本曲は、ジャズ畑から豪華なミュージシャンが参加している。ジャズ界のトップ・ギタリストであるジョン・スコフィールドや、スティングとの共演で有名なブランフォード・マルサリス、そしてチック・コリア、ゲイリー・バートン、スティーブ・キューン、ジョン・スコフィールド等と共演実績のあるベーシスト、スティーブ・スワローと、名手が揃っている。JTは、ジャズ・バラード風のアレンジをバックに丁寧に優しく歌う。コーラスパートで、ザ・ロッチェズが加わる。本曲ではブランフォードのサックスが、オブリガード・ソロを取るり、曲全般で聴かれるジョンのエレキギターのバッキングがとても心地良い。ドン・グロルニックは比較的地味なプレイに徹している。エンディングで聞こえる口笛はJTかな?

JTが歌うスタンダード曲カバーの素晴らしさを味わうことができる。


    B16 KBCO The Best Of Studio C Vol.1  (1992)  [Various Artists]  Rocky Mountain





James Taylor: A. Guitar, Vocal

1. Something In The Way She Moves  A1 A15 B3 B8 B39 E5 E14 E15

Recorded at Boulder Colorado, 1988


写真上: KBCO The Best Of Studio C Vol.1 (1992)
   下: KBCO Studio C Retrospective (1995)

KBCOはコロラド州ボールダーを本拠地とするFMラジオ放送局で、1977年から現在に至るまで「World Class Rock」をスローガンに、良質のポップス、ロック、ブルース、レゲエ、フォーク音楽を放送している。なかでもコンサート等で同州を訪れた著名ミュージシャンをスタジオに招き、その場で演奏してもらう「Studio C」は、1988年以降多くのミュージシャンのライブを放送している。

1992年KBCOは、それまで放送したライブ音源からこれはという曲を選び、チャリティー・アルバムを製作した。少量生産されたCDは地元のみで販売され、瞬く間に売り切れたという。それが本作「KBCO The Best Of Studio C Vol.1」で、好評を受けて毎年製作されるようになり、現在も続いている。本作には、1988年の番組出演の際に録音されたJTの 1.「Something In The Way She Moves」が収録された。イントロでギターを弾きながら「これは当時の恋人のために書いたものです」と紹介して歌いだす。途中ほんの少しギターのリズムが乱れる箇所もあるが、JTはそんなことには全く臆せず歌い切る。気合が入っていて、聴く者の心に響く素晴らしい出来だ。 

本作は、レアなCDとして中古市場でかなりの高値を呼んでいる。聴いた話では精巧に作られた贋物が出回っているそうで、購入の際は注意を要する。その代わりに1995年、それまでに発売されたVol.1〜Vol.6からのセレクトに加えて2曲の未発表音源を加えたダイジェスト盤 「KBCO Studio C Retrospective」が発売され、そこにも同曲が収録された。こちらのほうが比較的廉価なので、JTの曲のみが目当ての人はこちらを探すとよいだろう。

ちなみに前者の「KBCO The Best Of Studio C Vol.1」に収録された他のアーティストは、デビッド・ウィルコックス、クリシ・ホイットレイ、ロジャー・マッギン等。後者の「KBCO Studio C Retrospective」には、メリッサ・エスリッジ、サラ・マクロウリン、シェリル・クロウ、ショーン・コルヴィン、リチャード・トンプソン等の曲が収められている。


B17 The Cities' Sampler Vol. 4 Keepsakes  (1992) [Various Artists] The Cities' 97



James Taylor: A. Guitar, Vocal

1. Pretty Boy Floyd [Woody Gathrie]

Recorded at March 24, 1988 on The Cities' 97 "Traffic Jam"


KTCZ (別名「The Cities' 97」または「97.1 KTCZ」)は、ミネソタ州ミネアポリスを本拠地とする周波数 97.1メガヘルツのFM放送局で、同州とウィスコンシン州をカバーしている。もともとはカントリー音楽専門だったが、1984年にプログレ、オルタナ・ロック、ジャズ、ニューエイジに転向、現在はクラシック・ロックとオルタナ専門に放送している。同局は、KBCOと同じく著名アーティストによるスタジオライブを放送しており、1989年以来、それらの音源を集めたチャリティー目的のCDを製作している。それらは毎年11月に地元の指定店のみで販売され、瞬く間に売れてしまうそうだ。たとえば2004年のVol.16の製作数は35,000枚で、発売後7分で売り切れた店もあったという。本CDは1992年に製作・販売された4作目で、JTによる珍しい曲が収録されたため、レア盤として中古市場で特に高値を呼ぶ作品となった。ちなみに収録された他のアーティストは、ゲイリー・ムーア、サラ・マクロウリン、クリス・アイザック等のスタジオ・ライブ、コンサート音源、既存作品のリミックスが収録されている。

