S1 The Legendary Demos (2012) Rockingale (Universal)
 

Carole King : Vocal, Piano
Unknown : Back Band, Back Vocal

1. Pleasant Valley Sunday [Carole King, Gerry Goffin] C21 E5
2. So Goes Love [Carole King, Gerry Goffin]
3. Take Good Care Of My Baby [Carole King, Gerry Goffin] C21 E3 E4 E8
4. (You Make Me Feel Like) A Natural Woman [Carole King, Gerry Goffin, Jerry Wexler] C3 C3 C4 C19 C21 O9 G1 E2 E3 E4 E5 E8
5. Like Your Children [Carole King, Gerry Goffin]
6. Beautiful [Carole King] C3 C3 C4 C19 E1 E2 E4 E5 E8
7. Crying In The Rain [Caro King, Howard Greenfield] C16
8. Way Over Yonder [Carole King] C3 C3 C4 E1 E8
9. Yours Until Tomorrow [Carole King, Gerry Goffin]
10. It's Too Late [Carole King, Toni Stern] C3 C3 C4 C19 C21 E1 E2 E4 E5 E6 E8
11. Tapestry [Carole King] C3 C3 E3 E8
12. Just Once In My Life [Carole King, Gerry Goffin, Phil Spector]
13. You've Got A Friend [Carole King] C3 C3 C4 C19 C19 C21 O9 G31 G38 E1 E2 E3 E4 E5 E6 E8 E8
[Bonus Track]
14. Every Breath I Take [Carole King, Gerry Goffin] E5
15. Oh No, Not My Baby [Carole King, Gerry Goffin] C14 C20

録音(〜年頃)
1961年: 3, 14
1962年: 7 
1964年: 15
1965年: 12
1966年: 1, 2, 5, 9
1967年: 4
1970年: 6, 8, 10, 11, 13

 

キャロルの自伝「A Natural Woman」の出版に合わせ、彼女の自主レーベルから発表発売されたデモ音源集。解説では、すべて未発表(non previously released)とあるが、実際は一部の曲につき、何らかの形で発売されている。

作曲家時代の彼女が曲の宣伝用に吹き込んだテープは、音楽関係者に配布され、取り上げたアーティストから多くのヒット曲が生まれたわけであるが、彼女自身の歌や演奏に対する評判も高く、これらのデモテープを熱心に集める人々がいたという。キャロルがシンガー・アンド・ソングライターとして成功を収めた後は、業界人の間でコレクターズ・アイテムとして珍重されたが、一般の人々に出回ることはなかった。ずっと後の1979年になって発売された「Carole King Plus」というアルバムに、1960年代前半のディメンション・レーベルで発表された曲(リトルエヴァの「Locomotion」、キャロル本人の「It Might As Well Rain Until September」等)と一緒に、デモ音源の一部が収録された(このアルバムは1991年に曲目を大幅に増やして「Dimension Dolls」 S1というタイトルでCD化されている)。また1995年には、「The Right Girl: Carole King Brill Building Legends Complete Recordings 1958-1966」S3 という2枚組のCDがヨーロッパで突然発売(権利面で正式なものではないらしい)され、収録された57曲のデモ音源(当時シングルで発売された数曲を含む)は、ファンを驚かせ、狂喜させた。本作はこれら2枚のアルバムに重複する曲もあるが、ほとんどが今回初めて耳にするものであり、さらに傑作「Tapestry」製作前に録音されたデモ音源も含むということで、ファンにとってはとてもうれしいプレゼントとなった。

