスとの俳優、歌手のマイケル・フランダース(1922-1975)と、作曲家、ピアニストのドナルド・スワン(1923-1994)によるもので、彼らが1959年に二人だけで演じたレビュー「At The Drop Of A Hat」のなかで歌われたコミックソングだ。この舞台は、マイケルが車椅子、ドナルドはピアノの椅子に座ったまま演じたが、抱腹絶倒のトークと歌で大当たりとなり、その後10年間世界各地で上演されたという。1959年にロンドンのフォーチュン・シアターの公演を収録されたライブ録音は名盤といわれている。ちなみに1991年にはこの曲を題材として、2匹のカバの恋を描いた同名の絵本が発売されている。番組ではエルヴィスがメロディーを、JTは低音のハーモニーを担当している。

なお本番組は好評のため、セカンド・シーズンが製作され、ブルース・スプリングスティーン、ルーファス・ウェインライト、ボノ等の大物が出演している。また2009年11月、当番組のDVDボックスが「Elvis Costello: Spectacles Season 1」として全米で発売され、日本でも2011年1月に発売された。

[2011年1月追記]
その他・断片 (2000年代)のコーナーから移りました。



E18  The Library Of Congress Gershwin Prize For Popular Music (2009) [Paul Simon And Friends]  Shout! Factory



James Taylor : Vocal, A. Guitar (1)
Hammingbirds : Back Vocal (1)
Harper Simon : E. Guitar
Vincent Nguini : E. Guitar
Clifford Carter : Piano
Tony Cedras : Keyboard
Bakithi Kumalo : Bass
Steve Gadd : Drums
Jamey Haddad : Percussion
Andy Snizer : Sax (2)
Jay Ashby : Trombone (2)
Jim Hynes : Trumpet (2)

1. Slip Slidin' Away [Paul Simon]
2. Still Crazy After All These Years [Paul Simon]

収録: 2007年5月23日 Warner Theater, Washington D.C.
DVD 発売: 2009年5月


ワシントンにある Library Of Congressが、文化振興活動の一環として、ポピュラー音楽の作曲家を対象とした「Gershwin Prize For Popular Song」の表彰を始め、初年度はポール・サイモンが選ばれた。その授賞式および記念コンサートが2007年5月23日ホワイトハウスの近くにある由緒ある劇場、ワーナー・シアターで行われ、その模様の一部が6月23日、PBSネットワークにより全米に放送された。コンサートにはアート・ガーファンクル、スティーヴィー・ワンダー、ライル・ラボット、ショーン・コルヴィン、アリソン・クラウス等多くのアーティストが参加した。

バックバンドは、ポールのアルバムに参加していたミュージシャンが中心で、Vincent Nguin、Bakithi Kumalo(発音が判らないので英語のままで表記した)は、アルバム「Graceland」1986、 「The Rythm Of The Saitns」1990 の頃からの付き合い、ドラムスはやっぱりスティーブ・ガッドじゃなきゃーね! ステージ左前に立ち、ギターを弾きながらバンドを指揮する長髪の男は、ポールと最初の妻ペギーの息子ハーパー・サイモン(1972年生まれ)だ。彼はポールや友人のショーン・レノンの作品に参加、後にポールの奥さんとなったEddie Brickwellと一緒に「Heavey Circle」2006を製作、そして2009年に発表した初ソロアルバムが好評。

まずギターを持ったJTが登場し、1.「Slip Slidin' Away」を歌う。ポール・サイモン1977年のヒット曲で全米5位を記録。当初シングル盤として発売されたので、アルバムに収録されたのは、1978年の「Greatest Hits, Etc.」が初めてだった。ポールのオリジナルでは、カントリー音楽界で活躍した白人のコーラスグループ、オークリッジ・ボーイズがバックを勤めていたが、ここでは、1973年の作品「Loves Me Like A Rock」でポールと共演して有名になった黒人のゴスペル・グループ、ディキシー・ハミングバーズと一緒の演奏だ。この曲の後は、ディキシー・ハミングバーズ、ライル・ラボットの演奏が2曲続き、そしてJTが再登場、2.「Still Crazy After All These Years」となる。JTバンドでピアノを弾いていたクリフォード・カーターが久しぶりに登場(彼はポールのアルバム「You're The One」 2000 に参加していた)、その味わいの深いエレキピアノのプレイは真に魅力的だ。間奏はサックスのアンディ・スニッツァーがソロをとる。彼はニューヨーク大学のMBAを取得し、JPモルガン銀行に勤めながら、セッションワークにも参加していたというスゴイ人。両方の曲について言えることであるが、JTはリハーサル、歌いこみをしっかり行ったようで、1回限りのパフォーマンスと思えないほど素晴らしい歌唱に終始している。ポールのオリジナルと並ぶといってもよいほどの出来であると思う。都会の知的な雰囲気を自然体で表現できるシンガーとして、JTがアメリカ音楽界のトップに君臨していることを象徴する演奏・映像だと思う。

本コンサートの模様は、1ヶ月後の2007年6月PBSチャンネルでテレビ放映された。そしてそのままテレビ放送のみで終わってしまうのかな? と思っていたが、何故か2年後にDVDとして公式発売された。JT以外の要素では、ライブ演奏の合間に見せる過去の映像として、ポール・サイモンとジョージ・ハリソンがテレビ番組「Saturday Night Live」で共演した「Homeword Bound」(1976年11月20日放送)が面白い。ファンの間では有名な映像だけど、いつ観てもいいもんですね。本当をいうと、その時に演奏されたもう1曲「Here Comes The Sun」のほうがもっと素晴らしいんだけどね..........。ライブ演奏では、アリソン・クラウスとジェリー・ダグラスによる「Graceland」がオリジナルと全く異なるアレンジで、新鮮かつクリエイティブな出来。


[2009年7月作成]

  
E19 La Tournee Des Roses & Des Orties (2009) [Francis Cabrel] Sony Music (仏) 
 

James Taylor : Vocal, Electric Guitar
Francis Cabrel : Vocal, Acoustic Guitar

1. Millworker/La Fablique [James Taylor, Francis Cabrel, Suzy Glespen] A10 A15 B30 E1 E10 E20


 


フランシス・キャブレル(1953- )は、フランスおよび仏語圏のカナダで著名なシンガー・アンド・ソングライターで、アコースティック・ギターの弾き語りがうまく、フォーム、ブルース、ポップ、ジャズをブレンドした作風などで、JTとの共通点が多い人だ。音楽コンテストに入賞してレコードデビューした1977以来、コンスタントに作品を発表し続けている。その彼が1984年に発表したライブアルバム「Cabrel Public」には、フランス語の訳詩による「Millworker」 (仏題「La Fablique」)が収められている。

「バラとイラクサのツアー」という題名の本DVDは、2009年に発表されたライブ映像で、1.「Millworker/La Fablique」はボーナスディスクに収録された。スタジオ・ライブの映像で、背景の看板から「Concert D'un Soir」というRTLテレビの番組であることがわかる。JTは、当時ちょっとだけ使用したLine6という会社が製作した James Tyler Variax JTV-69というエレクトリック・ギターを弾いている。まずファーストとセカンドヴァースをJTが英語で歌い、コーラスでフランシスが加わる。そしてサードとフォース・ヴァースがフランシスによるフランス語の歌となる。続くコーラスは、JTがフランス語で加わる。最後はJTの英語の歌詞に戻る。リハーサル不足であることは明らかで、ギター演奏・歌唱ともに何とか合わせているという感じ。

ちなみにJTとフランシスは、同じ2009年にカナダで放送された「Star Academy」というタレント発掘番組にゲスト出演し、「Carolina In My Mind」を一緒に歌っている。面白い顔合わせではあるが、これ1曲だけのためにDVDを購入するのは、ちとキツイですね〜。


E20  Transatlantic Sessions 4 (2009) [Various Artists with Jerry Douglas & Aly Bain] Whirlie 
 




James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar (1,2,4)
Karan Casey : Vocal (3)

[Transatlantic House Band]
Jerry Douglas : Dobro (2,3,4,), Lap Steel Guitar (1)
Aly Bain : Fiddle (1,3,4)
Dan Tyminski : Mandolin (1,3)
Russ Barenberg : Acoustic Guitar (2,3), Mandolin (4), Dobro Mandolin (1)
Michael McGoldrick : Whistle (1,2,3) Pipe (4)
Phil Cunningham : Piano (2,3), Accordion(1), Whistle (4)
Donald Shaw : Keyboards (4)
Todd Parks : Bass
James MacKintosh : Percussion

