Fit For A King (1971)  音源




Carole King : Vocal, Piano
Danny Kooch : E. Guitar (5,6)
Ralph Schuckett : Piano (6)
Charles Larkey : Bass (11,12)

[Side 1]
1. I Feel The Earth Move
2. Whispering Wind (Song Of Long Ago)
3. Child Of Mine [Carole King, Gerry Goffin]
4. Beautiful
5. It's Too Late [Carole King, Toni Stern]
6. Smackwater Jack

[Side 2]
7. So Far Away
8. Will You Love Me Tomorrow [Carole King, Gerry Goffin]
9. Some Kind Of Wonderful [Carole King, Gerry Goffin]
10. Up On The Roof [Carole King, Gerry Goffin]
11. You've Got A Friend
12. Natural Woman [Carole King, Gerry Goffin]

Recorded at The Troubadour, Los Angeles, May 1971


今となっては、1970年代前半のキャロルの弾き語りライブの映像・音源はいろいろ出回っているが、1970〜2000年代前半までは、これしかなかったのです。そういう意味で本音源は、とても貴重なものでした。オーディエンス録音で、現在の基準では決して良い音とはいえないが、エコー少なめの自然な音で、厚みというか暖かみがあるため聴きやすく、コンサートの雰囲気が伝わってきて全然気にならない。「produced by a.d.louler, all selections yours for the asking music inc., packaged by human hands inc. distributed by sound underground new york new york」という人を食ったクレジット表示とピンク色の生地を背景にキャロルの写真を配したジャケット・デザインは独特の雰囲気があり、あらゆる面でブートレッグの傑作といえよう。本音源については、後に多くのCDが発売されたが、それらを聴くとレコード独特の針音が入っており、すべてオリジナルのレコードを再生してCDに焼きなおしたものという。

トルバドールはロスアンゼンルスにあるナイトクラブ、ライブハイスで、1957年開店。2007年に50周年を記念して、様々なイベントが開催されたが、中でもジェイムス・テイラーとキャロル・キングのリユニオン・コンサート(2010年にCD・DVDで発売 E6)が最大の目玉となり、2011年にはこの二人をメインとして当時の西海岸の音楽を描いたドキュメンタリー番組 「Troubadours」 も制作された。1970年11月24〜29日のジャイムスのコンサートで、バンドのピアノ奏者で前座を担当したキャロルが歌った「You've Got A Friend」を聴いたジェイムスがこの曲に惚れ込み、ギターにアレンジしたところ、キャロルから「貴方にあげるわ」といわれ、LP「Mud Slide Slim」に収録。シングルカットされて 1971年全米1位のヒットとなったエピソードは有名。本音源は、LP「Tapestry」が発売された1971年2月から間もない同年5月のコンサートで、同LPおよび「It's Too Late」のシングルで大ブレイクする直前のものだ。当時彼女はロスアンゼルス郊外のローレル・キャニオンに住んでいて、地元の人々が集まった親しみのあるオーディエンスのなかで、リラックスした雰囲気で演奏しており、翌6月のニューヨーク、カーネギー・ホールでの公演 C4のようなピリピリとした緊張感はない。

最初の曲 1.「I Feel The Earth Move」から、キャロルの気取らない歌声にぞっこんまいってしまう。聴く人によっては、レコードに比べて「下手だ」という人もいるだろうが、それは好みの問題。ジャズやR&Bにも通じる自然な崩しを入れたカジュアルな歌い方が何ともいえない良い感じを出しているのだ。そして彼女のピアノの力強いピアノ伴奏が最高!曲が終わるとオーディエンスは暖かな大歓声で応える。「新曲です」と言って歌う 2.「Whispering Wind」は、3作目の「Music」1971 C5に収められる曲で、本作が作られた当時は曲名が分っていなかったため、クレジットでは歌詞の一節から「Whispering Wind」と表示されている。「ジェリー・ゴフィンと書いた曲のなかでは新しい曲です」と紹介される 3.「Child Of Mine」は、彼女の母性が前面に出る弾き語り曲。キャロルは、4.「Beautiful」を演奏する前に、「今週のトルバドールにおける素晴らしい人々のために演奏します」と言っており、このコンサートが1週間にわたり行われたものであることを示唆している。ここでダニー・クーチが登場、二人で 5.「It's Too Late」を演奏する。ギターの絡みがユニークで、間奏のソロも渋い。キャロルのクールなボーカルも最高。 6.「Smackwater Jack」では、ジョー・ママのキーボード奏者で、キャロルの「Writer」や「Tapestry」にも参加していたラルフ・シュケットが加わる。彼はキャロルの横に座り、連弾で高音部を弾いている。