JTが演奏する 1.「Pretty Boy Floyd」は、ウッディ・ガスリーが1939年に書いたバラッドで、実在した同名のアウトロー(1904〜1934) がモデルになっている。事実は別として、歌の中で主人公は義賊として描かれており、特に「Some will rob you with a six-gun, And some with a fountain pen」という歌詞の一節は有名で、大不況時代における社会悪は弱肉強食の経済システムにあることを示唆している。この曲はピート・シーガー、ランブリン・ジャック・エリオット、ジョーン・バエズ、ザ・バーズ、息子のアーロ・ガスリー等多くのアーティストがカバー、ボブ・ディランも1988年のオムニバス盤「Folkways: A Vision Shared A Tribute To Woody Guthrie & Leadbelly」で歌っていた。JTはステージでこの曲を取り上げており、1970年2月 シラキューズにおける音源のギター伴奏は本作とほとんど同じ。また1980年代前半のコンサートでは、ダン・ダグモアのスティール・ギターをフィーチャーした、ザ・バンドのようなサウンドをバックにボブ・ディランのように歌うバージョンもある。本作でのJTのギターおよび歌唱は、大変丁寧かつ誠実な感じの演奏で、JTによる本曲の公式発表音源が他にないため、大変貴重なものとなっている。ただし演奏終了後にラジオ司会者の声が少し入っており、スタジオライブの雰囲気が残されている。

製作枚数および販売地域・期間が限定された上に、他の公式音源がない曲を演奏しているため、JTファンにとって大変レアな作品。


B18 Telluride Bluegrass Festival Reflections Vol.1 (2003)  Planet Bluegrass     


B17 Telluride Bluegrass Festival
[Various Artists]

James Taylor: Vocal, A. Guitar
Jerry Douglas: Dobro Guitar
Mark O'Connor: Violin
John Jarvis: Keyboards
Edgar Meyer : Bass              
Eddy Bear : Drums
Tom Roady : Percussion
Kate Markowitz, Valerie Carter, David Lasley
Arnold McCuller: Back Vocals

1. Wild Mountain Thyme [Traditional]

Recorded 1990年6月24日 Telluride Bluegrass Festival, Telluride, Colorado


1990年のテルーライド・ブルーグラス・フェスティヴァルにおけるライブで、2003年に同フェスティバルの13周年を記念して発売されたオムニバスCDに収録された。この野外フェスティバルでは、ブルーグラスのみならず、フォーク、ブルース、ロック、ゴスペル、ケルトといった様々なルーツ音楽が、コロラド州の深い山に囲まれた豊かな大自然の中で演奏される。1991年に別途発売されたビデオ E4で、その雰囲気を楽しむことができるが、本当に美しい景色だ。当時同じメンバーでの演奏として、1989年ニューヨークのコンサート音源が残っている。このフェスティバルにはマーク・オコナーに請われて出演したとのことで、その後もブルーグラスの人達との交遊は続き、2000年の「Appalachian Journey」C71に結集してゆく。

1.「Wild Mountain Thyme」はボブ・ディランが伝説のワイト島コンサートで歌った有名なトラディショナル曲であるが、非常にモダンな和声に編曲されており、重厚かつ繊細なコーラスのサポートを得て、透明度が高い湖のような、とても神秘的な世界を生み出している。バイオリン、ドブロなどのバックも完璧な演奏で、13年後ではなく、もっと早く発表して欲しかったなあ。ちなみにここでのステージが、その後常連となるバックシンガー、ケイト・マコーウィッツおよびヴァレリー・カーターのバックアップシンガー最初のステージだったそうだ。

なお前述のビデオE4には、この曲は入っておらず、代わりに「Shower The People」と「Ol' Blue」を観ることができる。


B19 For Our Children PAF AID (1991) Buena Vista  


B18 For Our Children
[Various Artists]

James Taylor: Vocal
David Spinoza: A. Guitar
Jerry Douglas: Dobro Guitar
Mark O'Connor: Violin
John Jarvis: Keyboards
Zev Katz: Bass
Tom Randy, Eddy Bear: Percussion

