第84回 米国アカデミー賞
授賞式:2011年2月27日(現地時間)
受賞結果は以下の通りです。
最優秀作品賞
アーティスト
最優秀監督賞
ミシェル・アザナヴィシウス
作品:アーティスト
最優秀主演男優賞
ジャン・デュジャルダン
作品:アーティスト
最優秀主演女優賞
メリル・ストリープ
作品:マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
最優秀助演男優賞
クリストファー・プラマー
作品:人生はビギナーズ
最優秀助演女優賞
オクタヴィア・スペンサー
作品:ヘルプ ~心がつなぐストーリー~
最優秀外国語作品賞
別離(イラン)
ノミネートは以下の通りです。
作品賞
アーティスト
公式サイト
2011年・第64回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した白黒&サイレントのラブストーリー。
舞台は1927年のハリウッド。スター俳優のジョージ・バレンタインは若い端役女優のペピー・ミラーを見初めて
スターへと導くが、折しも映画産業は無声からトーキーのへの移行期。
声とセリフ回しに問題のあるジョージが落ちぶれていく一方で、ペピーはスターダムを駆け上がっていく。
ゴールデングローブ賞最優秀作品賞ミュージカル・コメディー部門受賞作品
ファミリー・ツリー
公式サイト
ハワイ・オアフ島で妻エリザベスと2人の娘に囲まれ幸せな人生を送っていたマット・キングだったが、
ある日、エリザベスがボートの事故でこん睡状態に陥ってしまう。
さらに、そのことをきっかけにエリザベスには恋人がおり、離婚を考えていたことが発覚。
友人や長女もその事実を知っていたことにがく然としたマットは、自らの人生を見つめ直すことになる。
ゴールデングローブ賞最優秀作品賞ドラマ部門受賞作品
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
公式サイト
ジョナサン・サフラン・フォアによるベストセラー小説の映画化
9・11テロで最愛の父を亡くした少年オスカーは、クローゼットで1本の鍵を見つけ、
父親が残したメッセージを探すためニューヨークの街へ飛び出していく。
第2次世界大戦で運命の変わった祖父母、9・11で命を落とした父、
そしてオスカーへと歴史の悲劇に見舞われた3世代の物語がつむがれ、最愛の者を失った人々の再生と希望を描き出していく。
ヘルプ 心がつなぐストーリー
公式サイト
1960年代の米ミシシッピを舞台に、白人女性と黒人家政婦たちの友情が旧態依然とした街を変革していく様子を描いたベストセラー小説の映画化。
南部の上流階級に生まれた作家志望のスキーターは、当たり前のように黒人のメイドたちに囲まれて育ったが、
大人になり白人社会に置かれたメイドたちの立場に疑問を抱きはじめる。
真実を明らかにしようとメイドたちにインタビューを試みるスキーターだったが、誰もが口を閉ざすばかり。
そんな中、ひとりのメイドがインタビューに応じたことから、社会全体を巻き込んだ大きな事態へと進展していく。
ヒューゴの不思議な発明
公式サイト
世界各国でベストセラーとなったブライアン・セルズニックの冒険ファンタジー小説「ユゴーの不思議な発明」を、
マーティン・スコセッシ監督が3Dで映画化。
1930年代のパリ。孤児の少年ヒューゴは、父親の残した壊れた機械人形とともに駅の時計塔に隠れ住んでいた。
ある日、機械人形の修理に必要なハート型の鍵を持つ少女イザベルと出会ったヒューゴは、
人形に秘められた壮大な秘密をめぐって冒険に繰り出す。
ミッドナイト・イン・パリ
ハリウッドで売れっ子の脚本家ギルは、婚約者アィネズと彼女の両親とともにパリに遊びに来ていた。
パリの魔力に魅了され、小説を書くためにパリへの引越しを決意するギルだったが、アィネズは無関心。
2人の心は離ればなれになり……。
マネーボール
公式サイト
メジャーリーグ「オークランド・アスレチックス」のGM(ゼネラルマネージャー)、ビリー・ビーンの半生を、ブラッド・ピット主演で映画化。
全米約30球団の中でも下から数えたほうが早いといわれた弱小球団のアスレチックスを独自の「マネー・ボール理論」により改革し、
