The Captain Of Her Heart (Double) 1986  (米16位 英8位)
[Kurt Maloo, Felix Haug] 


ショッピング中に、店のバックグラウンド・ミュージックで耳にしたサウンドが忘れられず、「何の曲だったかな〜?」と心に引っかかることってありませんか? 昔聴いたことがあったけど、メロディーの断片だけでタイトル、アーティスト名が分からないのでは探しようがない。しばらくの間この曲は、私にとって幻状態だったのですが、なんと灯台元暗しで、自分が持っているコンスピレーションCD「We Are The 80s Vol.3」(ポリドール 1996年)に入っていたのですね。手元にあるレコード、CDのすべてを聴いているわけではなく、特にオムニバスの場合は、好きなアーティストや曲しかかけないので、こういう事が起きてしまうのですね、と反省した次第です。

ドゥーブルは、スイスから全英、全米ヒット・チャートインした数少ないアーティストで、クルト・マルー(ボーカル、ギター)とフェリックス・ホウグ(キーボード、ドラムス、ヴァイヴ)の二人組みだ。当時のキャッチフレーズ「ユーロ・モダン・アコースティック」とあるように、ジャズ、ソウル、ロックを洗練された味わいに仕上げた逸品で、アメリカ人には出せない無国籍風の洒落たサウンド(そういう意味で日本のニューミュージックに近いかも)が大変印象的。ピアノ、アコースティック・ギター、ボーカルとソプラノ・サックスによる透明感溢れるサウンドのなかで、微かにブルースの香りが漂う所に、単なる上っ面なだけのカッコ良さに終わらない、この曲の持つ品性の秘訣があると思う。ヨーロッパ、全英チャートで大評判となった後、アメリカ上陸して全米16位まで達したのは大健闘と言えよう。もともとはロキシー・ミュージックに類似したスタイルを身上とする人たちで、この曲だけが異色の作品だったようだ。そのためか、その後はこの曲を超える作品を生み出すことができず、ワン・ヒット・ワンダーで終わってしまった。その後彼らはどうなったのかな〜と思っていたが、クルト・マルーはその後も音楽活動を続けているようだ。

[2006年11月作成]


Give Me Wings (Michael Johnson) 1986  (米 - 英- )
[Kye Fleming, Don Schlitz] 


マイケル・ジョンソン(1944-2017)の1986年作品で、全米・全英にはチャートインしなかったが、カントリー・チャートで1位を獲得した曲。

彼はコロラド州生まれで、13才の頃からギターを弾き始め、腕を磨くためスペインに留学する。帰国後は、売れる前のジョン・デンバーとグループを組んだ事もあった。1971年に初アルバム「There Is A Breeze」を出す。ピーター・ヤーロウやフィル・ラモーンが制作に参加した先進的なフォーク音楽のアルバムで、私が好きなラルフ・タウナーも参加しているが、イメージが合わず売れなかった。その後ナッシュビルを拠点として、よりAOR的なサウンドを指向、1978年ランディ・グッドマン作の「Bluer Than Blue」で全米12位、1979年ビル・ラバウンティ作の「This Night Won't Last Forever」が同19位のヒットとなる(どちらも大好きな曲です)。その後もカントリー音楽界で活躍し、2017年73歳で亡くなった。ギター(使用ギターはクラシック・ギター)が上手い人で、レオ・コッケとの共演実績がある(1974年のアルバム「Dreams And All The Stuff」収録の「Mona Ray」、1981年のテレビ番組など)。

女を愛する男は「君を守るためなら何でもする」と言い、それに対し女は、「もし私を愛しているなら翼をちょうだい、心配しないで、籠のなかの鳥は歌い方を忘れてしまうの、雲の上に出ると永遠が見える、二人で飛びましょう」と答える内容の歌詞で、愛情における自由の束縛の相克を描いた歌詞に、何度聴いてもジ〜ンとくる。彼の誠実そうな人柄・声がこの歌にぴったりだ。

とてもシンプルでストレートな曲なんだけど、味わい深い曲。カントリー音楽も捨てたもんじゃないね。