[Guests]
Julie Fowlis, Karen Matheson, James Graham : Back Vocal (4)
Dezi Donnelly : Fiddle (1,3,4)
Dan Tyminski : Mandolin (2,3)
Niall Vallely : Concertina (3)

1. Millworker  A10 A15 B30 E1 E10 E19
2. Copperline [Reynolds Price, James Taylor]  A14 A15 B33 B41 E7 E10 E11 E14
3. The King's Shilling [Traditional, Arranged by Kara Casey, Niall Vallely]
4. Belfast To Boston  A17 E8

収録: 2009年2月, Glenlyon House, Aberfeldy, Perthshire, Scotland

注: 写真上 DVD表紙
   写真下 CD表紙




トランスアトランティック・セッションズは、スコットランドのフィドル奏者アリ・ベインがアメリカのフィドラーと共演する企画から始まったという。大西洋を隔てた欧米のミュージシャンの共演により、各地の音楽を融合するという趣向で、スコットランドのBBC4が立ち上げ、アリ・ベインとアメリカのドブロ奏者ジェリー・ダグラスの共同音楽監督による番組が1994年スタートした。メリー・ブラック、エミルー・ハリス、ケイト・アンド・アンナ・マッキャリグル、マーク・オコナー等の豪華ゲストを招いたセッションは大評判となり、この企画はシリーズ化された。本セッションは第4シリーズで、2009年9月からBBCおよびアイルランドのRTEで、6つのエピソードが放送。撮影はスコットランド、エディンバラの北、アバーフェルディという所にあるグレンライオン・ハウスという狩猟者のためのロッジで行われた。曲の合間に写る建物と周囲の冬景色が息を呑むほど美しい。古い石造りの建物の中に撮影・録音機材を持ち込み、床にカメラ用のレールを敷き、録音マイクはなるべく目立たないようにセットするなど、あたかも演奏者達がプライベートなジャムセッションをやっているかのような雰囲気作りをしている。さらに昼間の外光や、夜間の暖炉をイメージした巧みな照明の演出によって、陰影に富んだ撮影に成功しており、録音も含めすべてのプロダクションは非の打ち所がない。そして名手達による演奏は完璧で、早いテンポのケルチック・チューンにおいても一糸乱れぬプレイに終始しており、その完成度は素晴らしいものだ。

参加ミュージシャンの出身国は以下のとおり。

アメリカ: Jerry Douglas, Russ Barenberg, Todd Parks, Dan Tyminski
スコットランド: Aly Bain, Phil Cunningham, Donald Shaw, James MacKintosh, Karen Matheson, Julie Fowlis, James Graham
アイルランド: Michael McGoldrick, Niall Vallely, Karan Casey
イングランド: Dezi Donnelly

JTは最初のエピソードで、ジェリー・ダグラス等と撮影現場に向かう車中のシーンで登場する。そこに「My father's family came form about an hour away form here, originally in a little town called Marykirk. So I have a little tracks here in Scotland, a little bit of history, and I really love to coma back. I've been looking forward to this for months」というJTのナレイションが入る。スコットランドからの移民というJTのルーツと密接な関わりがあるセッションとなったためか、ここでの演奏はいつになくスピリチュアルな雰囲気が漂うものになっている。JTのレパートリーの中でもルーツ音楽に近い曲が選ばれており、中でもアメリカにおけるアイルランド人の工場労働者を描いた 1.「Millworker」は、ぴったりはまっている。 アリ・ベイン(1947- )は、スコットランドにおける最高のフィドル奏者と言われ、現地のルーツ音楽界のボス的存在であるが、他地域・ジャンルのミュージシャンとの交流も積極的で、本企画の音楽監督の一人でもある。この人は、奏でる音楽のみならず、仕草、表情、深みがある目が素晴らしく、その立ち居振る舞いが人生を語っているかのようだ。彼と一緒にフィドルを弾くデジ・ドネリーは、マンチェスター出身の若手奏者。バンドの一体感が素晴らしく、この曲のベスト・パフォーマンスと文句なしに断言できる。ノース・キャロライナにおけるJTのルーツを歌った2.「Copperline」も、もともとトラッド的な雰囲気がある曲なので、本セッションでの選曲も自然な感じだ。JTとは以前BBCスコットランドの年末番組「Hogmanai Live」1997 (「その他断片」参照)で共演したことがあるフィル・カニンガムのピアノがいい雰囲気を出している。大きめのホイッスル(金属製の縦笛)を吹いているマイケル・マッゴウルドリック(1971- )はアイルランド出身のフルート奏者で、縦笛やパイプなども演奏できるマルチ奏者。ここではジェリー・ダグラスのしなやかで美しいドブロが始終鳴り響いており、バンドが繰り出す穏やかなグルーヴ感も素晴らしく、これもベスト・パフォーマンス!

3.「The King's Shilling」は、アイルランド出身のカラン・カセイ(1969- )とJTのデュエットだ。彼女はエラ・フィッツジェラルド等のジャズボーカルの勉強をしながら伝統音楽にも取り組み、1990年代はニューヨークで活躍、2000年代以降はアイルランドのコークを本拠地としてソロ活動を続けている。この曲は彼女が2001年に発表したアルバム「The Winds Begin To Sing」に収録され、スコットランドに伝わるトラッドを、コンサーティーナ(アイルランド風バンドネオン)を弾いている彼女の夫君ニアル・ヴァレリーと一緒にアレンジしたもの。「Take The King's Shiling」とは「王のために兵士になる」ことを意味しており、家族を残して戦地に赴いた若者の死を妻が悼む様を歌っている。少し緊張気味に一生懸命歌うカランに寄り添い、励ますように歌うJTの暖かさが感じられるトラック。ギブソンJ-45のヴィンテージを弾くラス・バレンバーグは、ブルーグラス、オールドタイミーの名手で、本セッションではマンドリンも担当している。JTとは、以前マーク・オコナーの「Liberty !」 1997 C68で共演歴がある。マンドリンを弾く大柄な男はダン・ティミンスキーで、ソロ活動の他にジェリー・ダグラスと一緒にアリソン・クラウスのバックを務めている人。JTがアメリカ人の立場からアイルランド紛争を歌った 4.「Belfast To Boston」は、演奏者全員による祈りのようなパフォーマンス。ジュリー・フォウリス(1979- )、ジェイムス・グラハム、カレン・マテソン(1963- )は、全員スコットランド出身の歌手。ここでオルガンのようなキーボードを弾いているドナルド・ショウは、カレン・マテソンの夫で、二人はスコットランドで最も有名なグループ Capercaillieの中心人物として活動している。マイケル・マッゴウルドリックは、肘にとりつけた鞴(ふいご)から空気を送り込むアイルランドの楽器、イリアン・パイプスを演奏している。

Whirlie Recordsから発売された2枚組DVDには、6つのエピソード全てが収録され、他のゲストとして、マーサ・ウェインライト、ロザンヌ・キャッシュ、アリソン・ムーラー、ステュワート・ダンカン(バイオリン)等が参加しており、バックミュージシャンでは、元ペンタングルのダニー・トンプソン(ベース)の姿も見える。またボーナルトラックとして、本番組のメイキング、インタビュー映像「Behind The Sessions」がついており、そこではJTによる「Belfast To Boston」のリハーサル、ベーシストのトッド・パークス(ジェリー・ダグラスのバックを務めている人)、ギタリストのラス・バレンバーグのJTについてのインタビューが収められている。トッドが、「ミュージシャンとしての野心・夢はJTのバックで演奏することだったんだ。32歳の若さでそれが実現しちゃったので、新しい夢を探さないとね」と言っているのが可笑しい。

セッション全体として、歌物・インストルメンタルのいずれも素晴らしく、通して聴いて(観て)いると気持ちが良い。同セッションを収めたCDも発売(「Millworker」と「The King's Shilling」が2009年11月発売の「Transatlantic Sessions: Series 4 Vol.1」、「Copperline」が2010年6月発売の同「Vol.2」、「Belfast To Boston」が2010年9月発売の同「Vol.3」に収録)されているが、音質に完全を求めなければ映像のDVDのほうがお勧め。ただしPAL方式なので、マルチタイプのDVDプレイヤーか、PAL対応のPCが必要だ。

