E1 In Concert (1979) MGM/CBS Home Video

E1 In Concert



James Taylor: Vocal, Guitar
Danny Kootch: Guitar 
Waddy Wachtel: Guitar 
Don Grolnick : Piano 
Leland Sklar: Bass 
Russ Kunkel: Drums, Percussion 
David Sanborn: Alto Sax (9,10,15,17,18)
David Lasley, Arnold McCuller: Back Vocal (3,4,5,12,13,14,15,17,18)

1. Blossom  A2 B3 E15
2. Millworker  A10 A15 B30 E10 E19 E20
3, Carolina In My Mind  A1 A1 A15 B3 B10 B16 B22 B25 B26 B41 B46 E5 E10 E14 E15 E25
4. Handy Man [Otis Blackwell, Jimmy Jones]  A9 A15 E4 E8
5. Brother Trucker  A10 E3
6. Secret O' Life  A9 A15 B27 B28 E7 E14 E25
7. Your Smiling Face  A9 A15 E2 E4 E5 E7 E8 E10 
8. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]  A10 A15 B16 B40 C1 C4 E5 E8 E15 E28
9. Steamroller  A2 A15 B10 E5 E8 E10 E11 E14
10. Don't Let Me Be Lonely Tonight  A4 A15 B16 C67 C74 E5 E8 E25
11. Long Ago And Far Away  A3 B16
12. I Will Not Lie  A10 
13. Walking Man  A6 A15 B16
14. Mexico   A7 A15 B16 B34 E7 E8 E10 E22
15. Honey Don't Leave L.A. [Danny Kootchmar]  A9 B11 B12
16. Sweet Baby James  A2 A15 B3 B5 E4 E5 E7 E10 E14 E15 E17
17. How Sweet It Is [Holland, Dozier, Holland]  A7 A15 B16 E4 E5 E8 E10 E13 E21
18. Summertime Blues [Jerry Capehart, Eddie Cochran]  A20
19. Fire And Rain  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E4 E5 E7 E8 E10 E13 E14 E15 E17 E21E25


録画: 1979年 7月7日*、Blossom Music Center, Cuyahoga Falls, Ohio
収録時間: 90分

注)18.のみレコード・CD未収録曲
  * 1979年7月19日とする資料もある

もともとアメリカの有料ケーブルテレビ・チャンネル局「Showtime」のために録画されたもの。ブロッサム・ミュージック・センターはオハイオ州にあって、観客席は屋根付きのパビリオンと屋外(芝生)からなり、収容人員約2万人のコンサート会場だ。1979年4月にリリースされたアルバム「Flag」A10 のジャケットを映したシーンおよび、JTがヘリコプターで会場に乗り付けるシーンと会場の鳥瞰画面から始まる。

コンサートは会場名にちなんだのか、1.「Blossom」の弾き語りで始まる。まだ前髪はあるけど、前かがみになるとてっぺんが少し薄くなっている。そして手に持っているギターはマーク・ホワイトブックだ。これはクラレンス・ホワイトが使っていたギターとしても有名だが、製作者本人は早くに引退したため、ほとんど出回っていないという幻の作品だ。80年代以降はJTが使用した記録を見たことはなく、1990年代のカーリー・サイモンのコンサートでこのギターが写っていたため、離婚の際に彼女に譲渡されたものと推測される。ドン・グロルニックが紹介され、二人の演奏による 2.「Millworker」が始まる。演奏者のみに照明をあてるライティングが効果的、当時のドンも体型こそは同じだけど若々しく見える。3.「Carolina In My Mind」ではリズムセクションの二人と、バックコーラスの二人が加わる。真っ赤な衣装のアーノルド・マックラーと、真っ青なデビッド・ラズリーの色の対比が鮮やかだ。当時のバックコーラスは男性二人だけで、現在のように女性がいないので、シンプルなサウンド。ギブソン・レスポールを抱えたダニー・クーチが紹介され、JTと向かい合って 4.「Handy Man」を弾き始める。さらにワディー・ワクテルが加わり、パワフルな 5.「Brother Trucker」が演奏される。

6.「Secret O' Life」は、打って変わって静かでメロウな演奏。 ラス・カンケルはコンガを演奏。続く7.「Your Smiling Face」でワディー・ワクテルの仕草は乗り乗り、リーランド・スクラーのドライブの効いたベースが凄い。このビデオ作品はバンド演奏がバランス良く録音されており、ベースラインがしっかり聞こえる。 9.「Steamroller」は最初JTのギターのみで歌われ、セカンド・ヴァースからバンドがフィルインし、大ブルース大会となる。ドン、ワディーとソロが回され、突如デビット・サンボーンのソロが始まる。彼は当時JTのツアーの前座を勤めていたはずで、JTのセットではサックス奏者として参加していたという。ダニーのギターソロもヘビーだ。最後JTのボーカルも自由自在なアドリブを聞かせ「Mother Fucker !」などどシャウトすると会場がどっと沸く。10.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」の最後の楽器ソロはサンボーンが担当、彼にしては比較的さらっとしたソロで終わってしまい、少し物足りない。11.「Long Ago And Far Away」はJTのギターとドンのフェンダー・ローズ・エレキピアノのみの演奏だ。新アルバム「Flag」のプロモーショナル・ツアーらしく、12.「I Will Not Lie」などの珍しい曲をやっている。13.「Walking Man」のコーラスとJTの合唱は最高だ。ワディー・ワクテルがボリューム・コントロールを使って、ペダル・スティール・ギターのようなサウンドを出している。元気な 14.「Mexico」に続く、15.「Honey Don't Leave L.A.」は、ダニーがフランス女に恋して、ふられた経験を歌ったものと紹介される。16.「Sweet Baby James」は弾き語りだが、コンサートの熱気のせいか、JTのボーカルは自然に崩した自由な歌い方だ。アンコールに応えて、ヒット曲 17.「How Sweet It Is」、18. 「Summertime Blues」が歌われる。18.はエディー・コクラン1958年のヒット(全米8位)で、1970年のザ・フーのリバイバル・ヒットが名高い。この曲はずっと後の2008年に「Cover」A20で正式録音された。JTのボーカルは少々悪乗り気味。最後は19.「Fire And Rain」で締めくくられる。

ダニー・クーチが加わった初期の終わりの時期のライブ映像ということで価値があり、いろいろな角度からのショットが丁寧に編集されており、見ごたえは十分にある。当時アメリカのみで短期間発売され、日本ではあまり出回っていないものと思われる。

[2023年3月追記]
本映像は、JTの好意により 2023年3月の1週間のみ、YouTubeで観ることができた。


E2  No Nukes  (1980)


James Taylor: Acoustic Guitar (2,3,4,6), Vocal
Carly Simon: Vocal (1,2), Back Vocal (5)
Danny Kootch: Electric Guitar (1,3,4,6)
Waddy Wachtel: Electric Guitar (1,3,4,6)
John Hall: Electric Guitar (5), Vocal (2), Back Vocal (5)
Leland Sklar: Bass (1,3,4,6)
Don Grolnick: Keyboard (1,2,3,4,6)
Russ Kunkel: Drums (1,3,4,6)
Unknown: Percussion
David Sanborn: Sax (1,4,6)
Rosemary Butler: Back Vocal (5)
David Lasley: Back Vocal (1,4,6)
Arnold McCuller: Back Vocal (1,4,6)
Jackson Browne, Graham Nash, Bonnie Raitt, Nicoletto Larson, Phebie Snow: Back Vocal (5)

[The Doobie Brothers] (5)
Michael McDonald: Keyboard, Vocal
Patrick Simmons: Guitar
John McFee: Guitar
Tiran Porter: Bass
Cornelius Bumpus: Sax
Keith Kudsen: Drums
Chet McCracken: Drums

1. Mockingbird [Inez & Charlie Fox]  B12と同じ
2. The Times They Are A-Changin'  [Bob Dylan]  B11
3. Your Smiling Face  A9 A15 E1 E2 E4 E5 E7 E8 E10
4. Stand And Fight  A11 E2
5. Takin' It To The Streets [Michael McDonald]  B12
6. Stand And Fight  A11 E2

録画: 1979年9月19日〜23日 Madison Square Garden, New York


1979年9月19日〜23日にニューヨークのマジソン・スクウェア・ガーデンで開催された「No Nukes」チャリティーコンサートのライブの映像版で、翌1980年7月に劇場公開され、その後はアメリカのテレビ局で時たま放映される程度であったが、1990年代末にビデオ・DVD化された。ここでは映像版に特徴的な事のみ説明するので、基本的な説明は B12 のレコード版を参照して欲しい。なお私が持っているのは、アメリカのケーブルテレビで放映されたものを録画したもので、一般販売されたものは観ていないので、もし内容に違いがあったら勘弁してください。

