G30 Coast To Coast [Paul Shaffer] (1989) Capitol





Ronnie Bright, Dion Dimucci, Ectasy, The Fresh Prince, Ellie Greenwich, Carole King, Johnny Maestro, Jay Siegel, Paul Shaffer : Vocal
Matt Noble, Paul Shaffer : Keyboards
Larry Smith : Keyboards, Programs
Kevin Calhoun : Guitar, Programs
Stan Bronstein : Sax

Paul Shaffer, Larry Smith, Russell Simons : Producer

[CD]
1. When The Radio Is On [Matt Noble, Kevin Calhoun]
2. Radio/Reprise [Matt Noble, Kevin Calhoun]

[12" LP, Maxi-Single]
3. When The Radio Is On (Big City Beat Mix)
4. When The Radio Is On (Def & Dum Dub)
5. When The Radio Is On (GoGo-A-GoGo Instrumental)
6. When The Radio Is On (Acappela)
7. When The Radio Is On (The Single)

写真上: アルバム(CD)の表紙
写真下: マキシ・シングル(LP)の表紙

録音: New York, Los Angeles, July-August, December 1988

 
ポール・シャファー(1949- ) はカナダ・トロント出身。セッション・プレイヤーとして、TV番組、映画、コンサートおよび各種音楽イベントに出演した。特にデビッド・レターマン (1947- ) 司会のトークショウTV番組の音楽監督を1982年から2015年まで 30年以上務め、ウィル・リー (ベース)、アントン・フィッグ (ドラムス)、シド・マッギニス (ギター)などの強者を擁するThe World's Most Dangerous Band の音楽監督として、幅広いジャンルのゲスト・アーティストの伴奏を、譜面と短時間のリハーサルのみで生放送対応するという離れ業を行った人だ。またデビッドとの軽妙洒脱なトークは人気を博し、彼が番組を休んだ際には代役のホストを務めたこともあった。そんな彼が自己名義で発表した初めてのアルバムが本作で、長年のセッションワークで培った人脈がフルに生かされ、とても面白い内容となった。

キャロルが参加した冒頭の曲 1.「When The Radio Is On」はその面白さが最たる曲で、ニューヨークの音楽シーンを舞台に、往年のドゥワップと当時最新のヒップポップをミックスした超企画曲だ。ここでラップを歌うのは、当時一線で活躍していた人達で、最初に歌うエクスタシー(ジョン・フレッチャー、1964-2020) は、ヒップホップ・グループ、フーディーニのメンバーで、ラップのパイオニアと呼ばれている人。ポールが合間のサビを歌った後に登場するザ・フレッシュ・プリンスは、俳優として有名になる前のウィル・スミス(1968- ) がラッパーとして活動していた時の芸名。彼は1990年より俳優としてテレビ番組に出演して知名度を上げ、90年代後半に映画俳優として大成功を収めた。彼は大当たりの映画「Men In The Black」 1997の主題歌でラップを歌っている。そして後半のラップでは、何とポールが負けずにしっかり歌っている。

それに対しイントロとコーラス・パートを歌うのは、1950年代〜1960年代初めのドゥワップ・シンガー達だ。これが大変豪華な顔ぶれで、ロニー・ブライト(1938-2015) は、ザ・ヴァレンタインズ、ザ・コースターズのベース・ボーカリストだった人。セッション・ワークでは、ジョニー・シンバルの「Mr. Bass Man」1963 全米16位のベース声が超有名。ディオン・ディムーチ (1939- ) は、ディオン・アンド・ザ・ベルモンツで 「A Teenager In Love」1959 全米5位、「Runaround Sue」1961 全米1位などのヒット曲を出した。ジョニー・マエストロ(1939-2010) は、「16 Candles」1958 全米2位のザ・クレスツやブルックリン・ブルッジに在籍した人。「The Lions Sleeps Tonight」1961 全米1位でのファルセットが最高だったジェイ・シーゲル (1939- ) は、トーケンズのリードシンガー。エリー・グリーンウィッチ(1940-2009) は、ブリル・ビルディングの作曲家で、ジョン・バリーと組んで書いたザ・ロネッツの「Be My Baby」1963 全米2位、トミー・ジェイムスとザ・ションデルズの「Hanky Panky」 1966年1位、ディキシー・カップスの「Chapel Of Love」 1964年1位、ザ・シャングリラスの「Leader Of The Pack」1964年 全米1位が代表曲。自身の歌唱によるレコードも出している。冒頭のビーチボーイズを思わせる爽やかなコーラスでは、懐かしいファルセットとベース・ヴォイスが聞こえてくる。ラップのあとのコーラスで、ラジオから流れる音楽への愛情が繰り返し歌われる。そして後半でコーラスが女声のみ(エリーとキャロル)になる部分があり、キャロルの声をはっきり聞き分けることができる。同曲はシングルカットされ、全米89位を記録した。なお最後の曲 2.「Radio/Reprise」は1.のコーラス部分を編集して約1分間流したもの。