B面は、拍手とともにオーディエンスから「Welcome Back !」という声が飛ぶので、セカンドセットの初めからと思われる。キャロルはグリーク・シアターで行われるコンサートの話をした後に、名曲 7.「So Far Away」を切々と歌い上げる。前半よりも声がよく出ているようだ。続く3曲は過去のヒット曲のセルフカバーで、メドレーで歌われる。ザ・シェレルズ1960年のNo.1ヒット 8.「Will You Love Me Tomorrow」は、セカンドヴァースの後に続くブリッジを歌い終わったところで、ザ・ドリフターズが1961年に31位を記録した 9.「Some Kind Of Wonderful」に続く。この時点では、この曲が入ったアルバム「Music」はまだ発売されていない。キャロルは、ここでもブリッジを歌ったところで、10.「Up On The Roof」に移る。ここでは、ファーストヴァースのコーラス部分とセカンドヴァースを省略して、ブリッジに入る短縮版で歌われる。 11.「You've Got A Friend」で、キャロルはベースのチャールズ・ラーキーを「Best Friend」と紹介(二人はまだ結婚してなかったのかな?)、音から推測するに、彼はウッドベースを弾いているようだ。時期的にこの曲がジェイムス・テイラーによって大ヒットする直前であり、彼女がすっかり打ち解けて、この曲を愛情こめて楽しそうに歌っている様が見て取れる。12.「Natural Woman」は、キャロルのソウルフルなボーカルを堪能できる素晴らしい出来。

彼女の生活・人生は、「Tapestry」の大成功により大きく変わってゆくわけで、本音源は、その大ブレイク直前の姿をありのままに捉えた、真の「お宝」だ。


 
Carole King In Concert BBC (1971)  映像 
 

Carole King : Vocal, Piano
Abigale Haness : Vocal (8)
James Taylor : Acoustic Guitar (3)
Danny Kortchmar : E. Guitar (4)
Ralph Schuckett : Piano (5)
Charles Larkey : Bass (3,4,5)
Joel O'Brien : Drums (5)

1. I Feel The Earth Move [Carole King]
2. (You Make Me Feel Like A) Narural Woman [G. Goffin, C. King, J. Wexler]
3. So Far Away [Carole King]
4. It's Too Late [Carole King, Toni Stern]
5. Smackwater Jack [Gerry Goffin, Carole King]
6. Will You Love Me Tomorrow [Gerry Goffin, Carole King]
7. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]

[Outtake]
8. Way Over Yonder [Carole King]

Recorded at The BBC Television Centre, London, July 15, 1971

写真: Carole King In Concert Live At The BBC, 1971(アナログ・レコード) 

 
 
ジェイムス・テイラーのBBC放送と同時期に制作されたもので、構成が似ている。「Tapestry」C3の発売が1971年2月10日だったので、本映像は約5月後となる。当時の彼女の演奏風景を捉えた、とても貴重な映像だ。かなり昔から出回っていたが、私が最初に観たビデオは、画質が悪く、しかも画面下にタイムキーパーの表示が付いたものだった。その後インターネット時代到来により良質のものが観れるようになったが、映像としての正式販売はなく、音源としては2022年にブラック・フライデー(感謝祭翌日の金曜日のセール)対象商品として、「Carole King In Concert Live At The BBC, 1971」というタイトルのアナログ・レコードが販売された(音源で正式発売されたとはいえ、映像は未発表のままなので、当該コーナーに掲載します)。収録日につき、YouTubeでは1971年2月10日と表示されているが、そうすると「Tapestry」発売日と同じ日になり、かつメンバーの服装が冬服でないので、「これは違うな」と思っていたところ、キャロルのホームページにおける上記レコードの記事には、「1971年7月15日収録」とあった。さらにキャロルの自伝によると、ジョー・ママ、キャロル、ジェイムス・テイラーの3本建てによる全英ツアーが1971年実施され、「ツアーが終わると秋だった」とあるので、この日付を採用した。そうすると、ここでの映像はツアーにおけるキャロルのステージを再現したものということになる。

