Love Will Lead You Back (Taylor Dayne) 1990  (米1位 英69位)
[Diane Warren] 

テイラー・デインは1962年ニューヨーク、ロングアイランド生まれ生まれで、主に80年代の後半、ダンスポップの歌姫として活躍した人。全米で7曲、全英で2曲のトップテンを記録している。日本での人気がイマイチなのは、少々繊細さに欠ける歌唱スタイルのせいか。そのなかで「Love Will Bring You Back」は、ロック感覚溢れる大変重厚なラブソングで、彼女の個性にピッタリはまって大ヒットとなった。メロディーと歌詞が各々持つエモーションの調和が素晴らしく、互いに共鳴し合ってエクシタシーを感じさせるまでに高められる。愛する人が自分のもとに帰ってくることを信じる女性の心を歌う、彼女のエネルギッシュな歌には素晴らしい重量感、存在感がある。最初は抑え目に、後半で爆発しシャウトするボーカルのスケールの大きさは圧倒的。この歌を歌える人は彼女しか考えられない、彼女のためだけにある歌だという感じがする。エレキピアノのバック演奏、間奏のギターソロも最高。

素晴らしくエモーショナルな歌詞は、彼女が夫と離婚した際にかわされた手紙を、ダイアン・ワーレンに持ち込んで曲にするよう依頼したという。報われない愛の歌を書くとこの人の右に出る者はいない。大体ミュージシャンになる人は社交的な人が多い(そうでないと生き残れない)ので、彼らが作る悲しい歌は、不遇時代に書かれたものを除き大体は白々しいものになるが、この人は最初から作家志望の人で表に出ることを好まないらしい。そういう意味で、この人の世界における孤独や寂しさは、その気持ちを本当に味わったことがある人でないと表現し得ないものがある。セリーヌ・ディオン(Because You Loved Me)、リーアン・ライムズ(Can't Fight The Moonlight)、エアロスミス(I Don't Want To Miss A Thing 映画「アルマゲドン」のテーマ)、スターシップ(Nothing's Gonna Stop Us Now)、トニー・ブラクストン(Unbreak My Heart)など数え切れないほどのメガヒット・ソングを長期間にわたり作り続けながら、その瑞々しさを失わないのは、内面の豊かさと人間の強さなのだろう。1956年生まれでロスアンゼルスに住み、自己の出版社のオフィスで仕事に明け暮れる毎日という。

日本では地味な曲ですが名曲です。私が知る限りではふたつのバージョンがあり、ベスト盤に入っていたシングル版(編集版)はしっとりしたイントロ部分がカットされてすぐに歌が始まってしまうので、アルバムバージョンのほうがいい出来だと思う。