Z01 The Bert Jansch Song Book (1967)   Heathside /Sing


Z01 The Bert Jansch Song Book


1. Oh My Babe  S3
2. Strolling Down The Highway  S2
3. Harvest Your Thoughts Of Love  S3
4. The Needle Of Death  S2 
5. Oh How Your Love Is Strong  S2 
6. Dreams Of Love  S2
7. Go Your Way My Love  S5
8. Woe Is My Love Dear  S5
9. I Have No Time  S2
10. Wish My Baby Was Here  S5
11. Box Of Love  S5
12. Life Depends On Love  S5
13. As The Day Grows Longer Now  S3
14. A Little Sweet Sunshine  S5
15. If The World Isn't Here  S5
16. Running From Home  S2
17. It Don't Bother Me  S3
18. Rumbling's Gonna Be The Death Of Me  S2
19. Courting Blues  S2
20. A Man I'd Rather Be  S3

バートの楽譜はこれまでに何冊か発行されたようだが、当時はインターネットがなく情報収集が簡単でないため、その存在を知った時点では絶版になっているなど、購入できなかったケースが多かった。

そんな状況のなかで、ずっと昔に渋谷ヤマハで売っているのを見つけて購入したのが本書で、Sing Production 製作、Heathside Music出版と記載されている。 

コードが表記された簡単なメロディー譜と歌詞だけが掲載され、ギター・パートの譜面やタブ譜のない簡単なものだ。本のサイズも横14×縦21センチの小型で、弾き語りのための持ち運びが便利なようにデザインされている。

バート本人による曲目と樹木を描いたスケッチが9枚、当時ジョン・レンボーンの奥さんだったジュディ・クロスのスケッチも3枚収められている。なお最後のページには「Nicola」までのレコードと曲名のリストが添付されている。



Z02 British Fingerpicking Guitar (1990)   Mel Bay Publications MB94507


Z02 British Fingerpicking Guitar

[Stefan Grossman Guitar Workshop]


1. Blackwaterside  S4
2. Alice's Wonderland   S2
3. Veronica  S2
4. The Wheel  S3
5. St. Fiacre Revenge  S12 S13
6. Bridge  S16

7. Lady Nothynges Toye Puffe [John Renbourn]  S9

ステファン・グロスマン編集によるイギリスの3大ギタリスト、デイヴィー・グラハム、バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンのオムニバス楽譜集(全22曲) 。本書には3人のインタビューが掲載されており、とても充実した内容。なお掲載曲を収録した専用カセットが別途販売されていた。女流ギタリスト、ジャネット・スミスが採譜を担当している。

バートのインタビューは9ページにおよぶ充実した内容。冒頭のグロスマンの紹介文では、アメリカ生まれの彼が、当時のロンドンのフォーク・ムーブメントに如何に関わっていったか、自己のギタースタイルにどのような影響を及ぼしたかが詳細に語られており、非常に興味深い。

残念ながら現在は絶版のようだ。



Z03 The Songs And Guitar Solos Of Bert Jansch (1983) New Punchbowl Music





1. I Am Lonely  S6
2. Walking (A 12 Bar Blues)  
3. Reynardine  S7
4. Lost Love  S13
5. The Needle Of Death  S2
6. The First Time I Ever Saw Your Face  S8
7. Moonshine  S8
8. Blackwaterside  S4
9. Saint Fiacre  S13
10. M'Lady Nacy  S7
11. Is It Real ?  S18
12. One For Jo  S9
13. The Currah Of Kildare  S13
14. Bridge  S16


Designed and Illustrated by: Doug Kennedy
Transcribed by: Doug Kennedy


バートが「Heartbreak」 1981 S18 を発表した後に製作された40ページからなる楽譜集。この頃はヤマハとタイアップしてパートナーのシャルロットと一緒に、ニュー・キングス・ロードにギターショップを開店した頃にあたる。本書にもバートが店内でヤマハのギターに囲まれている写真、その後彼の作品 S30 S31にベース奏者として参加することになる、息子アダムとのスナップショットが掲載されている。残念ながら、この店は経営不振のために短期間でクローズしたとのことだ。また当時彼はジョン・レンボーンを除く再編ペンタングルの活動を開始していて、その成果は1985年の「Open The Door」P14 で結実する。

