O1 Pocket Money [Single B-Side] (1972) Ode (A&M)  


Carole King : Piano, Vocal
Other Musicians : Unknown


1. Pocket Money [Carole King]

Lou Adler : Producer

発売: 1972年1月

 

スチュアート・ローゼンバーグ監督(1927-2007)、ポール・ニューマン(1925-2008) 主演の映画「Pocket Money」1972のサウンドトラックで、1972年に全米9位のヒットを記録したシングル「Sweet Season」のB面に収められた。生活苦のカウボーイが、楽な金稼ぎとして牛200頭の移動の仕事を引き受けるが、実際はいろんな事件が起きて大変苦労するという話で、共演者はリー・マーヴィン(1924-1987)。この監督と俳優のコンビでは「Cool Hand Luke (邦題 暴力脱獄)」1967という作品があり、こちらのほうは両者の代表作といえる作品だったが、現代のカウボーイを描いたこの映画の評判は悪く、失敗作とされ日本未公開となった。

当時は、レコード販売促進、およびファンサービスのため、アルバム(LP)に収録できなかった曲をシングル盤のB面に収めることがよくあった。私はレコード店に通い詰め、店に置いてあった業界誌の発売予定欄を読んで、好きなアーティストの新作シングルのB面にそんな曲が入っていないか、よくチェックしたものだ。本作はそんな風にして見つけた一枚で、また新作 LP「Music」C5のジャケット写真の別テイクを使用したカバーも魅力だった。

曲自体は、映画の主題歌という割りには地味な雰囲気の小品であるが、聴き込むとそれなりに良い味が出てくる。A面がヒットしているので、多量のレコードが売られ、残っていると思われるが、絶頂期のキャロルのアルバム未収録曲ということで、コレクターズ・アイテムとなった。長い間、本曲を聴くことができるのは、このシングルのみだったが、1994年に発売されたキャロルのボックスセット「A Natural Woman The Ode Collection 1968-1976」 O2に収録され、初めてCD化された。このボックスセットには、各曲につき詳細なクレジットが解説書に記載されたが、本曲に関してはプロデューサーの名前のみだった。しかし各楽器(ピアノ、エレキピアノ、エレキギター、ベース、ドラムス)の音色を聴く限り、同時期に録音された「Music」と同じ人達と思われる。バックボーカルについても、キャロルの多重録音の他に別人の声が聞こえるので、アビゲイル・ハネスが参加していると推測する。ちなみに 2001年にRhinoから発売されたポールニューマンの企業「Newman's Own」(ドレッシングやスパゲティ・ソースを販売し、収益を事前事業に寄付することで有名)が企画したチャリティーアルバム「Newman's Own: Movie Songs」にも本曲が収録された。

[2012年7月作成]


 
O2 The Ode Collection 1968-1976 (1994) Ode (A&M)   
 

Carole King : Piano, Vocal
Danny Kootch : Electric Guitar
David T. Walker : Electric Guitar
Charles Larkey : Electric Bass
Harvey Mason : Drums
Bobby Hall : Percussion

Harry "Sweets" Edison : Fleugel Horn, Trumpet
Robert "Bobby" Bryant : Fleugel Horn, Trumpet
Geroge Bohanon : Trombone
Ernie Watts : Flute

Norman Kurban, David Campbell : Strings Conductor & Arranger

David Campbell, Carole S. Mukogawa : Viola
Terry King, Nathaniel Rosen : Cello
Charles Larkey : String Bass
Barry Cocher, Eliot Chapo, Marcy E. Dicterow, Gordon H. Marron, Sheldon Sanov, Polly Sweeney: Violin

1. At This Time In My Life [Carole King]
2. Ties That Bound [Carole King]

Recorded at A&M Studios, July 1971

 

オード・レコード時代の作品のコンピレーション・アルバム。「Now Tha Everything's Been Said」1968 C1から2曲、「Writer」1970 C2から2曲、「Tapestry」1971C3から
12曲、「Music」1971 C5から4曲、「Rhymes & Reasons」1972 C6から3曲、「Wrap Around Joy」1974 C7から3曲、「Fantasy」1973 C7から1曲、「Really Rosie」1975 C9から2曲、「Throughbred」1975 C10から2曲、未発表アウトテイク2曲、シングル収録1曲、未発表ライブ2曲という内容。「Tapestry」については同じ曲順で全部入れるというスゴイ事をやっている。これで私はLP、デジタル化時CD、ボーナストラック付CD 1999年、ライブCD付レガシー盤 2008と本作ということで、同じ内容のアルバムを5つ持っていることになる。なんとまあ.......

