More Than Words (Extreme) 1991  (米1位 英2位)
[Gary Cherone, Nuno Bettencourt] 

前回述べた「Seasons In The Sun」(1974)で、「アイルランド出身の5人組アイドル・コーラス・グループ、ウエストライフがカバーした」とあったが、彼等がカバーした曲をもうひとつ取り上げたいと思います。

Gary Cherone (ボーカル)、Nuno Bettencourt (アコースティック・ギター、ハーモニー・ボーカル)の二人だけで演奏されるこの曲を聴いた時、てっきりデュオのグループと思っていたが、実際はPat Badger (ベース)、Paul Geary (ドラムス)を加えた四人からなるバリバリのヘヴィメタル・ロックのバンドだった。この曲は1990年発売の2枚目のアルバムに入っていたもので、シングルカットされ 1991年3月に全米1位を獲得する大ヒットとなった。通常のアコースティック音楽と異なり、洗練されたソフトなムードはなく、ギター1本で二人の若者が歌うゴリゴリした感じは直球勝負の率直さにあふれ、フィンガーでコードを爪弾きながらカッティングを入れてリズムを刻むギター演奏スタイルも相まって、非常に個性的な歌となった。愛は言葉に勝るというシンプルな歌詞、それなりに綺麗なメロディーと寄り添うようなハーモニー・ボーカルは一部のロック・ファンには軟弱と不評だったはずで、ハードロック・バンドである彼等がこのような曲で成功を収めたことは、イメージの固定化という意味で一種重荷になったものと思われる。本業のハードロックでヒットを飛ばせなかった彼等は当時どんな思いだったのだろう......。約半年後にヒットした第2弾「Hole Hearted」(全米4位)も、この曲よりはロック調であったが、これもアコースティック・ギターによる演奏だった。バンドは1996年に解散、その後Gary Cheroneは、デビッド・リー・ロス、サミー・ヘイガーに次ぐ3代目のボーカルとしてヴァン・ヘイレンに参加、「Van Halen III」(1998)が製作されたが、批評家・ファンの評判は散々で、彼はバンドを解雇されてしまう。失敗の原因が彼のボーカルだけだったとは思えないけど・・・・・

ともあれ、いろいろ賛否両論があるが、名曲であると思う。何といっても数ある音楽家のなかでも後世に残るような曲を残せる人たちはほんの一握りであって、そういう意味では彼等は幸せなのかも知れない。本曲のミュージックビデオの冒頭シーンは、アンプのスイッチを消すクローズアップから始まり、ベースとドラムスが楽器から離れて休息をとる間の息抜きとして演奏されるシーンが、ちょっと出来過ぎの設定ではあったが、シンプルな白黒撮影に救われて印象的だった。ちなみにマイケル・ジャクソンの「Bad」をもじった「Fat」などで評判をとったパロディーの鬼 Al Yankovicが、本ビデオをもとに製作した「You Don't Love Me Anymore」は酷かった。

[2006年11月作成]