本書はイギリスのフォーク雑誌「フォークルーツ」に広告が掲載されたが、日本に入ってきたのは通信販売で直接購入した人か、一部の業者によるごく少数の輸入のみであったと思われる(かく言う私も、当時は雑誌広告で存在を知っていたのですが、買い逃した一人で、その後何十年も歯軋りをする羽目になりました。つい最近ですが、ある方のご好意で本書を拝見させていただき、しかも本ディスコグラフィーへの掲載のお許しまでいただいた事は、夢のようです。この場を借りてJ さんにお礼を申し上げます。)

各曲には、メロディー譜、ギター譜、タブ譜、歌詞およびコード名とコード・チャートが付いており、非常に丁寧に作られている。大半の曲にはバート本人の簡単なコメントが添えられている。それ以外に8枚の写真とバイオグラフィーが付いていて、他では語られていないエピソードがあり大変興味深い内容だ。2.「Walking」はウォーキングベースが付いたEのブルースで、譜面は1コーラス(12小節)のみ掲載されている。1972年のベスト盤「Box Of Love」O2に収録された未発表曲「Dissatisfied Blues」の伴奏に似ているが、本書のバージョンのほうがずっとシンプルな内容だ。その他「Rosemary Lane」に収録された傑作アレンジ「Reynardine」など貴重な曲が沢山入っている。


 
Z04 Bert Jansh & John Renbourn 20 Tablatures Transcrites Par Remy Froissart (1979) Chappell S.A.
 



[Tablatures de Bert Jansch]
1. I Have No Time  S2
2. The Bright New Year  S6
4. Veronica  S2
5. Oh! How Your Love Is Strong   S2
6. Blues  S6
7. Wayward Child  S7
8. Alice's Wonderland  S2
9. Courting Blues  S2
10. Harvest Your Thoughts Of Love  S3

[Tablatures de John Renbourn] 
11. Sweet Potato  R4
12. Buffalo  R3
13. White Fishes  R4
14. I Know My Babe  R3
15. Lord Franklin  T5
16. Willy O'Winsbury  R6
17. Scarborough Fair  R5
18. Morgana  R4
19. One For William  R3
20. The Trees They Do Grow High  R4

Transcribed by: Remy Froissart


フランス人のレミー・フロアサールは、1967年にバートとジョンの音楽に出会い、その後彼らと知り合って、1970年代彼らのパリ滞在時に交流を深めたという。特にジョン・レンボーンと親しかったようで、彼の1979年のアルバム「Black Balloon」 に収録された「The Pelican」は、当時レミーが住んでいたペリカン通り(Rue Pelican、パレ・ロワイヤル、ルーブル博物館の近くにある小さな通りで、長期滞在者用のアパートがたくさんある)にちなんだものという。現在彼は南フランスに住んでいるとのことで、ジョンがペンタングル時代に使用していたギブソンJ-50 (「Another Monday」 のジャケット写真のギター)を所有しているという。彼は自己名義でレコードやCDを発表した記録はなく、ギターの先生としてキャリアを積んだ人であるが、残された音源としては、「The Nine Maidens」1985 の「The Fish In The Well 」(ハイ・ストリング・ギターで参加)がある。ジョンのホームページのコラボレイターの欄で、優秀なギター教師として彼が紹介されており、2010年代にフランス、イタリア、スペイン、イギリスなど欧州各地で毎夏開催している1週間泊まりがけのジョン・レンボーン・ギター・ワークショップでは、彼が共同主催者として名を連ねている。

本書は、レミーが1979年に出版したタブ譜集で、出版社「Chappell S.A.」は、イギリスに本社があったチャペル社(ジョンの楽譜を出版している)のフランス現地法人。全54ページのうち、最初の11ページは序文と奏法解説に当てられており、ギターの構え方の見本として若きレミーの写真もある。全編フランス語なので、何が書いてあるかよくわからないけどね!残りのページで、バートとジョンの作品が10曲づつ掲載しているわけで、当然1曲あたりの紙面数が少なくなり、主にテーマ部分を中心とした内容で、リフの部分やその微妙なバリエイションは省略されている。一方ジョンの曲について、フルートやオーボエ、リコーダー、バイオリン等とのアンサンブル曲が多く取り上げられ、それらの伴奏部分についても採譜されている点が特徴的。バートの「Blackwaterside」、「Reynardine」やジョンの「My Dear Boy」、「Ladye Nothinge's Toye Puffe」など、ファン好みの有名曲がなく、比較的有名でない曲を含んでおり、著者の個人的な趣味が反映されたものと思われる。