Don Grolnick : Producer

1. Getting To Know You [Richard Rogers, Oscar Hammerstein]



1988年自分の娘をエイズで失ったエリザベス・グレイザーとその仲間達によって設立された小児エイズ基金(The Pediatric AIDS Foundation)のために、ウォルト・ディズニー・カンパニーが製作したチャリティー・アルバムで、有力アーティストの賛同による、この手の企画アルバムの走りとなった1枚だ。全20曲中10曲が新録音であることが本作の目玉で、JTやボブ・ディランの他、キャロル・キング、ハリー・ニルソンといったソングライター系の他に、アン・アンド・ナンシー・ウィルソンのハート姉妹、当時人気のあったデビー・ギブソン、ポーラ・アブドゥル、女優のメリル・ストリーブなどが曲を提供した。

JTが歌う曲は、ロジャース・アンド・ハマースタインのブロードウェイ・ミュージカルのスタンダードだ。この曲はシャム(現在のタイ)に派遣されたイギリス人女性の家庭教師と王様との心の交流を描いた「王様と私(King And I)」の挿入歌で、年にユル・ブリナーとデボラー・カーの主演で映画化された。ちなみに最近映画でヒットした「Shall We Dance?」の主題歌もこのミュージカルからだった。JTがこの手のスタンダード曲を公式音源で発表した最初の作品。 1985年の 「That's Why I'm Here」A12には、スタンダード曲の「My Romance」が収録されているが、これは当初アナログのレコードで発売された際には入っておらず、後年CD化された時に初めて収録されたもので、これは録音のための練習曲だったと推定される。

1980年代末に親しくなった、マーク・オコナーやジェリー・ダグラスなどのブルーグラスの精鋭ミュージシャンが参加しており、そのバイオリンとドブロ、JTの口笛のノスタルジックな響きが非常に心地よい。デビッド・スピノザによる4ビートのアコギ・リズムギターも軽妙洒脱。こういった人生に対して前向きな内容の軽快なスタンダード曲を、JTのように新しい感覚でさらっと歌う感じがとても新鮮だった。


B20 KBCO's Studio C 20th Anniversary Edition (2008) [Various Artists]  Rocky Mountain 




James Taylor: A. Guitar, Vocal

1. Carolina In My Mind  A1 A1 A15 B3 B8 B14 B23 B39 B44 E1 E5 E10 E14 E15 E25

Recorded at Boulder Colorado, Nov. 20, 1991



コロラド州を訪問したアーティストのスタジオライブを放送するFMラジオ局KBCOは、それらの音源からセレクトしたチャリティー・アルバムを製作している。JTの音源は、1992年発売のアルバム B16で「Something In The Way She Moves」を聴くことができる。その後2008年、番組開始20周年を記念して製作された2枚組CDに、1991年11月20日の放送からJTの「Carolina In My Mind」が収録された。この曲は、この種のオムニバス・アルバムや放送音源が数多く存在するが、彼の歌いまわしやギタープレイの繊細なニュアンスが演奏の都度微妙に異なるため、曲の良さと合わせて、飽きることなく十分に楽しめる。

ちなみにこの音源は、KBCO ホームページの「KBC
O Studio C On Demand」のコーナーで聴くことができる。


B21 A League Of Their Own (1992)  Sony 

B20 A League Of Their Own
Music From Motion Picture [Various Artists]

James Taylor: Vocal
David Spinoza: A. Guitar
Don Grolnick: Piano, Producer
Mark O'Connor: Violin (1)
Jim Pugh: Trombone (2)
Jay Leonhardt: Bass              
Ronny Zito: Drums

Strings: (2)

1. It's Only A Paper Moon [B.Rose, E. Y. Harburg, H. Arlen]
2. I Didn't Know What Time It Was [R. Rodgers, L. Hart]


ペニー・マーシャル監督による1992年のヒット映画(邦題「プリティー・リーグ」)のサウンドトラック。トム・ハンクスとジーナ・デイビスの主役に加えて、マドンナの出演が話題を呼んだ。1940〜50年代、戦争による男性プレイヤー不足を補うために実在した、女性によるプロ野球チームの活躍を描いた映画で、最後に年老いた女性達が同窓会で再会する場面が感動的。女性の活躍を描いたフェミニスト映画であると同時に、夢を追いかける人々への素晴らしいオマージュでもあった。とりわけ当時の流行・文化が丁寧に描かれ、とてもノスタルジックな雰囲気の映画だった。