なお1989年のデビッド・レターマン・ショーでポールがこの曲を演奏する動画がYouTubeに載っていて、そこには録音時に歌った人達のほとんどが集まっている。ポールが彼らを一人づつ紹介するのが大変な見ものであるが、残念ながらキャロルはツアーに出ているとのことで参加できず、代わりに女優のキャロル・ケインが、そしてエクスタシー(ジョン・フレッチャー)の代わりにステッツァソニックのダディ・オーが歌っている。生き生きした演奏は最高で、スタジオ録音を凌ぐと言ってもいい出来だ。特にザ・フレッシュ・プリンス(ウィル・スミス)のラップ、ダンスがカッコイイ!なおキャロル・ケインは帽子とサングラスで顔を隠しているが、当日の昼に同曲シングル発売のためのプロモーション・ビデオを撮影したらしく(これもYouTubeで観ることができる。出演者達の服装が皆同じなので間違いない)、その際にキャロルらしく見えるように変装したためと思われる。

また、同曲につき別ミックスが収められた12インチLP (マキシ・シングル)が発売された。そこにはシングルバージョンの他、異なるミックスが3曲、アカペラが1曲収められた。特に6.のアカペラ・バージョンは、曲から楽器演奏を取り除いてラップとコーラスのみ残したもので、音楽の中に埋もれてよく聞こえなかったコーラスパートがばっちり聴ける珍品。


音楽をこよなく愛する者にとって、胸がワクワクする逸品です。


以下、その他の曲について、簡単に説明する。

1. When The Radio Is On [M. Noble, K. Calhoun]
2. One Cup Of Coffee [R. Carlos, E. Carlos, E. Van Muiswinkel]
3. What Is Soul [D. Covey, S. Cropper, P. Shaffer]
4. Coast To Coast [H.W. Casey, P. Shaffer]
5. Metal Beach [B. Wilson, P. Shaffer]
6. Room With A View [B. Vera, L. Fulson]
7. Wang Dang Doodle [Willie Dixon]
8. Louie Louie [Richard Berry]
9. Tear It On Down [N. Ashford, V. Simpson]
10. Late Night [P. Shaffer]
11. Radio/Reprise [M. Noble, K. Calhoun]

2.「One Cup Of Coffee」は、ニューオリンズ音楽界の重鎮アラン・トゥーサンがアレンジとピアノを担当、ポールのボーカルはなかなか味がある。3.「What Is Soul」は、ドン・コヴェイ(1936-2015)、ボビー・ウーマック(1944-2014)、ベン E. キング(1938-2015)、ウィルソン・ピケット(1941-2006) というソウル界のリジェンド達が入れ替わり歌うコテコテのR&B。スティーブ・クロッパー(ギター)とドナルド・ダック・ダン(ベース)の鉄壁リズムセクションも頑張っている。4.「Coast To Coast」は、K.C.アンド・サンシャイン・バンドのK.C.ことH.W. ケーシー (1951- ) とポールが歌うディスコ・ナンバー。 フリーダム・ウィリアムス(1966- )がラップを入れている。5.「Metal Beach」は、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソン(1942- ) との共演。歌詞無しのコーラスが入るインスト曲で、ディック・デイル(1937-2019)、ジョー・サトリアーニ (1956- )、ジョー・ウォルシュ(1947- )によるスペーシーなギターソロが入る。

6.「Room With A View」は、1988年5月28日The Vic Theater, Chicagoにおける The World's Most Dangerous Bandのライブ録音。曲はジョニーアダムス 1988年がオリジナルで、ここではバディー・ガイ (1936- ) のギター、シュガー・ブルー (1949- ) のハーモニカがフィーチャーされ、エリック・バードン (1941- ) が歌っている。ウィリー・ディクソンのクラシック 7.「Wang Dang Doodle」も同じライブからで、ココ・テイラー (1928-2009) が歌っている。リチャード・ベリー・アンド・ザ・ファラオズ 1957年がオリジナルで、1963年にザ・キングスメンで大ヒット(全米2位)した 8.「Louie Louie」は、プリンスのバンド、ザ・リヴォルーションのギタリスト、レヴィ・シーサー(1961- ) とドラマーのボビー Z.を招いて、プリンスエスクなサウンドに仕上げているのが面白い。9.「Tear It On Down」はニコラス・アッシュフォード、ヴァレリー・シンプソン夫妻作曲、マーヴィン・ゲイ1968年の作品で、ここではジョージ・クリントン (1941- ) のファンク・アレンジにより作者のヴァレリー・シンプソン (1946- ) が歌っている。10.「Late Night」は、トークショウ「Late Night With David Letterman」のテーマ曲で、ピリっとした感じのインスト曲。ここではウィル・リー(ベース)、アントン・フィッグ(ドラムス)の他に、ハイラム・ブロック (ギター)、デビッド・サンボーン (Sax) という、The World's Most Dangerous Bandの初代メンバーが参加している。

すべての曲に何らかの趣向が凝らされていて、音楽好きの人にとって面白さに満ちたアルバム。現在は忘れ去られた感があるが、誠にもったいないね !