1.「I Feel The Earth Move」、2.「(You Make Me Feel Like A) Narural Woman」は弾き語り。ピンクのドレスを着て、ピアノを弾き、身体を揺らしながら歌う若々しい姿(当時29才)は誠に魅力的。曲が終わった後のオーディエンスの拍手に対するお礼や曲紹介の語りで見せる微笑みも彼女の人柄が飾り気なしに出ていて、観る人の心を掴むものがある。決して美声ではない、少しハスキーがかった声も「食いつき」があって味わい深い。この人ほど弾き語りで魅せる人はいないだろう。

3.「So Far Away」では、ジェイムス・テイラー(ギター)とチャールズ・ラーキー(ベース)が登場し、ピアノの周りに腰掛けて伴奏する。ギタープレイは控え目で目立たないが、愛用のギブソンJ-55を弾く姿は観もの。JTが退場してダニー・クーチ(エレキギター)が登場し、4.「It's Too Late」を演奏。 間奏におけるダニーのソロは毎回全く異なるので、聴いていて楽しい。ダニーが退場、ラルフ・シュケット(ピアノ)とジョエル・オブライエン(ドラムス)が登場して、5.「Smackwater Jack」を歌う。ラルフはキャロルのピアノ椅子の隣りに座り、連弾の高音部分を担当。3人が退場し、彼女一人になって 6.「Will You Love Me Tomorrow」をしっとり歌い、切れ目なく 7.「Up On The Roof」に移る。間奏のピアノプレイがシンプルだけど美しい。

番組はこれで終了するが、実際はアウトテイクが1曲あったようで、ずっと後になって別の動画で観ることができた。ここではアビゲイル・ハネスが登場し、これでジョー・ママのメンバーが全員出たことになる。8.「Way Over Yonder」でゲイルがハーモニーを付け、レコードでメリー・クレイトンが担当していたパートを歌う。後半ではゲイルがソロでソウルフルに歌う場面もある。この曲については、上記のレコードでは、「Smackwater....」と「Will You...」の間に入っているので、映像では編集によりカットされたのだろう。改めて見直してみると、「Smackwater...」が終わった後の拍手の場面でカットが入っているのがわかる。ただしその部分に観客の拍手を被せているので、そうと言われない限り判らない。映像や音源の編集作業の際によく使われるテクニックだ。

シンガー・ソングライターとしての初期の姿を捉えた貴重な映像。演奏も最高!

[2023年2月作成]

[2023年3月追記]
日付に係る記述を一部追加しました。


Greek Theater, Los Angeles (1971)  音源 
 


Carole King : Vocal (11,12,13以外), Harmony Vocal (13,14), Piano
Barry Mann : Vocal, Piano (11,12,13,14)
Charles Larkey : Wood Bass
Curtis Amy : Tenor Sax (8), Soprano Sax (9), Flute (10)

1. Song Of Long Ago [Carole King]
2. Beautiful [Carole King]
3. No Easy Way Down [Gerry Goffin, Carole King]
4. Home Again [Carole King]
5. Carry Your Load [Carole King]
6. Eventually [Gerry Goffin, Carole King]
7. I Feel The Earth Move [Carole King]
8. Way Over Yonder [Carole King]
9. It's Too Late [Carole King, Toni Stern]
10. So Far Away [Carole King]

11. On Broadway [Cynthia Weil, Barry Mann, Jerry Leiber, Mike Stoller]
12. Just A Little Lovin' [Cynthia Weil, Barry Mann]
13. I Heard You Singing Your Song [Barry Mann]
14. You've Lost That Loving' Feeling [Cynthia Weil, Barry Mann, Phil Spector]

15. Will You Love Me Tomorrow [Gerry Goffin, Carole King]
16. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
17. You've Got A Friend [Carole King]
18. (You Make Me Feel Like A) Natural Woman [Gerry Goffin, Carole King]

Recorded At Greek Theater, Los Angeles, CA, August 19, 1971

 

グリーク・シアターは、ロサンゼルス ハリウッド北の丘陵地にあるグリフィス・パークの野外劇場で、1929年オープン、座席数は5,900。本コンサートの開催時期は、1971年2月発売の「Tapestry」C3と同年12月発売の「Music」C5 のちょうど狭間にあたる。同年7月の彼女はジェイムス・テイラーとのコンサート・ツアーでイギリスに行っていたので、この時にはロサンゼルスに戻っていたということになる。当時としては質の良いオーディエンス録音で、抜けの良い音は、いかにも野外コンサートといった感じ。