キャロル・キングによる現代的なムードの主題歌以外は、当時のスタンダード曲をビリー・ジョエル、アート・ガーファンクル、マンハッタン・トランスファーなどの有名アーティストがカバーしたものが使用された。ただし映画ではバック・ミュージック的に取り扱われ、主題歌以外はそれほど印象に残らない。JTは2曲で参加しているが、映画のなかではほとんど目立たない。それでもサウンド・トラックで聞く2曲はドン・グロルニックのアレンジによる素晴らしい出来だ。1.「It's Only A Paper Moon」はナット・キング・コールやミルス・ブラザースでお馴染みのハロルド・アーレンの曲で、そう言えばこの曲をモチーフにしてライアン・オニール、テイタム・オニールの親子主演、ピーター・ボグダノビッチ監督による同名の映画が作られている。JTのボーカルは限りなくスウィートで、ここでもマーク・オコナーのバイオリンがいい味を出し、ノスタルジックなムードを高めている。2.「I Didn't Know What Time It Was」はロジャース・アンド・ハートというブロードウェイ・ミュージカルの名コンビが「Two Many Girls」のために書いた曲で、フランク・シナトラも映画「夜の豹」で歌っているという。ここではトロンボーンの甘美な響きと、JTのスウィートなボーカルで心がとろけそう! ドン・グロルニックの凄さが味わえる逸品だ。


B22 Everybody Loves To Cha Cha Cha (Remix) (1992)  Sony 


James Taylor: Vocal, Acoustic Guitar
Michael Landou : Electric Guitar
Don Grolnick : Piano, Organ, Synthesizer
Clifford Carter : Sythesizer and Synthesizer Programming
Tony Revin : Bass
Steve Gadd : Drums
Valerie Carter, David Lasley, Kate Markowitz, Arnold McCuller : Back Vocal

Rick Chudacoff, Peter Bunetta : Remix Producer

1. Everybody Loves To Cha Cha Cha [Sam Cook] A14


1991年9月に発売されたJTのアルバム「New Moon Shine」A14に収録されていたサム・クックのヒット曲(1959年、全米31位)のリミックス・バージョンで、「Demonstration - Not For Sale」の表示があり、宣伝用としてラジオ放送局へ配布されたもの。アルバム・バージョンに比べて、ベースおよびドラムスを前面に出した音作りで、かなり異なる雰囲気になっている。最大の相違点は打楽器で、オリジナル版のパーカッションの音は残っているものの、ドラムスの音がオーバーダビングされている。その他の相違点として、、イントロ(CDではエレキギターであるのに対し、ここではベースギターによる)や、エンディング(本バージョンのほうがファイドアイトが少しだけ遅い)などがあり、聞き比べると面白い。

本バージョンのリミックス・プロデューサーは、リック・チャドコフとピーター・ブネッタで、1977年代後半からリズムセクション・チーム(ベースとドラムス)の他に、アレンジャー、プロデューサー、ソングライターとしても活躍した二人組だ。彼らが関わったアーティストは、スティーブ・グッドマン、ロビー・デュプリー、ポインター・シスターズ、テンプテイションズ、ドナ・サマー、スモーキー・ロビンソン、ケニー・G、ローラ・ブラニガン、ジュディ・コリンズ、パティ・ラベル等で、洗練されたR&Bスタイルを得意とするようだ。ここでのベースは、オリジナルのトニー・レヴィンではなく、リック・チャドコフの演奏に差し替えられ、またピーター・ブネッタのドラムスがオーバーダビングされているように思われるが、クレジットに明記されていないので、正確なところは不明。この手のCDシングルは、リミックス・バージョン以外にいくつかのトラックが収録されているが、ここではこれ1曲のみとなっている。

アルバム版とはかなり異なる音作りで、かつジャケット写真もアルバムと同じセッションで撮影された楽しい一枚。


B23 We Three Kings  [Bob & Tom] (1992)  Big Mouth Creative Services Inc. 