JTのセッションものとして最高峰に位置付けられる作品。

[2012年7月作成]


E21 Rock And Roll Hall Of Fame (2009) [Various Artists] Time Life





[1997年5月6日 第12回 At Renaissance Cleveland Hotel, Cleveland]
James Taylor : Vocal (3), Acoustic Guitar
Emmylou Harris : Back Vocal (1)
David Crosby : Vocal (1,2), Acoustic Guitar (1)
Stephen Stills : Vocal (1,2), Electric Guitar (1)
Graham Nash : Vocal (1,2), Electric Guitar (1)
Michael Finnigan : Keyboards (1)
Unknown : Bass
Unknown : Drums


1. Teach Your Children [Graham Nash]  E21 E22
2. Teach Your Children (Rehearsal) [Graham Nash]  E21 E22
3. Woodstock [Joni Mitchell] B48


[2000年3月6日 第15回 At Waldorf-Astoria Hotel, New York
James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Felicia Collins : Acoustic Guitar
Sid McGinnis (Probably) : Electric Guitar
Paul Shaffer : Keyboards
Clifford Carter : Piano
Will Lee : Bass
Anton Fig : Drums

4. Fire And Rain [James Taylor] A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E5 E7 E8 E10 E13 E14 E15 E17 E25



James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Felicia Collins : Guitar
Sid McGinnis (Probably) : Electric Guitar
Paul Shaffer : Conductor
Clifford Carter : Piano
Will Lee : Bass
Anton Fig : Drums


Robbie Robertson : Electric Guitar
Eric Clapton : Electric Guitar
Bonnie Raitt : Electric Guitar, Vocal, Back Vocall
Melissa Etheridge : Electric Guitar, Back Vocal
John Sebastian : Harmonica
Joe Butler (Probably) : Back Vocal, Tamborine

5. How Sweet It Is (To Be Love By You) [Holland, Dozier, Holland] A7 A15 B16 E1 E4 E5 E8 E10 E13


写真上: Rock And Roll Hall Of Fame(1, 2, 3 収録)
      (Light My Fire, Sweet Emotion, Start Me Up の3枚組DVDセット)
写真下: Rock And Roll Hall Of Fame Legends (5 収録)
      (feelin' Alright, Whole Lotta Shakin' I'll Take You There の3枚組DVDセット)  


2009年11月発売

[2011年1月作成 1997年分]
[2011年12月作成 2000年分]

 
「Rock And Roll Hall of Fame and Museum」(ロックの殿堂)は、オハイオ州クリーブランドを本拠地として、1983年の設立以来、音楽界に多大な貢献をしたアーティストを「殿堂入り」している。そのセレモニーは、豪華なロックスターによるセッションや過去のグループのリユニオンなど見どころ満載で、その模様はVH-1等でテレビで放送されている。2009年タイム・ライフ社は、各年のセレモニーのスピーチと演奏の模様を収めた9枚組DVDボックスセットを通信発売した。合計で24時間以上におよぶ映像が楽しめる(各年の映像がバラバラに編集されて収められている)が、定価120ドル弱という値段に加えて、著作権の関係で北米(米国・カナダ)以外への発送が不可という条件がついた。日本からは、インターネットの通信販売業者経由で購入することができるが、本DVDは、アメリカ国内での鑑賞を前提としたリージョン1の設定なので、日本で観るためにはリージョン・フリーのDVDプレイヤーが必要。

[1997年の映像について]
1997年はクロスビー・スティルス・アンド・ナッシュが殿堂入りを果たした年で、地元クリーブランドでセレモニーが行われた。その模様の一部を収めたDVD3枚組のセット(上記9枚組ボックスセットのダイジェスト版)を入手することができた。そのセットには、Vol.1 「Light My Fire」に 1.「Teach Your Children」、Vol.2 「Sweet Emotion」に 2.「Woodstock」が収録されている。

クロスビー・スティルス・アンド・ナッシュの1.「Teach Your Children」は、スティルスがグレッチのホワイトファルコン、ナッシュがテレキャスター、クロスビーがドレッドノートサイズのアコースティック・ギターを弾きながら歌う。その背後には眼鏡をかけたエミルー・ハリスがバックボーカルを付け、その隣にはJTがアコギを爪弾いている。バックでオルガンを弾く男は、CSNのバックで長く活躍するマイケル・フィニガン(1945-2021、1970年代にマリア・マルダーのバックを務めたこともある人)だ。ドラムスとベースは誰か不明。ナッシュは歌詞の一部をオーディエンスに歌わせたりして、余裕と貫禄たっぷり。また同じ時に演奏された「Wooden Ships」(JTは不参加)が、Vol.2 「Sweet Emotion」に収められている。 2.「Teach Your Children」は、ボーナストラックとして収められたバックステージでのリハーサルで、JTのゲスト出演が直前に決まったため、3人が歌いながらJTに曲を教えている面白いシーンだ。途中で中断するが、最後まで歌い切っている。リハーサルとは言え、次第に気合が入るあたり、さすがプロだね。JTは立って歌う3人に向かって座り、曲を確かめるようにギターを弾いている。

Vol.2 「Sweet Emotion」の 3.「Woodstock」は、JTによる弾き語り。「Tribute To Joni Mitchell」というサブタイトルが付いている。JTによるこの曲の演奏は、今までいくつかの放送音源が存在するが、公式に発売されたのはこれが初めて。ボーカルとギターにダークな味があり、いい感じだ。同DVDのボーナス・トラックで、この曲のリハーサルの模様も観ることができる。ショーの進行についての確認の後、JTがサウンドチェックのためギターを爪弾くが、歌うシーンはない。同じトラックには、バックステージでJTとエミール・ハリスが会話するシーンもある。また本DVDには、JTがクロスビー・スティルス・ナッシュのために行ったスピーチの模様も収録されている。


[2000年の映像について]
2000年はJT本人が殿堂入りした年で、ニューヨークのウォルドフ・アストリア・ホテルで行われたセレモニーの映像がある。Vol.8 「Message Of Love」に収められた 4.「Fire And Rain」は、以前放送されたテレビ映像で観ることができた。バックはレイトショー・ウィズ・デビッド・レターメンのハウスバンド CBS Orchestraにクリフォード・カーターがピアノで加わった編成。JTはしっとりと歌っている。演奏が終わると、オーディエンスはスタンディング・オーベイションで応えている。また、本セレモニーでポール・マッカトニーがJTのために行ったスピーチが、Vol.2 「Sweet Emotion」のボーナストラックに収められている。

Vol.4 「Feelin' Alright」に収められた5.「How Sweet It Is」は、セレモニーの最後を飾るハウスバンドとゲストによる大変豪華なジャムだ。このような場面は演奏自体は荒っぽいけど、問答無用で楽しむのが一番。いつものJTバンドとは異なるアレンジ、リズムで、ロビー・ロバートソンがギターで、ジョン・セバスチャンがハーモニカでソロを取る。ロビーとJTの共演は、カーリー・サイモンのアルバム「Hot Cakes」1974 C14に収録された「Mockinbird」以来だ。ジョンと一緒に演奏する音源・映像は初めてじゃないかな?そしてボニー・レイットとメリッサ・エスリッジがバックボーカルを担当、ボニーが単独で歌う場面もある。JTとボニーはボストンの音楽シーンで先輩・後輩の間柄で、かなり親しいようであるが、音楽的な共演は少なく、以前スティングのレインフォレスト・コンサートで「Barefootin'」をデュエットしたオーディエンス音源が残っている位だと思う。右端でタンバリンを叩きながらバックで歌っている白髪の紳士はラヴィン・スプーンフルのジョン・バトラーと思われる。同じく殿堂入りを果たしたエリック・クラプトンは黙々とリズムを刻んでいるが、ラストでJTが彼の耳元で何かささやいてニッコリ。JTとエリックは、エリックがJTの「Don't Let Me Be Lonely Tonight」をカバーしたり、JTがエリック主催のCrossroad Guitar Festivalに出演するなどの交流があるが、私が知る限り、共演音源・映像はこれだけ。ポール・シェイファーは皆の間を歩き回り、指揮に専念。なお今回発売されたDVDセットには収録されなかったが、5.と同じジャムで演奏されたアル・グリーン1972年の名曲「Love And Happiness」の模様が以前VH1テレビで放映されており、そこではアコギを弾くJTの他に、同じく殿堂入りのアース・ウィンド・アンド・ファイアーのフィリップ・ベイリーやボニー・レイット等が歌い、エリック・クラプトンが彼らしいギターソロを弾いている。