専ら彼女のピアノとチャールズ・ラーキーのウッドベースによる演奏。1.「Song Of Long Ago」の曲紹介で、キャロルは「ブートレッグでは「Whispering Wind」となっていたけど、本当は「Song Of Long Ago」なのよ」と言っているが、これは当時出回っていた海賊盤「Fit For A King」を意識してのもの。2.「Beautiful」が始めるとオーディエンスから拍手が起き、「Tapestry」が人々の間にしっかり浸透していることがわかる。3.「No Easy Way Down」は、ダスティ・スプリングフィールド、バーバラ・ストレイサンドそして自分が録音(「Writer」1970 C2)した曲と紹介される。公式録音にはないエンディングにおけるアドリブっぽい歌唱がとても良い。4. 「Home Again」の間奏では、チャールズ・ラーキーの弓弾きベースが入る。5.「Carry Your Load」では、「新曲です。ブートレッグには入っていないわ。良い音で聴いたほうがお金の無駄にならないよ」と語っていて、当時海賊版に対し相当神経質になっていた様が伺える。これは「Music」が「Tapestry」の10ヵ月後という短期間で発売されるようになった背景だろう。

7.「I Feel The Earth Move」は、メロディーを崩した自由な感じの歌唱が聴ける。エンディングで「Tapestry」ではカットされたという、ピアノで地面が崩れる様を表現した部分が入る。8.「Way Over Yonder」では、録音ではメリー・クレイトンが「Sun shines bright」と歌う部分からカーティス・アミーのテナー・サックスが入り、間奏でソロを取る。彼は前述のメリー・クレイトンの夫で、「Tapestry」、「Music」の録音に参加した人。9. 「It's Too Late」での間奏は、カーティスのソプラノ・サックス。メロディーを崩した歌い方が魅力で、私はこのジャズの精神につながる自由さを好きになったんだなと得心する。10.「So Far Away」ではカーティスがフルートでオブリガートとソロを付ける。

ここでゲストとしてバリー・マン(1939- )が登場。彼はニューヨークのブリル・ビルディング時代の同僚かつライバルだった人で、シンガー・アンド・ソングライター台頭により、旧来の作曲家によるヒット曲量産のシステムが衰退した当時、キャロルと同様にロスへ移住したものと思われ、当時彼が出したソロアルバム「Lay It All Out」1971 G10にキャロルがゲストで参加している。11.「On Broadway」は彼の代表曲のひとつで、最初はデモとしてザ・クッキーズが録音した(S2) が、ザ・ドリフターズが歌うにあたり、リーバー・アンド・ストーラーがリズム面などで大幅な改善を施し、結果作者に名を連ねることになった曲。ザ・ドリフターズのバージョンは1963年全米9位のヒットとなり、その後数多くのアーティストがカバーしたが、ジョージ・ベンソンによるフュージョン風アレンジ1978年全米7位が筆頭だろう。本人によるバージョンは前述「Lay It All Out」 G10に収録。ここではピアノ2台とベースによる演奏で、ヴァースの合間で短いながらもキャロルのソロを聴くことができる。12.「Just A Little Lovin'」はダスティー・スプリングフィールド1968、バーバラ・ストレイサンド1971の録音がある曲で、本人による吹き込みはずっと後の2017年になってから。13.「I Heard You Singing Your Song」は「Lay It All Out」での録音と同様、ハミング部分でキャロルがハーモニーを付けている。最後は彼の決定曲14.「You've Lost That Loving' Feeling」(ザ・ライチャス・ブラザース 1964年全米1位)で、ここではキャロルがハーモニーとソロでしっかり歌っている。二人による公式録音は2000年の「Soul & Inspiration」G43まで待つことになる。当時バリーはキャロルと同じようにシンガー・アンド・ソングラターとしての売り出しを考えていたはずで、本コンサートへのゲスト出演もそういう意図があったと思われる。しかしアルバム「Lay It All Out」は内容が良かったにも拘わらず、あまり売れず、結果として引き続き作曲家としての道を歩むことになった。

再びキャロルとチャーリーによる演奏に戻り、15.「Will You Love Me Tomorrow」、切れ目なく 16.「Up On The Roof」をしっとり歌う。最後は 17. 「You've Got A Friend」、18.「(You Make Me Feel Like A) Natural Woman」といった定番曲で締めている。