James Taylor: A. Guitar, Vocal

1. Carolina In My Mind  A1 A1 A15 B3 B8 B14 B20 B24 B39 B44 E1 E5 E10 E14 E15 E25

放送: "The Bob & Tom Show" WFBQ


ザ・ボブ・アンド・トム・ショーは、Bob Kvoian と Tom Griswold の二人によるラジオのコメディー・バラエティー番組で、インディアナ州インディアナポリスのラジオ局 WFBQで始まり、1995年からは全国規模で放送されるようになった。2人とゲストによる会話を中心に、予め録音されたコミックソングや寸劇を挿入してゆく構成だ。ボブ・アンド・トム名義のCDは他にも何枚かあるようだが、本作に収録されたジョークや冗談音楽を聴いても、いまひとつピンとこない。それはある程度英語が理解できたとしても同じであると思う。この手のジョークを理解するためには、単なる英語力のみならず、文化に対する素養が必要になるようだ。それは、西洋人が日本のバラエティー番組を観ても理解できない事と同義だと思う。

その中でJTによる 1.「Carolina In My Mind」は唯一真面目な内容で、本CDの中では異質の存在となっている。このトラックにはボブ・アンド・トムによる会話はなく、まずJTが曲の由来を語った後に弾き語りで歌う。この曲自体は多くの音源が残されているので、特筆すべきことは特にない。

JTの長い音楽キャリアのなかで、この手のゲスト、オムニバス盤への参加作品がこの時期に多く集中しているのは、いったい何故なんだろう? 当時発表されたライブアルバムのプロモーションのためなのかな?


B24 Q-102 Redbeard's All Access (1993)  KTXQ/Q102 



James Taylor: A. Guitar, Vocal

1. Carolina In My Mind  A1 A1 A15 B3 B8 B14 B20 B23 B39 B44 E1 E5 E10 E14 E15 E25


放送: "In The Studio"KTXQ/Q102, Aug 1993

Q-102 (KTQX)は、テキサス州のダラス・フォートワースを本拠地とするラジオ局で、1980年代にロックを放送していた。その後1998年に売却され名前や周波数が変わり、現在はKSOCという名前でR&Bとクラシック・ソウルを専門に流している。本作は1988年から始まった著名ロック・ミュージシャンのインタビュー、スタジオ・ライブの番組「In The Studio With Redbeard」からセレクトしたオムニバス作品だ。ホストを務めるレッドベアードは、ZZ Topのような長いあごひげがトレードマークのディスクジョッキー。上記の番組は、KTQXがなくなった後も、自ら設立したプロダクションによる全国ネット放送で、20年以上経った現在も続いている。本作には、JTの他にジュリアン・レノン、グレッグ・レイク、リンゼイ・バッキンガム、ロジャー・マッギンなどのライブ演奏が収められ、その売上金は1990年に飛行機事故で亡くなったスティーブ・レイ・ヴォーンに関わる「Steve Ray Vaughan Charitable Funds」に寄付された。

JTは1993年8月放送の番組に出演、そこで歌った 1.「Carolina In My Mind」が本アルバムに収録された。この曲は様々な音源・映像で数多く演奏されているが、JTの歌のニュアンスは、その都度微妙に異なるので、何回聴いても飽きることがない。それこそが、彼の弾き語りマジックの秘密なのだろう。 

上記ラジオ放送 「In The Studio」のホームページで、本曲および同じ番組のなかで演奏された「Something In The Way She Moves」を聴くことができる。



B25 Saturday Night Live The Musical Performance Vol.1 (1999)  NBC

B25 Saturday Night Live

[Various Artists]

James Taylor: Acoustic Guitar, Vocal
Don Grolnick: Keyboards

1. Secret O' Life
  A9 A15 B26 E1 E7 E14


Original Show Date: November 13, 1993


様々なエンターテイナーが出演し、テレビ番組の新しい流れとして一世を風靡した「サタディナイト・ライブ」からの音源集。シンニード・オコナーのように、テレビカメラの前でローマ法王の写真を破り捨てて大騒ぎになった事など、生放送ならではの緊張感があり、先端を行くニューヨークの匂いがする番組だった。ここでは常連だったポール・サイモン、スティング、エリック・クラプトン、ビリー・ジョエルなど、トップ・アーティストによる演奏が15曲詰まっている。もともとテレビ番組なので、映像がないのは片手落ちのような気もするが、JTと言われちゃ避けて通れないよね。