[その他の映像について]
Rock And Roll Hall of Fame におけるJTのその他の映像は、1990年、キャロル・キングとジェリー・ゴフィンがソングライターとして殿堂入りした際のセレモニーのフィナーレで、キャロルがJTがデュエットで「Will You Still Love Me Tomorrow」を歌ったものがある。後半でジェリー・ゴフィンと(おそらく)フォートップスのロウレンス・ペイトンがハーモニーを付けている。リハーサルなしだったようで、演奏と歌はかなり荒っぽいものだ。ちなみに、この映像は上記の9枚組ボックスセットには収められていない。

[2022年10月追記]

JTとボニー・レイットは、2018年JTのツアーに彼女がゲスト参加、2019年のツアーはジョイントにて共演しました。
 

E22 25th Anniversary Rock & Roll Hall Of Fame Concert (2010) [Various Artists] Time Life
 



James Taylor: Vocal, Acoustic Guitar
Jackson Browne : Vocal (3)
Bonnie Raitt : Vocal (3)
David Crosby : Vocal, Electric Guitar (2), Acoustic Guitar (3)
Stephen Stills : Vocal (1,3), Electric Guitar (1,3)
Graham Nash : Vocal, Acoustic Guitar (3)
Todd Caldwell : Organ
James Raymond : Keyboards
Kevin McCormick : Bass
Steve Distanislao : Drums

1. Love The One You're With [Stephen Stills]

[Bonus Track]
2. Mexico   A7 A15 B16 B34 E1 E7 E8 E10 E22
3. Teach Your Children [Graham Nash] E21 E21

2009年10月29日 Madison Square Garden, New York

2010年発売

 

「Rock And Roll Hall of Fame and Museum」(ロックの殿堂)設立25周年を記念したコンサートが、ニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンで開催された。初日10月29日は、クロスビー・スティルス・アンド・ナッシュ、ポール・サイモン(サイモン・アンド・ガーファンクル)、スティーヴィー・ワンダー、ブルース・スプリングスティーン等が出演(翌日の出演者は、メタリカ、ジェフ・ベック、U2、アレサ・フランクリン等)。各アーティストが豪華ゲストを交えてたっぷり演奏したので、夜の7時代から深夜1時半におよぶ長丁場となった。その模様はHBOなどのケーブルテレビで放送されたが、2010年にタイムライフ社から北米限定の3枚組DVDが発売、テレビで放映されなかった曲がボーナストラックとして追加された。本DVDは、アメリカ国内での鑑賞を前提としたリージョン1の設定なので、日本で観るためにはリージョン・フリーのDVDプレイヤーが必要。

クロスビー・スティルス・アンド・ナッシュのセットリストは以下の通りで、JTはゲストの一人として出演。

1. Woodstock
2. Marrakesh Express
3. Almost Cut My Hair
4. Love Has No Pride (Guest: Bonnie Raitt)
5. Midnight Rider (Guest: Bonnie Raitt)
6. The Pretender (Guest: Jackson Browne)
7. Mexico (Guest James Taylor)
8. Love The You're With (Guest James Taylor)
9. Rock And Roll Woman
10. Teach Your Children (Guest James Taylor, Jackson Browne, Bonnie Raitt)
注: 4〜7はクロスビー・アンド・ナッシュ


2.「Mexico」 1975年のオリジナル録音は、クロスビー・アンド・ナッシュがバックボーカルを担当しており、ここでも相性ばっちり。バックバンドについては、資料が見つからなかったが、映像で観た顔から当時のツアーバンドのメンバーで間違いないだろう。いつものJTバンドの演奏とは違うプレイが楽しめる。映像では 1.「Love The One You're With」の前にナッシュによるJTの紹介スピーチが入るが、これは編集によるもので、実際は2.「Mexico」の前であることは明らか。 1.「Love The One You're With」は、スティルス最初のソロアルバム「Stephen Stills」1970に収録された絶頂期の名曲で、シングルカットされて全米14位を記録。クロスビー・スティルス・ナッシュ・アンド・ヤングのライブアルバム「4 Way Street」1971では、4人によるライブバージョンが聴ける。当時本当に興奮して聴いていた曲で、約20年後にJTとの共演で聴けるなんて.......感慨無量だ。

まずスティルスがフェンダー・ストラトキャスターを弾きながらファースト・ヴァースを歌う。最後の「Love The One You're With」は、オーディエンスに歌わせている。セカンド・ヴァースはJTがリードを取り、そのまま全員によるコーラスに突入するあたりは感動的。 オルガンによる間奏の後のサード・ヴァースもJTが歌う。最後にゲスト3人が再びステージに登場し、皆で 3.「Teach Your Children」を歌う。スティルスはグレッチのホワイトファルコンを弾き、ここでもナッシュは曲の一部をオーディエンスに歌わせている。

ナツメロ的なセッティングであるが、しっかり存在感をもって演奏しているところは、貫禄があるからかな?



 
E23 Troubadours : The Rise Of The Singer Songwriter (2011) [Various Artists]  Starrcon   
 

James Taylor: Vocal, Acoustic Guitar
Danny Kootch: Electric Guitar, Acoustic Guitar (13)
Carole King : Vocal, Piano
Russ Kunkel: Drums
Leland Sklar: Bass

Morgan Neville : Director
Eddie Schmidt : Producer

以下すべて断片


1. Guitar & Piano (Intro of The 4th Of July)
2. Blossom (2007 Live At The Troubadour)
3. Somwthing In The Way She Moves (At The Barn)

4. Somwthing In The Way She Moves (2007 Live At The Troubadour)
5. Hey Girl (Carole King)
6. Will You Still Love Me Tomorrow (1971 Carole King At BBC)
7. Will You Still Love Me Tomorrow (2007 Live At The Troubadour)
8. Night Owl (1967 Record "Original Flying Machine")
9. Carolina In My Mind (1969 Record "James Taylor")
10. Fire And Rain (1969 New Port Folk Festival)

11. Natural Woman (1971 Carole King At BBC )
12. Hi-De-Ho (1968 The City Record "Not Everything Has To Be Said")
13. Sweet Baby James (1970 Record "Sweet Baby James")
14. Beautiful (1971 Carole King Bootleg "Fit For A King")
15. Beautiful (1971 Carole King CD "Carnegie Hall Concert")
16. I Feel The Earth Move (1971 Carole King Record "Tapestry")
17. Steamroller (2010 Troubadour Reunion Tour Rehearsal)
18. Steamroller (2007 Live At The Troubadour)
19. So Far Away (1971 Carole King With James Taylor At BBC)
20. So Far Away (2007 Live At The Troubadour)
21. Country Road (1971At BBC)
22. Country Road (2007 Live At The Troubadour)

18. Way Over Yonder (1971 Carole King CD "Carnegie Hall Concert")
19. You Can Close Your Eyes (2010 Troubadour Reunion Tour)
20. Your Smiling Face (2010 Troubadour Reunion Tour)


注:キャロル・キングまたはジェイムス・テイラーの映像・音源のみ掲載したした(青字がJT参加トラック)。


 

ロスアンゼルスのナイトクラブ、トゥルバドール50周年を記念して2007年に開催されたコンサートの主役、キャロル・キングとジェイムス・テイラーを中心に、クラブの従業員、ミュージシャン、プロデューサー、ライター、写真家等が参加して、彼らのインタビュー、音源、映像を散りばめて、アメリカ西海岸におけるシンガー・ソングライター黎明期を描いたドキュメンタリーで、当初PBCやChannel Thirteenなどの公共ケーブル曲で放送され、その後DVDで発売された。そこにはボーナスCDとして、当時を音楽シーンを感じさせる曲を集めた10曲入りCDが添付され、そこにはリンダ・ロンシュタット、リトルフィート、トム・ウェイツ、ランディ・ニューマン、ウォーレン・ゼボン等、番組には登場しない人達の曲も含まれていた。