1.「I Have No Time」は弾き語りで、ギター伴奏はシンプルなスリーフィンガーなので、タブ譜は半ページ分のみ。あとはフランス語による弾き方の解説と歌詞が掲載されている。恐らくタブ譜が省略している部分を解説が補っているのではないかと思われる。その他の曲では、リフが多い 2.「The Bright New Year」は3/1ページ、バートらしい少しひねった感じのアルペジオの7.「Wayward Child」は半ページ、初期の弾き語りの名曲 9.「Courting Blues」、10.「Harvest Your Thoughts Of Love」は、3/4ページ、5.「Oh! How Your Love Is Strong」、2.「The Bright New Year」は少し多めの1ページ分となっている。インストルメンタル曲の4.「Veronica」は、リフが多いためタブ譜は半ページ分。本当は演奏が進むにつれて、微妙なバリエイションというか、弾き方の違いが出てきて、それがバートのギターの大きな魅力になっているのだけど、そういう部分は省略されている。限られたページ数で多くの曲を収めるためには、止むを得ないだろう。、6.「Blues」はテーマ部分のみの半ページ分で、レコードにおける間奏ソロやエンディングの採譜はない。8.「Alice's Wonderland」は、バート初期の名インスト曲らしく、1 3/4ページにわたりじっくり採譜されている。それでも繰り返しの部分が省略されているので、オリジナルの微妙な音づかいを再現するためには、耳コピーが必要。   

バートのタブ譜は、近年ファンが採譜したものがインターネットで出回っており、大半の曲は入手可能と思うが、当時そのような手段がなかった時代には、楽譜集、ギター雑誌などにおけるタブ譜の出版は少なく、貴重なものであった。

ジョン・レンボーンについての記述は、ジョンのコーナーを参照ください。

1970年代末・1980年代前半、フランスのみで発売された楽譜集なので、流通が少なく入手が大変難しいが、フランスの中古書籍のインターネット市場などを根気強く探せば、見つかるだろう。


 
Z04 The Guitar Of Bert Jansch Taught by Rolly Brown (2014) Stefan Grossman's Guitar Workshop (DVD)



 

Opening : Avocet (Fade Out) (「The Guitar Artistry Of Bert Jansch」 1980 O16 より)

2. Blues Runs The Game S11 (「The Guitar Artistry Of Bert Jansch」 1980 O16 より)
3. Strolling Down The Highway S2 (Played by Rolly Brown)
4. In The Bleak Midwinter O9 (「Plush And Good Music」1976 「その他音源・映像」より)
5. Angie S2 (Played by Rolly Brown)
6. One For Jo S9 (「Plush And Good Music」1976 「その他音源・映像」より)
7. Blackwaterside S4 (「The Guitar Artistry Of Bert Jansch」 1980 O16 より)
8. The First Time Ever I Saw Your Face S4 (Played by Rolly Brown)
9. Reynardine S7 (Played by Rolly Brown)

Ending : Come Back Baby (Fade Out) 「Stockholm, Sweden」 1978 O13 「その他音源・映像」より)

Runnung Time: 143min.

PDF of Tablature (45pages) Attached to The Disk

Played And Transcribed by: Rolly Brown


ロリー・ブラウンはペンシルヴァニア州を本拠地とするギタリストで、ホームページで「52年のギター経験」(2023年現在)と言っているので、かなりお年を召した方だ。オーセンティックなフォーク・ブルース、ジャズをメインとするスタイルで、ソロアルバム制作やYouTubeに動画をアップしている。また教則面では、ステファン・グロスマン・ギター・ワークショップから13本の教則DVDを出し、個人レッスンもやっている。

「The Guitar Of Bert Jansch」は、彼が2014年に出した教則DVDで、2時間40分におよぶ模範演奏、演奏解説、右手・左手のスプリット・スクリーンによるスロー画像と、DVDにアタッチされたタブ譜(45ページ)のPDFからなる。以下、進行と聞き取ることができたロリーの発言で面白いものをピックアップします。

・ステファン・グロスマン・ギター・ワークショップのタイトル動画(蒸気機関車のアニメ)
彼が弾く「Vestapol」の断片が流れる。

・オープニング・クレジット: Avocet (断片)「The Guitar Artistry Of Bert Jansch」
1980年オハイオ州でのコナンドラムのライブから