以下は、出回っている映像版を観た上での解説。JTが出演した番組のホストはロージー・オドネル。コメディアンとして大変人気がある人で、現在はブロードウェイのプロデュースをしたり、レズビアンであることをカミングアウトしたり、常にゴシップの中心にいる人。その映像を見ると、チャックベリーの「Memphis」や「Slap Leather」を含む3曲の演奏を見ることができる(詳細は「その他断片 1990年代」参照)。前者がバンドとの演奏であるのに対し、1.「Secret O' Life」はフェンダー・ローズを弾くドン・グロルニックと二人だけの演奏だ。スタジオライブではあるが、オーディエンスつきで前後に拍手と歓声が入る。JTのギターはいつものオルソンで、眼鏡をかけ大学教授のよう。マンハッタンのビル屋上の機械室といった感じの大きな送風機を背景としたセットで演奏する。ドン・グロルニックのフェンダー・ローズとJTのギターが綺麗にミックスして、とてもまろやかでふわっとした感じだ。JTのギターの旨さがよくわかる。


B26 Rare On Air  (1997)  Mammmoth

B26 Rare On Air
[Various Artists]

James Taylor: Acoustic Guitar, Vocal
Don Grolnick: Keyboards

1. Secret O' Life  A9 A15 B25 E1 E7 E14


On Air Date: June 20, 1994


カリフォルニア州サンタモニカのFM放送局「KCRW 89.9」に出演した際の音源(詳細は「その他断片 1990年代」参照)。他にパティ・スミスやウォールフラワーズ(ボブ・ディランの息子ジェイコブのバンド)などが入っているが、前作よりはアーティストの知名度に劣る。

ここでも前作と同じ1.「Secret O' Life」が収録されているが、何度聴いても飽きることのない良い曲なので、許しちゃおう。1977年の作品「JT」 A9に収められていたオリジナルとは異なる、十数年の時の経過というか年輪が刻み込まれた演奏だ。この歌が持つ意味が時代とともに大きくふくらんでいったことがよく分かる。シングル・カットされなかったので、ヒットとは無縁だが、隠れた名曲とはこういうものを指すのだと思う。ここではドン・グロルニックは生のピアノを弾いていて、そのプレイは極めて自然で自由。室内楽のような気品があり、本当に素晴らしい。



B27 Columbia Records Radio Hour, Vol.2 (1996)  Columbia


B27 Columbia Records Radio Hour
[Various Artists]

James Taylor: Vocal, Acoustic Guitar
Don Grolnick: Accordion
Cliford Carter: Organ
Bob Mann: Electric Guitar
Jimmy Johnson: Bass
Carlos Vega: Drums
Dorian Holley, David Lasley, Valerie Carter, Kate Markowitz: Back Vocal

1. (I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That  A15 E7 E8

Recorded at Great Woods, Ma  August 25 1994


「Columbia Records Radio Hour」という、一流アーティストのライブを放送するFMラジオ番組からのオムニバスCD。他にリトル・フィート、ブルース・コバーン、ボズ・スキャッグスとブッカー・T & MG's、ルー・リード、ナンシー・グリフィス、ショーン・コルヴィンとメリー・チャピン・カーペンターなどの演奏が収録されている。JTはマサチューセッツ州のGreat Woodsでのコンサートを収録したもので、この演奏を含むライブ音源が存在している(詳細は「その他音源」参照)。

1.「(I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That」は、その中から1曲のみ公式発表された音源で、1991年の「New Moon Shine」 A14からのファンキーな曲と乗りに乗った演奏で大いに楽しめる。ドン・グロルニックのアコーディンの音がモカモカして面白い。バックアップ・シンガーは、いつものアーノルド・マックラーではなく、ドリアン・ホーレイが歌っており、いつもと少し感じが違う。彼はマイケル・ジャクソン、スティーヴィー・ワンダー、ロッド・ステュワート、ドン・ヘンリーなどのバックをやっていた人だ。

コンサートの音源があればそれで十分と思うが、公式音源にこだわる人達へのコレクターズ・アイテムだ。


B28 2 Meter Sessies, Vol.5 (1994)  Radio Records

B28 2 Meter Sessies

James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Don Grolnick : Piano
Jimmy Johnson: Bass 
Carlos Vega: Drums