最初は開演直前の楽屋裏のシーンから始まり、グラハム・ナッシュ、ジョン・ホール、JTとカーリー・サイモン等が写る。それからステージに切り替わり 1.「Mockingbird」が始まる。デビッド・サンボーンのアルトサックス・ソロなど演奏の内容からレコード版 B12と同じテイクだ。カーリーが歌いながら踊る様はとてもセクシーで、最後は腕を組みながらステージを降りる様は円満そのもの(当時夫婦仲はそれほど良くなかったはずなんだけど)。ふたたび楽屋で、2.「The Times They Are A-Changin'」の打ち合わせのシーンとなり、カーリーが歌詞をボードに書き取っている様が面白い。ボニー・レイットとジョン・ホール(ギター)による「Runaway」の演奏の後、2.のステージ演奏は途中から始まる。ここではレコード版とは異なり、ジョン・ホールが加わり、JT、カーリー、グラハム・ナッシュの4人による合唱だ。JTはマーク・ホワイトブックのギターを弾いている。曲が終わった後すぐに、グラハム・ナッシュによるJTとカーリーの名前の紹介のマイクが入る(レコード版では入らない)。次にミュージシャンによる記者会見のシーンが続く。

CSNの「Suite Judy Blue Eyes」、ジャクソン・ブラウンの演奏の後に、「Power」の楽屋での練習シーンで、JTがギターを爪弾いている様が写る。続いてドゥービー・ブラザースが演奏、特に2曲目の「What A Fool Believes」はレコード版に入っていないめっけものだ。JTバンドのバック・ヴォーカルでお馴染みのローズマリー・バトラーがコーラスで大活躍。「Power」の練習シーンがちょっと写り、グラハム・ナッシュの演奏に入る。次はお待ちかねのJTだ!3.「Your Smiling Face」のJTはかなり乗っている感じで、ワディー・ワクテルの派手なモーションが目立つ。パーカッション奏者が写るが、おそらくスティーブ・フォアマンと思われる。当時のJT人気は高く、観客は大騒ぎだ。JTのマイクの後、原子力開発に関するドキュメンタリー・フィルムが挿入される。その後楽屋シーンが入り、4.「Stand And Fight」の後半部分が始まる。ギル・スコット・ヘロン演奏の後に、再び「Power」の練習シーンが入り、前半楽屋で、後半はステージでグラハム・ナッシュの「Our House」が歌われる。そして当時ギンギンに売り出し中のブルース・スプリングスティーンが登場。大変な熱演で大盛況となる。はからずもここでロック界の世代交代が如実に出てしまっている。クロージングの 5.「Takin' It To The Streets」は、出演者が勢揃いし迫力のある場面だ。JTの出番はマイケル・マクドナルドが1ヴァース歌った後なのだが、なんと出だしをとちってしまう。それをカバーしてジョン・ホールが1節歌い、JTが無事歌に入る。その際歌いながら「Thank you John !」とやるところはかっこいいなあ。なおエンディングのコーラスでシャウトしている女性はフィービー・スノウ。

次に、バッテリパーク横の空き地(現在は金融センターがある所)で行われた野外コンサートの模様が写り、当時社会派の闘士として活躍した女優のジェーン・フォンダ、消費活動家で後に政治家となったラルフ・ネイダーがスピーチをする。このコンサートにはJTやドゥービー・ブラザースは参加していないようで、「Power」では、カーリー・サイモンやグラハム・ナッシュをバックに、ジョン・ホールとジャクソン・ブラウンがリード・ボーカルを取る。そしてジェシー・コリン・ヤングが出てきて皆で「Get Together」を歌う。最後のクレジットでは別途スタジオ録音されたという 6.「Stand And Fight」が全編演奏される。後に録音されるA11のバージョンよりもよりワイルドな歌唱で、デビッド・サンボーンのサックスが全編でフィーチャーされている。

収められた曲のほとんどが、レコード盤とは異なる曲・テイクになっているので、レコード(CD)を持っている人でも十分楽しめる内容だ。


[2023年7月追記]
「Takin' To TheStreet」のエンディングでのフィービー・スノウのシャウトにつき、追記しました。



E3  Studs Terkel's Working  (1982)

James Taylor : Vocal (3,4,5)
Jennifer Warnes : Vocal (2)
Daniel Vardez (1)

1. Un Mejor Dia Vendra [James Taylor, Daniele Gracelis, Matt Landers]
2. Millworker [James Taylor]
3. What Could've Been [Micki Grant]
4. Brother Trucker
[James Taylor] A10
5. Finale

Phylis Geller, Lindsay Law : Producer
Stephen Schwartz, Kirk Browning : Director

Based On Book 'Working' (1974) by Studs Terkel

注: JTは、 1, 2 は非参加、 3, 5は出演者の一人として短いシーンで参加。 


JTは「Millworker」と「Brother Trucker」を自己名義のアルバム「Flag」A10に収録したが、これらの曲は彼が1978年のミュージカル「Working」のために提供したものだった。ブロードウェイの上演はわずか24回という短期間で閉幕してしまい、興行的には失敗作とされたが芸術上の評価は別だったようで、その後1982年にPBSテレビ製作の「American Playhouse」シリーズ中の1作として、舞台と同じステファン・シュワルツ監督によりテレビ化された。作家、歴史家、放送家のスタッズ・ターケル(1912-2008)は、シカゴを本拠地としてラジオの司会、特に1952年から1997年まで続いたラジオ番組「Studs Turkel Program」で名声を確立した。その後は関係者の証言により構成した歴史書を執筆し、大不況や第二次世界大戦をテーマとした作品でピューリッツアー賞を獲得する。1974年の作品「Working」はその中で最も有名な作品で、「What People Do All Day And How They Feel About What They Do」という副題が示すように、様々な職業の人々の証言を集め、アメリカ社会を描き出したものだ。ミュージカル化を担当した監督ステファン・シュワルツは1976年のミュージカル「Godspell」で成功、その後も「Pipin」などの評判作品を制作するが、本作を含むブロードウェイ作品の失敗により引退状態となる。それでも1995年にディズニー映画「ポカホンタス」で、アラン・メンケンと作曲を担当するなど、活動を続けている。

ここでは工員・教師・消防士から主婦・娼婦・年金生活者に至るまで、様々な職業の人々が登場して人生を語り、歌う。JTはオリジナルキャストのミュージカル、レコードには参加していなかったが、テレビ化にあたりトラック運転手の役で出演した。JTのシーンは公衆電話ボックスから出てくるところから始まる。髭を生やしていないA11「Dad Loves His Work」の頃の顔つきだ。ここでは独立営業のトラック運転手の役で、「48時間誰とも話しをすることのない孤独な仕事」と紹介される。大型トラックの運転席のセットで、JTがハンディマイクに向かって4.「Brother Trucker」を歌う。途中薬(眠気覚まし?)を飲み、発泡スチロールのカップに入ったコーヒーを飲みながら語るように歌う。歌が前面に出る一方、バックバンドの伴奏は控えめで、ヘビーなリズムが主体だったA10のバージョンとまったく異なる。夜間の対向車や街路灯が瞬くライティング効果の中、JTの虚ろな表情がとても印象的。当時はカーリーとの結婚生活が完全に行き詰っていた頃で、その孤独感が投影されているためであろうか。途中、目的地のプラカードを持った可愛い娘チャンのヒッチハイカーをピックアップ、彼女が色っぽい視線でウィスキーのボトルを勧めても、いらないと断り、コーヒーを飲んで飄々と運転を続ける。最後のダイアログで、19才から運転を始め18年間、2500回もドライブしたこと、引退までずっと続けるであろう事が語られる。JTの語りや歌は良い出来だと思う。