[2023年8月作成]

 
G31 Life's A Lesson [Ben Sidran] (1993) Go Jazz
 




Ben Sidran: Vocal, Producer
Carole King: Vocal
Mike Mainieri: Vibraphone
Gil Goldstein: Piano

1. Life's A Lesson [Frank Rosolino, Ben Sidran]


写真上: アルバム「Life's A Lesson」1993 表紙
写真下: アルバム「The Cat And The Hat」1979 表紙 

ベン・シドラン(1943- )はシカゴ生まれのキーボード奏者、シンガー、作曲家、プロデューサー、音楽文筆家。若き日のスティーブ・ミラーやボズ・スキャッグス等と活動後、セッション・ミュージシャンを経て1971年よりウィスコンシン州マディソンを拠点として、ジャズに係るラジオやテレビ番組のホスト、「Go Jazz」レーベルの立ち上げとアルバム制作、ジャズ関連の本やインタビュー集の執筆、大学での音楽講座など幅広い活動を行っている。

本アルバムは自己の民族的ルーツであるユダヤの音楽をジャズを媒体として現代的に表現した作品で、曲の大半はベンと女性シンガーによるヘブライ語の歌で、それに多くの著名ジャズ・ミュージシャンが参加している。すべてがこのような歌だと、あまりに地味で売れないと思ったのか、例外的にジャズ・ボーカルの曲を入れていて、それにキャロルがゲスト参加している。

ベンとキャロルのデュエットによる「Life's A Lesson」は、ジャズ・トロンボーン奏者フランク・ロソリーノ(1926-1978)が書いたジャズ・ワルツ「Blue Daniel」にベンが歌詞を付けたもの。フランクはデトロイト生まれで、ビッグバンドでの演奏経験後、ロサンゼルスに移住してそこでセッションマンとして活躍した人。「Blue Daniel」は1959年の作品で、シェリー・マン & ヒズ・メンによるライブ盤「At The Black Hawk Vol.1」1959が初出。翌年のキャノンボール・アダレイ・クインテットのライブ盤「At The Lighthouse」にも収録されている。しかし彼の私生活はトラブルに見舞われる。演奏旅行などによるすれ違い生活などの原因により奥様が自殺を図り、その後二人の子供を育てていたが、彼も精神を病んで、就寝中の子供を拳銃で撃ち(一人は死亡、もう一人は助かったが盲目となった)、その直後に自殺してしまう。そのニュースを知って衝撃を受けたベンが歌詞を書いたという背景を知ると、単にシニカルだなと思っていた歌が例えようもなく悲痛なものであることがわかった。その歌詞は以下のとおり。

Ben:   Life’s a lesson
     You can fail it
     You can set your spirit free
     Or jail it
     But setting it free
     Is no guarantee it’s gonna fly
     When you sail it

     The object is to ride it
     But setting is free
     While you're sitting astride it
     Isn't easy

Carole: You can learn a lot by going crazy
     You can fail it
     You can set your spirit free
     Or jail it
     But setting it free
     Is no guarantee it’s gonna fly
     When you sail it

Ben:   And if you feel like you're in prison

Carole: And no one is coming to talk or to listen

Ben:   Take it easy
     Know that no one ever has it easy

Carole: No one ever learns to fly by freezing

Ben:   And life's a lesson
     You can pass or fail


Carole: And if you feel like you're in prison

Ben:   And no one is coming to talk or to listen

Carole: Take it easy

Ben:   Know that no one ever has it easy, girl
     Take it easy

Carole: No one ever learns to fly by freezing, boy

Ben:   Life's a lesson
     You can pass or fail


ちなみに本曲はフランクの死後まもなく発表されたベンのアルバム「The Cat And The Hat」1979に「Blue Daniel」の曲名で収録された。そして本アルバムに於ける再録音で「Life's A Lesson」というタイトルに変更された。ヴィブラフォンの名手マイク・マイニエリとギル・ゴールドスタインのピアノのみというシンプルな伴奏は完全にジャズの乗りで、ベンはヘタウマな感じで飄々と歌い、キャロルはいつものお茶目な声で応じる。このデュエット曲の制作にあたり、相方にジャズ・ボーカリストでないキャロルを選んだ理由は、@キャロルがベンのボーカル・スタイルに合っていたこと、Aキャロルがユダヤ人であること、B彼女の参加による話題性と気分転換を狙った、などの複合的なものと思われる。キャロルは難しいジャズの乗りを見事こなしていて、しかも説得力に満ちているのは、彼女がこの曲に大いに共感していたからだろう。