初期のフルコンサートの模様、およびバリー・マンとの共演が楽しめる貴重な音源。

[2023年3月作成]


 
Oakland Coliseum, Oakland (1972)  音源・映像  
 
Carole King: Vocal, Piano
Cahrles Larkey: Wood Bass (2,3)

1. Will You Love Me Tomorrow [Gerry Goffin, Carole King] Imcomplete
2. You've Got A Friend [Carole King]
3. (You Make Me Feel Like A) Natural Woman [Gerry Goffin, Carole King, Jerry Wexler] 


James Taylor: Acoustic Guitar, Electric Guitar, Piano (12,17), Vocal
Danny Kootch: Electric Guitar, Back Vocal (21,23)
Carole King: Piano (14,15,16,17,18,19,20,21) Back Vocal (14,17,23,24)
Ralph Schkett: Organ (22,23,24)
Lee Sklar: Bass, Back Vocal (21,23)
Charles Larkey: Bass (23,24)
Russ Kunkel: Drums, Percussion
Joel O'Brien: Drums (23,24)
Abigale Haness: Back Vocal (23,24)


4. Sweet Baby James  [James Taylor]
5. Something In The Way She Moves  [James Taylor]
6. Greensleeves  
[Traditional]
7. Snuff Commercial
[Unknown]
8. Sunny Skies  [James Taylor]
9. Chili Dog  
[James Taylor]
10. Rainy Day Man  [James Taylor]
11. Riding On The Railroad [James Taylor]
12. Places In My Past * [James Taylor]
13. Carolina In My Mind * [James Taylor]
14. Long Ago And Far Away * [James Taylor]
15. Blossom [James Taylor]
16. Country Road [James Taylor]
17. Highway Song * [James Taylor]
18. On Broadway [Jerry Leiber, Barry Mann, Mike Stoller, Cynthia Weil]
19. Fire And Rain * [James Taylor]
20. Love Has Brought Me Around [James Taylor] 
21. Woh, Don't You Know [James Taylor, Danny Kootch, Lee Sklar]  
22. Steamroller Blues * [James Taylor]
23. Come On Brother, Help Me Find This Groove [Unkown]
24. The Promised Land [Chuck Berry] 
25. You Can Close Your Eyes [James Taylor]


Live At Oakland Coliseum, Oakland, California In 1972 July 5

注: 黄字はキャロル非参加
   1.〜3.は映像のみ
   4.〜25.は音源、*がついた曲は映像もあり
 

4〜25の詳細については、ジェイムス・テイラー・ディスコグラフィー 「その他音源」を参照ください。

1971〜1972年のジョー・ママ、キャロル、ジェイムス・テイラーの3本建てツアーの模様を捉えた音源および映像(一部のみ)。キャロルの自伝によると、ツアー初期は、ジョー・ママのステージでの観客席はガラガラだったが、演奏の素晴らしさが口コミで伝わり、最初からお客さんが入るようになったという。彼らのライブの音源を耳にしたことはないが、2番目に出演したキャロルの演奏の一部を動画で観ることができた。観た動画の資料には「Oakland 1972」としかなかったが、当時は上述のとおり、キャロルはジェイムスの前座で出演しており、ステージ・セッティングの感じから同一コンサートと推測した。

1.「Will You Love Me Tomorrow」は、「もし知っているなら一緒に歌ってね」と言って歌いだす。ほとんどが彼女のアップで、最初はモノクロなんだけど、何故か途中から薄めな色がつく映像。残念ながら途中とエンディングがカットされ、2分20秒で終わる。2.「You've Got A Friend」は、チャールズ・ラーキーのウッドベースが聞こえる。これは素晴らしい演奏・映像。以前から、ジェイムスの音源で何故この曲を演ってないんだろうと思っていたが、キャロルがここで演奏していたためなんだよね。3.「 (You Make Me Feel Like A) Natural Woman」は、ウッドベースを弾く長髪のチャールズもしっかり映っていて、観ていて楽しい映像だ。それにしても歌っている際のキャロルの表情は誠に魅力的。歌もピアノも完璧で言う事なし!なおここでの動画は個々に配信されているため、曲順は不明。彼女の当時の他のライブから推測して上記とした。