イントロのクレジットは、1960年代後半から1970年代前半にかけてのアメリカの政治・社会の映像に、Mc5によるヘヴィーで過激なロック「Kick Out The Jams」1969が流れる。そして懐かしいフォルクスワーゲンのビートルが映り、車のナンバープレートに「Troubadour」のタイトルが表示される。その際に流れるアコースティック・ギターは、JTの「On The 4th Of July」のイントロ・フレーズで、そこにキャロルがピアノでメロディーを付けており、短い断片が終わる頃、二人の演奏シーンを観ることができる。ロサンゼルス・タイムスの音楽評論家だったロバート・ヒルバーン(1939- )が、「1970年までにビートルズは解散、ストーンズの活動も停滞してロックがエネルギーを失った中で、シンガー・ソングライターが勢いを得た」と話した後、トゥルバドールの写真になり「1968〜1975の間、トゥルバドールは、当時のシンガーソングライター達のキャリアを開く手助けをした」、「2007年、キャロル・キングとジェイムステイラーがクラブ50周年を祝うために戻ってきた」というテロップが流れ、同地での二人のコンサートにおける 2.「Blossom」が流れる。けっこう盛りたくさんなので、以降は内容を選択して紹介する。後に出るコンサートの映像では、キャロルは青いセーターを着ており、発売された「Live At The Troubador」の服装と異なることから、別のステージの模様であることがわかる。演奏中に二人のインタビューが挿入され、キャロルは「当時人々がより個人的な内容を求めていた」と話し、ジャクソン・ブラウンが同意するコメントを述べる。写真家でモダーン・フォーク・カルテットなどで音楽活動もしていたヘンリー・ディルツが、フォーク音楽隆盛から現在までの音楽シーンの変遷を語り、バックにはトム・ラッシュによるギターのインスト曲「Mole's Moan」(ジェフ・マルダー作)が流れる。JTは「自分はギター1本のフォーク音楽から始めた」、そしてデビッド・クロスビーとロジャー・マッギンによるザ・バーズの創世記が語られる。皆がヒップになろうとした風潮の中、トゥルバドールは、オーナーのダグ・ワトキンスの先進的な目利きにより、シンガー・ソングライター達への場を提供したという。ここで、マサチューセッツ州バークシャーの雪景色となり、JTのスタジオ「The Barn」おける弾き語り映像
3.「Somwthing In The Way She Moves」が入り、ジェイムスのインタビューをはさんで、編集により「Live At The Troubador」に繋がってゆく(ここでのキャロルのドレスは公式発表盤と同じ)。キャロルのコメント「当時の彼は、内向的で恥ずかしがり屋だった」。曲が続く中、JTがギター倉庫で当時使用していたギブソンJ−50を取りだし、「いまでも状態が良い」と言っている。ダニー・クーチが出てきて「彼は多くの男に興味を持たせるようなアウトゴーイングな面もあり、努力しなくても素晴らしいパフォーマーになれた」と話すのが興味深い。

ここで、舞台がニューヨーク、ブリル・ビルディングの作曲家の話になり、ピアノを弾くキャロルとジェリー・ゴフィンの作曲作業、幼いキャロルのピアノレッスンといった貴重な映像が映り、本人のピアノによる 5.「Hey Girl」のメロディーの中、彼女自身、音楽評論家で当時の音楽シーンをテーマとした「Hoteal California」の作者でもあるバーニー・ホスキンスとダニーが作曲家時代の彼女の姿を述べている。ここでザ・シレルズによりキャロルのヒット曲「Will You Still Love Me Tomorrow」の映像が流れ、キャロル1971年のBBC映像における同曲の弾き語りに続く中、キャロルの次女シェリー・ゴフィン・コンドウが母親のあり様を述べキャロルの結婚式や家族とのプライベート映像が流れる。ルウ・アドラーが登場し「彼女は、ソングライターであると同時に主婦だった」と述べる。曲は同曲の「Live At The Troubador」(キャロルは青いセーター)となる。

「Original Flying Machine」1967 B1の「Night Owl」が流れる中、ダニーがJTとの出会いを話し、JTの若い頃のフィルム、グリニッジにおけるバンドの宣伝写真が写り、フライング・マシーンの失敗談となる。ピーター・アッシャーが登場し、ダニーから紹介を受けデモテープを聴いてザ・ビートルズの連中に推薦したエピソードが語られる。「ポールは大いに惚れ込み、ジョージも気に入ったが、ジョンは他と同じくあまり興味を示さなかった。リンゴがどうだったかは、よく覚えていない」とのこと。ダニーが「アップルからのデビューアルバムは、オーバー・プロデュースで、いろいろ詰め込み過ぎた失敗作」と語り、ピーターとJTはロスアンゼルスに移って、1969年7月にトゥルバドール、その1週間後にニューポート・フォーク・フェスティバルに出演したとして、後者の
10.「Fire And Rain」の映像が映る。今のところ、ここだけで観ることができる貴重なもので、演奏中にインタビューが入ったり、編集により短くされているが、最初と終わりはしっかり写っている。赤いシャツを着たJTの神経質そうな表情が印象的。次にジョニ・ミッチェルがダルシマーの弾き語りで「California」を歌う映像 (1970または1971年のBBC)が現れ、デビッド・クロスビーがジョニを発見したこと、クリス・クリストファーソンが「彼女はシェイクスピアの生まれ変わりと思った」と述べ、カナダからやってきた彼女が与えた大きな影響を語り、JTも彼女との日々を「素晴らしかった」とコメントする。

職業作曲家の時代の退潮を受け、離婚・ロスアンゼルスへの移住でキャロルは自分自身になろうとしたと、作曲家仲間で友人のシンシア・ウェイル、バリー・マン夫妻が語る。ここでのBBCの11.「Natural Woman」の弾き語りにはぐっとくる。トゥルバドールでのキャロルとJTのステージトーク(青いセーター・バージョン)に続き、同所のオーナーであるドグ・ワトキンスの映像になり、彼の功績および奇行についての話となる中、ボニーレイットの「Give It Up」1972が流れる。次に、俳優・コメディアンとして大成した若きスティーヴ・マーチンが得意のバンジョーを弾くシーン、チーチ・アンド・チョンのインタビューになる。ここでジャクソン・ブラウンのシーン登場の話となり、ダニーの絶賛コメントの後、「These Days」1973が流れる。インタビューで彼はボブ・ディランの「I Want You」の一部をギター1本で歌って見せ、曲作りについて語る。ザ・シティの「Hi-De-Ho」がかかり、ローレル・キャニオンの生活が語られる。トニ・スターンはキャロルと組んだ作詞家であるが、現在が画家として活躍中で、彼女の現在の姿を観れるのがうれしい。

「Sweet Baby James」が流れる中、同名のアルバムの話になり、ジャケット撮影と同時に撮られた写真が多く出てくる。ラス・カンケル、ピーター、キャロル、JTが、二人は音楽的にとても合うことを話す。彼女がパフォーマーとして自信がなかった時に、JTとダニーが彼のコンサートでゲストで歌わせて励ましたことで、彼女が人前で歌えるようになったエピソードが披露され、トゥルバドールでのライブとして海賊盤で有名な「Fit For King」から「Beautiful」が流れ、後のカーネギー・ホールコンサートのストリング・セクションとの共演バージョンに繋がる。そして「Tapestry」の製作と大成功の話で、16.「I Feel The Earth Move」が流れ、1970年のスタジオ録音模様の写真が映し出される。彼女の自然でありのままでの成功が、これまでの女性シンガーの在り方を大きく変えたという。ここで2010年のトゥルバドール・リユニオン・ツアーのリハーサルの映像が入り、「Steamroller」の2010年リユニオン・リハーサルから、2007年の「Live At The Troubador」(キャロルは青いセーター)の同曲の演奏が映る。後者は公式発売には収録されなかった曲。バックバンドのザ・セクションの話になって、彼らが参加したアルバムのジャケットや当時の写真が映り、ピアノ独奏が聞こえクレイグ・ドルギーが登場して思い出を語るのにはビックリ。