他の曲について。前述のとおりベンと女性シンガーによりヘブライ語で歌われていて、その意味を知る術もないがユダヤ音楽独特の音階による音楽には聴くものの魂を揺さぶる不思議な魅力がある。曲毎に歌に寄り添うオブリガートやソロを付けているのは、ユダヤのルーツを持つジャズ・ミュージシャン達で、ジョン・カーン(ギター)、ジョシュ・レッドマン、ボブ・ミンツァー、デビッド。リーブマン(サックス)、ランディー・ブレッカー、ルー・ソルフ(トランペット)、エディー・ダニエルズ(クラリネット)、ジェレミー・スティッグ(フルート)、ハワード・レヴィ(ハーモニカ)等、錚々たるメンバーだ。曲としてはシナゴーク(ユダヤ教会)で歌われる宗教歌のみでなく、ホロコーストの貨車に閉じ込められて死が待っている収容所に向かうユダヤ人達が歌ったという「Ani Ma'amin」や、新年を祝う歌「B'Rosh Hashana」も含まれていて、底知れない深みをもって迫ってくる。そしてそれらの音楽が持つ本質的な美しさを生かすべく、文化的に接点がない我々に感動を覚えさせるだけのアレンジを施したベンの才能および演奏に参加したミュージシャン達に敬意を表したい。

キャロルの参加作品の中で非常に特異なものでありますが、名曲と思います。

[2024年8月作成]


 
G32 I'll Do Anything [Original Sound Track] (1994) Varese Sarabande


Whittni Wright : Vocal
Rudy Guess : Guitar
Carole King : Piano
John Humphrey : Bass
Bobby Summerfield : Drum Programmer
Scottie Haskell, Kaleb Henley, Ryan Hill, Melisa Kyser, Aaron Metchik, Eve Reinhardt : Back Vocal

Carole King, Rudy Guess : Producer

1. You Are The Best [Carole King]


1994年ジェームス L. ブルックス監督の映画 「I'll Do Anything」(日本劇場未公開、邦題「ハリウッド・トラブル」はDVD発売時につけられたもの)のオリジナル・サウンドトラック。全5曲中残りの4曲は映画音楽の作曲家ハンス・ジマーによるインストルメンタルで、「Matt」、「Burke」、「Cathy」、「Jeannie」という、映画の主要人物の名前がタイトルになっている。

1.「You Are The Best」で歌っているのは、映画で主役を務める子役のウィットニー・ライト。彼女は本映画がデビュー作で好評を博したが、翌1995年ジャン・クロード・ヴァンダム主演のアクション映画「Sudden Death」に娘役で出演した後、業界から姿を消してしまう。その後の消息は詳細不明だが、30代になった彼女の写真がインターネットにあり、その理知的な容貌から別の分野で元気にしていると思われる。映画の中で、主人公の娘が気落ちした父親を励ますために歌うシーンで本曲が使われ、それまで低調だった物語の雰囲気や父娘の関係が、以降明るく上向きに転ずる契機になるという重要な場面だ。ウィットニーが少しこまっしゃくれた声で歌い、ブリッジ部分はラップ調の語りが入る。ここでの彼女の歌は別録音(サウンド・トラックの録音はエンディング・クレジットで流れる)。キャロルはピアノで参加。バックでギターを弾くルディ・ゲス (1953-2010)は、アルバム 「City Street」C17 1989から彼が亡くなるまでずっと、彼女の音楽的右腕、友人となった。ベーシスト、ドラムのプログラムをした人もキャロルのバンドのメンバー、エンジニアだ。


[映画について]
演技は上手いが売れない俳優マット(ニック・ノルティ)は、離婚した妻(トレーシー・ウルマン、1984年に「They Don't Know」の全米8位のヒットを飛ばした女優)が育てた6歳の娘ジニー(ウィットニー・ライト)を引き取ることになる。小生意気で最初は打ち解けなかった彼女は次第に心を開く。アクの強いプロデューサー、バーク(アルバート・ブルックス)は手掛けた映画が試写会で不評を買い、作り直しを余儀なくされ、部下のスタッフの女性(ジュリー・カヴナー、シンプソンズというアニメーションで、奥さんであるマージの声で有名)に慰められる。マットは、仲の良いキャスティング、脚本審査担当のキャシー(ジョーイ・リチャードソン、ヴァネッサ・レッドグレイブの娘)から誘われ、オーディションを受けるが落ちてしまう。一方ジニーは父のオーディション現場に同行し、偶然スタッフの眼にとまって子供番組のオーディションを受け、親譲りの才能を発揮してテレビ出演することになる。マットとキャシーは好き合うが微妙な関係。一方バークは部下のスタッフと紆余曲折の交際を続ける。その後はいろいろあって最後はハッピーエンドになる。映画の役の採用面接、オーディション、脚本の審査、キャスティング、試写会、子供番組撮影場面といったハリウッドの内幕を描いたもので、劇中に「女郎蜘蛛のキス」、「プラトーン」、「オペラハット (原題「Mr. Deeds Goes To Town」) などの実在の映画名、オリバー・ストーン監督や生意気なスタッフがこき下ろす脇役の名優達の名前が出てきて面白い。さらにロージー・オドネル(後に特にテレビで大成功する人で、ここではメイクアップ担当者の役で出演)やアン・ヘッシュ(後1998年に「Six Days Seven Nights」でハリソン・フォードと共演、2022年に自動車事故で死去。映画企画会社のスタッフの一人として出演しているが、ここでは髪を黒くしているので、注意深く見ないと彼女とわからない)といった、当時無名だった人達が端役で出ているのも興味深い。