まずは、作曲家時代のデモ音源から解説しよう。1.「Pleasant Valley Sunday」は、文句なし本アルバム目玉のひとつ。ザ・モンキース4枚目のシングル(1967年)で、全米3位の大ヒットを記録。ドラムスのミッキー・ドレンツが歌うバージョンは、当時流行のサイケデリックロックの雰囲気が漂い、カラフルで華やかなサウンドが素晴らしかった。キャロルによるこの曲のデモを聴けるなんて、最高だね!彼女はバンドをバックに歌っているが、モンキーズよりもアコースティックでフォーキーな感じで、それなりにとても良い感じ。彼女の自伝によると、当時彼女と旦那のジェリー・ゴフィンはニューヨーク郊外に引っ越したが、彼はそこでの生活が気に食わず、その思いをこの歌の歌詞にぶつけたとのこと。田舎の生活を称賛する歌が多いなかで、結構辛辣な内容なのが逆に新鮮。さらにキャロルのバージョンの歌詞は、モンキーズのものと少し異なり、「I don't ever want to see, Another pleasant valley sunday」というストレートな一節まである。2.「So Goes Love」は、1.と同時期の1966年7月7日にデイヴィー・ジョーンズのボーカルで録音されたがお蔵入りとなり、解散後の1987年「Missing Links」というアルバムで発売されたバラード。ここでの音作りは、フィル・スペクターのウォールサウンドそのものだ。3. 「Take Good Care Of My Baby」は、前述の「The Right Girl.....」に同じ録音が収録されている。多重録音によるピアノ2台(または連弾)のみによるシンプルな演奏であるが、キャロルのボーカルが活き活きしていて、何度聴いても引き込まれてしまう魅力がある。ここでのキャロルの歌い回しとピアノが奏でるメロディーが、ボビー・ヴィーの公式発表バージョン(1965年 全米9位)にそのまま使われており、彼女が曲作りのみでなく、歌唱やアレンジにおいても絶大な影響力を誇っていたことがよくわかる音源だ。4.「 (You Make Me Feel Like) A Natural Woman」は、プロデューサーのジェリー・ウェクスラーによるタイトルのアイデアを元に、アレサ・フランクリンが歌うことを最初から意識して書かれた曲で、1967年のシングルは全米8位を記録した。後にキャロルは「Tapestry」1971 C3 にこの曲を入れたが、ここでのデモは、公式録音に比べてはるかに黒っぽくソウルフルな歌唱を通している。5.「Like Your Children」(1966年頃)は、どのアーティストにも歌われなかった曲。デモとしてはブラス、バックコーラスがついた本格的な録音になっており、キャロル本人が自己名義で発表しようとしてお蔵入りになった曲かもしれない。1999年に公開されたアントニオ・バンデラス監督、メラニー・グリフィス主演の映画「Crazy In Alabama」 のサウンドトラック盤に収録され、ファンの間では謎の曲と話題になったことがある。7.「Crying In The Rain」は、エヴァリー・ブラザース 1962年のヒット(全米6位)であるが、彼らがキャロルの多重録音によるハーモニーをそのままパクッていることがよくわかる。キャロルの若々しい歌声が大変魅力的。これと同じ録音が前述の「Carole King Plus (Dimension Dolls)」に収録されている。また彼女は、1983年のアルバム「Speeding Time」でシンセサイザーを多用したアレンジでセルフカバーしたが、このデモのほうが遥かに良い出来。9.「Yours Until Tomorrow」は、ジーン・ピットニー(1968)、シェール(1968) が取り上げたが、マッスル・ショールズのミュージシャンをバックに歌う、ニューオリンズのソウルクイーン、アーマ・トーマス(1941- )のバージョンが最高。去りゆく恋人に向かって、「明日までは私は貴方のもの」と迫る歌詞がウェットな感じなたため、ヒットしなかったのかな?12.「Just Once In My Life」は、「You've Lost That Lovin' Feelin'」で大成功を収めたライチャス・ブラザースが、柳の下の二匹目のドジョウを狙って発表した曲(全米9位)で、フィル・スペクターが共作者に名を連ねている。彼女自身の多重録音によるソウルフルな二重唱が素晴らしい。

次は「Tapestry」のデモについて。1970年頃録音というこれらのトラックは、キャロルの弾き語りによるもの。6.「Beautiful」、8.「Way Over Yonder」、11.「Tapestry」 を聴くと、力強い歌声とピアノで、彼女のソウルが直に伝わってくる。これらのデモよく聴くと、「Tapestry」は一見飾り気のない、ありのままの姿を捉えたように見えるが、実は極めて巧妙にプロデュースされていることがよくわかる。ルウ・アドラーは、アルバムの製作にあたり、ジャズのジュリー・クリスティーを参考にしたというように、曲の情感を抑制し、クールなムードを醸し出すことにより、内に秘めた深みを生み出すことに成功したのだ。その革新的なプロデュースの過程をストレートに味わうことができる意味で、これらのデモは本当に面白く貴重だ。なかでも 10.「It's Too Late」の自由奔放なパフォーマンスは、本アルバムのハイライトのひとつだ。気の赴くままにメロディーを崩した歌いっぷり、特にエンディングにおける長めのスキャットボーカルは、いつまでも聴いていたい気分になる。13.「You've Got A Friend」は、多重録音によるハーモニー・ボーカル付きで、イントロのピアノがちょっと違うところが面白い。