JTは2.「Millworker」の演奏・演技には参加していない。工員を演じるのはアイリーン・ブレナン (1932-2013) だ。彼女は、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが共演した傑作「The Sting」1973、ニール・サイモンによる探偵小説・映画のパロディー作品「Murder By Death (名探偵登場)」1976、「The Cheap Detective (名探偵再登場)」1978 に出演。特に世間知らずのお嬢さん(ゴールディー・ホーン)がフトした事で入隊してしまうコメディ作品「Private Benjamin」1980で、彼女をしごきまくる教官の役という個性の強い脇役演技が光っていた。本作における人生に疲れた工員という彼女の役作りには鬼気迫るものがある。一時代前の工場をイメージしたセットのなかで、彼女を中心とした数名のメンバーが並んで作業をする。皮革をスティームでプレスする工程と思われるが、単調な労働の無味乾燥な雰囲気と、メンバーによる様式化された振り付けのような仕草が交じり合った結果、今まで見たことがない独特のムードが醸し出されていて、いつまでも目に焼きつくような強烈な印象を残す。アイリーンは皺枯れた声のセリフのみで、シーンには登場しないジェニファー・ワーンズ (1947- ) が 2.「Millworker」を歌う。彼女はシンガーとしては地味なキャリアの人で、最も有名な作品は、1982年の映画「An Officer And A Gentleman (愛と青春の旅立ち)」の主題歌をジョー・コッカーと歌った「Up Where We Belong」だろう。JTの「Dad Loves His Work」1981 A11のコーラスに参加していたほかに、1982年のC37で共演している。総じてとても良い出来だと思う。アイリッシュ・チューン的なアレンジがされているのは、当時黒人や東洋人とともにアメリカにおける重労働を担っていたアイルランド人のイメージからくるのだろうか。3. 「What Could've Been」は各エピソードの主役が少しずつ歌う曲で、JTも1節歌っている。5.「Final」では登場人物が勢揃いするが、ここで写るサングラス姿のトラック運転手は明らかにJTではなく、スケジュールの関係で都合がつかなかったための替え玉と思われる。ただし歌の終盤で出演者が「Me!」と一言づつ歌うシーンがあり、前述のトラック運転席のセットで撮影されたJTのカットが入る。1. 「Un Mejor Dia Vendra」は、スペイン語圏からの移民労働者のエピソードにおいて、登場人物のモノローグのバックに流れる曲で、JTは作曲のみ担当。ここではダニエル・バルデズという人がスペイン語の歌詞を歌っている。

以下、JTとは関係のないシーンについての簡単なコメントを述べる。駐車場の整理係に扮したスキャットマン・クロウサーズ(Scatman Crothers, 1910-1986)は、「The Shining」 (スタンリー・キューブリック監督) 1980や、「Twilight Zone」1983 などに出演した黒人俳優で、客の車を預かり移動させるアメリカ式の駐車場を舞台に達者な歌を披露する。娼婦の役で、プライドと孤独を滲ませたモノローグが印象的なバーバラ・ハーシー(Barbra Hershey, 1948- ) は、宇宙飛行士を描いた「ライトスタッフ」1983、ロバート・レッドフォード主演の野球映画「Natural」1984、ウッディ・アレン監督の「ハンナとその姉妹」1986、ナタリー・ポートマンの母親役を演じた 「Black Swan」2010 が有名。私は、ベット・ミドラーと共演した「フォエバー・フレンズ(原題: Beaches)」1988 が大好きで、子供の頃に知り合ったベットとバーバラによる、貧富の差、歌手(ベット)、弁護士(バーバラ)という生き様の違いを超えた友情を描いた印象的な作品だった。なお彼女はJTのプロモーション・ビデオ「Enough To Be On Your Way」1997に出演している。ウェイトレスの役で溌剌とした動きと歌を見せるリタ・モレノ(Rita Moreno, 1931- )は、プエルトリコ生まれでブロードウェイ・ミュージカル、映画界で成功した人。アカデミー助演賞を受賞した映画「West Side Story」のなかで、レナード・バーンスタインの名作「America」を歌って踊るシーンは素晴らしかった。年金生活者のシーンで、公園のベンチで退屈そうに歌うチャールズ・ダーニング(Charles Durning, 1923-2012)は、数多くの作品に出演した性格俳優で、「The Sting」1973の悪徳刑事で有名になり、「Tootsie」1982では、主人公のドロシーが本当は男であること(ダスティン・ホフマンの女装)に気がつかずに恋してしまう、お父さんの役が傑作だった。掃除婦の役で出演するパティ・ラベル(Patti LaBelle, 1944- )は、ソウル界のゴッドマザーと呼ばれる人で、1974年の「Lady Mamalade」が代表曲。ここではクリーニング・ウーマンのユニフォームを着て、持ち前の歌唱力でシャウトしまくる。そのアンバランスな感じが最高。そして作品全体でナレーターを担当するのが、スタッド・ターケル本人だ。

その他、舞台やミュージカルで活躍する俳優達が語り歌う様は、自己の仕事に対する自負と哀しみに満ちたもので、生きる輝きとシニカルな思いが共存した社会・人生の縮図そのものになっている。現在でもプロの劇団やアマチュアによる学校の音楽界などで再演されているが、ステージではセットがイメージ重視の簡単なものになるため、本作のような各シーンに応じた舞台を設定した撮影のほうが合っているような気がする。1982年に製作・放送されたテレビ番組は、その後アメリカ国内でビデオ・DVD化されたが、リージョンフリーのDVDなので日本でも問題なく観ることができる。しかし残念ながら字幕は入っていない。

JTの出演シーンだけでも十分楽しめるが、他の出演者のパフォーマンス、そして作品全体としても見応えがある作品であると
思う。

[2011年4月作成]


E4  Live In Germany (Ohne Filter Musik Pur)  (1986)





James Taylor : Vocal. Acoustic Guitar
Dan Dugmore: Electric Guitar (4, 5, 6, 7, 10, 11, 13), Steel Guitar (2, 12)
Bill Payne: Keyboards
Lee Sklar : Bass, Back Vocal (8)
Carlos Vega : Drums
Rosemary Butler, Arnold McCuller: Back Vocal (3, 4, 5, 6, 8, 9, 10, 11, 13), Percussion (5)


1. You Can Close Your Eyes  A3 B4 B4 E7 E8 E10 E14 E15
2. Sweet Baby James  A2 A15 B3 B5 E1 E5 E7 E10 E14 E15 E17
3. Wandering [Traditional]  A7 E7 E8
4. That's Why I'm Here  A12 A12 E10
5. Only A Dream In Rio [James Taylor, Brazilian Translation J. Maraniss] A12 C59 E8
6. Handy Man [Otis Blackwell, Jimmy Jones]  A9 A15 E1 E8
7. Your Smiling Face  A9 A15 E1 E2 E5 E7 E8 E10
8. Traffic Jam  A9 A15 E7 E10
9. Sea Cruise [Huey 'Piano' Smith] 
10. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin]  A12 E5 E8 E10
11. Only One  A12 A15 E5 E10
12. Fire And Rain  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E5 E7 E8 E10 E13 E14 E15 E17 E21 E25
13. How Sweet It Is [Holland, Dozier, Holland]  A7 A15 B16 E1 E5 E8 E10 E13 E21

1986年3月27日 TV Studio Live at Baden Baden, Germany

写真上: 以前発売されたレーザーディスクの表紙
   下: 2011年に発売されたDVD 再発盤


1986年ドイツのバーデン・バーデンで収録され放送されたテレビ番組 「Ohne Filter Musik Pur」 (フィルターなしの純粋な音楽という意味)は、アーティスト主導による番組製作方針を掲げたものと推測される。スタジオに少人数のオーディエンスを招き、司会者・アナウンサーなしで、すべてはアーティスト本人により番組が進行してゆく。時期的には「That's Why I'm Here」 1985 A12 と「Never Die Young」1988 A13 の中間にあたり、バックのミュージシャンも2作の折衷的な編成だ。資料によるとJTは、1986年3月16日から5週間のヨーロッパツアーを行ったとあり、本映像はその間に撮影されたものだろう。本映像は、放送当時にレーザーディスクとして発売され、その後長らく廃盤のままだったが、2011年冬、オランダのImmortalというレーベルから突然再発売された。ただし私が以前に入手した「Ohne Filter Musik Pur」のビデオ映像(「その他映像」のコーナー参照)と比較すると、「Carolina In My Mind」(3と4の間)、「Don't Let Me Be Lonely Tonight」(5と6の間)、「Country Road」、「Walking Man」 (6と7の間)、「Long Ago And Far Away」 (7と8の間)の5曲がカットされ、反対にビデオ映像にはない11.「Only One」と13.「How Sweet It Is」が入っている。最後の曲「How Sweet It Is」については、入手した映像が最後途切れていたためであるが、その他の曲のカットについては、オーディエンスの拍手をかぶせることで巧妙に編集してあるため、意識して注意深く見ないとわからないだろう。ちなみに、このカットは上述のレーザーディスクの時からあったものだ。そういう意味で、これらのカットは後からの作業でなく当初の製作段階で行われたものであり、当時ドイツで放送された映像自体が2種類あったのか、当該ディスク製作の過程で編集されたものかのいずれかと思われる。