観たところ、タフガイがイメージのニック・ノルティが父親として繊細で温和な表情を見せたり、子役の演技の天才的な凄さ、裏幕ものストーリーや気の利いたせりふ等、そこそこ面白い出来。特に最後のシーンは素晴らしいと思うが、アメリカでの興行成績は散々で、製作費4千万ドルの4分の1しか回収できず、失敗作とされた(その結果日本では劇場未公開となった)。キャロルの話から脱線するが、これには大変深く面白い裏話があるので、詳しく述べたい。


[映画製作上のトラブルについて]
監督のジェームス L. ブルックス (1940- )は、映画「Terms Of Endearment (愛と追憶の日々)」1983、「Broadcast News」1987などの監督・プロデュースで大成功を収め、当時絶大な権力を誇っていた。そんな彼がミュージカルに挑戦したのが本作だった。曲を一流のアーティストに依頼し、プリンスが8曲、キャロル・キング、シンニード・オコナーが各1曲を提供した。上述の芸達者な役者を揃え製作に取り掛かったが、試写会でミュージカル部分が大不評を買い、その結果撮り直しによりキャロルの1.「You Are The Best」以外はすべてカットされ、父娘のドラマに改変された。正にこの映画を地で行く羽目になったわけだ。そんなごたごたがあったため、批評は散々で客も入らず失敗作とされた。通常このような作品を撮った監督は再起不能になるが、彼はトム・クルーズの「Jerry Maguire (ザ・エージェント)」1996、ジャック・ニコルソンの「As Good As It Gets (恋愛小説家)」1997年の成功で息を吹き返す。

ミュージカル失敗の原因として、@監督にミュージカルの素養・知識がなかった A出演者の歌・踊りが下手でミュージカル向きでなかった B曲がミュージカル向きでなかった C権力があった監督に物申す人がいなかった、などあげられるが、結果キャロルの曲のみが生き残って、プリンスとシンニードの曲は没になり未発表となってしまった。その結果映画が改変される前に公開された短い予告編の中に写る、僅かなミュージカル部分のみが公開シーンとなった(「Breaking All Rules」と述べるアナウンスと刺激的であるが不快感が残る場面の抽出は、この映画のその後の運命を暗示しているようだ)。ミュージカル版で撮影されたプリンスの曲の一部は、その後彼の手によって別途録音されたり、チャカ・カーン等他アーティストによって歌われた。カットされたミュージカル部分 「Musical Cut」およびプリンスのデモは現存し、故プリンスの遺産管理財団の差し止めにより未公開のままになっているが、たまに海賊盤・非正規配信で出回ることがある。

私はそのうち、トレイシー・ウルマンが歌う「Don't Talk 2 Strangers」 (別れのシーンで母が娘に言って聞かせる)、アルバート・ブルックスの「I'll Do Anything」(試写会に参加する観客の前で歌い踊る)、ニック・ノルティとウィットニー・ライトの「Be My Mirror」 (父が娘に与える演技のアドバイス)、子供番組出演者達が歌うフィナーレの「I'll Do Anything」 をタイム・カウンター付の画質の悪い動画で観ることができたが、そんなに悪い出来とは思わなかった。それは本稿執筆時の2023年という、異端なものを多様性としてポジティブに解することができる現在の視点で捉えたものであり、1994年という画一的な価値観の時代では無理だったと思われる。混沌としたハリウッド・ビジネスの内幕をミュージカルで表現しようとした監督の狙いは、時代の先を行き過ぎていたのではないかと思う。

今となっては忘れ去られた作品であるが、今こそ、カットしたミュージカル部分を復活させた「ディレクターズ・カット」を出してもいいのではと思う。残念ながらプリンスが故人で、本人の意思確認ができないことが障害になるかな?