常勝球団に育てあげたビーンの苦悩と栄光のドラマを描く。
ツリー・オブ・ライフ
公式サイト
テレンス・マリック監督が、ブラッド・ピット、ショーン・ペンを主演に描くファンタジードラマ。
1950年代半ば、オブライエン夫妻は中央テキサスの田舎町で幸せな結婚生活を送っていた。
しかし夫婦の長男ジャックは、信仰にあつく男が成功するためには「力」が必要だと説く厳格な父と、
子どもたちに深い愛情を注ぐ優しい母との間で葛藤(かっとう)する日々を送っていた。
やがて大人になって成功したジャックは、自分の人生や生き方の根源となった少年時代に思いをはせる……。
製作も務めたピットが厳格な父親に扮し、成長したジャックをペンが演じる。
第64回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞
戦火の馬
1982年にイギリスで発表され、舞台化もされて成功を収めたマイケル・モーパーゴの小説を、スティーブン・スピルバーグ監督が映画化。
第1次大戦下、農家の少年アルバートは毎日を共にしていた農耕馬のジョーイを軍馬として騎馬隊に売られてしまう。
フランスの戦地に行くことになったジョーイを探すため、アルバートは徴兵年齢に満たないにもかかわらず入隊し、
激戦下のフランスへと向かう。
監督賞
ウッディ・アレン
作品:ミッドナイト・イン・パリ
ミシェル・アザナビシウス
作品:アーティスト
テレンス・マリック
作品:ツリー・オブ・ライフ
アレクサンダー・ペイン
作品:ファミリー・ツリー
マーティン・スコセッシ
作品:ヒューゴの不思議な発明
ゴールデングローブ賞受賞。
主演男優賞
ジョージ・クルーニー
作品:ファミリー・ツリー
ジャン・デュジャルダン
作品:アーティスト
ゲイリー・オールドマン
作品:裏切りのサーカス
公式サイト
舞台は1973年の年末のイギリス。
イギリスのスパイ組織”サーカス”のリーダー格コントロール(ジョン・ハート)は、サーカスの内部で共産圏への情報漏洩が起こっていることを不審に感じていました。
そんな彼は、ハンガリーからの「秘密を教える」との呼びかけに応える形でジム・プリドー(マーク・ストロング)をハンガリーに覇権します。
しかし、それは東側の仕組んだ罠でした。
ハンガリーの情報屋との会談のあと、プリドーは彼を待ち伏せていたカフェの店員(を装った男)の銃弾に倒れてしまいます。
この失敗の責任を取る形でコントロールの権威は失墜し、その後死去。それに伴い、彼の信頼する部下たちも解雇や左遷の憂き目を見ていました。
その中に物腰穏やかな初老のベテラン・スパイ、ジョン・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)の姿もありました。
コントロールを失ったサーカスは、新たな独裁者パーシー・アレリン(トビー・ジョーンズ)の天下となり、その部下としてトビー・エスタヘイス(デヴィッド・デンシック)、ロイ・ブランド(キーラン・ハインズ)、ビル・ヘイドン(コリン・ファース)の3人が躍進してきました。
彼らの繁栄は、「ウィッチクラフト」という名のソ連の機密事項を握っていることにありました。
そして、この4人こそを、コントロールは「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」と1人ずつに仮名で名付け、この中に裏切り者の二重スパイがいると踏んでいました。
ただ、誰がどのようにしてソ連との二重スパイとして機能しているのかがどうしてもわかりません。
しかし、この4人の天下に対し警察が動き、その調査をジョン・スマイリーに依頼します。
スマイリーは穏やかに「でも、私はもう首になった身だぞ」と断ろうとしますが、説得され、左遷にあっていた若手の情報部員ピーター・ギリアムと本格捜査に入ります。
捜査をしているうちに、スマイリーの脳裏には様々なサーカスでの出来事、コントロールのことや彼の別れた妻に起こったことなどがプレイバックされてきました。
そうして記憶をたどるうちに、スマイリーはかつての同僚コニー・サックスと出会い、彼女が以前アレリンからスパイ捜査を止められていた話を聞き出します。