JTはヤマハ製ギターを使用。本作にはいつものライブと異なる点があるのが面白い。 1.「You Can Close Your Eyes」、 2.「Sweet Baby James」と、通常はエンディングで演奏する曲を先にやってしまう。後者ではダン・ダグモアがスティール・ギターのバックを付けている。3.「Wandering」からコーラスが加わる。アーノルド・マックラーとローズマリ・バトラーの二人で、 A12 A13でお馴染みの人たちだ。新曲 4. 「That's Why I'm Here」からフルバンドのバックとなり、リトルフィートで活躍した名人ビル・ペインのピアノプレイの独特の音使いが顕著に出ている。アップで写るローズマリー・バトラーの笑顔が魅力的だ。 5. 「Only A Dream In Rio」ではコーラス隊はギロやマラカスといったパーカッションを演奏しながら歌う。6.「Handy Man」では、ダン・ダグモアとJTが至近距離で向かい合ってイントロを決めている。7.「Your Smiling Face」でのJTはリラックスしていて、アドリブ・ボーカルも伸び伸びしている。ここではビル・ペインの縦横無尽のピアノプレイが物凄い!8.「Traffic Jam」では、リー・スクラーがベースを置いて、JT、コーラス隊と4人で歌う珍品! ここでの伴奏はピアノとドラムスだけだ。ほぼ切れ目なしに演奏される 9. 「Sea Cruise」はフランキー・フォード1959年のヒット曲(全米14位)で、ここではオリジナルのニューオリンズ風R&Bサウンドにコミカルな味付けを施している。コーラス隊が全開で、アーノルドがソロを取るほか、ローズマリーによるコミカルなボーカルにより大変生き生きとした面白い出来となった。

新作「That's Why I'm Here」から、10.「Everyday」、11.「Only One」の2曲が演奏され、大人っぽい味わい深いJTの新しい姿を楽しむことができる。この頃のJTは、髪の毛はだいぶ薄くなっているが、まだ前髪は残っている。ただし顔の皺が少し目立ってきているね!しっとりと演奏された12.「Fire And Rain」に続いて演奏される、最後の曲 13. 「How Sweet It Is」は、いつも通り乗り乗りのプレイだ。

今回発売された映像は、画面のシャープさについては少し物足りないが、音質は十分良く、JTおよびバンドによる自由で伸びやかな演奏が楽しめる。とりわけ素晴らしいフレーズをあふれ出るように無造作に弾きまくる、ビル・ペインのライブにおけるプレイの素晴らしさを十分堪能することができるのがうれしい映像である。ちなみに本作は、CDでも発売されている。


[2011年1月作成]

[2023年11月追記]
JTのYouTubeチャンネルで本映像が限定公開されました。詳細は、「その他映像」のコーナー「Ohne Filter Musik Pur」のビデオ映像の記事を参照ください。



E5  In Concert  Live At Boston  (1988)



James Taylor: Acoustic Guitar, Vocal
Bob Mann: Electric Guitar (Except 1,2,6,16,17)
Dan Dugmore: Pedal Steel Guitar (2,3,5,11,16), Electric Guitar (4,5,7,8,9,12,13,14,15)
Don Grolnick: Keyboards 
Lee Sklar: Bass, Back Vocal (13)
Carlos Vega: Drums, Percussion 3
Arnold McCuller, Rosemary Butler: Back Vocal (5,7,8,9,12,13,14,15,16)

1. Something In The Way She Moves  A1 A15 B3 B10 B18 B41 E14 E15
2. Fire And Rain  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E7 E8 E10 E13 E14 E15 E17 E21 E25
3. Song For You Far Away  A12
4. Your Smiling Face  A9 A15 E1 E2 E4 E7 E8 E10
5. Only One  A12 A15 E4 E10
6. Shower The People  A8 A15 B16 E6 E8 E14
7. How Sweet It Is [Holland, Dozier, Holland]  A7 A15 B16 E1 E4 E8 E10 E13 E21
8. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]  A10 A15 B16 B40 C1 C4 E1 E8 E15 E28
9. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin]  A12 E4 E8 E10
10. Don't Let Me Be Lonely Tonight  A4 A15 B16 C67 C74 E1 E8 E25
11. Angry Blues  A7
12. The Twist [Hank Ballard]
13. Sweet Potato Pie  A13 C81
14. Never Die Young  A13 B43 C85 E14
15. Steamroller  A2 A15 B9 E1 E8 E10 E11 E14
16. Carolina In My Mind  A1 A1 A15 B3 B10 B16 B22 B25 B26 B41 B46 E1 E10 E14 E15 E25
17. Sweet Baby James  A2 A15 B3 B5 E1 E4 E7 E10 E14 E15 E17

録画: Boston Colonial Theatre 1988年3月
放送: PBS, WNET (Channel 13)

 
 
1988年1月に発売された「Never Die Young」A13のためのツアーで、マサチューセッツ州ボストンのコロニアル・シアターにおけるライブを収録したもの。ニューアルバムの録音メンバーがほぼそのまま参加している。Night Owl ProductionがPBS(Public Broadcast Service)と製作し、全米のケーブルテレビ局に配給したもので、当時私が住んでいたニューヨークでは、WNET(Channel 13)で放送された。このケーブル局は、スポンサー企業による広告はなく、視聴者の寄付により運営され、放送の合間には司会者が盛んに寄付の電話の要請をしていた。その後一般向けにビデオが発売された。ただし発売されたビデオでは、3,11,12,13がカットされた。

まず冒頭に会場の入り口が写り、入場する人々とJTコンサートの看板が写る。会場のシーンでJTが登場し、立ちながら弾き語りで1. 「Something In The Way She Moves」を始める。ギターはヤマハでサウンドホールにハウリング防止のフタがついている。JTの頭はだいぶ薄くなっているが、てっぺんにはまだ少し髪の毛が残っている。本作は全体的に茶色・赤色が強調された色調で、暗めだけど落ち着いた感じで悪くない。数台のカメラによる撮影も変化に富んだアングルがあり、見ていて飽きない。2. 「Fire And Rain」 が始まると大きな拍手が起き、JTの歌に合わせて口ずさむ人々のショットが頻繁に挿入される。JTの第2の故郷マーサ・ヴィンヤード島はボストンの近くにあり、そういう意味で聴衆に地元意識が感じられ、目が潤んでいる女性の姿も映る。3.「Song For You Far Away」ではダン・ダグモアのペダル・スティール・ギターが光る。4.「Your Smiling Face」では二人のギタリストの息がぴったり合って心地の良いうねりを生み出している。5.「Only One」でバックコーラスの二人が登場するが、ローズマリー・バトラーは鮮やかな青のドレスで、少しおばさん風であるが、それなりに魅力的。彼女は、バーサという女性ロックバンドを経て、西海岸で活躍するセッション・ボーカリストとなり、ジャクソン・ブラウン、マリア・マルダー、リトル・フィート、ボニー・レイット、リンダ・ロンシュタットのアルバムに参加、「No Nukes」E2ではドゥービー・ブラザースと一緒に「What A Fool Believes」を歌って大活躍していた元気一杯な女性。日本では角川映画のための洋楽主題曲のシンガーとして人気を博し、1982年の「汚れた英雄 (Riding High)」は日本のみの大ヒットとなった。アーノルド・マックラーは縞のYシャツにネクタイという、イカシタ格好で、単なるバックコーラスには留まらない、二人の存在感がバンドの演奏を引き締めている。6.「Shower The People」でテープレコーダーがステージに登場。JTが弾き語りで歌い、コーラスのパートでテープが作動し、彼自身の多重録音のバックコーラスが流れるという趣向だ。JTの巧みなギターに目が釘付けになってしまう。7.「How Sweet It Is」はR&B風の聴衆との掛け合いのシーンが続き、いつになく太い声でシャウトし、乗りに乗っている。背景が都市の夜景のセットになり、8.「Up On The Roof」が歌われる。バディ・ホリーの9.「Everyday」は軽快でレコードよりも乗りの良いプレイだ。一転してしっとりと演奏される 10.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」におけるドン・グロルニックのピアノソロは最高!! 11.「Angry Blues」ではダン・ダグモアのペダル・スティールが、オリジナルでローウェル・ジョージがプレイしていたスライド・ギターの向こうを張って頑張っている。 12.
「The Twist」はチャビー・チェッカー1960年の大ヒット(全米1位)で、バックコーラスの二人が踊りながらのプレイは圧倒的。13.「Sweet Potato Pie」ではバックコーラスと3人並んで歌う。アーノルドと掛け合いのパートもあり、ボブ・マンのギターソロの切れ味も良く、オリジナルよりはるかに生き生きとしている。ここではリー・スクラーもバックコーラスに加わる。14「Never Die Young」はレコードとほとんど同じ演奏。15. 「Steamroller」は数あるこの曲の演奏のなかで最も過激な内容で、長いイントロのあと始まる本編のボーカルも自由奔放、ダン・ダグモアのハードなギター・ソロ、ストライド・ピアノのスタイルで始まり、だんだん盛り上がるドン・グロルニックのソロが素晴らしい。再びボーカルに戻り、いつものようにエンディングになるが、なかなか終わらない。延々と掛け合いをやって、終わりと思った瞬間ロックンロールのパートに突入する。バックコーラスが舞い上がって、狂乱のエンディングとなるという構成だ。アンコールで16.「Carolina In My Mind」が演奏され、最後に17.「Sweet Baby James」を一人で歌う。歌詞でボストンの名前が出てくると、歓声があがる。このあと全員がステージに並び、肩を組んで挨拶してコンサートは終わる。