ここではLP収録曲以外について解説する。

@ 未発表アウトテイク
「Rhymes & Reasons」1972 C6のアウトテイクが2曲。22年後の登場となるが、どちらもボーカル、コーラスの多重録音やホーンセクションの伴奏など最後までしっかり作り込まれたものになっていて、デモとか制作途中で投げ出した感じはない。1.「At This Time In My Life」は、ピアノとベースを中心とした伴奏に多重録音によるハーモニーボーカル、コーラスが加わる、こじんまりとした感じの作品。「あの頃私はどうだった...」という内容の曲で、ちょっと固いかな。チャーリー・ラーキーのメロディアスなベースラインがいい感じを出している。本曲はその後も他のアルバムには収録されていない。2.「Ties That Bind」は、サウンド的に次のアルバム「Fantasy」1973 C7そのものといった感じで、デビッド T.ウォーカーのギターとホーンセクションが活躍するニューソウル風の曲。いい出来と思うが、「Rhymes And Reasons」の他の曲とは異質な感じが否めず、アルバムに収録されなかった理由がわかる。後に再発された「Rhymes And Reasons」のCDには、本曲をボーナストラックとして含めたもの(邦題「心の絆」)がある。

A シングル収録
「Pocket Money」(O1参照)

B 未発表ライブ
「Beleive In Humanity」は、1973年5月26日ニューヨーク、セントラル・パークにおけるライブ録音で、本作発売28年後の2022年に同ライブ全曲の音源と映像 E1が公開された。本作品購入当時はこの曲を聴きながら、全貌はどんなに凄いものかと想像を巡らせたものだ。それが2019年に発売された同編成による「Live At Montreux 1973」E2とともに観れる・聴けるようになったんだから感無量.....。なお、ここでは曲名表示が「Believe In Humanity」とだけなっているが、実際はメドレーで演奏される「Fantasy End」もしっかり入っている。

「You've Got A Friend」は、1971年6月18日ニューヨーク、カーネギー・ホールでのライブ。ジェイムス・テイラーがギターとボーカルでゲスト参加しているので、話題となったが、これも2年後1996年に「The Carnegie Hall Concert」C4 として全編が発売されている。

ということで、本稿執筆時の2023年2月では、本作品は私にとって未発表アウトテイク2曲のみという価値となった(添付されたブックレットの解説はそれなりに面白いけど)。CD2枚を収めたボックスは、カバーの白色が色褪せながら私の書斎の隅に眠っている。それにしても細長いボックスセットものは保管が難しいんだよね〜

[2023年2月作成]



 
O3 Whiskey [Single B-Side] (1979) Capitol  
 







Carole King : Vocal

Unknown : Other Personnel

Carole King, Mark Hallman : Producer


1. Whiskey [Carole King]


写真下 : ウィスキーとキャロル(1982年)
 

1979年に発売されたシングル「Move Lightly」(「Touch The Sky」1979 C13収録、100位以内のチャートインなし)B面のアルバム未収録曲。

リック・エヴァースを通じて知り合った人々のなかにロイ・レイノルズというアーティストがいた。彼はカウボーイだった頃、アルコール依存症だった。断酒の祝いに仔馬を購入し、ウィスキーと名づけ、仔馬の訓練とアート制作に打ち込む。彼の絵と写真が「Simple Things」1977 C11のジャケットに採用された際に、そのお礼にウィスキーをキャロルにプレゼントした (彼はその後も「Welcome Home」1978 C12 の写真とアード・ディレクションを担当している)。

ということで、本曲はウィスキーという馬と、それをめぐる人々の話を元に作られたものだ。キャロルとマーク・ホールマンのプロデュースで彼女が歌っていること以外は、資料がないので不明であるが、おそらく「Touch The Sky」1979 C13 と同じミュージシャン達が演奏しているものと思われる。アコースティック・ギターの演奏から始まり、途中でバンドがフィルイン、ピアノが出てくるのはコーラス部分から。キャロルの歌とコーラスは従来に増してアーシーな感じで、完全なカントリーロックのサウンドだ。

本曲は、その後もLPやCDに収録されず、配信もないようだ。ということで、聴きたい人は当該シングルを購入することになるが、ヒットしなかった割にはそこそこ出回っているようで、中古市場で手頃な価格で見つけることができる。