映画の事は別として、子役が歌いキャロル達が伴奏するトラックとして、知名度はないが、とても愛らしい1曲。

[2023年12月作成]

G33 Everybody Is A Star [Sugar Beats] (1995) Sugar Beats


Sherry Condor : Vocal, Producer
Carole King : Vocal
Larry Saltzman : Acoustic Guitar
Russell Velasquez : All Other Instruments

Robbie Condor : Arranger, Producer

4. You've Got A Friend [Carole King]


キャロルとジェリーの2女、シェリー・ゴフィンは1962年生まれで、長女のルイーズの2歳年下だ。1968年ロサンゼンルスに移住し、キャロル、2番目の夫チャールズ・ラーキーとローレル・キャニオンに住む。1977年キャロル、3番目の夫リック・エヴァースとともにアイダホに移るが、1978年のリックの死後は母親と離れてロスで生活。キャロルのアルバムにコーラスで参加したり、ミュージカル等に出演していたが、1983年にキーボード奏者、作曲家、編曲家のロビー・コンドウと結婚し、以降シェリー・コンドウと名乗る。出産・子育てをしながら音楽活動を続けていたようで、1994年のキャロルのCD、ビデオ「In Concert」C19 E4 にバック・ボーカルで参加している。

ルイーズとは異なり、自己名義でレコードを作ることはなかった彼女が、子供達に聞かせる良質な音楽がないことを動機としてシュガー・ビーツ・レーベルを興し、夫の協力を得て1993年に子供向けの音楽CDを発表した。本作はその2作目で、キャロルが自作曲 4.「You've Got A Friend」でゲスト参加した。伴奏はアコースティック・ギターを除き、共同プロデューサーのラッセル・ヴェラスケス(俳優、作曲家で、主にセサミ・ストリートなどの番組やワンピースなどのビデオ・ゲームの世界で活躍している人)ひとり(恐らく打ち込み)によるもので、少し安っぽい感じがするけど、この手のアルバムの予算を考慮すると仕方がないかな?最初はシェリーが歌い、セカンド・ヴァースからキャロルに代わり、シェリーはハーモニー・ボーカルに回る。ブリッジはシェリー、キャロルの順で最後はキャロルとシェリーの掛け合いで終わる。

母娘の共演というお宝音源。

4.「You've Got A Friend」なんだけど、他の曲と異なり(最後の曲は例外)子供達によるコーラスが入っていない点で、本作の中では異質の存在であることは確か。同レーベルの存在を世に広めてもらうために著名な母親に支援してもらった形になるが、シュガー・ビーツの本質である昔のヒット曲を子供向けにカバーした他の曲が断然面白い。 シェリー、ラッセル、女の子のボーカルと子供達によるコーラスの上手さ・愛らしさ、そしてロビー・コンドウとセッション・ミュージシャン達による生演奏と打ち込みの2通りの伴奏により、総じて質の高い音楽に仕上がった。その点で、従来のチープな作りが多い子供向け音楽とは一線を画するものになっている。


1. The Lion Sleeps Tonight [Weiss, Peretti, Creatore] ☆
2. Everybody Is A Star [Sylvester Stewart] ☆〇
3. Rockin' Pneumonia And The Boogie Woogie Flu' [John Vincent, Huey "Blues" Smith] 〇
4. You've Got A Friend [Carole King] ☆
5. Dizzy [Tommy Roe, Freddie Weller]
6. Cool Jerk [Donald Storball] 〇
7. Loves Me Like A Rock [Paul Simon] ☆
8. A Little Bit O' Soul [John Carter, Ken Lewis] 〇
9. (I Maintain) Hope For The Future [Heidi Berg] ☆
10. I Can't Help Myself (Sugar Pie, Honey Bunch) [Brian Holland, Lamont Dozier]
11. Ob-La-Di Ob-La-Da [John Lennon, Paul McCartney] 〇
12. Twisting The Night Away [Sam Cooke] ☆
13. I Saw Her Standing There [John Lennon, Paul McCartney] 〇
14. Na Na Hey Hey (Kiss Her Goodbye) [Paul Leka, Gary De Carlo] ☆〇
15. Give Your Love [Sherry Goffin] ☆

☆ シェリー・コンドウ : リードボーカル
〇 ラッセル・ヴェラスケス : リードボーカル


1.「The Lion Sleeps Tonight」は白人のコーラス・グループ、ザ・トーケンズ1961年の全米1位のヒット。アフリカの曲をもとに新しい歌詞をつけたもので、ファルセット・ヴォイスが印象的な曲だったが、 ここではシェリーが元気いっぱいの地声で歌う。コーラス隊の一人ケイティー・マーラは、後にケイト・マーラ (1983- ) の名前で女優として大成する。2015年に彼女がトークショー「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」に出演した際に、向いの家に住んでいたキャロル・キングの娘が制作したアルバムの子供コーラスで5年間歌ったと語っている。2.「Everybody Is A Star」はスライ・アンド・ファミリー・ストーン1969年の曲で、シングル「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Again)」のB面だったが、両面全米1位とみなされた。ここではシェリーとラッセルの他に二人の子供が交替で歌っている。