BBCでのエルトン・ジョンの「Take Me To The Pilot」の映像が出て、彼のトゥルバドール・デビューで一夜でスターになった伝説が語られ、エルトン本人のコメントも登場する。次にバーにおけるアーティスト交流の話で、J.D.サウザーが登場。クラブ内に於けるJTとキャロルの会話で、彼が麻薬から立ち直った話、家族とツアーの両立の難しさが語られ、母親と一緒に過ごせない娘のシェリーが「So Far Away」を聴いて泣きに泣いたエピソード、1972年グラミー賞の受賞シーン、キャロルが家族と過ごすためインタビューなどの取材を拒否した事が語られる。ここで俳優・バンジョー奏者のスティーブ・マーチンのコメントからイーグルスの話になり、「Take It Easy」の映像が流れる。JTの話に戻りBBCの「Country Road」が流れ、「Live At The Troubador」の演奏に繋がる。ジャクソン・ブラウンが登場、クレイグ・ダルギーが「Running On Empty」をピアノ独奏し、ジャクソンの歌唱・演奏に続き、ビジネスとしての音楽が語られる。ボニー・レイットのコメントのバックに彼女の「Too Long At The Fair」が流れる。当時のクラブ・オーナー、ダグ・ワトキンスの奇行と、競争相手となるRoxy Club オープンの話。キャロルの「Way Over Yonder」のレコードがかかり、彼女がアイダホ州へ移住し、JTは東海岸に戻る話。トゥルバドール・リユニオン・ツアーの開演前にメンバーが円陣を組む風景と、キャロルとJTが「You Can Close Your Eyes」をデュエットする映像が流れ、二人がリユニオンを回顧する。「You've Got A Friend」をオーディエンスが合唱する音源をバックに、JTとキャロルがトゥルバドールのステージと建物の外に佇むシーンが最後。字幕と写真でダグ・ワトキンスが1999年に亡くなり、クラブは経営危機を経て再生し、現在も頑張っている旨の字幕が流れる。クレジットでの映像は、リユニオン・ツアーにおける「Your Smiling Face」。

トゥルバドールというクラブ、キャロル・キングとJTのリユニオンを通して、1970年代初めの西海岸ロスアンゼルスにおけるシンガー・アンド・ソングライター時代の幕開けを描いたドキュメンタリー。関係したミュージシャン、プロデューサー、スタッフ、評論家が数多く登場し、当時の有様を生き生きと語る。公式発表の「Live At The Troubador」に収められていない演奏シーンもあって、キャロルとJTのファンにとってはとても美味しい映像。

[2023年7月追記]
当初未完成のまま上げていたようで、尻切れトンボになっていた内容につき最後まで書き足し、誤字・脱字を修正しました。


E24 A Musicare's Tribute To Neil Young (2011) [Various Artists]  Shout Factory 
 

James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Mark Goldenberg : Electric Guitar
Greg Leisz : Pedal Steel Guitar
Rami Jaffee : Accordion
Don Was : Bass, Musical Director
Kenny Arnoff : Drums

Elvis Costello, Dave Matthews, Jason Mraz, Shawn Colvin, Kate Markowitz, Emmylou Harris, Patty Griffin : Back Vocal

1. Heart Of Gold [Neil Young]  C11

収録 : 2010年1月30日 Los Angeles Convention Center


ミュージケアーズにについては、E13を参照して欲しい。2010年の第20回 「Annual Musicares Gala」は、1月30日ロスサンゼルスのコンベンション・センターで開催された。そこでは「The Person Of The Year」としてニール・ヤングが表彰され、ゲスト・ミュージシャンが彼の曲を演奏。その模様を撮影したDVDが1年後に発売され、そこにはJTが歌う曲も収録された。この手の映像のなかでは珍しく、過度な華やかさはなく、アーティストによるコメントやスピーチもほとんど抜きで、淡々と進行する。ニール自身はこの場では演奏せず、聴く側に専念し、最後のお礼の挨拶もさっぱりしたものだ。これは派手さを嫌い、音楽そのものに集中することを好むヤング氏の意向ではないかと思う。様々なジャンルの若手、ベテラン・アーティストが自分の個性を生かしながら歌うが、やはり曲の良さが最大の魅力になっている。

JTは、ニール・ヤング最大のヒット曲 1.「Heart Of Gold」(1972年全米1位)を歌う。アルバム「Harvest」に収められたこの曲の録音には、JTとリンダロンシュタットがバックコーラスで参加している(C11参照)。それから約40年後、JTが自ら歌ったわけだ。本コンサートの音楽監督ドン・ウォズ(1952- )は、ベーシスト、プロデューサーとして引っ張りだこの人で、ボニー・レイット、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、ニール・ダイアモンド、ウィーリー・ネルソン、グレン・フェイ、マイケル・マクドナルド、カーリー・サイモンなど多くの作品を手がけている。その他のメンバーも名うてのセッションマン達で、ドラムスのケニー・アーノフは、ジョン・メレンキャンプのバンドで名を成し、ベリンダ・カーライル、ジョン・ボンジョビ、リッキー・マーチン、サンタナなど無数のセッションに参加。本コンサートでは、ジョン・フォガティとキース・アーバンによる「Rockin' In The Free World」、ジョン・メレンキャンプの「Down By The River」といったロック曲で、すごいグルーヴを叩き出している。キーボードのラニ・ジャフェはウォールフラワーズ、フーファイターズ、キース・アーバン等、ギタリストのマーク・ゴールドバーグは、リンダ・ロンシュタット、シカゴ、ポインター・シスターズ、エルトン・ジョン等、スティールギターのグレッグ・サイツは、k d ラング、ジョニ・ミッチェル、ピーター・ケイス、シェリル・クロウ等のアルバムに参加している。

JTとバックバンドの息が合わない部分があり、リハーサル不足かなと思わせるが、こういうイベントではその手の文句言ってもしようがないですね。当日他の曲を歌った人達によるコーラス隊が大変豪華で、エルヴィス・コステロ(「(When You're On ) The Losing End」 注:以下アーティストが歌った曲を示します)、デイブ・マシューズ(「The Needle & The Damage Done」 1967年南アフリカ生まれ、デイブ・マシューズ・バンドのリーダー)、ジェイソン・ムラツ(「Lotta Love」 1977年ヴァージニア州生まれ。フォークにファンクやR&Bのリズムを取り入れ、ラップの影響を受けた早口のボーカルに特徴があり、2008年のシングル「I'm Yours 」はグラミー賞を受賞し長期間チャートに留まり続けた)、ショーン・コルヴィン(同じく「Lotta Love」、彼女については C75参照)、おなじみJTバンドのケイト・マーコウィッツといった面々だ。後からステージに登場する女性のうちひとりは、カントリー音楽界のベテラン、エミルー・ハリス(1947-)で、ボニー・レイットに似たもうひとりの女性は、なかなか判らず苦労したが、エミルーと一緒に「Comes A Time」(本DVDには収められていない)を歌ったカントリー、フォーク界のシンガー・ソングラター、パティ・グリフィン(1964- )だった。

本DVDに収められた他の曲では、前述の「Rockin' In The Free World」、ノラ・ジョーンズとネコ・ケイスの二人のギター、コーラスが絶妙な「Tell Me Why」、ラップ・スティール1本で「Ohio」を弾き切るベン・ハーパーが特に素晴らしい。

[2011年12月作成]

E25 Guitar Lessons (2010 〜)  James Taylor Official Home Page  
 

James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal

[Lesson 1 : December 2010]
1. Little Wheels

[Lesson 2 : August 2011]
2. Country Road  A2 A15 B6 E7 E14 E15

[Lesson 3 : Febuary 2012]
3. Second Wheel

[Lesson 4 : May 2012]
4. Fire And Rain  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E5 E7 E8 E10 E13 E14 E15 E17 E21

[Lesson 5 : August 2012]
5. Enough To Be On Your Way (Intro) A16

[Lesson 6 : November 2012]
6. Carolina In My Mind  A1 A1 A15 B3 B10 B16 B22 B25 B26 B41 B46 E1 E5 E10 E14 E15

[Lesson 7 : March 2013]
7. Secret O' Life  A9 A15 B27 B28 E1 E7 E14

[Lesson 8 : November 2016]
8. Don't Let Me Be Lonely Tonight  A4 A15 B16 C67 C74 E1 E5 E8

[Bonus Lesson : April 2022]
9. All I Want (Joni Mitchell)  C6


収録 :The Barn, Washington, Massachusetts


JTのギターについては、以前から多くの教則映像があり、本人もやりたがっているという噂が流れていた。それは、彼の公式ホームページにおける無料映像という形で実現された。撮影は、彼の地元マサチューセッツ州ワシントンにあるThe Barnという納屋を改造したスタジオで行われ、JTはレッスン毎に異なる季節の服装をしているので、まとめて製作したのではなく、その都度撮影しているものと思われる。