バック・ミュージシャンとの一体感が心地良いコンサートだ。

[2022年10月追記]
当時VHSビデオで販売されたが、その後DVD化されていない。


E6  The Seventeenth Annual Telluride Bluegrass Festival (1990)  


James Taylor: Vocal, A. Guitar
Jerry Douglas: Dobro Guitar
Mark O'Connor: Violin
John Jarvis: Keyboards
Edgar Meyer : Bass              
Eddy Bear or Tom Roady : Percussion
Kate Markowitz, Valerie Carter, David Lasley, Arnold McCuller: Back Vocals (2)

1. Ol' Blue [Traditional]  C49
2. Shower The People   A8 A15 B16 E5 E8 E14

収録 1990年6月24日 Telluride Bluegrass Festival, Telluride, Colorado

1991年発売


テルーライドは、コロラド州の深い山に囲まれた小さな町だ。それこ毎年行われるブルーグラス・フェスティヴァルは名物となっていて、豊かな大自然の中で演奏されるブルーグラス、フォーク、ブルース、ロック、ゴスペル、ケルトといった様々なルーツ音楽のトップ・アーティストによる演奏が魅力。ここでは1990年の第17回フェスティバルを収録したビデオで、当該フェスティバルの実行組織による製作で、日本ではブルーグラスやフィンガースタイル・ギターの作品や教則本・ビデオなどの通信販売で定評のある京都の「プー横丁」で輸入販売された。JTの他にショーン・コルヴィン、メリー・チェピン・カーペンター、デビッド・ウィルコックス、ピーター・ローワン、ハーヴェイ・リードといった渋めのミュージシャンのプレイが収録されている。なかでも見どころは、ベラ・フレック(バンジョー)、サム・ブッシュ(マンドリン)、ジェリー・ダグラス(ドブロ)、エドガー・メイヤー(ベース)と一緒に演奏するマーク・オコナー(バイオリン)の超絶プレイだ。単なる技巧のみにとどまらない、魂の奥底を揺り動かすような演奏は、天才と呼ぶにふさわしい人だ。

このフェスティバルにはマーク・オコナーに請われて出演したとのことで、1.「Ol' Blue」で「犬の歌を歌います」とアナウンスすると、観客が一斉に遠吠えの真似をし、JTがそれに応えてユーモアたっぷるに「Shut Up !」とやりかえすなど、観客の反応もよく、JTはまことに気持ち良さそうに歌う。C49 (1989)のゲスト出演で歌っていた時と同じメンバーによるもので、ほんとうに素晴らしい曲であり演奏だ。2.「Shower The People」はJTの弾き語りから始まり、バックが加わってゆく。バックコーラスのケイト・マコーウィッツおよびヴァレリー・カーターの二人にとって、ここでの演奏がJTとの最初のステージだったそうだ。ちなみにこれらブルーグラス界の名手たちの共演として、1989年ニューヨークにおけるコンサートの音源が残っている。マーク・オコナーとJTの交流はその後も続き、ヨーヨー・マ(チェロ)も加わって2000年の「Appalachian Journey」C72に結集してゆく。なお、2003年に同フェスティバルの13周年を記念して発売されたオムニバスCD (B20) に同じステージでの録音「Wild Mountain Thyme」が収録された。こちらの演奏も最高なので、是非聴いてみてください。


E7  Squibnocket  (1993)  Columbia Music Video


James Taylor: Acoustic Guitar, Vocal
Michael Landau: Electric Guitar
Don Grolnick: Keyboards 
Clifford Carter: Keyboards
Jimmy Johnson: Bass 
Carlos Vega: Drums, Percussion
Arnold McCuller: Back Vocal  
David Lasley: Back Vocal
Valerie Carter: Back Vocal
Kate Markowitz: Back Vocal

1. Secret O' Life  A9 A15 B27 B28 E1 E14 E25
2. Wandering  A7 E4 E8
3. Traffic Jam  A9 A15 E4 E10
4. (I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That [D. Kortchmar, J. Taylor]  A14 B29 E8
5. You've Got A Friend  A3 A15 B16 C3 C4 E8 E10 E13 E14 E15
6. Fire And Rain  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E5 E8 E10 E13 E14 E15 E17 E21 E25
7. Sun On The Moon  A13 A15 E10
8. Frozen Man  A14 E10 E14
9. Shed A Little Light  A14 A15 B42 E10 E13
10. Copperline  A14 A15 B33 B41 E10 E11 E14 E20
11. Sweet Baby James  A2 A15 B3 B5 E1 E4 E5 E10 E14 E15 E17
12. Country Road  A2 A15 B6 E14 E15 E25
13. Mexico  A7 A15 B16 B34 E1 E8 E10 E22
14. Your Smiling Face  A9 A15 E1 E2 E4 E5 E8 E10
15. You Can Close Your Eyes
  A3 B3 B4 E4 E8 E10 E14 E15

収録時間:約65分


Squibnocketはマサチューセッツ州マーザ・ヴィンヤード島南西部の地名で、JTの家があるところだ。「スクィブノケットの古い納屋は、私の家の馴染みの風景の一部だ。我々は1991年の春にここでリハーサルを行い、翌年ここに戻ってきてこの番組を収録することに決めたんだ。」というケースに記されたJTのコメントを引用する。広々とした草原と石垣、その背景に広がる海、灯台のシーンが美しい。そして開け放された納屋の遠景から、リハーサルの様子に入る。剥き出しになった木組みの梁の下で、楽器や機材を並べ、行きかうスタッフとともに犬や子供が座っているという家庭的な雰囲気で、皆周囲を気にしない普段着の振る舞いだ。

ドン・グロルニックと二人で演奏される 1.「Secret O' Life」。JTのギターは「New Moon Shine」 1991 A14から使用されるようになったアメリカの個人製作家、ジェームス・オルソンによるものだ。ピックアップの技術発展のせいか、従来のギターよりアコースティックな響きが豊かで、とてもいい音で録音されている。切れ目なく 2.「Wandering」に入り、4人のコーラス隊がフィーチャーされる。小柄なケイト・マコーウィッツは当時新顔で、あまりアップが写らない。ヴァレリー・カーターは飄々とした感じで、やはりアーノルド・マックラーとデビッド・ラズリーの男性二人の存在感が押している。4人の声質のコンビネーションは完璧で、当時のJTバンドはなんと贅沢であったか! ピアノ、ベース、ドラムスのアップテンポのリズムをバックにラップのように歌われるユーモラスな 3.「Traffic Jam」でもJTとコーラス隊との意気はぴったりだ。開かれた納屋の大きな扉には半透明なシートがかけられ、そこから透けて見える草原の緑が本当に綺麗だ。コーラス隊との音あわせのシーンの後、4.「(I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That」ではドン・グロルニックがシンセサイザーで、アコーディオンのような音を出している。演奏の背後でスタッフが行き来しているのが見える。さらっとした 5.「You've Got A Friend」の後に、離れで収録されたJTの独白シーンが挿入され、歌うこと、作曲の動機が語られる。「困難な状況から脱するまでの過程を表現することが私にとってのアートだ」というコメントが印象的。A14に収録された「Like Everyone She Konws」のイントロのアコースティック・ギターソロが少し流れたあとに、おなじみの出だしが聞こえて 6.「Fire And Rain」が始まる。この頃には日も落ちて屋内はランプやろうそくが灯り、多くのスタッフが見つめるなかで演奏される。静粛な感じがひしひしと伝わってくる。マイケル・ランドウのスティール・ギターのようなエフェクトがいい感じだ。7.「Sun On The Moon」ではJTはアコギを置いて歌に専念、自由な歌いっぷりを見せる。クリフォード・カーターとドン・グロルニックの2台のシンセサイザーが大活躍。コーラス隊も前面に出て頑張っている。8.「Frozen Man」ではイントロがやり直される。マイケル・ランドウは超一流のセッション・プレイヤーで、何事もそつがなさすぎる感じがするのだが、ここでのギターは繊細で、JTが彼を好んで起用する理由がわかる。