・イントロダクション。簡単な曲からバート独自の挑戦的なものを対象。自分は1960年代にアメリカで出たレコードを買って、彼にはまった。ライブも数回観て、そのユニークなギタースタイルを調査・研究した。
・基本となるオルタネイト・ベースの説明。昔のイギリスのアカペラ・ソングに現代的なギター伴奏を付けたため、リズムが不規則で複雑になっている。複雑で楽譜にしにくいので、動画を観てほしい。
・ロリー・ブラウンが使用しているギターは、ギブソンの00タイプ (スモール・ボディ)のようなシェイプで、カナダ・オンタリオに住む Mario Proulxというルシアーが製作したProulx Guitar だ(発音がわからないので、英語で表記します)。サイドにサウンドホールがあることが変わっている。

1. 「Running From Home」: 「The Guitar Artistry Of Bert Jansch」 1980 より
模範演奏はすべてカットなしの完奏版。ここでの演奏は、マーチン・ジェンキンスとの輪唱。
解説に時間をかけて、運指、ピッキング、コード構成等を丁寧に説明してゆく。本DVDの特徴は、オリジナル録音のみならず、同曲中または後年の演奏におけるバリエーションに言及している点。最後に右手(ピッキング)、左手(運指)のスプリット画面によるスローテンポでの演奏。

2. 「Blues Runs The Game」 :「The Guitar Artistry Of Bert Jansch」 1980 より
ジャクソン C. フランクのオリジナルは、シンプルなスリー・フィンガーだったが、バートはもっと緻密で美しいアレンジをしている。

3. 「Strolling Down The Highway」: Played by Rolly Brown
バートによる模範演奏が入手できなかった曲については、ロリーが弾いている。ここではギターのみで歌わない。
右手について、バートはサムピックをつけた親指と、中指、薬指で弾いているが、自分はサムピックなしで、そして薬指がうまく動かないため、主に中指を使っている。バートのオリジナル演奏と異なるので注意して欲しい。

4. 「In The Bleak Midwinter」: 「Plush And Good Music」1976 「その他音源・映像」より
ドロップド Dチューニングによる演奏

5. 「Angie」: Played by Rolly Brown
この曲のみ、ベースランのためサムピックを付ける。16才の頃から弾いている好きな曲。デイヴィー・グレアムが作曲したが、バートが完璧なものにした。弾き方は人により多様(いろんなバリエーションを説明してくれる)。バートはインタビューで、ミスの部分もコピーして弾いていると語っている。「ワークソング」のブレイクは、デイヴィーのオリジナルにはないが、彼は「ワークソング」(別の曲)として弾いている。いろんなバリエーションがあり、ポール・サイモンによるカバーは、このブレイクを省略して弾いているが、自分としてはバートの演奏のほうが好き。オリジナル(ジャズのナット・アダレイが演奏)や、デイヴィーのバージョンは別途聴いてほしい。

6. 「One For Jo」: 「Plush And Good Music」1976 「その他音源・映像」
スウィートなギター・アレンジ。

7. 「Blackwaterside」: 「The Guitar Artistry Of Bert Jansch」 1980
ドロップド Dチューニング。このあたりから、バートの特徴ある音使いが出てくる。ブルージーなサウンドで、バリエーションが豊富。

8. 「The First Time Ever I Saw Your Face」: Played by Rolly Brown
DADGADチューニングを使用。(「Jack Orion」の) より抽象的なバージョンにつき解説。

9. 「Reynardine」: Played by Rolly Brown
ドロップド Dチューニング。ベンディングの部分につき、バートは手の力が強そうだ(実際やってみると、かなりの力が要ります)。イントロ部分はインプロヴァイズによるもの。

・エンディング・クレジット: Come Back Baby (断片)「Stockholm, Sweden」 1978年 マーチン・ジェンキンスとのライブ

PDFで添付された45ページのタブ譜は、曲あたり4〜6ページ。基本的な弾き方はタブ譜を見て、バリエーションは動画を見てという感じ。5. 「Angie」は力が入っていて フルコピーの9ページ。採譜については、十分に調査・研修したらしく、これまでの楽譜集よりも正確なようだ。

5. 8.を除くほとんどの曲が歌付きなので、インストルメンタル指向の人には不満足かもしれないが、歌付きの曲の場合でもギターの演奏だけで十分楽しめるものが多いので、気にする必要はないだろう。正確な採譜、動画による運氏・ピッキング、コードの説明、スプリット・スクリーンによるスロー再生など、とても丁寧に作られている。

本稿はJさんのリクエストにより書いてみました。有難うございました。

[2023年1月作成]