1. Millworker  A10 A15 E1 E10 E19 E20

収録: Bullet Sound Studio's, Nederhorst den Berg, 1994 April 5


「A meter sessies」 は、1987年から始まったオランダのラジオ/テレビ番組で、アーティストをスタジオに招き、アコースティックな楽器によるライブを自然な雰囲気で収録することをモットーとしている。番組で演奏された曲を集めたオムニバスCDが、オランダとベルギーでのみ発売された。 Volume 5は、全17曲のほとんどが、欧米のオルタナティブ・ロック、インディー・ロックのグループによる演奏で、その中でJTのトラックは全く毛色が異なる異質な存在。本作のような特定地域のみの限定盤への収録が許可された経緯は不明。JTの 1.「Millworker」は、アムステルダムの南西の郊外にある町ヒルバースム(Hilversum)の近くにあるNederhorst den Bergのスタジオで収録された。JTは、ピアノ、ベース、ドラムスという小編成で臨み、気心の知れた仲間とリハーサルのような雰囲気で演奏している。バンドの演奏は素晴らしく、シンプルながらも4人のインタープレイが際立っている。特にドン・グロルニックのピアノが大変表情豊かで、自由気ままに弾いている感じがする。ジミー・ジョンソンのベースも何時になく饒舌に聞こえる。ちなみに本セッションの模様を撮影した映像を観ることができた(「断片 1990年代」参照)。小さなスタジオの中、各人がヘッドフォンを付けて演奏していて、他に「Copperline」と「Fire And Rain」も演奏している。

このCDは、なかなか市場に出回らず、約15年待ちましたが、インターネットで入手することができました。


B29 Randy Newman's Faust  (1995)  Reprise



B29 Randy Newman's Faust
[Variousn Artists]

Randy Newman: Vocal (1,3,4,5) , Piano (1,2,4,5)
James Taylor: Vocal (1,2,4,5), Vocal (Spoken) (3)
Kristyn Liang-Chan: Vocal (5)
Bob Mann: Guitar (1,2,4,5)
Doug Livingston: Pedal Steel Guitar (5)
Bill Payne: Hammond Organ (1)
Randy Waldman: Synthesizer (1,2), Organ (5)
Jimmy Johnson: Bass (1,2,4,5)
Carlos Vega: Drums (1,2,4,5)
Michael Fisher: Percussion (1,2)

Don Davis, Randy Newman: Arrangement
Peter Asher: Producer

1. Glory Train
2. How Great Our Lord
3. Best Little Girl
4. Northern Boy
5. Relax, Enjoy Yourself


1943年ニューオリンズ生まれのランディ・ニューマン(RN)はアメリカを代表するシンガー・アンド・ソングライターの一人だ。彼の歌詞はストーリー性の強い文学的なもので、かつ独特のシニカルなユーモアを持ち味とするため、日本での人気はイマイチだ。本国では1970年の「Mama Told Me Not Come」(スリー・ドッグ・ナイトにより全米No.1)、同年のニルソンのアルバム「Nilsson Sings Newman」など、まずは作曲家として有名になった。その後1972年の「Sail Away」などの名曲を残し、1977年の自作自演の「Short People」は全米2位の大ヒットとなった。アルバムの売り上げはそんなに多くはないが、高い評価と熱心なファンを獲得して不動の地位を確立した。1980年のミロス・フォアマン監督の映画「Ragtime」の音楽を担当するなど、映画音楽でも活躍している。

本作は彼がゲーテの戯曲「ファウスト」に挑んだもので、舞台を現代に移し、大学生のファウストをめぐり悪魔と神の物語が展開される。ブロードウェイのミュージカルのために作られたものを、有名アーティストの配役によるコンセプト・アルバムに仕上げたもので、アメリカでの評価はまちまちだった。私自身彼の音楽をそれほど聴いておらず、ストーリーもなかなか難解なので何とも言えないが、客観的に聴く限り、大いなる才能とソングライティングの魅力は十分に感じられる。

JT以外のゲストシンガーは、リンダ・ロンシュタット、ボニー・レイット、ドン・ヘンリー、エルトン・ジョンと大変に豪華だ。ピーター・アッシャーのプロデュースなので、バックミュージシャンもJTゆかりの人達が多く参加している。悪魔の役は当然ニューマンが担当、そのシニカルな持ち味が最大限に発揮されている。そして対する神(Lord)を演じているのが我らがJTで、これ以上のはまり役はないと思う。以前見たトークショウ「Late Night Show」でJTが出演し、JTの口から本作の配役が語られた時、観客が腹をかかえて笑っていた。