灯台と海の夜景のシーンの後、明るくなり翌日の場面になるが、ミュージシャンの服装は同じ。本作は夜を徹して収録しているものと推測される。9.「Shed A Little Light」もコーラス隊が強力な曲で、JTにしては歌詞のメッセージ性の強い曲だ。ここで自作曲のついてのJTの独白のシーンが入り、10.「Copperline」ではコパーラインが架空の町であることが語られる。クリフォード・カーターのシンセサイザーのイントロに続き、JTとマイケル・ランドウのギターの絡みが素晴らしい。レコードではマーク・オコナーのヴァイオリンだった間奏はランドウが担当する。演奏中にスタッフの一人がJTのすぐ傍を通り過ぎるのがいかにもリハーサルといった感じで面白い。11.「Sweet Baby James」は外の強い日差しのせいか、逆光気味の暗めの室内でひっそりと演奏される。ここでもランドウがスティール・ギター・エフェクトをつけている。ここで「英国アップルからデビューしてから次元が変わった」というデビューの頃を語る独白が入り、 12.「
Country Road」が始まる。ベースのジミー・ジョンソンと向かいあってイントロを決めるところがかっこいい。この曲ではチューニングが違う(ドロップドD)せいか、ドレッドノート・サイズのオルソンに持ち替えている。13.「Mexico」のランドウのギターは抑え気味で、「(Live)」 1993 A15の演奏よりも出来がいい。ほぼ切れ目なく始まる 14.「Your Smiling Face」では、後半のキーチェンジでJTがカポを上にずらすシーンがしっかり写っていて、ファンとして何故か感動してしまう。

ここでいままで独白のシーンが撮影された、草原の中に立つ白い離れ家が写り、中で15.「You Can Close Your Eyes」を演奏するJTのシーンとなる。ボーカルもギターも至近距離のマイクを使わず、部屋の中に響いた音を録音しているので、とてもナチュラルなサウンドだ。途中からクレジットが表示され、曲の終了後にカメラに目線を合わせるシーンでモーションがストップして終わる。コンサートの演奏とは異なるリラックスした雰囲気が独特の作品となった。


E8  Live At The Beacon Theatre (1998)  Columbia Music Video


James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Bob Mann : Electric Guitar , Percussion (9)
Clifford Carter : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass 
Steve Jordan : Drums, Percussion
Luis Conte : Percussion
Barry Danielian : Trumpet (13,14)
Dave Mann : Sax (13,14)
Owen Young : Cello (2,12)
Arnold McCuller : Back Vocal  
David Lasley : Back Vocal
Valerie Carter : Back Vocal, Percussion (24)
Kate Markowitz : Back Vocal ,Percussion (9, 24)

1. You Can Close Your Eyes  A3 B3 B4 E4 E7 E10 E14 E15
2. Another Day  A16
3. Daddy's All Gone A8
4. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin]  A12 E4 E5 E10
5. Mighty Storm [Traditonal]
6. Only A Dream In Rio [James Taylor, Brazilian Translation J. Maraniss]  A12 C59 E4
7. Don't Let Me Be Lonely Tonight  A4 A15 B16 C67 C74 E1 E5 E25
8. Your Smiling Face  A9 A15 E1 E2 E4 E5 E7 E10
9. Jump Up Behind Me  A16 B37
10. Shower The People  A8 A15 B16 E5 E6 E14
11. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland] A7 A15 B16 E1 E4 E5 E10 E13 E21
12. Fire And Rain  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E5 E7 E10 E13 E14 E15 E17 E21 E25
13. Me And My Guitar  A6
14. (I've Got To) Thinkin' 'Bout That [Danny Kortchmar, James Taylor] A14 B29 E7
15. Handyman [Otis Blackwell, Jimmy Jones]  A9 A15 E1 E4
16. You've Got A Friend  [Carole King]  A3 A15 B16 C3 C4 E7 E10 E13 E14 E15
17. Mexico  A7 A15 B16 B34 E1 E7 E10 E22
18. Little More Time With You  A16 B35
19. Line 'Em Up  A16 B36 E14
20. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]  A10 A15 B16 B40 C1 C4 E1 E5 E15 E28
21. Steamroller  A2 A15 B10 E1 E5 E10 E11 E14
22. Belfast To Boston  A17 E20
23. Wandering [Traditional]  A7 E4 E7
24. Not Fade Away [Buddy Holly, Norman Petty] A20

Frank Fllipetti, James Taylor : Music Producer

収録: 1998年5月30日 ニューヨーク、ビーコン・シアター
発売: 1998年10月



ビーコン・シアターは、ニューヨーク・マンハッタンのブロードウェイと74丁目の角にある収容人員2800席、3階建て観客席の古い劇場だ。1928年に建設された建物および構内は、アールデコ風の装飾が素晴らしい。コンサート会場としては小さめであるが、多くの有名アーティストが出演するのは、この場所の歴史と品格によるものだろう。JTのコンサートは、1998年5月29日(金)と30日(土)の2回行われ、後者がPBS放送ネットワークによりアメリカ全国にテレビ放映された。本作は後にビデオまたはDVD化されたもので、その際に放送されなかった3曲を追加した完全版と解説にあるが、私が知っている限り、テレビ放送された「I Was A Fool To Care」は、ビデオ・DVD化の際にカットされたようだ。長期にわたりJTバンドのレギュラーメンバーだったドラムスのカルロス・ヴェガが、本作収録日の少し前の1998年4月に急死したため、急遽代役としてニューヨークを中心に活動するセッション・ドラマーのスティーヴ・ジョーダンがピンチヒッターを勤めている。彼は、テレビ番組「Saturday Night Live」のハウスバンドのメンバーだった他、ブレッカー・ブラザース、ブルース・ブラザース、スティーリー・ダン、ジョン・スコフィールド、デビッド・サンボーン、キース・リチャーズ、渡辺香津美など、ジャズ、ソウル、ロックと幅広い音楽の録音に参加している。JTとは「New Moon Shine」 1991 A14や前述のテレビ番組で共演の実績がある。ドン・グロルニック亡き後、一人でキーボードを担当するクリフォード・カーターの奮闘と、よりファンキーで跳ねたリズム感覚を持つドラマーの参加で、いままでのライブとは微妙に異なる演奏を味わうことができる。