ジェイムスのステージは彼一人による弾き語りから始まる。12.「Place In My Past」はピアノによる演奏であるが、ジェイムスが弾いている。13.「Carolia In My Mind」が終わった後、紹介によりキャロルが登場。二人で 14.「Long Ago And Far Away」を演奏する。この曲については良質な動画を観ることができた。画像に映るキャロルは、ソロの時とは異なる目立たない衣装。ピアノを弾きながら、アルバムではジョニ・ミッチェルが歌っていたハーモニーボーカルをつける。本当に素晴らしいシーンだ。15.「Blossom」も二人によるプレイで、低音の動きなどジェイムスのギターの上手さが目立っている。

16.「Country Road」でベースとドラムスが加わる。当時のコンサートでは遅めのテンポで演奏していた事がわかる。17.「Highway Song」も良質の動画がある。キャロルがジェイムスの隣りに座り、連弾による演奏だ。ジェイムスがピアノを弾きながら歌いだすが、すぐにストップしてブツブツ言ってやり直す。キャロルは高音部のオブリガードを担当。動画の場合、途中でカットが入るのが残念。ここでもキャロルが少しだけハーモニーボーカルをつけている。18.「On Broadway」はバリー・マン、シンシア・ウェイル作、ドリフターズの歌でヒットした曲(1963 全米9位)で、ニューヨーク作曲家時代のキャロルにとっても縁が深い曲。 ジェイムスによるカバーを聴けるなんて最高だね!彼の歌の上手さが際立っていて、キャロルのピアノも頑張っているぞ。イントロとエンディングにガーシュウィンの「Rhapsody In Blue」の断片を入れるアレンジも洒落ている。19.「Fire And Rain」も色が綺麗な動画あり。キャロルのピアノはアルバムとはぼ同じかな。彼女がピアノを弾く様もちらっと写る。

20.「Love Has Brought Me Around」からエレキギターのダニー・クーチが加入。極めて良質なサウンドボード録音なので、キャロルのピアノとダニー・クーチのギターソロの美しさを堪能できる。21.「Woh, Don't You Know」はこの時点では未発売の「One Man Dog 」1972に入っていた曲で、ダニーとリーがバックコーラスで歌っている。22.「Steamroller Blues」は、ノルウェーのTV曲のロゴが右上に入っているモノクロの映像がある。椅子に座ってエレキギターを弾きながら歌うジェイムス、間奏ギターソロのダニー、ラルフ・シュケットがオルガンを弾くシーンも挿入されるが、キャロルのピアノは聞こえない(次の曲に備えて着替えをしているようだ)。ジェイムスの歌は変幻自在、反応したオーディエンスから歓声が起きる。

23.「Help Me Find This Groove」は、ジョーママとジェイムス・バンドのジョイント。アビゲイルとキャロルのバックボーカルがジェイムスと掛け合いを演じ、切れ味鋭いギターソロが入る。後半の合唱ではダニー(と恐らくリー)もバックボーカルに加わる。終わってすぐにフィナーレの24.「Promised Land」が始まる。ダニーのギターが大活躍するギンギンのロックンロールで、セカンド・ヴァースの前半はアビゲイルとキャロルが歌っている。最後は弾き語りによるエンディング。

当時のジェイムスのコンサートの全貌を捉えた貴重な音源。キャロルの活躍ぶりも十分楽しめる。

[2023年3月作成]

 
Boston Music Hall, Boston MA (1976)  音源 
 
Carole King: Vocal, Piano, Acoustic Guitar (16)
Doyle Huff : Vocal (20), Back Vocal, Acoustic Guitar(恐らく8以降)
Waddy Wachtel: Electric Guitar (11以降), Back Vocal
Clarence McDonald: Keybords (8以降)
Lee Sklar: Bass (8以降), Back Vocal
Russ Kunkel: Drums (8以降)
Bobby Hall: Percussion (7以降)

[1st Set]
1. Song Of Long Ago [Carole King]
2. Beautiful [Carole King]
3. Home Again [Carole King] 

4. Tapestry [Carole King] 
5. Golden Man [Carole King]
6. So Far Away [Carole King] 
7. Been To Cannan [Carole King]
8. Alabaster Lady [Carole King]
9. Music [Carole King]
10. Way Over Yonder [Carole King]