ギターがサウンドの主体となっていて、キャロルの作品としては少し毛色が変わった曲。


O4 Rulers Of This World [Single B-Side] (1980) Capitol








Carole King : Piano, Vocal
Other Musicians : Unknown


1. Ruler Of This World (aka Recipients Of History) [Carole King, Gerry Goffin, Barry Goldberg]

Jack Nitzsche : String Arrangement
Gerry Goffin : Producer

発売: 1980年5月


写真上: 「Ruler Of The World」版
  下: 「Recipients Of History」版

1980年5月に発売され、全米12位を記録したシングルヒット「One Fine Day」(アルバム「Pearls」C14からシングルカット)のB面曲で、これまでベスト盤、ボックスセットを含め、どのアルバムにも収録されていない。不思議なことに、この曲は、「Rulers Of This World」と「Recipients Of History」という2通りの曲名で発売されており、キャロルの公式ホームページのディスコグラフィーには、前者で掲載されている。この曲については、あまり資料がないので詳細は不明であるが、「If the rulers of this world, want it to put an end to war, they could, you know they could, I wish they could, Then we all could be recipients of history, so gratefully.......中略........ maybe they are afraid they might also have to die」という平和と戦争反対を唱える政治的な内容で、この年の大統領選挙(共和党のレーガンが民主党のカーターを破って第40代合衆国大統領になった)に関係があるかもしれない。

共作者のバリー・ゴールドバーグは、ブルース音楽界で活躍するキーボード奏者、作曲家で、1972年のソロアルバム「Barry Goldberg」に収められた「It's Not The Spotlight」は、ジェリー・ゴフィンとの共作による名曲で、ロッド・スチュワート、マンハッタン・トランスファーによってカバーされた。彼女のピアノとストリングスのみによるシンプルでストレートなサウンドで、ストリングスのアレンジはジャック・ニッチェ(1937-2000)。彼はアレンジャー、プロデューサー、作曲家で、フィル・スペクターの右腕として有名になり、その後はローリング・ストーンズ、ニール・ヤングの他多くの作品を手がけた人。キャロルとの仕事はこの曲だけだと思う。

珍しい曲であるが、A面がかなりのヒットを記録したので、中古市場でたくさん出回っている。

[2023年3月作成]


O5 The Care Bears Movie (1985) Kid Stuff Records & Tapes






Carole King : Piano, Vocal
Robbie Kondor : Keybords, Synthesizer
Mickey Rooney : Spoken Words
Harry Dean Stanton : Vocal
Louise Goffin : Vocal
Sherry Goffin: Vocal
Lavi Larkey : Vocal

Lou Adler: Producer
Ana Selznick : Director

1. Care A Lot [Carole King]
2. Home Is In Your Heart [Carole King]
3. Care A Lot (Reprise) [Carole King]

写真上: DVD表紙
写真下: Sound Track Record 表紙


ケア・ベアーズ(以下「CB」)は、1981年にアメリカン・グリーティング社のElena Kucharikがグリーティング・カード用に書いた絵柄が始まりで、好評を受けてキャラクター化し、さらにケナー社がぬいぐるみを発売しで大人気となった。それぞれの熊は、色が違っていてへそのあたりに役割と人格を示すシンボルが付いている。彼らは普段は雲上の「Care A Lot」に住み、子供達の成長を見守っていて、問題を見つけるとかけつけて彼らを励まし、解決に導くという。1985年カナダのNelvana Productionが映画化の権利を獲得して、アニメーションを製作した。それは世界各地で大ヒットし、その後3本の続編が作られ、テレビシリーズにもなった。本作は日本では公開されなかったようであるが、続編以降の作品はディズニー・チャンネル等で放映されたり、DVDで発売されている。またぬいぐるみの販売も好調で、日本をイメージしたキャラクター「Sweet Sakura Bear」も作られたという。1980年代の絶頂期の後は人気が衰えたが、人々はCBのことを忘れておらず、1990年代の終わり頃、再びブームが起きてデザインのマイナー・チェンジを経ながら現在に至っている。キャロルは、1983年のアルバム「Speeding Time」C16に続くルウ・アドラーのプロデュースのもと、テーマソングと挿入歌の製作に携わっている。映画の内容は以下のとおり。