そしてスマイリーはソ連の謎のセクシー美女スパイ、イリーナから「裏切り者の秘密を教えてあげる」と誘惑され恋に落ちていた若き英国情報員リック・ター(トム・ハーディ)をつきとめます。
リックはもう少しのところで裏切り者の存在を知るところでしたが、その直前にイリーナがソ連のスパイ連行されてしまうことになります。
そして、その一方。殉職したと思われていたプリドーが実は生きており、学校の先生をして生計を立てていました。
彼はたちまち学校で人気の先生になりますが、そんな彼を内気なナード少年ビルはちょっとあやしい雰囲気で先生を見つめていました。
そんなプリドーの元にやがてスマイリーも…。
デミアン・ビチル
作品:A Better Life
メキシコからの不法移民カルロスは庭師をしながら男手ひとつで14歳になる息子ルイス大切に育てている。
息子に自分とは違ったよい人生を・・・と願い毎日懸命に働いているが、
反抗期の息子はは地元ギャングに入ることを考えており、学校でもケンカをしたりで好き勝手やっている。
そんな時、ビジネスパートナーからトラックを買取り、自分でビジネスを始めないかと誘われ、妹に借りた大金で車を購入することに。
しかし、大事なトラックは盗まれてしまい・・・
ブラッド・ピット
作品:マネーボール
主演女優賞
ビオラ・デイビス
作品:ヘルプ 心がつなぐストーリー
メリル・ストリープ
作品:マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
公式サイト
1979年、父の教えである質素倹約を掲げる保守党のマーガレット・サッチャー(メリル・ストリープ)が
女性初のイギリス首相となる。
“鉄の女”の異名を取るサッチャーは、財政赤字を解決し、フォークランド紛争に勝利し、国民から絶大なる支持を得ていた。
しかし、彼女には誰にも見せていない孤独な別の顔があった。
ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)受賞。
ミシェル・ウィリアムズ
作品:マリリン 7日間の恋
公式サイト
1956年、ローレンス・オリビエが監督・主演を務める映画「王子と踊子」の撮影のためロンドンを訪れたモンローは、
初めて体験する海外での撮影のプレッシャーと、夫との確執により仕事に集中することができずにいた。
さらに演技方法でオリビエとも対立し孤立してしまったモンローは、ただひとり的確な助言をくれた
第3助監督のコリン・クラークと親密になっていく。
クラークの回想録をもとに映画化。
ルーニー・マーラ
作品:ドラゴン・タトゥーの女
公式サイト
月刊誌「ミレニアム」で大物実業家の不正行為を暴いたジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)。
そんな彼のもとに、ある大財閥会長から40年前に起こった兄の孫娘失踪事件の調査依頼が舞い込む。
連続猟奇殺人事件が失踪にかかわっていると察知したミカエルは、天才ハッカー、リスベット(ルーニー・マーラ)にリサーチ協力を求める。
グレン・クローズ
作品:アルバート・ノッブス
19世紀のアイルランド。人付き合いを避け生活する内気な執事のアルバートは、重大な秘密を隠してきた。
“彼”は貧しく孤独な生活から逃れるため、男性として生きてきた女性であった。
ある日、ハンサムなペンキ屋のヒューバートがアルバートの働くホテルにやってきた。
彼の存在に影響されたアルバートは、自ら築き上げてきた偽りの人生を崩したいと思うようになり――。
助演男優賞
クリストファー・プラマー
作品:人生はビギナーズ
公式サイト
ユアン・マクレガー主演で人生を前向きに生きようと変化してく人々の姿を繊細に描いた人間ドラマ。
38歳独身で奥手なオリバーは、母に先立たれ5年がたったある日、
ガンの宣告を受けた父からゲイであることをカミングアウトされる。
衝撃を受けたオリバーは事実をなかなか受け止められず臆病になってしまい、
運命的な出会いを果たした女性アナとの関係も自ら終わらせてしまう。
しかし、真実を告白した父は残された人生を謳歌し、その姿を見たオリバーは自分の気持ちに正直に生きることを学んでいく。