日本盤には2曲のボーナストラックが収録されたが、それらはiTuneでダウンロードすることができるので、輸入盤を買っても大丈夫。14.「Every Breath I Take」は、ジーン・ピットニー1961年のヒット(全米8位)。キャロルの少女の面影を残した歌声と、彼女自身による多重録音のドゥワップがいいね〜。キャロルは、15.「Oh No, Not My Baby」につき、 「Pearls」1980 C14、「Love Makes The World」2001 C20の2回セルフカバーしているが、1964年のオリジナルというべき当該デモにより、3世代にわたるパフォーマンスが出そろうことになった。何度聴いても良い曲。もともとは「Will You Still Love Me Tommorow」のザ・シレルズで録音したが出来栄えに満足できず、同じ伴奏トラックを使用してマキシン・ブラウンで録音し直し、それが全米24位のヒットとなったもの。現在、ザ・シレルズの最初の録音も発掘されており、聴き比べると面白い。その後もマンフレッド・マン、シェール、リンダ・ロンシュタット等多くのアーティストが取り上げたが、個人的にはカバーの達人ロッド・スチュワートのバージョンが好きだ。

作曲家時代、およびシンガー・アンド・ソングライターとして成功を収める直前のデモが聴けるお宝アルバム。もっとたくさんの曲を収録して2〜3枚組にして欲しかったなあ。ジャケット写真をよく見ると、当時宣伝用写真として多く使用されたものと同じ服を着ているので、同じセッションで撮影されたものと思われる。また、解説書に掲載されたニューヨークにおける作曲家時代、ロスでのレコーディング風景の写真も味がある。





 
O1 Pocket Money [Single B-Side] (1972) Ode (A&M)  




Carole King : Piano, Vocal
Other Musicians : Unknown


1. Pocket Money [Carole King]

Lou Adler : Producer

発売: 1972年1月

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スチュアート・ローゼンバーグ監督(1927-2007)、ポール・ニューマン(1925-2008) 主演の映画「Pocket Money」1972のサウンドトラックで、1972年に全米9位のヒットを記録したシングル「Sweet Season」のB面に収められた。生活苦のカウボーイが、楽な金稼ぎとして牛200頭の移動の仕事を引き受けるが、実際はいろんな事件が起きて大変苦労するという話で、共演者はリー・マーヴィン(1924-1987)。この監督と俳優のコンビでは「Cool Hand Luke (邦題 暴力脱獄)」1967という作品があり、こちらのほうは両者の代表作といえる作品だったが、現代のカウボーイを描いたこの映画の評判は悪く、失敗作とされ日本未公開となった。

当時は、レコード販売促進、およびファンサービスのため、アルバム(LP)に収録できなかった曲をシングル盤のB面に収めることがよくあった。私はレコード店に通い詰め、店に置いてあった業界誌の発売予定欄を読んで、好きなアーティストの新作シングルのB面にそんな曲が入っていないか、よくチェックしたものだ。本作はそんな風にして見つけた一枚で、また新作 LP「Music」C5のジャケット写真の別テイクを使用したカバーも魅力だった。

曲自体は、映画の主題歌という割りには地味な雰囲気の小品であるが、聴き込むとそれなりに良い味が出てくる。A面がヒットしているので、多量のレコードが売られ、残っていると思われるが、絶頂期のキャロルのアルバム未収録曲ということで、コレクターズ・アイテムとなった。長い間、本曲を聴くことができるのは、このシングルのみだったが、1994年に発売されたキャロルのボックスセット「A Natural Woman The Ode Collection 1968-1976」 O2に収録され、初めてCD化された。このボックスセットには、各曲につき詳細なクレジットが解説書に記載されたが、本曲に関してはプロデューサーの名前のみだった。しかし各楽器(ピアノ、エレキピアノ、エレキギター、ベース、ドラムス)の音色を聴く限り、同時期に録音された「Music」と同じ人達と思われる。バックボーカルについても、キャロルの多重録音の他に別人の声が聞こえるので、アビゲイル・ハネスが参加していると推測する。ちなみに 2001年にRhinoから発売されたポールニューマンの企業「Newman's Own」(ドレッシングやスパゲティ・ソースを販売し、収益を事前事業に寄付することで有名)が企画したチャリティーアルバム「Newman's Own: Movie Songs」にも本曲が収録された。