孤児院を経営するMr. Cherrywoodが、子供達に聞かせる物語りとして始まる。雲上のCare A Lotに住むCB、Friend BearとSecret Bearは地上で問題を抱える孤児KimとJasonを見つけ、雲でできた車で地上に降り、彼らを助けようとする。一方地上の遊園地では魔法使いの助手Nicholasが Evil Spiritの影響を受け、悪い魔法で人々から caring (相手を思いやること)を奪ってしまう。Friend BearとSecret Bearは、信じようとしないKimとJasonlを Care A Lotに連れてゆくが、Evil Spiritの攻撃を受けてその場所は大きな被害を受ける。Friend Bear、Secret BearとKim、Jasonは、ニコラスの所に行ってやめさせようとするが、思うように移動できず、雲上にあるジャングル「Forest Of Feelings」にたどり着く。彼らはそこで、Care Bear Cousinsと呼ばれるBrave Heart LionやPlayful Heart Monkey等に出会う。そこにもEvil Spiritが攻め寄せるが、皆で協力して撃退し、Nicholasのいる遊園地に向かう。Nicholasは強力な魔術で対抗するが、自分の過ちに気付いてEvil Spiritを封印し平和が訪れる。Care Bear Cousinは、CBの仲間となり、KimとJasonは新しい親を見つけてハッピーエンド。最後にNicholasは後にMr. Cherrywoodに、Kimは彼の奥さんになったことが明かされる(ちなみにNicholasはKimに近い年齢、Jasonはかなり年下という設定)。

映画を通しで一度観たが、最後まで観続けるのに難儀した。いかにも当時のアメリカ風アニメという感じで、ストーリーが単純で勧善懲悪がはっきりし過ぎていること、各キャラクターの動きが不自然であること、背景の絵に繊細さ・深みがないため、宮崎駿が監督した1984年の「風の谷のナウシカ」と比べると雲泥の差であることは誰が観ても明らか。観る人の想定年齢が違うからという意見があるかもしれないが、1988年の傑作「となりのトトロ」が年齢を問わず、誰でも楽しめる事を考えると、両国で、アニメという文化に対する根本的な違いがあると思う。しかし後にアメリカはそれを認めて、3Dという画期的な表現方法を駆使して克服することになる。

以上のとおり、アニメの出来としては散々な事を言ったが、本作品でフィーチャーされた音楽は、なかなか良かったと思う。1.「Care A Lot」は、ミッキー・ルーニー(1920-2014、子役時代にジュディ・ガーランドとのハリウッド映画の共演で人気を博し、1950年代は脇役として多くの映画に出演した人) によるMr. Cherrywoodのモノローグの後のオープニング・タイトルで始まる(レコードでも彼のセリフが入っている)。ロビー・コンドーのシンセサイザーとキャロルのピアノ(弾いているのはロビーかもしれない)と、本人の多重録音によるコーラスをバックにキャロルが歌い、そこには理想の住処「Care A Lot」の誠実な世界が語られる。エンディング・タイトルで流れる 3.「Care A Lot (Reprise)」も1.と同じ録音で、これもレコードに収められているが、イントロにモノローグがない(被っていない)点が異なる。

2.「Home Is In Your Heart」は、Care A Lot も、Forest Of Feeling、地球もみんな心の中では同じ故郷だと歌う、とても明るく前向きな曲。Kim、Care Bear、Playful Monkeyをキャロルと、ルイーズとシェリー・ゴフィンの二人の娘が担当(声色を使っているので、誰がどのパートを歌っているかは分からない)、Jasonを二男のLavi Larkeyが歌い、「Cool Hand Luke」 (1967 暴力脱獄)、「Godfather Part II」1974、「Alien」1979、「Green Mile」1999に脇役で出演したハリー・ディーン・スタントン(1926- )がBrave Heart Lionでゲスト出演している。女性3人は語りっぽい歌い方を含めてとても上手であるが、男性の子供は少し調子っぱずれで、彼は後にテキサス大学で博士号を取り、研究者・ビジネスマンとしてキャリアを積んでいる。本作での彼らの出演は歌のみで、映画のセリフは別の声優が担当している。キャロルの20代の二人の娘と10代の息子、そして次女シェリーの夫になるロビー・コンドウとの共演ということで、何ともいえない家族的な雰囲気に溢れている。キャロルのピアノとロビーのコンピューター打ち込みと思われるバック演奏や、コーラスも創造性に溢れたアレンジで、曲の良さと相まってとても良い出来に仕上がっている。

サウンド・トラック・レコードは、上記以外にジョン・セバスチャンによる3曲 (「Nobody Care Like A Bears」は、彼自身がラグタイム風のメロディーに乗せて歌う彼らしい曲であるが、他の2曲は登場人物が歌っていてそれほどでもない)と、映画の粗筋となる登場人物のセリフや効果音が収録されている。

キャロルの作品の中でも掘り出し物と言ってよい作品。

[2015年8月作成]