ケネス・ブラナー
作品:マリリン 7日間の恋
ジョナ・ヒル
作品:マネーボール
ニック・ノルティ
作品:Warrior
元ボクサーだった父の教えを受け、総合格闘技大会に参戦する男の闘いを描くスポ魂ドラマ
マックス・フォン・シドー
作品:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
助演女優賞
ベレニス・ベジョ
作品:アーティスト
ジェシカ・チャステイン
作品:ヘルプ 心がつなぐストーリー
ジャネット・マクティア
作品:アルバート・ノッブス
オクタビア・スペンサ
作品:ヘルプ 心がつなぐストーリー
メリッサ・マッカーシー
作品:Bridesmaids
30代を謳歌しているアニーの人生はその実、男はいないし、借金はあるしの散々なもの。
それと気づかずアニーの日記を読んでしまったルームメイトはアニーに、「これ、ものすごく悲しい本だった」とコメント。
落ち込むアニーに親友のリリアンが「ビッグニュースがある」と電話してきた。
嫌な気分を払拭しようと早速リリアンに会いに行ったアニーは、彼女から突然、婚約宣言され、大ショックを受ける。
さらに、メイド・オブ・オーナーになってほしいと頼まれてしまう。
激しく動揺するアニーだが、他ならぬ親友リリアンの結婚式に向けて一肌脱ごうと決意。
そのほか4人のブライズメイドをまとめながら、結婚式前の数々のイベントを企画するが…。
外国語作品賞
闇を生きる男(ベルギー)
田舎で畜産業を営むジャッキーに精肉業者との怪しい仕事話が舞い込む。
同じ頃、ホルモンマフィアを捜査する警官が殺された。
予期せぬ事態、ジャッキーの過去の秘密と再会、
人々の駆け引きが複雑に絡み合い、彼を混乱の渦へと招いていく。
Footnote(イスラエル)
ヘブライ語の口伝律法。
Shkolnik家では代々、エルサレム大学でこのタルムードを学んでいます。
しかし、Eliezerとその息子Urielにとってタルムードは不和の種となります。
Shkolnik家の若者は仲間たちから一目置かれていますが、純粋主義者で人間嫌いの
教授である彼の父親は、息子の成功に嫉妬し傍観者の立場を貫いています。
このライバル意識が、「傍観者はコンプレックスなく、
また、すべてを文字通りにとらず大笑いしたり微笑むことができる」といった
ユーモラスな場面を生んでいます。
In Darkness(ポーランド)
第二次世界大戦中のナチス占領下にあるポーランド(当時)の都市リボフで、
下水労働者レオポルド(ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ)は、虐殺から逃れた
ユダヤ系ポーランド人を下水道にかくまう。
だがレオポルドは、その危険の代償としてユダヤ系ポーランド人から代金を取り始めていくが、
徐々にナチスの脅威が迫ってきて、レオポルドのもとにも変化が訪れていく
という実話を基に描かれたドラマ作品。
Monsieur Lazhar (カナダ)
ケベック州の小さな町の小学校。
始業前の運動場から映画は始まる。
雪の中、エネルギーをまき散らして遊ぶ子どもたち。
授業の時間が近付き、牛乳配達当番の男の子がひと足先に教室に戻る。
ごくありふれた小学校の朝の風景である。
ところが、誰もいないはずの教室では、担任の女性教師が首を吊っていた。
学校としては早急に手を打たないといけない。子どもたちの心のケアのためのカウンセラーも必要だし、自殺した教師を思い起こさせるようなものはすべて取り除かないといけない。
そして何より、新しい担任の教師を見つけないといけない。
当然状況も状況ということで名乗り出る人は見つからず、教師選びは難航するのだが、
そこに現れたのがアルジェリアからの移民、ムッシュラザール、ラザール氏である。
ラザール氏によると、母国では20年近く教師をやっていたということで、
「とにかく子どもたちの助けになりたい」と校長に直談判する。
学校側としても、得体の知れないアルジェリア人とはいえ、他に選択肢がない。
やむなくラザールを新しい担任として迎え入れる。