1.「Glory Train」で、JT演ずる清く正しい神が歌う。ゴスペル調の曲で、イントロからインテンポとなり「I see hard times coming / Fire and wind and rain」というくだりにはニヤリとしてしまう。続いてRNの悪魔が登場、ラグタイム調のメロディーに乗せて歌うが、こちらのほうが余程人間臭い感じなのが、いかにもRNらしい。JTのソロ曲 2. 「How Great Our Lord」になると、神の傲慢で独善的なキャラクターが露わになる。3. 「Best Little Girl」はRNのソロで、大変辛辣な歌詞。JTの語りが少しだけ入る。4. 「Northern Boy」はオーケストラをバックとしたJTとRNの掛け合いだ。5.「Relax, Enjoy Yourself」ではRNお得意のラグタイム調のメロディーを歌うJTを楽しめる。途中から天使の子供ボーカルが入り、RNとJTの掛け合いになる。持ち味が正反対の二人の共演が大変面白い作品。



B30 Carnival !  (1997)  [Various Artists]  BMG


B30 Carnival !

James Taylor: Vocal
Jung-Ho Pak: Conductor
With San Diego Symphony Orchestra

Live at 1995

1. I Bought Me A Cat [American Traditional, Arrange Aaron Copland]


何か新しいことに挑戦したいと思っていたJTは、当時の奥さんでTV女優のキャサリン・ウォーカーの薦めで、オーケストラをバックに歌うことを考える。彼女の実家の交流関係がきっかけで、サンディエゴ・シンフォニー・オーケストラと共演することになり、1995年の秋に22都市を回るツアーが実施された。財政難のオーケストラを援助するために、JTはノーギャラで出演したという。そこからの音源が本作に収録された。

本作は、1989年に設立された熱帯雨林保存を目的とする「The Rainforest Foundation」のために製作されたチャリティーCDで、スティングが全面的に協力している。その他のアーティストは、エルトン・ジョン、ポール・サイモン、ザ・チーフタンズ、ベッド・ミドラー、マドンナなどのロック界からと、クラシック界からオペラ歌手のルチアーノ・パヴァロッティ、ピアノのラベック姉妹が参加している。

1.「I Bought Me A Cat」は、JTが子供の頃愛唱していたという古い童歌だ。ネタバレになるので詳しくは言わないが、 大変ユーモラスな歌唱でオーディエンスは大笑い。聴いていて、JTの発音がいつになく正確なのに気がついた。クラシックをやるという事で、ヴォイス・トレーニングをしたのだろう。現在の音楽界で、最もきれいな英語で歌うシンガーといっても過言ではない。


B31 E-Town Live (1997) [Various Artists]  Private Rebel

B31E-Town Live

James Taylor: Vocal, Acoustic Guitar
Jimmy Johnson: Bass

Cliford Carter: Keyboards
Carlos Vega: Drums
Nick Forster: Guitar

Krista Koehler: Producer
Nick Forster: Executive Producer

1. Copperline  A14 A15 B28 E7 E10 E11 E14 E39

Recorded at Macky Auditorium in Boulder, Cororado April 20 1997


National Public Radio Stationという全国ネットでオンエアーされるラジオ放送番組「E-Town」は、良質の音楽と文化や自然保護をテーマとする会話を届ける非営利団体だ。音楽はすべてライブ録音される他、消費者運動のリーダーであるラルフ・ネイダーや、元大統領のジミー・カーターなどのトークを放送、現在も続いており、JTはその後何度も出演しているようだ。本作は以前に放送されたライブ音源から選ばれたもので、JTのほかにアーニ・ディフランコ、リチャード・トンプソン、ブルース・ホーンズビーなどが収録されている。

1.「Copperline」は、バックコーラスやリードギターのない小編成での演奏。ギターを弾くニック・フォルスターはこの番組の制作責任者、ホストであり、本作のエグゼティブ・プロデューサーだ。ブルーグラス・バンド、Hot Rizeに在籍、デビッド・ウィルコックスのバックなどを担当した現役バリバリのギタリストでもある。比較的さらっとした演奏ではあるが、とてもいい曲なので、何度聴いてもいいもんだ。クリフォード・カーターのピアノと、イントロのシンセサイザーがいい。

本作はアコースティック・ギターの専門月刊誌「Acoustic Guitar」に広告が掲載され、通信販売された。

当日はスザンヌ・ヴェガも出演しており、彼女のバックボーカルが入る「Gaia」、二人の共演によるレッドベリーの「Goodnight Irene」を演奏した音源がある。