3.「Rockin' Pneumonia And The Boogie Woogie Flu'」は、ニューオリンズのヒューイ・"ピアノ”・スミス1957年全米52位のヒット曲。ラッセルが陽気に明るく歌っている。間奏では1987年のエアロスミスのカバーにあるようなヘビー・メタル調のギターソロが飛び出し楽しい。5.「Dizzy」は、トミー・ロウ1969年全米1位の大ヒット曲。ここではヴィッキー・グロスという女の子が歌っている。6.「Cool Jerk」はザ・キャピトルズ1966年全米7位がオリジナルのR&B。バック・コーラスの一人、ディロン・コンドウはロビーとシェリー夫妻の息子で、現在はギタリストとして活躍中。ポール・サイモン1973年全米2位の 7.「Loves Me Like A Rock」では、シェリーの歌と、子供たちによるディキシー・ハミングバーズがやっていたコーラスの愛らしさに思わずにっこりしてしまう。8.「A Little Bit O' Soul」は、イギリスのガレージ・バンド、ザ・リトル・ダーリン1965年がオリジナルで、ザ・ミュージック・エクスプロージョン1967 が全米2位のヒットとなった。9.「(I Maintain) Hope For The Future」は本作オリジナル。作者のハイディ・バーグは映画、テレビ、CMなどで活躍するシンガー・アンド・ソングライターで、セサミ・ストリートでの仕事もある人。10. 「I Can't Help Myself (Sugar Pie, Honey Bunch)」は、フォー・トップス1965 全米1曲の名曲。モータウン・ソウルの歌唱とは異なる子供による可愛い歌唱だ。11.「Ob-La-Di Ob-La-Da」はご存じザ・ビートルズ 1969年の作品。日本でヒットしたが、調べたら意外にも、イギリスやアメリカでは同時期にシングルカットされず、アメリカでヒットしたのは解散後の1976年 全米49位だった。12.「Twistin' The Night Away」はサム・クックによる 1969年 全米9位。13.「I Saw Her Standing There」はザ・ビートルズの初期 1964年全米14位。14.「Na Na Hey Hey (Kiss Her Goodbye) 」はバブルガム・ポップ、スティーム1969年全米1位の大ヒットで、ここではヒップ・ポップ調のアレンジで間奏でラップが入るのが面白い。

最後の曲15.「Give Your Love」は他と毛色が異なっていて、シェリーのオリジナル。スタジオ・ミュージシャンを集めてきちっと録音している。真剣で真面目なシンガー・アンド・ソングライターの作品といった感じで、曲、歌唱いずれも良い出来だと思う。

シュガー・ビーツのカバー作品は、1993年〜2008年の間に5〜10作品が制作され、それらは配信サービスで聴くことができる。他のアルバムでも、シェリーと女の子が歌うマーヴィン・ゲイとタミー・テレルの「Ain't No Mountain High Enough」1967 のカバーなど、とても面白い曲が一杯あるよ。

1960年代〜1970年代のヒット曲から、R&B、ソウル、ブリティッシュ、バブルガム、ポップスとジャンルにこだわらない選曲が飛んでいて、ともすると散漫な感じに陥るリスクがあるところを、バックコーラスのすべてとリードボーカルの一部を子供達にさせることで一貫性を保ち、かつ同世代が歌うことで聴き手の子供達の共有意識を高める効果を上げている。生き生きとした演奏、歌唱は単なるカバーに終わらない魅力があり、本作はプロデュース、アレンジ、子供達の歌唱力の賜物といえる。

昔の埋もれた曲を再認識または発見するという面からも、とても楽しく面白いアルバムだ。


 
   
   
G36 Wall Of Smiles (Torre de Marfil) [Soraya] (1997) Island










Soraya : Guitar, Vocal, Back Vocal
Carole King : Back Vocal
Rod Argent : Piano, Hammond Organ
Peter Van Hooke : Drums, Percussion
Malcom Messiter : Oboe

3. Wall Of Smiles [Soraya, Carole King, Maia Sharp] 英語版
19. Torre De Marfil [Soraya, Carole King, Maia Sharp] スペイン語版



写真上: English Version (日本発売)の表紙
写真上: English Version (欧州発売)の表紙
写真下: Spanish Versionの表紙
ソラヤ(本名 Soraya Raquel Lamilla Cuevas 1969-2006、「Soraya」は「プレアデス星団」 の意味)は、アメリカ・ニュージャージー州生まれで、両親はコロンビアからの移住者だった。幼い頃から音楽に興味を持ち、ギターやバイオリンを弾き、高校時代から曲を書き始めた。才能を認められてレコード会社と契約し、1994年に出したファースト・アルバムは英語版とスペイン語版の同時リリースだった。好評を受けて制作されたセカンド・アルバムが本作「Wall Of Smiles/Torre de Marfil」1997で、これも英語版、スペイン語版の2本建て。

キャロル・キングはそんな彼女の憧れの人だったそうで、日本盤CDの解説書によると、フランスの片田舎で二人が出会ったことで共作が実現したとのこと。1.「Wall Of Smiles」は、外面と内面の葛藤と描いた曲で、アルバムの他の曲とメロディー・ラインが異なっていて、キャロルの創意が入っていることは確か。彼女の声には透明感があり、中音域から高音域に移る際の声の裏返りの美しさが際立っている(シャキーラもこの手の裏声を使っていて、これはコロンビアの歌手、ラテン歌手の特技か?)。バック・ボーカルはコーラス部分で入るが、ソラヤ自身も一緒に歌っているため、キャロルの声はそれほど目立たない。なお日本盤にはボーナス・トラックとして同曲のアコースティック・バージョンが収められているが、ミキシングによりピアノ、オーボエ以外の楽器を取り除き、アコースティック・ギターを加えた仕上がりになっていて、そこにはバック・ボーカルが入っていないので、キャロルは不参加。