この流れだと、よくある「スーパー先生もの」で、ラザール先生がその類まれなる指導力で、
徐々に子どもたちの心を解放していくというようになりそうだが、実際のところラザールは、
子ども思いでこそあれ、スーパー先生とは程遠い。
50代半ばくらいの中年男性で、口ひげ顎ひげは泥棒ひげのようで、目元はやさしいがあまり頼りがいがある感じではない。
温和な性格から、子どもたちと打ち解けるのは早かったが授業の方はいまいちで、
フランス語を母語としている子どもたちに、フランス語を外国語のように、文法をひも解いて教えようとする。
アラビア語を母語とするラザールとすれば、これこそがフランス語の学習法であり、一切の疑問を抱いていないのだが、
それにしても少しでも言語習得法の知識があれば、このやり方は間違いだと気付くはずだろう。
ここでラザールに関してもうひとつの背景が現れる。
ラザールは正式な移民ではなく、母国で家族を殺害されて難民として逃れて来た身なのである。
学校での様子とともに、ところどころ、ラザールが政治難民として
正式にカナダ政府に認められるかどうかというヒアリングも盛り込まれる。
そして厳密には、難民申請中では、カナダで教職に就くことはできないのである。
つまり虚偽の報告をして、職を得ていることになる。
母国では教職の経験がないことも明らかになる。
映画はラザールだけではなく、子どもたちにも目を向ける。
クラスは全員が11歳と12歳で、それなりに物事が分かる年頃で、時間が経つにつれ、
少しずつ担任の死という現実を遠ざけられるのだが、首吊りを最初に目撃したシモンだけは
ショックがあまりにも大きく、次第に自分の殻に閉じこもるようになる。
少しずつ明らかになるのだが、シモンと担任の間には学校が間に入らざるを得なかったトラブルがあり、
シモンは誰よりも死の責任を感じているのである。
自分が牛乳当番の日に死を選んだのも、その姿を真っ先に見せるためだろうと。
真相は分からないし、トラブルといってもささいなことがほんの少し大きくなった程度のものなのだが、
その根底は、シモンが人の愛情をどのように解釈していいか分からなかったということで、
11歳12歳の弱さやもろさの最極端として描かれる。
一方で強さの最極端として描かれるのが、シモンの幼なじみという感じの女の子アリスである。
アリスも他の子ども同様ショックは大きいのだが、ラザールの母国アルジェリアに真っ先に興味を持ち写真を集めたり、
ラザールのフランス語の授業に意見して、「こういう本を取り上げてほしい」と、本を貸し合うようになったりと、
誰よりも積極的に新しい境遇を受け入れようとする。
アリスは次第に、周りの、特に大人たちの対応に疑問を持つようになる。
つまり、「死をなかったことにする」風潮である。
そうではなく、やはり積極的に、死は起こってしまった現実として乗り越えるものなのではないかと。
子どもたちが死をどのように乗り越えるかという両極の視点とともに、
ラザールもまた、母国で殺害された家族の死を乗り越える立場である。
それなりの時間が経ち、子どもたちが担任の死を振り返る緊張感が一気に高まったとき、
年齢も背景も違うラザールが、ゆっくりと、優しくも毅然と話し始める。
死の解釈といってもひとつではないし、絶対に正しいものなどないだろう。
ラザールも試行錯誤の身であるから、言葉に一貫性はない。
それでも、生きていることにも死んでいることにも大した理由はなくて、実は紙一重のものなのではないかと、
その言葉は思わせてくれる。
しかしそうではあれ、生きている人が死んでいる人をどうにもできないし、逆もどうにもならない。
生きているものは、どのようになるにせよ、なるようにしていくしかない。
別離(イラン)
公式サイト
昨年のベルリン映画祭金熊賞・銀熊賞受賞作品
ゴールデングローブ賞受賞作品
イランのテヘランで暮らすシミン(レイラ・ハタミ)とナデル(ペイマン・モアディ)には11歳になる娘がいた。
妻シミンは娘の教育のために外国へ移住するつもりだったが、夫ナデルは老いた父のために残ると言う。
ある日、ナデルが不在の間に父が意識を失い、介護人のラジエー(サレー・バヤト)を追い出してしまう。
その夜、ラジエーが入院し流産したとの知らせが入り……。