2010年12月に発表されたレッスン1は、「Carolina In My Mind」のイントロをベースとしたテーマから始まる。 1.「Little Wheels」は、40秒という短いインストルメンタルで、アルペジオに低音の動きが加わる彼のスタイルが良く出ている。右手、左手、全身、サウンドホールの中からという4分割の映像で1回弾いた後に、もう一度繰り返しながらJTによるコードの説明が加わる。同時にボーナス映像として「Nails」もアップされた。そこでJTは、フィンガーピックは弦の感じが伝わらないため爪で弾くが、人間の爪はそれほど強くないため、補強が必要と言い、爪の補強法を紹介している。アセトンできれいにした爪にファイバー・テープを貼り付けて、形に沿って切り取り、それを6層重ねて、接着剤で固定するとのこと。彼は、この処理は爪全体でなく、先の部分だけ行うとよいとし、強い化学品を使用するので、長年使っている自分は大丈夫だけど、その影響については責任とれないと話している。また「Making Of Nails」という映像もあり、それはカチンコで遊ぶJTと、昔風のカウントナンバーの字幕やフィルムの雨(キズ)を施したパロディーとなっている。しばらく間を置いた8月公開の 2.「Country Road」からは、左手とサウンドホールの中からの2分割映像になる。左手の映像は、彼のフィンガリングを後ろ斜め上から捉えているので、画面を見ながら同じ向きで運指を確認できるので、とてもわかりやすい。サウンドホールの中からの映像は、いままでの教則映像にはなかったアングルで、これも正面からの撮影よりもわかるやすい。曲は、ドロップドD(6弦がD)のチューニングで、ハンマリングオンのお手本として紹介される。JTは曲を弾きながら、歌詞の一部を軽く口ずさんでいる。

2012年2月の 3.「Second Wheel」は、カポ2フレットによる演奏で、コード進行の説明の後に演奏される。45秒の短い曲で、1回弾いた後に「Little Wheel」と合わせて演奏される。最後に半分のスピード(音の高さは同じ)で演奏が再現される。5月発表の4.「Fire And Rain」は、1968年ロンドンの地下室で発表したが、アルバムへの収録は翌年のロスアンゼンルスになったと紹介される。コード構造の説明後に演奏されるJTのギター演奏はこのうえもなく美しく、ギターのピュアな音に聞き惚れてしまう。終了後に、JTは「I've seen fire and rain, not recently, but once」と話している。

8月発表の 5.「Enough To Be On Your Way」は、「Hourglass」1997 A16に入っていた曲のイントロ部分で、約40秒の短い演奏だ。ここではJTはあまり喋らず、2分割画面の模範演奏と、50%のスロースピードでの映像のみで終わる。ボーナスとして「Tuning」も公開された。ギターという楽器の性質上、開放弦で完璧に音を合わせても、ハイフレットでは狂ってしまう。また低音弦を強く弾くと音がシャープするという。そこでJTは、セント数値を表示するチューナーを使い、Eを3セント、Bを6セント、Gを4セント、Dを8セント、Aを10セント、Eを12セント、フラットさせるとよいと説明している。11月発表の 6.「Carolina In My Mind」では、JTは時折歌詞を歌いながら、1曲全部弾き通している。2013年3月発表の7. 「Secret O' Life」 は、ギターを弾きながら口笛でメロディーを入れる部分が面白い。

JTのギタースタイルを学べるだけでなく、彼が弾くギターの音の美しさが堪能できる。

[2012年11月作成]

[2022年4月追記]
2016年に公開された 8.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」を見逃していました。JTのギタープレイの中で最もジャズ的、複雑で、伴奏付きの演奏の場合、ギター・パートの完全な聴き取りが難しかった曲だった。それがJT本人による単独演奏で聴けるなんて、もう最高!歌なしの演奏でも十分楽しめる内容で、JTの口笛も聞こえる。

2022年公開の9.「All I Want」は、ジョニ・ミッチェルの名盤「Blue」 C6での伴奏を復元したもの。ブランディ・カーライルの依頼により作業し、2019年9月22日に撮影したとのこと。小さめの音量による「Blue」 1971年の演奏を背景に、2019年のJTが弾いている。オリジナルではジョニのダルシマーと溶け合っていたギター演奏が、ここでは鮮やかに浮かび上がっている。本当に創造的で美しい音楽だ!




E26 Tanglewood 75th Anniversary Celebration 2013 Various Artists    Cmajor      
 


James Taylor : Vocal, A. Guitar (3)
Boston Pops Orchestra
John Williams : Conductor

Gil Goldstein : Arrangement

1. Over The Rainbow [E. Y. Hurburg, Harold Arlen]  A23
2. Shall We Dance [Oscar Hammerstein II, Richard Rogers]
3. Ol' Man River [Oscar Hammerstein II, Jerome Kern]
 A23


収録: 2012年7月14日、The Koussevitzky Music Shed, Tanglewood Music Center, Lenox, Massachusetts 

 
 
マサチューセッツ州バークシャー州にあるタングルウッドは、1930年代よりボストン交響楽団の本拠地となり、毎夏に開かれるフェスティバル、若手音楽家のための夏季講習会(タングルウッド音楽センター)などで、アメリカのクラシック音楽界の聖地となっている。小澤征爾が音楽監督を務めたり、1996年に14歳の五嶋みどりがレナード・バーンスタイン指揮でバイオリン協奏曲を演奏中、バイオリンのE弦が2回も切れたにもかかわらず、他の奏者から楽器を借りて最後まで弾き切ったという「タングルウッドの奇跡」などで、日本人にも馴染みが深い場所だ。本映像は、音楽祭75周年記念コンサートの模様で、ケーブルTV局「Thirteen」が放送したもの。キース・ロックハート(指揮)、エマヌエル・アックス(ピアノ)、ヨーヨー・マ(チェロ)、アン・ソフィー・ムター(バイオリン)、ピーター・サーキン(ピアノ)など、私は知らないが恐らく錚々たる人達が出演、昔のクラシック曲の他にアーロン・コップランドやバースタインなど、同地に縁がある人達の作品を演奏している。

JTは、「Selections from The Great American Songbook」というコーナーで、指揮者ジョン・ウィリアムスと登場、3曲歌っている。1. 「Over The Rainbow」は、1939年の映画「オズの魔法使い」でジュディー・ガーランドが歌った名曲で、その後数多くの人が歌うようになったが、JTは珍しくヴァースから歌い始める。「ヴァース」とは、本体の歌の前に置かれる序奏部分のことで、劇中歌の場合、ストーリ−の流れで自然に歌に入る繋ぎのような役割がある。ギターを持たずに立って歌うJTは、いつものバンドメイトなしで、緊張気味。3曲のアレンジを担当したギル・ゴールドスタインは、ジャズ畑で活躍するピアノ、アコーディアオン奏者だ。2.「Shall We Dance」は、1951年初演のミュージカル「王様と私」の曲で、1956年の映画化ではデボラ・カーが歌っていた。日本では周防正行監督による1997年の同名映画の主題曲として、大貫妙子が歌っていた。ここでのJTは、さらにぎこちない感じで、オケとボーカルが合わない部分もあるが、流石に音楽的には十分楽しめる内容。3.「Ol' Man River」は、1927年のミュージカル「Showboat」の曲で、本格的な映画化(それ以前に部分的トーキー映画が製作されたらしい)は1936年。ここではJTはいつものオルソンギターを弾きながら歌う。以前から時々歌っていた曲で、弾き語りという事もあって、一気に彼らしい雰囲気になる。途中からオーケストラが加わり、最後は盛り上がって終わる。エンディングにおけるヴィブラートを効かせたJTの熱唱が印象的で、デビューの頃の訥々した歌い方から、このように歌えるようになったまでの年月の移ろいを感じさせてくれる。

クラシック音楽ファンでなければピンとこない映像・演奏も多いが、普段は聴けないJTのスタンダード歌唱を3曲も楽しめるのだから、十分元は取れると思う。

[2015年5月作成]


 
E28 A MusiCares Tribute To Carole King 2015 Various Artists   Shout Factory   
 

Carole King : Vocal, Piano
James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar
Robbie Kondor : Keyboards, Musical Director
Irwin Fisch : Keyboards
Danny Kortchmer : Electric Guitar
Dean Parks : Electric Guitar
Bob Glaub : Bass
Russ Kunkel : Drums
Rafael Padilla : Percussion
Kate Markowitz, Valerie Pinkston, Milton Van : Back Vocal