同曲のスペイン語バージョン 19.「Torre De Marfil」は「象牙の塔」という意味で、歌詞の内容は大体同じ。コーラス部分の「いつもこうね そして私は粉々に崩れる 私の笑顔の壁の後ろで」という英語の歌詞は、スペイン語では「私の笑顔の後ろで 粉々に崩れる私の象牙の塔」となり、それがタイトルの由来になっている。バック・ボーカルは英語版と同じような感じなので、キャロルも頑張ってスペイン語で歌っているんだろう。以前にキャロルがスペイン語で歌う 「Crazon」(1973年のアルバム「Fantasy」C7収録)という曲もあったしね。

不思議な魅力があり、聴き終わった後もメロディーが頭の中に長く残り続ける曲。


アルバムに収録された他の曲について。

[English Version]
1. So Far Away [Soraya]
2. Speak Of Pain [Soraya]
3. Wall Of Smiles [Soraya, Carole King, Maia Sharp]
4. If I Lose You [Soraya]
5. Paris, Cali, Milan [Soraya]
6. Manhattan In The Sand [Soraya]
7. Crossroads [Soraya]
8. Cosa en la Vida [Soraya]
9. Sweet Love [Soraya]
10. Bottom Out [Soraya, Mark Hudson, Armand Sabal-Lecco, Greg Wells]

11. Suddenly [Soraya] (Bonus Track)
12. Oropel [Jorge Villamil] (Bonus Track) スペイン語  スペイン語版 24と同じ
13. J'Aimerais Tant [Soraya, French Adp: Jean Fauque] (Bonus Track) フランス語
14. Wall Of Smiles (Acoustic) [Soraya, Carole King, Maia Sharp] (Bonus Track)

[Spanish Version]
15. Si te Vas [Soraya]  4. If I Lose You のスペイン語版
16. El Cruce [Soraya]  7. Crossroads のスペイン語版
17. Lejos de aqui [Soraya]  1. So Far Away のスペイン語版
18. Paris, Cali, Milan [Soraya]  5. Paris, Cali, Milan のスペイン語版
19. Torre de Marfil [Soraya, Carole King, Maia Sharp]  3. Wall Of Smiles のスペイン語版
20. Es un Amor. [Soraya]
21. Sera el final [Soraya, Mark Hudson, Armand Sabal-Lecco, Greg Wells] 10. Bottom Out のスペイン語版
22. Dolce Amor [Soraya]  9. Sweet Love のスペイン語版
23. Mi Dolor [Soraya]  2. Speak Of Painのスペイン語版
23. Cosa en la Vida [Soraya]  8. Cosa en la Vida のスペイン語版
24. Oropel [Jorge Villamil]  英語版 12と同じ録音


彼女の曲は全米100位以内にランクインすることはなかったが、アダルト・ポップ、ラテン・ポップ部門で評価が高く、特に後者ではグラミー賞を受賞する等、大変な人気を誇った。ただし、サウンド的にはラテン臭さはなく、ロックとアコースティックを使い分ける当時の先進的なシンガー・アンド・ソングライターの音作りだ。ただしスペイン語バージョンのみに収められた20.「Es un Amor」のみ、スペインの多弦楽器バンドゥリアを使ったと思われる伴奏と当地の歌謡曲を思わせるメロディーとなっている。この曲をスペイン語バージョンに含めた代わりに、英語バージョンの6.「Manhattan In The Sand」がはずされた。なお英語バージョンの11〜14はボーナス・トラックで、11.「Suddenly」はファーストアルバム「On Night Like This」1996収録の曲。13.「J'Aimerais Tant」は、1.「So Far Away」、17.「Lejos de aqui」のフランス語ヴァージョンだ。

彼女は他のアーティストへのゲスト参加を積極的にこなした。坂本龍一のアルバム「Smoochy」1995に収録された「Tango」のスペイン語バージョン(オリジナルは日本語で彼自身の歌唱)を歌っていて、それは「Version Castellano」として一部のCDにボーナス・トラックとして収録されている。2000年のサードアルバム発売後、31歳の時にステージ3の乳がんと診断され、闘病しながら音楽活動を続け、2枚のアルバムを出したが、2006年に37歳の若さで亡くなった。母、祖母、母方の叔母も乳がんで亡くなったそうで、生前は乳がんに関する教育、注意喚起、支援運動にも力を注ぎ、「No One Else/Por ser quien soy」という病魔と戦う決意を歌った曲も書いている。