O4 Rulers Of This World [Single B-Side] (1980) Capital











Carole King : Piano, Vocal
Other Musicians : Unknown


1. Ruler Of This World (aka Recipients Of History) [Carole King, Gerry Goffin, Barry Goldberg]

Jack Nitzsche : String Arrangement
Gerry Goffin : Producer

発売: 1980年5月


写真上: 「Ruler Of The World」版

   下: 「Recipients Of History」版
1980年5月に発売され、全米12位を記録したシングルヒット「One Fine Day」(アルバム「Pearls」C14からシングルカット)のB面曲で、これまでベスト盤、ボックスセットを含め、どのアルバムにも収録されていない。不思議なことに、この曲は、「Rulers Of This World」と「Recipients Of History」という2通りの曲名で発売されており、キャロルの公式ホームページのディスコグラフィーには、前者で掲載されている。この曲については、あまり資料がないので詳細は不明であるが、「If the rulers of this world, want it to put an end to war, they could, you know they could, I wish they could, Then we all could be recipients of history, so gratefully.......中略........ maybe they are afraid they might also have to die」という平和と戦争反対を唱える政治的な内容で、この年の大統領選挙(共和党のレーガンが民主党のカーターを破って第40代合衆国大統領になった)に関係があるかもしれない。

共作者のバリー・ゴールドバーグは、ブルース音楽界で活躍するキーボード奏者、作曲家で、1972年のソロアルバム「Barry Goldberg」に収められた「It's Not The Spotlight」は、ジェリー・ゴフィンとの共作による名曲で、ロッド・スチュワート、マンハッタン・トランスファーによってカバーされた。彼女のピアノとストリングスのみによるシンプルでストレートなサウンドで、ストリングスのアレンジはジャック・ニッチェ(1937-2000)。彼はアレンジャー、プロデューサー、作曲家で、フィル・スペクターの右腕として有名になり、その後はローリング・ストーンズ、ニール・ヤングの他多くの作品を手がけた人。キャロルとの仕事はこの曲だけだと思う。

珍しい曲であるが、A面がかなりのヒットを記録したので、中古市場でたくさん出回っている。



O5 The Care Bears Movie (1985) Kid Stuff Records & Tapes







Carole King : Piano, Vocal
Robbie Kondor : Keybords, Synthesizer
Mickey Rooney : Spoken Words
Harry Dean Stanton : Vocal
Louise Goffin : Vocal
Sherry Goffin: Vocal
Lavi Larkey : Vocal

Lou Adler: Producer
Ana Selznick : Director

1. Care A Lot [Carole King]
2. Home Is In Your Heart [Carole King]
3. Care A Lot (Reprise) [Carole King]

写真上: DVD表紙
写真下: Sound Track Record 表紙


ケア・ベアーズ(以下「CB」)は、1981年にアメリカン・グリーティング社のElena Kucharikがグリーティング・カード用に書いた絵柄が始まりで、好評を受けてキャラクター化し、さらにケナー社がぬいぐるみを発売しで大人気となった。それぞれの熊は、色が違っていてへそのあたりに役割と人格を示すシンボルが付いている。彼らは普段は雲上の「Care A Lot」に住み、子供達の成長を見守っていて、問題を見つけるとかけつけて彼らを励まし、解決に導くという。1985年カナダのNelvana Productionが映画化の権利を獲得して、アニメーションを製作した。それは世界各地で大ヒットし、その後3本の続編が作られ、テレビシリーズにもなった。本作は日本では公開されなかったようであるが、続編以降の作品はディズニー・チャンネル等で放映されたり、DVDで発売されている。またぬいぐるみの販売も好調で、日本をイメージしたキャラクター「Sweet Sakura Bear」も作られたという。1980年代の絶頂期の後は人気が衰えたが、人々はCBのことを忘れておらず、1990年代の終わり頃、再びブームが起きてデザインのマイナー・チェンジを経ながら現在に至っている。キャロルは、1983年のアルバム「Speeding Time」C16に続くルウ・アドラーのプロデュースのもと、テーマソングと挿入歌の製作に携わっている。映画の内容は以下のとおり。