[2nd Set]
11. It's Too Late [Carole King, Toni Stern]
12. Believe In Humanity [Carole King]
13. Sweet Seasons [Carole King]
14.
There's A Space Between Us [Carole King]
15. Daughter Of Light [Gerry Goffin, Carole King]
16. Smackwater Jack [Gerry Goffin, Carole King]
17. Ambrosia [Carole King, David Palmer]
18. Jazz Man [Carole King, David Palmer]
19. I'd Like To Know You Better [Carole King]
20. Boy From The Country [Michael Martin Murphy]
21. High Out Of Time [Gerry Goffin, Carole King]
22. Will You Love Me Tomorrow [Gerry Goffin, Carole King]
23. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
24. The Locomotion [Gerry Goffin, Carole King]
25. I Feel The Earth Move [Carole King]

[Uncore]
26. Only Love Is Real [Carole King]
27. You've Got A Friend [Carole King]
28. (You Make Me Feel Like) A Natural Woman [Gerry Goffin, Carole King, Jerry Wexler]

Live At Boston Music Hall, Boston MA, 1976 Febuary 29

 

1976年1月に発売されたアルバム「Throughbred」C10 のプロモーショナル・ツアーからの貴重な音源。

1976年はキャロルにとって大きな転機に差し掛かった年だった。2番目の夫チャールズ・ラーキーとの離婚、ロサンゼルスでの生活の行き詰まりの中で、1975年11月2日にリック・エヴァースと出会い恋に落ち、後の1977年にアイダホ州に移住することで、彼女の人生は大きく変わってゆくのだ。本音源はその最中における彼女の音楽を捉えたものになる。

上記のツアーにはリックが同行し、その模様はキャロルの自伝の第3部6章「Definition Of A Friend (友情の定義)」で詳しく語られている。四六時中キャロルと一緒にいた彼はバンド・メンバーとそりが合わなかった。情緒不安定な彼は、コンサートの直前に彼女に怒りをぶつけたり、アンコールの最中に舞台裏でダニー・クーチに殴りかかって他のメンバーに止めらるなどのトラブルを引き起こしたという。一時は険悪な雰囲気になったが、その後彼は落ち着き、ツアーは無事に終了したとのこと。本音源は1月から3月まで続いたツアーの中盤にあたる2月末ボストンでのコンサートのオーディエンス録音で、曲紹介・アナウンスを含めた118分にわたるコンサートの模様がノーカットで捉えられている。音質の良いステレオ録音で、聴いていると会場にいるような気分にさせてくれる。

コンサートは彼女の弾き語りからスタートする。曲間の彼女のコメントに対し、オーディエンスからも声が飛び、歓声・笑い・拍手などで反応する和気あいあいとした雰囲気で進行してゆく。各曲のイントロでは大きな歓声と拍手が起きる。2. 「Beautiful」 間奏のピアノ演奏で少し指がもつれるのはご愛敬。「特別な人のための特別な歌です」と紹介される5.「Golden Man」は、自伝で「リック・エヴァースと付き合い始めた頃を描いた」と言及されており、彼を賛美する当時の彼女の心境が語られていて、聴いていると何とも言えない気持ちになる。この曲はその後しばらく未発表が続き、公式録音がずっと後の「One To One」1982 C15になったのは、その後のトラブルや1978年の彼の死などを経た心境の変化があったのだろう。リック・エヴァースは問題の多い人物であったが、キャロルにとって彼から得たものも大きかったことは、彼の死後も彼女がアイダホ州での生活を続けた事実から明らかだ。

7.「Been To Cannan」からボビー・ホールの鮮やかなパーカッションが加わる。新曲 8.「Alabaster Lady」は、「背が高く美しく肌の白い友人についての曲です」と紹介される。アラバスター=雪花石膏は白いものの形容で、自伝ではデビッド・クロスビーと当時の恋人ナンシー・ブラウンの関係性にヒントを得て書いた曲とのこと。束縛性の強い男からの精神の自立を説いた曲で、キャロルは友人を思って書いたつもりだったか、後になって自分(彼女自身とリックとの関係)を通したものであったことに気が付いたと語っている。ここでクラレンス・マクドナルドのエレキピアノが登場。彼は1973年のアルバム「Fantasy」C7のツアー(E1, E2)に参加しており、1970年代後半のジェイムス・テイラーのアルバムとコンサートに名を連ねていた人だ。終盤でドラムスとベースがフィルインしてドラマチックな展開を見せる。プライバシーの問題があったようで、この曲も5.と同様未発表となり、公式録音が発表されたのは7年後の「Speeding Time」1983 C16だった。張り詰めた雰囲気の曲の後で演奏される 9.「Music」は軽やかな喜びと解放感に満ちていて、とても気持ちが良い。「休憩前にあともう一曲やります」と言って 10.「Way Over Yonder」を歌う。コンサートではバックコーラスと掛け合いをするのが常だが、ここでは珍しく彼女一人による弾き語り。