いつもは最後の曲になる 1.「You Can Close Your Eyes」から始まり、JTのギター1本とコーラス隊だけで、5人並んで厳かに演奏される。2.「Another Day」でチェロを演奏しているオーウェン・ヤングは、ボストン交響楽団のソリスト。ステージの背景に敷き詰めた白いカーテンに様々な色が反映して、赤・茶・黄・緑・紫・青と様々に変わるという、変化に富んだライティングだ。スティーブ・ジョーダンのドラム・セットは、シンバルやタムタムが少なく意外なほどシンプル。でも叩き出すリズムは躍動感にあふれていて、4.「Everyday」でもバンド全体が跳ねるようなプレイだ。 5.「
Mighty Storm」は、アメリカのルーツ音楽を記録したアラン・ロマックスが1934年にテキサス州で採集した伝道師シン・キラー・グリフィンの歌「Wasn't That A Mighty Storm」が原曲。JTは1960年代にボストンで活躍していたフォークシンガー、エリック・フォン・シュミット(1931-2007)の演奏で覚えたらしい。その他、JTのアイドルでもあったトム・ラッシュや、最近ではカントリー音楽のナンシー・グリフィスがカバーしている。1900年に起きたハリケーンの悲惨な災害を描いた歌(エリック・フォン・シュミットの作品で有名なものは、ボブ・ディランがカバーした「Baby Let Me Follow You Down」や、JTが演奏している音源もある「Joshua Gone Barbados」などだ。ちなみに彼は画家として大変有名で、数多くのレコードのジャケット画も担当している。私が知っている作品としては、ジョン・レンボーンの「Live In America」 1982、「Ship Of Fools」 1988や、ジェフ・アンド・マリア・マルダーの「Sweet Potatos」1972などがある)。ボブ・マンのワウワウを使用したギター・ソロ、クリフォード・カーターの嵐を表現したシンセサイザーが面白い。6. 「Only A Dream In Rio」は「ブラジル滞在時にジルベルト・ジルから借りたギターの中に入っていたんだ」と紹介される。ボブ・マンはナイロン弦のエレアコ(おそらくカーク・サンド製)に持ち替えて演奏。コーラス隊と歌うポルトガル語のブリッジの響きがエキゾチックだ。7. 「Don't Let Me Be Lonely Tonight」では、クリフォードの落ち着いた音選びによるピアノソロが味わい深い。曲間に、遠隔操作により動く天井に吊るされたカメラによる臨場感あふれる会場の鳥瞰ショットが挿入される。アップテンポの 8.「Your Smiling Face」は、スティーブのドラムスがここぞとばかりに大活躍し、大変生き生きとしたプレイとなった。JTとしてはちょっとパワフル過ぎるかな?エンディングのキー・チェンジでJTがカタポストのポジションをずらすシーンもしっかり写っている。「新曲です」と紹介される 9.「Jump Up Behind Me」では、ケイト・マーコウィッツがルイス・コンティの側に移動して円筒形のシェイカーを、トライアングルのボブは、カウベルを叩くスティーブと並んで、各パーカッションを担当する。クリフォードによるシンセサイザーの演奏は、ブラジル音楽に傾倒していた頃のパット・メセニーの雰囲気とよく似ている。10.「Shower The People」のエンディングにおけるアーノルド・マックラーのソロ・ボーカルは、毎回異なるアドリブで、 感極まった聴衆の歓声が起きるのはいつもの事だ。11.「How Sweet It Is」もパワフルなドラムスと、ボブのハードなギター・ソロ、コーラス隊の頑張りで大いに盛り上がり、ここで休憩が入る。

12.「Fire And Rain」は、オーウェン・ヤングが再度登場し、JTとの二重奏となる。ここでのチェロの演奏は心に染みわたる素晴らしいものだ。アレンジはギタリストのボブ・マンによる。ライブでの演奏が珍しい13.「Me And My Guitar」では、バリー・ダニエリアンとデイブ・マンのブラスセクションが加わり、ボブ・マンのギターソロ、エンディングなどソウルジャズ風だ。JTが弾き始めたギターのイントロで、最初は何の曲かな?と思ったところに、14.「(I've Got To) Thinkin' 'Bout That 」が始まる。この曲の後に一人のファンが駆け寄って、JTに彼のポートレートのイラストをプレゼント、JTは恥ずかしそうに受け取る。15.「Handyman」では、JTとボブが向かい合ってイントロを決めるシーンがカッコイイ。16. 「You've Got A Friend」はJTのアコギの他はピアノ、ベース、パーカッションのみのシンプルな伴奏。17.「Mexico」ではスティーブ・ジョーダンがティンパレスを叩き、クリフォードとボブがサルサのリズムを奏で、コーラス隊のボーカルから歌い始めるオリジナルとは異色のアレンジだ。パーカッションのルイス・コンテはキューバ生まれで、ラテンジャズ・スタイルの自己名義のアルバム、無数のスタジオセッション、クリニックなどで名声を成したアメリカ屈指のパーカッショニストだ。エンディングでは、レイ・チャールスの「Hit The Road Jack」のコーラスの一節が飛び出す。 コーラス隊が活躍する 18. 「Little More Time With You」、クリフォードのピアノが冴える 19.「Line 'Em Up」、しっとりと演奏される 20. 「Up On The Roof」に続く 21. 「Steamroller」は、ハードなアレンジで、JTによるブルース・ハープのソロ演奏を楽しむことができる。彼のハーモニカ演奏を聴くのはここが初めてだ。この曲が終わった後で、メンバーが楽器を置き、一列に並んで挨拶をする。アンコール最初の曲 22.「Belfast To Boston」は、当時未発表曲で、北アイルランドのベルファストで書いたと紹介される。トラッドの 23.「Wondering」はアコギ、キーボードとコーラス隊のみによる演奏。 最後の曲 24.「
Not Fade Away」はロック創世期の中心人物で、1959年コンサート・ツアーのため、悪天候の中、無理に飛ばした飛行機の事故で非業の死を遂げたバディ・ホリーの作品のカバーだ。結構ハードな演奏で、ボブ・マンのスライド・ギターが歌いまくり、コーラス隊はヴァレリー・カーターがクレバスを、ケートはマラカスを持って歌い、エキサイティングな雰囲気を盛り上げている。最後の字幕の冒頭に「Dedicated To Carlos Vega」と表示され、思わずジーンときてしまった。プロデュースはJTと「Hourglass」 1997 A16と同じフランク・フィリペッティーの共同作業だ。

公式発売されるだけあって、演奏、照明、録音、撮影どれをとっても素晴らしく、JTのコンサートの魅力を余すところなく伝えている作品。なお私は持っていないが、DVDバージョンは、JTのプロモーション・ビデオ「Copperline」、「Enough To Be On Your Way」の他に、インタビューが収録されているそうだ。


[2007年2月作成]


E9  Appalachian Journey Live In Concert (2000)  Sony Classical



James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Mark O'Coonor : Violin
Yo-Yo Ma : Cello
Edgar Meyer : Contrabass

1. Hard Times Come Again No More [Stephen Foster]  C72

Live At Avery Fisher Hall, New York City, April 5, 2000


2000年3月21日に発売されたCD「Appalachian Journey」を記念して開かれたコンサートにゲスト出演した。本コンサートは、「Lincoln Center's Great Perfomance Series at Lincoln Center for the Performing Arts in New York City」と銘打って2000年4月5日ニューヨーク・マンハッタンのセントラルパークの西にあるアヴェリー・フィッシャー・ホールで行われた。その模様は収録されTV放送されたが、本作はそれに4曲のボーナストラックを追加してヴィデオ/DVD化されたもの。ミュージシャンや作品に関する詳細はCD盤(C72)に譲ることにします。コンサートの中盤、黒ずくめの格好でギターを持ったJTが登場すると、観客は大喜びで。JTによる曲の紹介の後、1.「Hard Times Come Again No More」が始まる。クラシックのコンサートなので、緊張感に満ちた演奏風景だ。CDの演奏とほぼ同じ内容であるが、映像が観れるだけで感動的。

コンサート全体では、バイオリン、チェロ、コントラバスで、アメリカの伝統音楽を極めようとする姿勢はそれなりにアグレッシブで、本作では視覚効果が加わりダイナミックな音楽作品となった。特に相手の表情を読み取ってニコニコしながら弾きまくるヨーヨー・マが圧巻で、それにつられてマーク・オコナー、エドガー・メイヤーが各自の能力を最大限に発揮しているのがよくわかる。本作ではJT以外にブルーグラス、カントリー音楽界からアリソン・クラウスが、歌とバイオリンで各1曲ゲスト参加しており、そちらも見ごたえがある。

JTの参加は僅か1曲だけど、曲の良さ、メンバーの豪華さで購入の価値は十分あると思う。


E10  Pull Over (2002)  Columbia Music Video


James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Bob Mann : Electric Guitar, Mandolin (11)
Clifford Carter : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass 
Russ Kunkel : Drums, Percussion
Luis Conte : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Frugelhorn, Synthesizer
Lou Marini : Alto Sax, Tenor Sax, Soprano Sax, Flute (4,13), Whistle (11)
Arnold McCuller, David Lasley, Valerie Carter, Kate Markowitz : Back Vocal (1,2,3,5,6,7,8,10,12,13,15,17,19,20,21,22)

1. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin]  A12 E4 E5 E8
2. That's Why I'm Here  A12 A12 E4
3. Only One  A12 A15 E4 E5
4. Frozen Man  A14 E7 E14
5. On The 4th Of July  A17
6. Whenever You're Ready  A17 A22
7. Raised Up Family  A17
8. Mexico  A7 A15 B16 B34 E1 E7 E8 E22
9. Steamroller  A2 A15 B10 E1 E5 E8 E11 E14
10. Carolina In My Mind  A1 A1 A15 B3 B10 B16 B22 B25 B26 B41 B46 E1 E5 E14 E15 E25
11. Millworker  A10 A15 B30 E1 E19 E20
12. Sun On The Moon  A13 A15 E7
13. A Junkie's Lament  A8
14. Copperline [Reynolds Price, James Taylor]  A14 A15 B33 B41 E7 E11 E14 E20
15. Shed A Little Light  A14 A15 B42 E7 E13
16. Fire And Rain  A2 A15 B3 B5 B16 B40 B41 E1 E4 E5 E7 E8 E13 E14 E15 E17 E21 E25
17. You've Got A Friend  [Carole King]  A3 A15 B16 C3 C4 E7 E8 E13 E14 E15
18. Your Smiling Face  A9 A15 E1 E2 E4 E5 E7 E8
19. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland] A7 A15 B15 E1 E4 E5 E8 E13 E21
20. Traffic Jam  A9 A15 E4 E7
21. Knock On Wood [Steve Cropper, Eddie Floyd] A21 B16
22. You Can Close Your Eyes  A3 B3 B4 E4 E7 E8 E14 E15
23. Sweet Baby James  A2 A15 B3 B5 E1 E4 E5 E7 E14 E15 E17


録画: Rosemont Theatre, Chicgo, August 3 & 4, 2001
発売: 2002年11月


2001年の夏から秋にかけて行われた全米ツアーからのライブ・ビデオ。画面や箱には記載がないが、2001年8月3、4日のシカゴ・ローズモント・シアターでの2日間のコンサートを編集したもの。非常に穏やかな雰囲気のコンサートで、バンドメンバーによる派手なソロはパーカッションのルイス・コンテを除きほとんどなく、コーラス隊が大半の曲でフィーチャーされ、カドがない大変聞きやすいサウンドメイキングだ。本作のドラムスがラス・カンケルということもあり、カルロス・ヴェガやスティーブ・ジョーダンよりも、どっしりとした重い乗りのせいかもしれない。

ビデオは楽屋のシーンから始まり、バンドによる長めのイントロが続き、JTがステージに登場、1.「Everyday」が始まる。サックスのルウ・マリニは、フュージョン、ロック系のセッション・プレイヤーで、サタデイ・ナイト・ライブなどのテレビ番組や映画音楽、そして数多くのアルバムに参加しているが、一番有名なのはブルース・ブラザーズだろう。テナー、アルト、ソプラノ・サックス、フルートなど、何でもこなす職人。トランペットとフリューゲルホーンを吹くウォルト・ファウラー(1955年生まれ)は、ジョニー・ギター・ワトソンやフランク・ザッパなど多くのバックをつとめている。本作では彼は右手にペットを持って吹きながら、左手でシンセサイザーを弾くというスゴイ技を披露している。クリフォード・カーターがピアノまたはオルガンに集中する一方で、彼のシンセサイザーはバンドの音に彩りを与え、ストリングス的な音の背景を描く大事な役目を担っている。セットはシンプルで、中央にイメージ写真を映し出す大きなスクリーンがある以外は、倉庫か納屋の中にいるかのような作りだ。ライティングも黄、緑、赤、青を微妙に混ぜたもので、曲毎に基本的な色調を変えている。 2.「That's Why I'm Here」はテンポを落とし、かなりリラックスしたプレイだ。 3.「Only One」でも、各楽器が手堅い演奏でまとめている。ここで聴衆のリクエストを聞いたJTがセットリストのプラカードを見せて、「それは後でね!」と応じるシーンがユーモラス。曲の紹介のあと、4.「Frozen Man」が始まるが、最初はピアノ、フルート、フリュゲルホーンの演奏で、オリジナルと少し異なり、途中から例のJTのギターが加わる。「新曲をいくつか演奏します」というアナウンスの後に演奏されるボサノバ調の 5.「On The 4th Of July」は、スタジオ版よりもかなりテンポを落としている。間奏のウォルト・ファウラーのフリュゲルホーンのソロが最高。軽快な 6.「Whenever You're Ready」、R&B的な 7.「Raised Up Family」と新曲が続く。 8.「Mexico」はパーカッションのルイス・コンテによる、コンガとボンゴを使用した長いソロから始まリ、その間JTはしゃがんで彼の演奏を見守っている。ブレイクの後にサルサ調のイントロが流れ、リズムが跳ねたゴキゲンなプレイとなる。間奏ではアーノルドとケイトがステージでダンスを踊るのが微笑ましい。

9.「Steamroller」はいつもと異なり、ニューオリンズ風ブルース の味付けで、オルガンのクリフォード・カーターとギターのボブ・マンがソロを展開するが、アクのない比較的さらっとした演奏になっている。盛り上がった後で、JTが最初弾き語りで 10.「Carolina In My Mind」を演奏し、次第にバックが加わってゆく。11.「Millworker」はチューニングが違うようで、ドレッドノート・サイズのオルソンに持ち替えている。曲の解説の後にジミー・ジョンソンを紹介し、アコギとベースのデュオによるイントロが始まる。ルウ・マリニはホウィッスルを吹き、ボブ・マンはマンドリンを弾いている。JTがギターを持たずに歌う 12.「Sun On The Moon」は急速調で、13.「A Junkie's Lament」はしっとりとした曲。14.「Copperline」でアコーディオンのような音を出しているのは、ウォルトのシンセサイザーだ。 15.「Shed A Little Light」でもJTはギターを置き、コーラス隊と並んで歌う。4人によるバックコーラスは抜群の安定度を誇り、最強のライブバンドの中で他のミュージシャンの演奏が控えめであるのに対し、特に輝いている。このツアーの後、ヴァレリーが自分の音楽キャリアを追及するため、バンドから離れてしまうため、これが聞き納めとなった。曲の終了後、JTが彼らを一人ずつ丁寧に紹介する。 淡々と演奏される 16.「Fire And Rain」を聴いていると、この演奏がセプテンバー・イレブンの約3ヶ月前に行われたことに気づき、衝撃を受けてしまう。当時はアメリカが一番穏やかだった時期で、9月11日を境に世の中が一変してしまうのだ。17.「You've Got A Friend」ではJTとコーラス隊は椅子に座って歌い、ラス・カンケルはカホーンと呼ばれる木の箱に腰掛けて、それを叩いている。ライブの定番曲 18.「Your Smiling Face」では、曲の中盤で一瞬レゲエのようなアレンジの部分があり可笑しい。乗り乗りで演奏される 19.「How Sweet It Is」では、ルウ・マリニがステージの前に出てサックスソロを披露する。 コーラス隊と並んで歌う 20.「Traffic Jam」は、バックの演奏のレベルの高さがはっきり分かる。 21.「
Knock On Wood」はエディ・フロイドによる1966年のR&B ヒット曲(全米28位)で、コンサートは最高潮となる。ここでバンド全員がステージに並んで挨拶し、アンコールになる。22.「You Can Close Your Eyes」はJTのギターとコーラス隊だけでの演奏。最後にJTが一人で椅子に座り、しんみりと 23.「Sweet Baby James」を歌ってコンサートは終了する。最後のクレジット表示のパートでは、コンサート終了後に会場の外で「You've Got A Friend」を歌うファンに応えて、握手やサインをし、車に乗り込んだJTが会場を去るシーンでビデオは終わる。

良質の音質・画質、演奏、歌唱。「Live At The Beacon Theatre」 E8を意識した選曲(曲の重複を意図的に避けているように思える)、聴衆の表情を捉えたシーンも含め、キメ細かいカットが丁寧な製作姿勢を感じさせる。演奏的には冒険がなく、破綻のない堅実なパフォーマンスであるけど、とにかく安心して楽しめるライブであることは間違いない。 

なお本作は2002年11月に発売されたが、それよりも以前の2002年1月17日に、NHKの衛星放送BS2で「ワールド・スーパー・ライブ」というタイトルで、8月4日のコンサートの模様が放送された。詳細は「その他映像の」コーナーで紹介するが、一部の曲につき、本作と異なるテイクの演奏であったり、本作に含まれていない曲(アウトテイク)があったり、全く同じ演奏でも各カメラのカット割り編集が全く異なる内容となっており、大変興味深いものだった


[2007年4月作成]