孤児院を経営するMr. Cherrywoodが、子供達に聞かせる物語りとして始まる。雲上のCare A Lotに住むCB、Friend BearとSecret Bearは地上で問題を抱える孤児KimとJasonを見つけ、雲でできた車で地上に降り、彼らを助けようとする。一方地上の遊園地では魔法使いの助手Nicholasが Evil Spiritの影響を受け、悪い魔法で人々から caring (相手を思いやること)を奪ってしまう。Friend BearとSecret Bearは、信じようとしないKimとJasonlを Care A Lotに連れてゆくが、Evil Spiritの攻撃を受けてその場所は大きな被害を受ける。Friend Bear、Secret BearとKim、Jasonは、ニコラスの所に行ってやめさせようとするが、思うように移動できず、雲上にあるジャングル「Forest Of Feelings」にたどり着く。彼らはそこで、Care Bear Cousinsと呼ばれるBrave Heart LionやPlayful Heart Monkey等に出会う。そこにもEvil Spiritが攻め寄せるが、皆で協力して撃退し、Nicholasのいる遊園地に向かう。Nicholasは強力な魔術で対抗するが、自分の過ちに気付いてEvil Spiritを封印し平和が訪れる。Care Bear Cousinは、CBの仲間となり、KimとJasonは新しい親を見つけてハッピーエンド。最後にNicholasは後にMr. Cherrywoodに、Kimは彼の奥さんになったことが明かされる(ちなみにNicholasはKimに近い年齢、Jasonはかなり年下という設定)。

映画を通しで一度観たが、最後まで観続けるのに難儀した。いかにも当時のアメリカ風アニメという感じで、ストーリーが単純で勧善懲悪がはっきりし過ぎていること、各キャラクターの動きが不自然であること、背景の絵に繊細さ・深みがないため、宮崎駿が監督した1984年の「風の谷のナウシカ」と比べると雲泥の差であることは誰が観ても明らか。観る人の想定年齢が違うからという意見があるかもしれないが、1988年の傑作「となりのトトロ」が年齢を問わず、誰でも楽しめる事を考えると、両国で、アニメという文化に対する根本的な違いがあると思う。しかし後にアメリカはそれを認めて、3Dという画期的な表現方法を駆使して克服することになる。

以上のとおり、アニメの出来としては散々な事を言ったが、本作品でフィーチャーされた音楽は、なかなか良かったと思う。1.「Care A Lot」は、ミッキー・ルーニー(1920-2014、子役時代にジュディ・ガーランドとのハリウッド映画の共演で人気を博し、1950年代は脇役として多くの映画に出演した人) によるMr. Cherrywoodのモノローグの後のオープニング・タイトルで始まる(レコードでも彼のセリフが入っている)。ロビー・コンドーのシンセサイザーとキャロルのピアノ(弾いているのはロビーかもしれない)と、本人の多重録音によるコーラスをバックにキャロルが歌い、そこには理想の住処「Care A Lot」の誠実な世界は語られる。エンディング・タイトルで流れる 3.「Care A Lot (Reprise)」も1.と同じ録音で、これもレコードに収められているが、イントロにモノローグがない(被っていない)点が異なる。

2.「Home Is In Your Heart」は、Care A Lot も、Forest Of Feeling、地球もみんな心の中では同じ故郷だと歌う、とても明るく前向きな曲。Kim、Care Bear、Playful Monkeyをキャロルと、ルイーズとシェリー・ゴフィンの二人の娘が担当(声色を使っているので、誰がどのパートを歌っているかは分からない)、Jasonを二男のLavi Larkeyが歌い、「Cool Hand Luke」 (1967 暴力脱獄)、「Godfather Part II」1974、「Alien」1979、「Green Mile」1999に脇役で出演したハリー・ディーン・スタントン(1926- )がBrave Heart Lionでゲスト出演している。女性3人は語りっぽい歌い方を含めてとても上手であるが、男性の子供は少し調子っぱずれで、彼は後にテキサス大学で博士号を取り、研究者・ビジネスマンとしてキャリアを積んでいる。本作での彼らの出演は歌のみで、映画のセリフは別の声優が担当している。キャロルの20代の二人の娘と10代の息子、そして次女シェリーの夫になるロビー・コンドウとの共演ということで、何ともいえない家族的な雰囲気に溢れている。キャロルのピアノとロビーのコンピューター打ち込みと思われるバック演奏や、コーラスも創造性に溢れたアレンジで、曲の良さと相まってとても良い出来に仕上がっている。

サウンド・トラック・レコードは、上記以外にジョン・セバスチャンによる3曲 (「Nobody Care Like A Bears」は、彼自身がラグタイム風のメロディーに乗せて歌う彼らしい曲であるが、他の2曲は登場人物が歌っていてそれほどでもない)と、映画の粗筋となる登場人物のセリフや効果音が収録されている。

キャロルの作品の中でも掘り出し物と言ってよい作品。