セカンド・セットは11.「It's Too Late」から。ここでワディ・ワクテルのギターが加わる。自伝ではツアー・メンバーにダニー・クーチの名前があったが、何故か本コンサートには参加していない。その分ワディのギタープレイを存分に楽しめることになった。またバック・ボーカルとしてドイル・ハフが歌っている。彼は資料では「Hough」と綴られているが、自伝では「Huff」となっており、ここでは後者に従った。自伝ではリックの友人というが、いずれのスペルでも、インターネットで彼の情報は見つからなかった。次の曲は資料では「I Want To Beleive」とあるが、正しい曲名はアルバム「Fantasy」1973 C7からの12.「Believe In Humanity」。間奏のワディのギターソロが滅茶ロックしていて、オリジナルのデビッド T ウォーカーと大違い。13.「Sweet Seasons」はオリジナルよりもリズムが跳ねた演奏で、ベーシストのリー・スクラーとチャールズ・ラーキーのグルーヴの違いがわかる。ここでニューアルバムからの曲コーナーになり、14.「There's A Space Between Us」と 15.「Daughter Of Light」が歌われる。キャロルがギターを持って「スリーコードの曲なのよ」と言って、16.「Smackwater Jack」を歌う。ここでもワディがギンギンのソロを披露していて、キャロルも煽られてロックな歌唱をみせている。再び「Througbred」からの曲を演った後、バンド・メンバーの紹介となる。18.「Jazz Man」は、いつもはサックスがフィーチャーされるが、ここではワディのギターが弾きまくりの快演を見せ、クラレンスのエレピも頑張っている。

20.「Boy From The Country」はドイル・ハフとのデュエットで、他では聴けないお宝だ。この曲はカントリー系のシンガー・アンド・ソングライター、マイケル・マーフィー (1945- ) の作品で、オリジナルは彼のアルバム「Geronimo's Cadillac」1972に収録、ジョン・デンバーもカバーしている。ちなみに彼には「Wildfire」1975 全米3位という超名曲があるね。キャロルは「私とドイルが愛している人のことを描いているよう」と紹介しており、この曲が自然を愛するリックの事を思って歌っていることは明らか。ここではドイルとワディーのアコースティック・ギター、恐らくクラレンスのピアノによるシンプルな演奏だ。21.「High Out Of Time」では、ワディーとリーがバックボーカルに加わり、オリジナルのデビッド・クロスビーとグラハム・ナッシュのハーモニーを再現している。アコースティック・ギターでリードをとるのは、恐らくワディだ(ドイル・ハフの力量がわからないので、正確なところは不明であるが、他の曲でもアコギがリードする時はエレキギターの音が聞こえないのでそうだと思う)。

ここで「昔のゴールデン・オールディーを演るよ」と言って、コーラス隊と一緒に 22.「Will You Love Me Tomorrow」、 23.「Up On The Roof」、24.「The Locomotion」を歌う。ライブということで、自由に崩して歌う様が魅力的。25.「I Feel The Earth Move」はドライブがかかったロックなサウンドで迫り、ワディーのグルーヴィーなギタープレイがゴキゲン。アンコールは、2月にチャート入りしたばかりの最新ヒット曲 26.「Only Love Is Real」。そして 27.「You've Got A Friend」ではいつにないエモーショナルな歌唱をみせる。最後は弾き語りによる 28.「 (You Make Me Feel Like) A Natural Woman」 。

パフォーマーとオーディエンスが真に一体となった初期のパフォーマンスが聴ける最後のコンサート音源で、リー・スクラーとラス・カンケルのグルーヴ、ワディ・ワクテルのロックなギターがエキサイティングな名演。自伝にあったような不穏は雰囲気は感じられない。まだツアーの中盤で、フラストレーションがまだ溜まっていない時期だったからかな?この後、キャロルはロサンゼルスでの音楽の繋がりを断ち、新天地における新しい生活・音楽を目指すことになる。

[2024年1月作成]