Stuart Duncan : Vaiolin (1)
Tom Scott : Alto Sax (1, 21, 22)
Mindi Abair : Alto Sax (1, 22)
Trombone Shorty : Trombone (1, 22)


1. Hi-De-Ho (That Old Sweet Roll) (LeAnn Rimes And Steven Tyler)
2. So Far Away (P!nk And Paul Mirkovich)
3. I Feel The Earth Move (Train)
4. You’ve Got A Friend (Lady Gaga)
5. It’s Too Late (Gloria Estefan)
6. Love Makes The World, Where Is The Love? (will.i.am And Leah McFall)
7. Beautiful (Sara Bareilles, Zac Brown, Jason Mraz And )
8. Way Over Yonder (Merry Clayton, Lisa Fischer, Judith Hill And Darlene Love)
9. Where You Lead (Jesse & Joy)
10. Crying In The Rain (Miguel And Kacey Musgraves)
11. (You Make Me Feel Like) A Natural Woman (Alicia Keys)
12. Been To Canaan (Jennifer Nettles)
13. I’m Into Something Good (Amy Grant)
14. It Might As Well Rain Until September (Miranda Lambert)
15. One Fine Day (Martina McBride)
16. Up On The Roof (James Taylor) A10 A15 B16 B40 C1 C4 E1 E5 E8 E15
17. Home Again (Carole King, Moez Dawad And Ahmad A. El Haggar)
18. Sweet Seasons (Carole King And James Taylor)
19. Hey Girl (Carole King And James Taylor)
20. Will You Still Love Me Tomorrow (Carole King And James Taylor)
 C3 C4 E15
21. Jazzman (Carole King And Tom Scott)
22. I Feel The Earth Move [Finale] (Carole King)

注: 赤字 JT参加曲

収録: 2014年1月24日、Los Angeles Cnvention Center, Los Angeles

 
2014年のミュージケアーズは、1月24日ロスアンジェルス・コンベンション・センターで「Annual Musicares Gala」が開催され、キャロル・キングが表彰された。700のテーブルの参加者からは、恵まれない音楽家へのサポートとして約5百5十万ドルの寄付が集められ、その映像が翌年6月DVDで発売された。この手の映像作品は、いろんなミュージシャンがそれぞれの個性でトリビュート演奏をするため、一般的には散漫な感じになる事が多いが、ここではキャロルの作品の存在感が圧倒していること、および参加者達のキャロルに対する愛着・尊敬の強さのためか、全編にわたり見事な統一感があり、大変見ごたえのある映像作品となっている。

どのパフォーマンスも素晴らしいが、特筆に値すると思われるものについて簡単に説明しよう。1.「Hi-De-Ho」は、キャロルがダニークーチ、チャールズ・ラーキーと組んだCityのアルバム「Now That Everything's Been Said」1969 に収められていた曲で、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズが1970年の「BST3」で取り上げ、シングルカットされて全米14位のヒットを記録、後にキャロル自身が「Pearls」1980でセルフカバーした。ここではリーアン・ライムズとエアロスミスのスティーブン・タイラーという異色の組み合わせで、歌巧者の二人により冒頭から大いに盛り上がる。ホーンセクションが一瞬映るが、アルトサックスがご存じトム・スコットと若手女性プレイヤーの筆頭ミンディー・アブエアー、他にトロンボーン・ショーティー(Troy Andrews)の姿が見える(トランペットを吹く男女の名は不明)。また間奏でバイオリンを奏でる人はブルーグラス界の名手スチュアート・ダンカンだ。3. 「I Feel The Earth Move」のトレインは、1993年に結成されたサンフランシスコのバンドで、エンディングではボーカリストがステージから降りてキャロルのもとに行き、掛け合いで歌う。4.「You’ve Got A Friend」のレディー・ガガは真っ白のコスチュームとサングラスという恰好で、会場中央に備えられた白ずくめの回転ステージでの弾き語り演奏。思いを伝えたいという気持ちが心に迫る歌唱で、その表現力は圧倒的。 5.「It’s Too Late」のグロリア・エステファンは一転しっとりした演奏で、マイアミ・サウンドマシーンの女の子が見事に成熟した様を見せてくれる。そういえばバックのパーカッション奏者ラファエル・パディアは同じバンドの出身。

6.「Love Makes The World, Where Is The Love?」は本ステージ唯一の後期作品(2001年)で、 リー・マクフォールは、北アイルランド出身でBBCの歌唱コンテストのウィナーとなり、ブラックアイド・ピーズのラッパ−、ウィル・アイアム(本映像の共演者)に認められてデビューしている。なお曲間に挿入され彼が歌う「Where Is The Love?」は、ブラックアイド・ピーズのレパートリーで、本映像の中で唯一キャロルの作品でないもの。7.「Beautiful」は、新感覚のシンガー、ジェイソン・ムラツ、サラ・バレリス、カントリーの進歩派ザック・ブラウンに、ジェイソンと一緒に活動する女性4人組レイニング・ジェーンのコラボレイション。中央の円形ステージで回りながらの演奏。バックシンガーとしてピカ一の4人組による 8.「Way Over Yonder」は最高!メリー・クレイトンはオリジナル「Tapestry」1971でもこの曲でキャロルのバックで歌っていたな。12.「Been To Canaan」から15.「One Fine Day」はカントリー界の姫君たちが歌う豪華なメドレー。ちなみにJTは、ジェニファー・ネトルズとは2009年1月のオバマ大統領就任式で、エミー・グラントとは2011年7月のタングルウッド、2013年の彼女のアルバム「How Mercy Looks From Here 」C94で共演経験がある。ベースを弾くボブ・グラウブは、ジャクソン・ブラウンやリンダ・ロンシュタットのバンドの他、数多くのセッションに参加している人。

次にメインゲストとしてJTが登場し、16.「Up On The Roof」を歌う。アレンジはJTバンドのものとほぼ同じ。 そしてミュージケアのトップであるニール・ポートナウによるプレゼンテーションを受けて、キャロルがステージに上がりトロフィーの授与を受け、皆への感謝を語る。夫のジェリー・ゴフィン、出版社のボス、ダニー・カーシュナー、プロデューサーのルーアドラー(会場にいる彼の姿が映る)、そしてJTの名が語られる。そして彼女が演奏する 17.「Home Again」は、前年バークリー音楽大学で名誉博士号を授与された際に知り合ったエジプト出身の若いミュージシャンとのアラブと西洋音楽の融合セッションだ。本稿を書いている2017年2月はトランプ政権が誕生した直後にあたるが、アメリカ第一主義を掲げて、イスラムの人・文化を尊重しない風潮が感じられるが、ここでの演奏を見聞きすると、音楽、いや世界はこうあるべきだと心から思う。それが理想論であったとしてもだ!ここでJTが再登場して、18.「Sweet Season」を歌う。演奏自体はリユニオン・ツアーと同じ感じ。JTファンにとって、本映像の目玉が19.「Hey Girl」だ。1963年のフレディ・スコットがオリジナル(全米10位)で、1972年のダニー・オズモンド(8位)、1980年の「Pearls」でのキャロル本人のセルフカバー、1997年のビルージョエルなどがあるが、1993年のマイケル・マクドナルドのカバー、そして2004年のレイ・チャールズの「Genius Loves Company」 C81でのマイケルとレイのデュエットが最高かな?JTの歌唱およびバックの演奏は、比較的オリジナルに忠実なものだ。20.「Will You Love Me Tomorrow」も、リユニオン・ツアーと同じ雰囲気であるが、何度聞いても心に染み入ってくる。

ここでキャロルがトム・スコット(すっかり太ったなあ!)を呼び出して、元気いっぱいに21.「Jazzman」を歌い、トムもガッツのこもったソロを披露する。フィナーレでの 3. 「I Feel The Earth Move」の再演は、出演者がステージに集まった中での華やかな演奏。なお、当日は11.と12.の間にジェイコブ・ディラン(ボブ・ディランの息子)とルイーズ・ゴッフィン(キャロルの娘)により「Goin' Back」(キャロルのアルバム「Writer」1970 C1参照)が演奏されたが、本映像ではカットされている。

曲の良さ、出演者達の素晴らしさに加えて、元気に喜びと感謝の念を表現するキャロルの姿がまことに魅力的。とても気持ちの良い映像だ。

[2017年3月作成]